Wasabi のアオゾラ誤爆さんおすすめリスト 2007年8月17日22時42分から2016年4月3日23時47分まで ---------------------------- [自由詩]肺をみたす(水葬)/アオゾラ誤爆[2007年8月17日22時42分] 水中ではうたもうたえない だけど泣いたってわからない ささやかなゆれはわたしの体温になって さかなたちの集うよるがくれば ふやけた指先からあふれていく あらゆる目線の延長上には おなじだけの朝をまつ手段がうかんでいる 手にとれるおもさの限界で ひろいきれなかったきみの成分は ゆったりとした波の中で つぎ足すことのできない、ゆいいつの幸せのかたち さみしいと口にすれば 心臓はうごくのをやめて この柔らかなくちびるからは 生ぬるい海水が浸入(はい)りこむ だまったまま水底に沈んだら ひかりもやみもとおくなって だれかの声がこだまする ねえ、きみ 息継ぎのやりかたを ずっとおしえてくれなかった ---------------------------- [自由詩]神さまとさよならする日/アオゾラ誤爆[2007年12月20日19時31分] ひとつひとつに 名前なんてなかった きみだけが知っていた 美しい世界 神さま ねえだから きみは神さま みんながうまれたときに さいしょに泣いてくれたのは きみだったな あわくするどいめの奥が 語りかけていた 青さを おもいだすことができるよ たった今のことみたいに 声や 温度も よわさも強さもなめらかさもかなしさも やさしさも どうして泣きたくなるのって 聞くたびに確認する この星も あの空も おなじように青いってこと きみの心臓 のような あお 止まることのない 時間の源泉 わたしは きみがつくってくれた 脈打つ宝石をかかえこんで ねむれないよ とても震えていて ねむれない わたし 眠れない ねむりたくない まだみていたくて 自転を感じたくて なんだかとても苦しい あらゆる角度から花を愛でて いろんな国の呼吸をしたい まぼろし に、似た きみのこえに 抱きしめられていたい 嘘よりも 真実をしることがこわいなんて わがままだなあ わたし きれいなものが好きだから 殴られてしまいたいな そらに うみに とりたちに きみという存在に 溺れてしまいたかったなあ 手をぎゅっとしてみて 流れていくのは 宇宙だ ねえ はじめからあのなみだの味を わかっていた 気がするよ ぜいたくなじかんを食べて 消えないで わらっていた気がするよ 今日も たしか昨日もきっとあしただって 生きている あおさのなかで 痛いほどだよ 超えられて おいつけなくて すり傷から血がでてしまう ねえ てのひらで覆えるくらい かためた気もち 凍った息も しらないひとに届くんだろうか まぶたのうらは赤くて それを醒ますのが涙なら 正しさってどこにあるかな むかしから 呼ばれていたのは きみ、 きみは神さまだから ぜんぶぜんぶ見抜いていて わたしは 今から どこへゆこう ---------------------------- [自由詩]メーデー/アオゾラ誤爆[2008年5月1日22時09分] ほどけてしまいそうな 女の子のからだから 春をとり出してならべる つみぶかい瞳が まだそこにおよいでいる 名前の知らない五月の旗 活字から顔をあげて だれをみる 外をみた 窓の …… がらんどうの空に鳴く おちないつばさで昼を裂く 校庭のにおい さかなが つばさをもたないさかなが はためきながらそのすがたをみている 遠くへ、 とんでいく鳥たち 男の子は 女の子がすきで 女の子は 男の子になりたかった ---------------------------- [自由詩]破瓜は絞首に似ている/アオゾラ誤爆[2009年1月4日2時31分] きみはひどく咳き込み すぐに踞った 今日は風がつよいね 手をつないで 髪を なでた すきだよ あまく 湿った声は遠く いつも おびえているみたいだった 名前を呼ぶのも 思いを確かめ合うのにも いつも同じかたさで 胸をひっかかれて いるんだ そしてわたしは凍る 鉄棒のように つめたくなって 転んでしまいそうになる だからもっと ちゃんと 手をひいて そばに あ、 そこにいる なにかべつの いきものが わたしと、 ここにいて とけて しまいそうで うずく あ、 ふれて ふれあって いるね ねえきみ、 出来るだけ 丁寧なしぐさがいい ぼんやりとしたイメージよりも 痛いくらいの現実を見せて この視線を合わすなら やさしいでしょう ここにある 唯一は なんだろう 限りなくしずかにある 地平線の円みを 体感するふたつの核 くすぐったくて 泣きたくなるけど 笑顔をつくって 息をもらした すきだよ って 言えないから こぼれそうになってしまうね いますぐにでも 心臓から背骨から なにか わたしのようなものが―― 洗われていくような 細やかな質感が 