凪名木なぎな[七行詩] 2007年12月8日19時29分から2013年7月19日1時53分まで ---------------------------- ????????????????????????????????????? ???????????????????????? ???? ????????????????? ???????????????????? ??????????????????????????????? ---------------------------- [自由詩]片眼(ODD EYE)/しろう[2007年12月8日19時29分] 散りはらう街路樹のもとに傘はない 銀杏の枯葉をしとど踏みしめながら 右の黄金瞳が枝葉と灰色の彼岸を見透く 代名詞を求めない陽光に臨めたとしたなら ひとつの名前できみを翡翠と数えただろう ひりり、濃紺の水溜まりをすくう手のひらの感触 あるいはすくえない ---------------------------- [自由詩]積雪の手紙/しろう[2007年12月8日20時06分] 『食べられません』のラベルを貼り続けました。 あらゆる無生物に。 よくよく考えてみれば、 生きるというのはたったそれだけのことでした。 樹氷の白にくるまれながら、 ぼくがぼくの姿形をあえて残したのは、 たったそれだけの微熱なのでした。 ---------------------------- [自由詩]果てしないわけでもなく夕暮れ/しろう[2007年12月19日21時06分] 天球を半ば覆った夕暮れが燃え 肺胞には空気が足りぬ自明の理 お天気予報に言わせれば あと十五年は夕暮れらしい 結局は息の仕方も忘れちまったし、 吸うなら吸うで煙草があるから どうって事はないのだけれど。 ---------------------------- [自由詩]Fragmental Journey/しろう[2007年12月20日19時06分] 朝、出勤しようと思ったら靴がない 玄関脇の靴箱に尋ねてみると 「皆様、長旅に出て往かれました」と言う そうか、長旅に出たなら仕方ない 履き潰す前で良かったそういえば、 俺が最後に旅に出たのはいつだったろう いつもより少し大股で歩く素足で ---------------------------- [自由詩]X'mas/しろう[2007年12月25日21時37分] 深い藍を伴った夕霧はルリスズメダイの色 イルミネーションは腐臭のする街灯の影を逸らす 架せられた子への賛美歌は誰しもを赦す だが、その子ひとりを守ろうとはしない 誰だって誰かの命を救いたいと願っていて つまり、魂ひとつ受け入れることなのだろう 今宵も明日も雪が降るか、なんて知ることはない ---------------------------- [自由詩]高架下のスキャット/しろう[2008年1月1日11時16分] 桜木町の高架下の落書きの暗黙の了解 新しい絵を描くものは前の絵よりも 素晴らしいものを描かなきゃいけない それなりに自由を享受していたし 黒光りした鋭利を持ってた俺は 高架下、それをマイクに 夜通しスキャットしていた ---------------------------- [自由詩]「絵描きの真実」/しろう[2008年1月6日19時15分] おまえは「エメラルドグリーンだ!」と言った。 が俺にとってこれはクリムゾンと呼ぶんだが、 その程度の齟齬はどうでもいい。 俺はこのカンバスにはいつも どうでもいい真実を描く事にしている。 今朝のコーヒーの雑味、ゴルゴンゾーラが不味い ぼろぼろのオモチャのネズミ、吸い殻の剣山 ---------------------------- [自由詩]音符の降る道/しろう[2008年1月10日20時52分] 水の歌が滴って 綺麗な虹が瞬いた 瓦斯灯の下を 進みゆく足音が 木々達を歓喜でささめかす 黙って耳を澄ませば 夜の音符降る道 ---------------------------- [自由詩]砂漠のリンゴ/しろう[2008年1月30日16時57分] 夜毎、彷徨い叫ぶ人々のために 砂漠にはリンゴの木が植えられた その木には 赤い赤い実がなるという ごらん、 