ごめんね/さち
 
その娘(こ)は

私たちが乗り込んだ都電の座席にいた

私たちが乗るのと入れ替えに

その娘(こ)の

両隣が空いたので夫が左側に座った

私が右側に座ろうとした時

その娘(こ)は

「ずれますよ」と言って夫の隣を空けてくれた



礼を言った時 私は初めて彼女をちゃんと見た

真っ黄色の髪をして

サングラスをカチューシャにして

長い爪で器用にスマホを操作している

唇にピアスが2つ付いている



しばらくして小柄なお婆さんが乗って来た

スマホを見てたと思ったのに

その娘(こ)は

スッと立ち上がりお婆さんに席を譲った



立ち上がった

その娘(こ)は

おへその見えるチビTを着て

厚底のゴツいスニーカーを履いている



へぇ…

思わず心の中で呟いた

と、同時に

自分の中にあった先入観に気付いて

思わず心の中で呟いた



ごめんね



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