yoshiのおすすめリスト 2007年6月23日17時07分から2007年10月22日15時04分まで ---------------------------- [自由詩]てをつなぐくらい/なきむし[2007年6月23日17時07分] たとえば 宇宙にいってもいいと思う ばかげててもいいとおもう 常識おっていきてくことが すばらしいとはかぎらない そういいながらも 非常識さに 腹をたてる 私は全く矛盾している ぽっきーよりも クッキーがいい 人はよりどり みどりだという ならば わたしは わたしであって あなたは あなたで あるかぎり 混じりあえない 種別であっても 手をつなぐくらい してみようよ ---------------------------- [自由詩]琥珀色の悲恋/渡 ひろこ[2007年6月23日19時42分] さっきから訳もなくティースプーンでカップの中を掻き混ぜてしまう そんなにしたら紅茶が冷めてしまうのがわかっているのに 渦を巻く琥珀色の液体をじっと見つめる 「黙っていたらわからないじゃないか」 頭の上を語気を強めたアナタの声が通り過ぎる 押し黙ってしまうのは 言葉にすると何かが崩れてしまいそうだから 目の前にいるアナタがもっと遠くになりそうだから 金色のティースプーンをソーサーの上にカチャリと音をたてて置く それが合図のようにアナタが言った 「俺 もう疲れたよ」 ワタシはティースプーンから指を離さぬまま 予期せぬ言葉に思わず顔を上げる アナタがぼやけて見えて 溢れ出るものが頬をつたいカップの中に落ちた         哀しくて泣いているんじゃないわ     抵抗してもアナタに支配されてしまう自分が情けないのよ     おざなりの関係ならもう結構よ     ワタシは強く生きたい     だけど・・・     ピリオドを打ちたくてもできない弱いワタシがいる     悔しいけどアナタを愛してしまったから・・・     そしてそれを見透かすアナタがいる      伝えられない想いと もどかしさに また琥珀色の液体に 滴がポタポタ落ちていった ---------------------------- [自由詩]果てる/吉岡ペペロ[2007年6月23日23時05分] やさしくて 不器用な俺たちが さいごには 獣のようになって 果てる やさしくて 不器用な俺たちが さいごには 獣のようになって ---------------------------- [自由詩]恋人がたくさん/チアーヌ[2007年6月24日0時51分] 幸せな夢から覚めたら 恋人がたくさんいて 誰とデートしようか 吐き気を抑えながら悩んだ 恋人なんかいらない 面倒なだけだ たくさんなんかいらない ひとりだっていらない まったくいらない ぜんぜんいらない いらない ---------------------------- [自由詩]海と夏と朝焼けの波/プル式[2007年6月24日8時00分] いつまでも変わらない そんな優しい歌の話をしよう 夏の朝焼けの中で見た あっという間に消えていった夢の歌 小指が触れるだけの 小さな思い出が 大きく膨らんでしまわない様に 小さな夢の話をしよう 目に見えた世界の中で 君が優しく笑えるように ---------------------------- [自由詩]無能な自分/ぽえむ君[2007年6月24日10時52分] 隣の席で 難解な数学の問題を すらすらと解く彼が嫌いだった 無能な自分を見ていた 何でこんな複雑なものを 考え込むことなしに さばいて見せるのだろう その姿勢がどこか傲慢で さらに彼を嫌いにした 彼が一問解き終えたところで 頭いいね 半分は嫌味で言った そうでもないさ 冷たい返事に思えた 君の方がずっと難しいことを 考えているからだよ ぼくは君が考えていることよりも ずっと簡単なことしか考えられない できないことを考えたり やってのけようと思ったって できないことはできないよ 誰もができる簡単なことを やり続ければいいだけさ 大切なのは 常に自分ができない人間であると 自覚することだね 自分が否定したくないことを 否定された自分は 彼の隣の席にいることが とても狭く感じた ---------------------------- [自由詩]夏空/あずみの[2007年6月25日17時00分] 