リンゴの血が滴るのを あれを苦しみの美という ---------------------------- [自由詩]あかねこ/しろう[2008年2月4日13時07分] こたつにはみかんがあるから あかねこはまるくなり さまざまな約束事によって 針が回り続けているのを ゆるしている やさしい そして、かなしい ---------------------------- [自由詩]ヌード/しろう[2008年2月4日14時05分] 不在はふるえている 科白(セリフ)が青く染まるとき 語る言葉をもたない左手で おまえの一番やわらかいところ をつなぎ止める そうだ不在よ ここにいろ ---------------------------- [自由詩]ペチュニア/しろう[2008年5月14日23時55分] 絹のペチコートの恥じらいで 揺れるペチュニア 私がおまえを摘み取る時、 断末魔の叫びのひとつも 上げて見せよ 傷痕残るこの右拳を 雌しべの涙で染めうるならば ---------------------------- [自由詩]夏が夏だから/しろう[2008年7月6日16時57分] 初夏の軒下に凍った氷柱から こぼれ落ちた六角形の石英は 夕立に濡れた野良犬の毛皮に すいと吸い取られていった すえた匂いがする 帰りたいおうちなんてどこにもないと 知った十八回目の夏のこと ---------------------------- [自由詩]ギムレット・ロック/しろう[2008年7月6日19時49分] 置き去りにされた愛のように ロックグラスはひび割れて 紫陽花のように水を欲しがる 日々の我らの営みが零れて 絨毯に染みが増えてゆく 地球が檸檬だなんて嘘 誰も信じちゃくれないよ ---------------------------- [自由詩]猫背のあめふらし/しろう[2008年7月12日14時55分] 雪の降らない夏は やさしく壊れる背中が丸くて撫でた ソフトクリームより黒髪が甘くて舐めた 去ったり去られたり さらわれたりしながらも おれは海に拾われたグニャグニャのあめふらしで またいっそう猫背になっている ---------------------------- [自由詩]白紙の散乱/しろう[2008年7月21日17時31分] あえて描かないことは描ききることと同じで 透明にはじける炭酸水が吹き上げる泡のように この七行に込めるものは あなたを愛する、ということではなく 砂時計が流れ落ちるのを眺め続けている ほんのわずかでほのかな喜びと寂しさを あなたと分かち合いたい、とする気持ち ---------------------------- [自由詩]ヴィヴィッドなるアポトーシス/しろう[2008年7月22日17時40分] 鰯雲が砂丘に斑な影を落とし励起する 空中分解した未来 ヴィヴィッドなゼラニウムが更に産む 我々のものではない今 空の色なんてどうでもいい 愛の性質は満ち足りたりするものではないこと ニヒリストは早々に死に絶えた ---------------------------- [自由詩]海猫のゆうべ/しろう[2008年10月7日21時33分] 右目の具合がとても悪くて 海の半分は紫に染まりました 群青の端っこが零れてしまいそうで 左目は心配をしておりました きみの瞳で水平線を眺めて 夕日が沈まぬ東の海を嘆きました 海猫がミャウと運河を響かせました ---------------------------- [自由詩]十月十六日午前八時のハンガー/しろう[2008年10月16日22時11分] 物干し竿に並んだ肉を持たない白の骨たちは 濡れたカシミヤのセーターが掛けられるのを待っている あるいは真白いワイシャツでも 季節はずれのノースリーブでも良いのだけれど 記念写真を撮られるためでなく 幾何学模様の影を落とすためでなく 干すためだけに引っ掛けられているのだと ---------------------------- [自由詩]償いの前に/しろう[2008年12月10日21時50分] 別れのない日などなかった 夢の覚めない日もなかった 真夜中の貨物列車の車輪の響きが テノールのビブラートの余韻となった 