親しみある世界へ/杉原詠二(黒髪)
物には物の構造があり
独自の色や質感がある
なおった眼でそれらの語りかけを見ていると
やはりかつて生きていた木材に一番親しみを覚える
物になってもかつての生が痕跡を残している
暗い筋と明るい筋が
微妙な曲線を描きながら
美しく語りかけてくる
固いけどわたしを傷つけなくて
少し温度があたたかい木
この部屋の中にいても
まるで森の中にいるような感覚さえ思わせる
眼にも優しいんだよ
だからこそ
この世界で
生命への愛を
失われてしまうからこそ
大切である存在への希求を
思慕を
広げよう
地球にあるからこそ
宇宙内にあるからこそ
生命も物も
偉大で
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