青すぎる空はこんなにも哀しい なぜ 高すぎる空はこんなにも苦しい なぜ 血を流し続ける傷口に 陽が容赦なく突き刺さる 剥き出しのこころに 熱風がひりひりと沁みる 夏は 夏はこんなにも息苦しい ---------------------------- [自由詩]淋しい映画/かのこ[2007年6月25日18時49分] まっくらな子供部屋で チカチカと色を変えて呼んでいる 淋しい映画を今夜は取り出す 黒いシフォンのスカートも 全部脱ぎ捨てて毛布に包まって 甘く馨った果実が 酒樽の底に沈んで眠った 目を閉じても眠っている気がしない 目を開いていても生きてる気がしない エンドロールが終わっても 主人公は人生を歩きつづける 名前を失くしてママを ずっと呼んでいる 結末を知らない朝は ここに涼しげな光を導き出した ---------------------------- [自由詩]36.5℃/ゆうと[2007年6月25日21時12分] べたつく夜の 触れたくない君の 肌に透き通る 3つめの目を見た けだるい夜の 触れられたくない僕の 心をすり抜ける 君の吐息を聞いた 壊れそうな僕たちの 指先に伝わる体温の 血の気配がする いのちが叫ぶ声がした 平熱なのに僕たちは どうしてこうも狂えるのだろう ---------------------------- [自由詩]いいもんだ/信天翁[2007年6月27日11時04分]            梅雨空が あさぎいろに変色しはじめるのは           いいもんだ   たとえ群青色にならなくとも          散策の途次で    草いきれが臭ってくるのは           いいもんだ たとえラベンダーからでなくとも       そして 一軒屋から おさなごの泣声がもれてくるのも           いいもんだ エナジーの涸れた老残にとっては ---------------------------- [自由詩]冷たい春/ロリータ℃。[2007年6月27日13時17分] 透明な青い海を 濡れるのも構わず私はかきわけた 海の先には 知らぬ土地があるのだろう 無力な私でも 行きたいと願う夢だけは与えられた あなたはそんな私を無様だ、と、笑っていたね 唇にセブンスターをくわえながら 嘲笑して私の首を絞めた 誂えた黒いシャツは 濡れて乱れて無様な布になる 今日はとても風が強くて温かいから 問題はないのだ 私は水面の上でゆがむあなたの顔を見た そんなに必死な顔をしていたら 綺麗な顔が台無しなのに。 セブンスターはいつの間にか流れていた 逃げ出せなかった私はせき込む これで少しは 変われたかな あなたは私を抱き締めた 息もできないほどのさみしさで。 (いつの間に空、こんなに青い) あなたの手首に刻まれた模様は 私の背にも刻まれていて 同じ香りをつけていても 香りは少し違っていて 全てはこんなにも 違かった 一つになって 互いを共有したかった ならば離れられないのに 私、あなたの心臓になりたい 一番強くて 一番温かな 私、あなたを守りたかった (私たち、寄り添っても一人ぽっち。) 呟いたら嗚呼と言ってあなたは泣いた。 ---------------------------- [自由詩]愛/秋桜[2007年7月16日19時50分] 抱き締めて 抱きかえす 口づけを交わして 手を繋ぐ 肩を寄せ合い 眠りに就く 言葉はいらない だけど 言葉が欲しい ---------------------------- [自由詩]らむね/まりも[2007年7月16日22時36分] 初めてラムネを飲んだのは 確か5歳のときだった ママとパパに連れて行ってもらった 近所の夏祭り 小さなベンチに腰掛けて ガラス玉を落としてくれたのは パパだった ビンに口をつけて 直接物を飲むことは 普段は禁止されてたのに ラムネだけ、特別に例外を許された どうしてガラス玉が出てこないのか 不思議でたまらなくて 飲み干したラムネのビンを 逆さにしたり振ってみたり いろいろ試したのに結局 ガラス玉を手に入れることは できなかったのだ 見えるのに触れない 音もするのに取り出せない 透明なただのガラス玉が とても貴重な宝石に見えた ---------------------------- [自由詩]恋の雨/れんげ[2007年7月16日23時34分] 大気中に漂うチリが埃が 