クローバーの※さんおすすめリスト 2004年2月29日19時00分から2004年2月29日19時00分まで ---------------------------- [自由詩]マイノリティー/※[2004年2月29日19時00分] いじめられっこの兄妹が居ました 二人は青い目をしていました とても奇麗な、青い目 とても目立って仕方の無い、青い目 いじめられ続けた六年生のある日 兄は同級生に刃向かいました 先生も黙認する中、無言で殴りかかりました たまたま現場を体育の先生が目撃しました 担任の先生は、いじめなんて存在しないと だけど体育の先生が証人になりました その先生は、多くの生徒に慕われていました 差別への誤解は一気に瓦解するのでした 妹は、喜びました 兄も勿論、喜びました だけれど兄は、今まで自分をイジメてた奴等を 決して許そうとは、しないばかりか ・・・立場が逆転し、兄は一躍ヒーローでした 普段から快く思われていなかった、いじめっこたち 殴りかかられて泣き出した、口先っぷりから 立場は完全に 逆転したのでした 兄は、いじめっこをいじめるイジメっこになりました 誰もその振舞いに、文句を言えませんでした 今まで散々、見て見ぬふりをしてきたのですから 当然と言えば、当然なのでしょう 妹は、いじめっこの妹、という立場に立たされました それは、とても複雑で悲しいものでした 妹は、いじめるという行為そのものが嫌いでした 人目を避けるように一人、教室で涙を落とすのでした それを偶然、兄は目撃しました 妹よ、誰かにイジメられたのかい?それなら俺が 勝ち誇った顔の兄を見て、妹は 大声で泣きました 泣きじゃくるのでした  * 誰が、妹を助けてくれるのでしょう 誰が、兄を諌めてくれるのでしょう 兄はいじめっこをイジメながら、言い放ちます こいつらは、俺に あんなことや、こんなことまでも いじめられっこになった、いじめっこたちは ある晩、ついに自殺しました 幸い、未遂で済んだものの 大きな後遺症が、残ってしまうのでした 遺書が、ありました そこには、こう書かれていました 言い過ぎだ、そこまで非道いことなんか、やってない 兄は彼等を見て、天罰だと、せせら笑いました 妹は、そんな兄には内緒で こっそり何度も、何度も御見舞いに通うのでした 顔も見たくない!と叫ぶ、彼の母親 それを制止して、元いじめっこは、言いました 元はといえば・・・。 そんなの、あんまりだよ あんまりだよ、と ゴメンね、を連呼しながら 妹は、いつまでも泣き続けるのでした 兄の影で、泣き続けるのでした  * それから時は経ち、妹は彼のお嫁さんになりました ふざけるな!と叫ぶ兄から、逃げるようにして そうして今も、この世界のどこかで ひっそりと 介護を続けながら、愛を育んでいるのです 兄からの追っ手や差し金に、内心、怯えながらも それでも二人は、幸せでした 何故ならば、二人は 本当の心で分かち合い、赦し合えた仲なのですから  * 世界中が、みんな 私たちみたいなら、いいのにね・・・。 そう、呟きながら 妹は寂しそうに笑うと 今日も、彼の車椅子を押して歩くのです もう、二度と歩くことの無い 彼の小さな支えとなって ---------------------------- (ファイルの終わり)