日々に慰安が欲しいと言ったら スプラウトは笑い、シルフが慰めた 冬の手指がさらに乾いてひび割れた ---------------------------- [自由詩]割れた片身/しろう[2009年1月8日22時31分] 音波が空中を飛び交っているのを 二枚におろされた俺は見た 腐る憧れと嫌悪の中間地点で 空がビリジアンに染まるのを ニルヴァーナが無性に聴きたくなる 夜が老いていくのが 半身獣にはいとおしい ---------------------------- [自由詩]無精卵/しろう[2009年1月8日22時59分] ハンプティ・ダンプティが 公園の芝生で柔軟体操をしていた 何の比喩もいらないから 一日中雑談だけをすることにした TOPIXとDOWとNASDAQの値動きについて あいつもずっと笑わないから 卵からは何も産まれなくてよかった 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アルカリ電池をシリアルで接続するのはやめてくれ、 理科の時間が割り振られるたび豆電球は叫び エコ!エコ!エコロジーに気を配れ!! 孤独を測るには小学校の30センチ定規で十分、 天体望遠鏡も二十億光年もいらない竹製 アナ!アナ!アナロジーに歯を食いしばれ!! おまえはべつにもうひとりいるぞ ---------------------------- [自由詩]れしぴ/しろう[2009年2月18日22時59分] 塩コショウは悪魔で少々です 天使がクシャミをしない程度です 最後に小さじ一杯のレモン汁を加えて下さい 残りのレモンはシャウトしましょう この書簡は開封された十五秒後に焼失します しかるに取り急ぎ手放してフランベして下さい 秘伝のソースが伝えられることはありません ---------------------------- [自由詩]似非ヒュプノシス/しろう[2009年2月20日21時22分] 世界遺産を遺産と呼ぶのをやめさせられましょう 携帯ナビから愉快な匂いがしてたまりませるる 藤原さんから蓬莱の玉の枝をいただかせられました 馥郁たる味わいに舌鼓を乱打して満点大笑う 枕木を枕にしてレールで歯を磨くのが仕事であられます 貨物列車が通り過ぎるのを用心してはなりませられぬ ヒュプノスが不安を駆り立てるきらいがあるので眠りませ ---------------------------- [自由詩]水銀/しろう[2009年3月7日23時19分] 水と銀をころがしたらびぃだまになって 予定調和がうつくし過ぎてシケモクに火を点ける 昔日の積雪がこげついた肉をやわらかくして おみおつけのかおりのようにささやかな音 出窓を押し開けたなら風が吹かなきゃ嘘だよ みずいろは色を見ずともみずいろで 短歌が生まれてこないよ、ママ ※「短歌が生まれてこないよ、ママ」は白糸雅樹氏の未発表のフレーズ('09.03.25時点)から引用させて頂きました。 ---------------------------- [自由詩]※≠▽*#∂◇?∵〆∞¬∇°´/しろう[2009年3月13日23時41分] 『落書き禁止』と書き付けてある壁を見つけては 落書き禁止。とラクガキする 『張り紙禁止』と貼り付けてある壁を見つけては 張り紙禁止。とハリガミする 『言葉』はあらゆるものを形容できると思ってるから 形容できないものをコトバにしようとやっきになる ※≠▽*#∂◇?∵〆∞¬∇°´ ---------------------------- [自由詩]こねこここ/しろう[2009年3月21日22時09分] こねこ このねこ ここのねこ? こねこどこなのどのねここねこ? こここここねこ こここここのねこ こねこここ ---------------------------- [自由詩]川岸/山中 烏流[2009年3月28日2時58分] あそこに咲いた桜は 果たして、何分咲きなのだろうか 一つ、間の抜けた提灯と 手を繋ぐ親子の声が きらきらと光る、岸辺の話 鳩を気にかける少年の上で 、あ。 ---------------------------- [自由詩]letters in the bullet/しろう[2009年4月2日23時13分] カラシニコフを提げた土気色の顔と服 委ねられた/から、死に、乞ふ。 