水中に潜むバクテリアに 恋をした 月夜に泣いていたわたしは 雨を降らせ あなたたちをひとつにする そうして世界がひとつになるのを とおくから見ている だって その雨はわたしの涙だから ---------------------------- [自由詩]Flower/なかがわひろか[2007年7月17日0時25分] 湯船の上にぽちゃんと咲いた彼岸花 天井から落ちる水滴が 少しでも、少しでも 薄めようとして 私はまた一つぽちゃんと 花を咲かせます ぽちゃん ぽちゃん 少し遠くで 父の声が聞こえます 私は真っ赤に敷き詰められた 花の絨毯の上を 父の手を取り歩くのを 思い浮かべて ぽちゃん ぽちゃん 赤い彼岸花の先の 父から私の手を渡される その人の 夢を見て (「Flower」) ---------------------------- [自由詩]それがどうしたって言うの/チアーヌ[2007年7月17日0時50分] ここはとても静か 湖の底 体がばたばたと動く 気持ちが揺らぐ 不安で立ち上がってしまう メールを何通も打って 返事が来てまた打って あれもこれも ああ ああ そんなとき 「それがどうしたって言うの」 湖の底は とても静か どんよりとした水 何も見えない 底は泥 ---------------------------- [自由詩]掌の上に /服部 剛[2007年7月17日0時59分] テレビをつけると  瓦礫の山から掘り出され  額に血を流した中年の女が  担架から扉を開けた救急車へ  運び込まれていた  その夜  テレビの消えた部屋で  歯を磨き終えたぼくは  裸足で歩く踵の下に  なにかを踏んだ  振り向いて  屈むと  団子虫が平たくなっていた  ティッシュの上に  小さい遺骸をのせて  ふいに思う  あの 大地震の後  救出された中年の女と  潰れた団子虫と  ほんとうに  命の重さは  違うのか?  ---------------------------- [自由詩]1+1/北大路京介[2007年7月17日12時53分] 1 + 1 = I Love You 2 - 1 = I Miss You ---------------------------- [自由詩]ひととき/信天翁[2007年7月17日21時33分]     庭土が連日の梅雨で 満足げに          雑草まで育てている    庭木も梅雨の晴れ間で 満足げに       みどりの息を弾ませている        そして 生垣の隙間には   よく見ると蜘蛛の糸が張られている     重たげな高圧線のように・・・ ファイン・ガーデンと洒落込めはしない         わずか十坪の裏庭だが  それでも ひととき わたしは持てた        実存へのノスタルジァを            うすぼんやりと ---------------------------- [自由詩]サイレン/悠詩[2007年7月17日22時21分] サイレンに近づいてはならぬ そは破滅をもたらすもの そは災禍をもたらすもの 蒼き焔の説法 歌声がいかに甘美であろうと 美しき星が時を奪うように その先には屈折した現実が 口をあけて待っておろう 胸の隙間に入り込んだ黒の衝動は 強靭な意志で絶たねばならぬ かりに叫びを上げようものなら サ  イ   レ    ン そは破壊をもたらすもの そは災禍をもたらすもの 忘るるなかれ サイレンに近づいてはならぬ 沈黙をまとい 身を沈める笛は 突然に哭く そは輝かしき凶星 そは艶かしき呪詛 もしサイレンに応えるだけの 智慧と勇気があらば 汚穢に身を委ねるがごとく 突き立てられた剣の血を浴びよ もしサイレンを凝視するだけの 覚悟と憐憫があらば 天に祈りを捧げるがごとく とこしえの語り部となれ 禍々しきサイレンより 目を背けんとして かりに瞼の裏に 紅き焔の説法が浮かばば サ  イ   レ    ン そは慈悲をもたらすもの そは純愛をもたらすもの 忘るるなかれ サイレンを消してはならぬ ---------------------------- [自由詩]赤子のやうに/秋桜[2007年7月20日19時22分] 思いっきり泣くと スッキリするらしい だが スッキリする前に疲れてしまう そんなときはお眠りなさい 涙と共に流した 大切なモノを 