表面でゆれている あふれそうになって そのたび 胸の奥をつんと刺す ほら いまも感じているよ だっておそろしいくらいに いつだってまぶしいんだ きみは 濁りのない 水のようなすべらかな温もり そっと指先で叩くと きみの顔がぼろぼろと崩れた 小さくふるえ 波立って ゆっくりと浅くなる ここの均衡を保つのに わたしはまた泣かなくては いけないだろうか 底が、 もっと深くなる 育つに連れて 届かなくなる その 切っ先で頬を撫でたら 駆け出してしまいたくなるよ こんなに近くに 重ねているから 引力みたいなんだっだ こんなにも生々しく ひびいていて すこし切ない 滲み出る血のにおいに 鳥肌が立つけれど あふれさせてしまわないで どうか 世界でいちばんあたたかな 動物になって眠れ 冬は寒いから そっと寄せ合う呼吸がいとしい 何よりも 接しているという感覚が たしかで すき だいすきだいすきだいすき すきなんだ あらゆる苦みや、痛みを 飲み込む覚悟をきちんと済ませて それから融け合うのがいいね なんて冗談で笑ったそれは 嘘なんかじゃなかったけど だまっている 上昇と停滞を くりかえして もういっぱいだ いっぱいになってしまうんだ わたしは かすかに ふれるだけの合図を どれほど感じているのだろうか やさしく、 傷口に 飽和するのを待っているよ それはとても透明な希望 やわらかで ――水の音がしている まぶしい 春の庭に ころがっているような 微弱な反応を見せる きみ 想像もしていなくて 短距離走が苦手だった頃に 戻ったような思いがして 胃や胸が熱くなるのを 感じている 窒息 のような刺激で きつく、しめられ、ほどかれて 白熱灯の熱さでもって きみを食べて しまう わたしが がまんして 痛いのを 息を止めてくちびるを かんで 爪を、 立ててもいいよ すきだから ねえ すきだよ 平らになった湖面を 破く寸前でふるえている きみはためらいがちに 息を吐いた 静かに目を伏せるけど わたしはすべてを知っている みたいだ 壊していいのだろうか ---------------------------- [自由詩]逢瀬/アオゾラ誤爆[2009年1月17日0時18分] 非常階段で待ち合わせ そんな滑稽さでもって 世界から逃げている きみとわたし 日中の駐車場で 眩しいくらいに飛ばされた 二人の立体感が 遠い ふれている間だけ 呼吸するのを諦めている 細胞ひとつ手にとって きみは笑って こわしてくれるね ---------------------------- [自由詩]It was a girl that can meet a brilliant world anyt.../アオゾラ誤爆[2010年4月17日21時30分] 神さまがいたらなんて考えない だってあたしは昔から 先生に嫌われていたから そういうことなんだろうね 笑いたいわけじゃなくて 泣きたくないんだって 気づいたとき あなたのことを好きなんじゃなくて ほかのひとを嫌いなだけなんだって 気づいた 星を探すために空を 見上げることなんてしない そこらじゅうが 見違えるようにきれいになったら 私はもっと汚くなる ---------------------------- [自由詩]二十一歳/アオゾラ誤爆[2014年4月20日2時27分] いつもの窓からは 光が差している 塗装の剥げた電車が転げている 昼すぎに、森の気配は いくつかの季節を巡る まだ青い瞳で 私は階段を昇っていく となりの部屋の人たちの 笑い声がする 後輩は 煙草の匂いがする いつものやり方でノートを開く きっと賑わう時間が 途方もなく積み重なった 私はここを手放すのだ 思い出せなくなるのは こわいだろう やっとの思いで かたい、固い殻を割ると 水のように清潔な心は 私の手から逃げてしまった おそらくもっと 低い方へ 流れて 均されていく 熱のない春に 花の名前を ひとつ忘れて 私は誰に会いにゆけばいいんだろう ---------------------------- [自由詩]destination/アオゾラ誤爆[2016年4月3日23時47分] おもい鉄の扉を 押した 瞬間にまなざしが交差する 待ち合わせには慣れている ここはもう寒くないよ 暗がりにふさわしく目を開いて ひとびとの騒めきを聞いている 楽しいのは 誰もいない世界のようだということで 永遠に歩き続けることも できそうだ あたたかい場所へ 言葉へ あるいは身体へ 糸のように簡単にほどけない 愛 その曲線 時に迷うこと 流れる川をたどる ここにある目印にはきっと帰れないから なくしても大丈夫って言って 夜に 電車を降りて つよい雨が降っていても平気だった 窓を打つ水の光 知っている また春になった わたしたちは季節を嗅ぎ分けて どこまでもいく どこまでも ---------------------------- (ファイルの終わり)