知らないはずはないけどいうよ あれ、あの木が文字だ。 あれ、あの雲が文字だ。 朋友に放つ弾丸ひとつひとつにこれらの言葉を刻めばいい。 こんにちは、ありがとう、ごめんなさい、そしてさようなら。 ---------------------------- [自由詩]終わることのない舞踏/白糸雅樹[2009年7月9日23時07分] 終わることのない歌がある 地虫のように地を這うつぶやき 泥の纏のようなボレロ リズムを踏んで女たちは集い 韻を踏んで男たちは散る 引き裂かれた舞踏の群は紙人形にも似て 伽藍にて響きだけをいつまでも増幅し続ける      2009.7.9     奇数行:しろう 偶数行:白糸雅樹 ---------------------------- [自由詩]けんけんぱ/しろう[2009年8月21日21時30分] 渡り雲を映し出す 水鏡を ひとつひとつ踏みつけて 鏡には 誰かがつくった落とし穴があって 地球の裏まで繋がっていたら 僕は跳ね続けられる ---------------------------- [自由詩]あすなろ/しろう[2009年9月11日21時59分] 黄昏に生まれた人と木たちよ 空に憧れるのを同じくならえ 一足ごとに掌を赤く染めれば 四角いテーブルを共に囲もう 凍った時計を溶かすことなく 戯けた踊りを明日ならおうよ 同じ過ちから解き放たれつつ ---------------------------- [自由詩]降りくるオラクル/しろう[2009年9月15日22時57分] よせるみちしお いわばをわたり にじをみにゆく まんげつのほお かりのとぶそら せなかにくらく るりいろひかる ---------------------------- [自由詩]トロイメライの夢/しろう[2009年11月29日0時08分] トロイメライの草いきれ 揚げ花火の調べ 命の水源から零れ出す、フラクタルな哀しみと 誰にでも、生きている限り、幸せになる権利がある ということ 花火が落ちた焼け跡の空にも 儚い調べだけが薄れながら残った ---------------------------- [自由詩]うた缶/窓枠[2010年2月6日0時00分] 声を拾い集めてみます 盲目の私には広々としすぎる 歩くことさえ困難なこの街で 途方もない結果を残したい 私の耳がぎゅうぎゅう詰めになるほど たくさんの声を繋いでみたのなら うたう缶詰めは 世界中を笑わせるのです ---------------------------- [自由詩]十一月のカナリア/しろう[2010年2月19日21時45分] 季節はずれのリンゴ売り 川面に映る枯れススキ 砂丘に夕日の色があり 辿り着けなかったパラレルとして 鐘が三度鳴らされて おまえを愛していたという あなたは器用に哀しめばいい ---------------------------- [自由詩]日暮さん/しろう[2010年3月26日22時44分] あの夕焼けを誰よりも美しくしたためることが出来るなら まかり間違って詩人になってもいいと思ったわけだし ポジティブシンキングで幸せになることはないことぐらい 鱗を散らして空に溺れた魚の目を見るよりも明らかで 地平線は白の破線を敷き詰めるまでもなく平常運行だから やっぱり生まれ変わったりなんてできないよなぁって 赤茶けた日はまた生還するんじゃないのかないのか ---------------------------- [自由詩]金魚/しろう[2010年3月31日23時02分] 妹よ 僕に妹はいなかったけど妹よ 言葉を失うたびにおまえはいくつかの言葉を失う 次第に拙くなってゆく舌先で懸命に ぎゅっとだきしめて、という妹よ おまえはいまも夏祭りの浴衣の薄桃色で あしたおまえの見る夢が金魚になっておよいでる ---------------------------- [自由詩]嘘が嘘ならば嘘である嘘/しろう[2010年4月1日23時56分] 僕は嘘をついたはずなんだが 僕の嘘は誰にも見破られなかったので 僕は嘘をついていないというのが通説であり 僕自身には僕が嘘をついた認識と記憶があるのだが 