夢の世界で掴みなさい 誰もがそこでは 子どもになれる 誰もがそこでは 素直になれる ほら 朝になれば 腫れぼったい顔と 晴れ晴れとした世界が 君を迎えてくれるから ---------------------------- [自由詩]わたしを束ねてください/るるりら[2007年7月20日22時52分] わたしを束ねてください かなしみに もれなくついてくる ささやかな希望と 私とを束ねてください わたしが集めたささやかな希望を あなたの手で束ねてください いい匂いのする稲穂と 私とを束ねてください 金色の光の矢と私とを束ねてください 大地と私を束ねてください あなたと私を束ねてください 鳥のかそけき話し声と 私をたばねてください あれらを 私の遠くに やらないで 私の塒(ねぐら)に  悲しい自由の歌なんぞをもちこまないで 薔薇の茨でなら なおいい その棘で 私を束ねて ここに居させて ちいさなちいさな ほんとうの声を 聞いてくれた ほんとうを嗅ぎ取ろうとした  あなた あなたと わたしを 束ねて 強く強く 束ねてください そうすると わたしは、空にむかって大地にむかって花にむかって 貨幣にむかって 人々にむかって いつまでもいつまでも 言って聞かせてやるのです わたしは いつも あたたかいんだいうことだけを 言いつづけてやるのです ---------------------------- [自由詩]星を探していた/ぽえむ君[2007年7月20日23時21分] 大人になんてなりたくないと 思った時から ずっと星を探していた 将来への自信と 可能性への期待に満ち溢れて 星は必ず見つかるものと 全ての人に全ての星があると それが当然だと思っていた 星はいくらでも輝いていた 人の数よりも 星の数の方が多いのだろう だから 星を探していた 疲れというものを 知るようになり 星を探さなくなった その時から 自分に光がなくなっていることを ようやく知った ---------------------------- [自由詩]恋文/maynard[2007年7月20日23時34分] 君がどう感じているのか 教えてくれよ 俺がどう感じているのか 察してくれよ 都合ばかり先行してしまいがちだけど 救済や慰めなんて要らないんだ ただ単に君がどう思っているか それだけが重要さ 妥協なんていらないよ 逃げなんていらないよ 弱さなんていらないよ 強くあって欲しいんだ 強さだけ求めていて欲しいんだ その強さでより良いものを求めて欲しいんだ 分かるかな? ホントの事だけに素直にいて欲しいんだ 君の目が曇らなければ 本望な人間がいる事を知って欲しいんだ だから求めた物の真意が伝わるよう 俺の見てくれが君を惑わしてしまわないよう 俺はマスクを被るから 君はその中身だけを手探りで探っていてくれればいい そうすれば曇らないで雨も降らないで 君の目が澄んでいてくれるから 青空な様な まるで晴天の太陽の様な 輝きがいつまでも続きますよう 影ながら願っております あっけらかんとした まるでゼロを模したような 無垢で純粋な美しさが続きますよう 毎日お祈りしております ---------------------------- [自由詩]グラデーション/悠詩[2007年7月21日0時06分] 手作りの街並みは 連続的な曲率を忘れてしまっている その中に欲しいものはなく わたしは 資格参考書と 一握りの雨粒と 友人にお裾分けしてもらった溜め息の入った 鞄を提げて 求めたいものはないから 求めることもなく 中途半端に湿った安心を引きずって 闇夜に足音を刻む 刻む? わたしが世界を疎外し     世界に疎外されているのに? (して/されて)いるから 認めさせるひとなんていない それに失望するほどわたしは 青くなんかなくて その色に失望を感じないほど わたしは 交差点にふたつの赤信号が佇み 投げやりにわたしを見る 仲たがいしている青信号は 誇らしげに平行線の彼方を眺めて 歩道橋は青信号と仲良し 苛立たしいほどにわたしを挑発している 悔しかったのでそれを背景に縛りつけ ハイライトで輪郭をぼかしてやった 鞄から溜め息が漏れる 赤い目と対峙 足音は刻まない 刻まない? 刻めない? ヘッドライトもテールライトも なりを潜めているのに? 