青物横丁を抜けて/室町 礼
 
あらしの日も
驟雨に叩かれた日にも
ポケットに青空があった
けっこう
風にはためいていた
青物横丁の角を曲がって
とぼとぼ歩き
名前に誘われて
黄金(こがね)町に迷いこんだ
あの日
20メートルもない
アーケードの下の中華屋で
ずるずると
独りの客になる
惜別の歌が流れて
道行く人はみな暗い背中を
みせていた
すっからかんなのに
おれのゆるんだズボンの
ポケットには
風の吹く青空があった
もう一度
時代を逆さまに振りたい
髪が揺れるようなささいな
ことだから
何も覚えていないだろう
けど
謝りたい
おれは何も背負えなかった
ただ空っぽの空を
ポケットに入れて歩いてきた
なんとも あひっ。







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