嘘をついたことこそがもとより嘘の事実だったと仮定してみるに 僕が嘘をついたという嘘を僕は信じ込まされたのかもしれず そうなると僕の存在そのものが嘘だということになる ---------------------------- [自由詩]Lookin' for the seven colors/しろう[2010年4月14日22時39分] この地は楽園とまでは言えずとも地獄ではなかった 僕には探しものがあるからだった 探しているものは見つかるものであって 見つかるものが僕をして探させているのだ いるかいないかを見分けるのは難しくない 虹みたく見透かされても怖くないから 君はたった七つの色をしている ---------------------------- [自由詩]海が待ってる/しろう[2010年4月15日0時51分] 海の胸から届いたそれは しゃぼん玉のようにぽこぽこで 生まれくる瞬間の匂いを閉じこめたままで いまにも弾けたがってふるえてて まつげに触れるとやっぱり弾けて 潮の飛沫が飛び込んでくるもんだから いきおい私はかるく10cmほど浮き上がったのです ---------------------------- [自由詩]黄色い太陽/高梁サトル[2010年4月16日22時55分] 真夜中の公園で素っ裸のオヤジに首輪付けて散歩させてる あれは昼間お料理教室で一緒だった清楚なあのオンナノコ マルキ・ド・サドって名前だけは作家気取りの性癖異常者 僕は夕暮れの公園でスモッグ警報を聞きながら深呼吸する ユージーン・ハッツの埃くさい髭に埋もれる夢を見ながら 指を噛む癖がやまないこと嘆くくらいの薄っぺらなオンナ この格差どう埋めてくれようかなんて考えるだけ不粋よね ---------------------------- [自由詩]I'm here with     xxx/しろう[2010年6月20日21時31分] もう一日だけ生きよう あそこにはまだ名前を知らない花たちが咲いてる あの山に登ればまだ数えてない星たちが瞬くだろう あの街ではまだ聴いたことのないうたと出会える この地中には湧き出したことのない水脈があるだろう そして次の日もまたきみにこう言おう もう一日だけ僕と生きよう ---------------------------- [自由詩]Eine kleine Nachtteufel/しろう[2010年7月8日23時10分] 貝殻のノイズに剥がれたちいさな夜に遅すぎた痒み シーソーのように揺れるのを忘れちまったんだ悪魔 手のひらで溶かしたはずのチョコレートが剥がれ それは耐え難い痒みなのだ、と言い聞かせようか 祈りは犠牲と寄り添う技術ではないのだ アクリルケースを透る視線の無邪気に 生まれ変わりたくなんてなくて、卵殻に錫を混ぜた ---------------------------- [自由詩]風暮街/凪名木なぎな[2011年5月10日1時06分] わざとらしく取り落としてみた銀細工の手鏡が ナノ秒刻みで空をムシャムシャと食べました さぁ風の音に添って渡ろういずこ 尖り切った指先は動きをやめたがらないし きっと数多の紙片が舞い散るでしょうね 猫を小脇で撫でながらなら謝ったりはするなよな ウルトラヴァイオレットまでグラデーションするクレマチスの声 ---------------------------- [自由詩]Hey,sparrow me/凪名木なぎな[2011年5月11日1時07分] とおくとおく遠江 トークの才能がないんだそう そもそも積み藁もとよりストロー 座ろう落穂に群がるスパロー 小鳥たちは わたしのことなど根掘りも葉掘りもしないので わたし小鳥になれるのよ ---------------------------- [自由詩]安らかに眠れ/凪名木なぎな[2011年5月12日1時08分] これでもかと雨に濡れそぼっています 浅き息の根、レストインピース エアーフィッシュがゆらゆら讃嘆 遠き夢の芽、キャッチンリリース 墓石に腰掛けてましますはわたし 寄り添うのはあなたでしょうか それともあの猫墨色でしょうか ---------------------------- [自由詩]しっぽのしっぽ/凪名木なぎな[2011年6月26日4時50分] 余生のような顔してイエローテイル 捲くってみたスカートの裾は可逆なのかな 膝のひとつも痛まないならフェアリーテイル しっぽから描けない物語は不可逆なのね それでもわたしが 幸せになれるかもしれなかった支流だけは 神さまにだって堰き止めたりはさせない ---------------------------- [自由詩]心象風景からは程遠い場所にある無意識下での哀しみの不可算性、および生物学的見地に立脚する原初の記憶と.../凪名木なぎな[2011年7月4日22時04分] ほんとは書くことなんてないんです ってところから書き始めるのが定石でしょう なんてナルシシズムなんて言外に心外で論外だから 僕のことなんて金輪際いっさい知らずにいて欲しいけど 宇宙の始まりの渦について知りたがって しゃっくりみたいに肩を痙攣させている子のことについて 知ろうとし続けていて欲しいんです ---------------------------- [自由詩]しらなでいくださいしななでいくさだい/凪名木なぎな[2011年7月27日5時54分] わたしはものがよくおぼえれらなんいです ですらか思い出すとこも思い出せない わたしはとてもとてもばかです ばかを恥じることに恥じ入こるともありません どこからどこでまがわすれたこなとのか かんせしいた絵でもあればそれは欠けいてるのか いつかあたなのまなえすらもわれするまでのまどい ---------------------------- [自由詩]エトワールの向こうでは帽子が似合わない/凪名木なぎな[2011年7月28日23時16分] もう一度だけ胡乱のうたを重ね合おう いいかげん取扱注意の荷札ははずしてもいいだろう わたしは泣きもせず手の掛からない子だったといい 扁平したおまえの瞳孔がおれをなお酷薄にする おれはひとりで眠りたいということなんだよ もう二度と会うはずはないと定めたつもりで 手の甲にくちづけしたおんなとまみえるこそあれ ---------------------------- [自由詩]かくれんぼ/凪名木なぎな[2011年8月14日1時03分] かみさまのいちびょうをかう どうせあなたはむげんのときがあるのだから おれいはぼくがぬぐえたはずのなみだでいいだろ まぁだだよ、も、もういいよ、も、しらないままで いまもかくれんぼはつづいてるんだ だからあなたはこういうんだ みぃつけた ---------------------------- [自由詩]のらのしろ/凪名木なぎな[2011年8月14日23時49分] メトロ降りてガードくぐり歩道橋を渡り 平らな道は地図にしかないと語り それでも景色を破る血気なんてなかったろ 上滑りする言葉がいちばん大嫌いだからさ 水たまりにかすれてしまった声でのらのしろ 鉄骨の打ち付けられる地響きほとりのリズムに 手足がにじむまで必死にうたおうとしていたんだ ---------------------------- [自由詩]糸車/凪名木なぎな[2013年4月29日2時52分] 菱形のような輪だ 水に跳ね返るような泡沫だ 知らしめんとする言霊が ただのこだまだと気付いていたのは 朝靄をつらぬいて啼く雉鳥か 歌うすべのない兎だったか それでも、紡がれる糸と糸車 ---------------------------- [自由詩]サイレント/凪名木なぎな[2013年4月29日2時53分] 水際のハレルヤ 低くて低い山頂とやら 潮風のように鼻腔をくすぐるのは あの日撫でた仔猫の後れ毛 虹は見せられたはずだから 許すことも許されることもないのなら 終わらないかくれんぼ ---------------------------- [自由詩]ロマネスク/凪名木なぎな[2013年7月19日1時53分] 忘れたことを縒り合せた糸で 軌道エレベーターを作ろう スペクトラムにロマンじみてる送話には 3歩ほど首をかしげるくらいが正直 しゃっくりのようなブレスを挟んでくれたら じっと声が聴きたくもなろうよ へたな四角で揚げた旗で揺れ ---------------------------- (ファイルの終わり)