目の前を音速ステルス機が横切るかもしれないから わたしは意識のないまま わたしは世界から見られないまま 刹那にして透明になるかもしれないから  +   + すこやかな意志が掟を決めるのなら それは脆弱で流動的で 足を踏み出す無感動な勇気と 足を竦める真剣な迷いの間に 幅ゼロの直線なんて存在するだろうか 指先でなぞった物差しに 違和感を覚えたところで それがおとなびたあのひとや 無邪気なあのコと同じであることは決してなく 重ね塗り わたしの小さくも恭しい迷いは 曲率を忘れた夜にいない大勢のひとたちの 重ね塗り の中に漂っている 平行線の中に 曲率を伴った曲線が うねって あるいは渦を巻いて あるいはユークリッド平面を飛び出して あるいは時間変化をして でも絶対に連続である      連続でなければならない曲線が 無意識に作り出した曲線が 信頼すべきわたしの曲線が わたしを待っている  +   + 眠たそうな赤信号 それは わたしの灯した色 仲違いしていた信号が赤になる わたしの灯した信号が青になる 瑞々しく流動的な曲率の白線を渡って わたしはこの世界に帰ってきた 遠くに団欒の明かりが見える どれひとつとして 楽しみも悲しみも 同じものはない 分かり合えない楽しみも悲しみも きっと ---------------------------- [自由詩]出来るのなら/乱太郎[2007年10月21日20時49分] あなたが感じた その美しさを 僕の手のひらで触れることが出来るのなら あなたが感じた その痛みを 僕の右足で蹴ることが出来るのなら あなたが感じた その優しさを 僕の頬がさすることが出来るのなら あなたが感じた 悲しみを 僕の片方の耳で聞くことが出来るのなら 僕はあなたになって 感じるのだろう そして 知るのだろう あなたの深い絶望を 暗闇に落ちた小さな星を あなたは 僕を必要としていないのかもしれない あなたは僕を直視することはないから 無機質な眼差しが 彷徨っているだけだから 無意味な今日を生きるために 僕も あなたを必要としていない そこにいたから 温もりのある眼差しは 偽善でしかない あなたとともに 無意味な今日を生きたいから 出来るのなら あなたの星を拾ってみたい あなたと 明日を見てみたいから ---------------------------- [自由詩]夕焼け裁判/umineko[2007年10月22日1時14分] あなた あなたは夕焼けの罪で 無期限に 私の記憶から 逃げ出すことは出来ません あなた 私の胸に 秘密を差し入れた 私はあの日どうかしていた いえ それはあなたもきっとそう ことば以外が行き来する 許されて? 判決 あなたは夕焼けの罪で 今すぐ 逢いに来るように   ---------------------------- [自由詩]矛盾/ライチ[2007年10月22日12時09分] 恋 矛盾 愛 矛盾 切 矛盾 願 矛盾 祈 矛盾 心 矛盾 希 矛盾 望 矛盾 あなたの幸せを願っているのに あなたを求めてしまう アタシは如何しようもない 矛盾だらけの生き物です ---------------------------- [自由詩]輪郭、その曖昧な、/望月 ゆき[2007年10月22日15時04分] 現在という塊の中から わたしの輪郭だけを残して、わたしが 蒸発していく 夕暮れの空は赤く発光し、届かない高さで じっとして居る いったい、わたしは何に忘れられたのだろう 浮遊するわたしを 秋がついばみ 指先から徐々にほつれはじめる 風が吹いて、やがて  わたしの輪郭が住む、あの部屋の屋根を越えて 降りつもる金木犀に、重なって眠る 幼い日の、記憶 透明なわたしに、午後はいつもやさしい 西からの引力が 窓に反響して わたしを震わす 祈りにも似たその声と 時間の歪(ひず)み それだけがわたしを助け 地面とわたしとをつなぐ、蝶番(ちょうつがい)となる 歳月は茶褐色にめぐり 夜と朝を、 今日と明日を、 忘却と記憶を、それから  輪郭とわたしを、縫合する ぬるい湯につかりながら、まだ傷むその箇所に手をあて 目を閉じる 長い間、 主(あるじ)を亡くしていた輪郭の線は ひどく曖昧で 内側のわたしは ともすれば 外側にもなり得るのだと知る 瑞々しい秋光の中で、それは 幸せと不幸せの境界線と、よく似ている ---------------------------- (ファイルの終わり)