北大路京介のおすすめリスト 2016年8月13日15時40分から2016年9月20日20時44分まで ---------------------------- [自由詩]母音響き愛(改訂)/ひだかたけし[2016年8月13日15時40分] わたし は わたし あなた は あなた 日常言語は区別する 自他を区別し対象指示する、 この繋がっているからこそ反発し合う世界を      〇 わァたァしィ はァ わァたァしィ あァなァたァ はァ あァなァたァ   アアイ ア アアイ   アアア ア アアア 残響はすべからく母音五音に開かれ 自他浸透し繋がり合う、矛盾なく反発なく 響き母音の言葉たち      ああい    ああ あ あい      ああい      あああ    あい あ ああ      あああ      〇 母音木霊は私を保ち 私の中であなたは体験され あなたの中でわたしは体験され わたしはあなた あなたはわたし ああいああああ あああああああ       愛 響き母音の言葉 光り輝き 宇宙に充ち旋回し開かれ続ける  歌う、歌う交わりは創造シ。                              ---------------------------- [自由詩]魔法/吉岡ペペロ[2016年8月13日19時07分] 月が地球の影で 欠けているように見える 地球に住むぼくには それあまりにもは遠い実感だ 命も宇宙もスケールが大きすぎるから じぶんが世界に どんな影響を与えているかが分からない 永遠の命、がテーマとして成立していた あの頃はもう来ない ぼくらは希望に殉ずるには傷つきすぎた 月が地球の影で 欠けているように見える 地球に住むぼくには それあまりにもは遠い実感だ 命も宇宙もスケールが大きすぎるから じぶんが世界に どんな影響を与えているかが分からない ---------------------------- [自由詩]同じ声、同じ部屋/あおば[2016年8月14日21時38分]            160814 それはラップと違うんでねえのの声を聞き レゲエの方がの声を聞き 義太夫は迷っているよ 迷っている三四郎 ストレーシープの美彌子に恋をして お池にはまってどんぶらこ ぼっちゃんご機嫌いかがかなと 戦争を讃える詩人達の喝采を聞きたくないが 聞こえるんだからしかたない ラップのように レゲエのように と気分良く 終戦時の我が家のラジオ環境を調べている 暗いところで本を読み過ぎて強い近視になって 眼鏡を一生手放せなかった母が 終戦の詔勅がよくわからなかったとの声に それはラジオの問題で理解力の問題以前に 音が悪かったんじゃねえのと 幼年時に砂場で砂鉄集めに使用していた馬蹄形磁石 懐かしの並四ラジオに使われていた奴だが 天井裏で先日発見、ついでに古い真空管や部品も発見 http://members.jcom.home.ne.jp/aoba/160814/parts.jpg 中学生の頃に兄から譲り受けた懐かしい代物が今でも残っていたなんて なんて素敵なというよりも厄介なことかもしれないなと 安物のメロンと共に古物パーツと万能LCRメーター(中国製品) http://members.jcom.home.ne.jp/aoba/160814/LCR340.jpg を袋にぶら下げて 兄を訪ねてほいさっさ 喉越しの好いシャーベットをスプーンに乗せて 兄は懐かしさと当惑したような遠くを見る目つきでよく残っていたなというばかり 昔のラジオ少年も今では少年では無くなって 珍しい鳥の姿に目を細めたりしているようだ 兄が初めてラジオパーツを購入したのは現在でいうと 渋谷駅近くの西部渋谷店辺りの露店からとのことで (ということは井の頭通りということになるが、もしかしたら例の世界的に有名なスクランブル交差点の東方ではなかろうかとの疑問も生じたが、今と昔とはあまりにも街の密度が違う、同じなのは道路くらいかもね) 神田や秋葉原では無かった 秋葉原を訪ねたのは高校生の頃からだという 吉祥寺にはラジオ部品を商う店は無かったこともわかった その辺のところは、谷川俊太郎あたりに聞かないとわからなくなる恐れもある なと 元ラジオ少年の顔を頭に浮かべ、私にはそれを尋ねるチャンスは無いだろうなとも思う 彼は元気だが多忙だから、古いラジオにかまけている時間は無いだろうと想像する ほととぎす聞かばや同じ声やしたるとのご返事に すぐさま駆け寄り とことこと兄の家に向かうと 以上の顛末 結局、我が家のラジオは、並四だか高1だか判らない まさかスーパーのはずはないしねと 私が遊んだ馬蹄形磁石は並四に使われていたから 並四かもしれない しかし、兄が露店で買った可能性もあるが その本人も覚えていないから 結局、可能性としては並四だろうと結論づけた 1945年4月日本電気製造の0.5マイクロファラッド/耐圧1000ボルトのペーパーコンデンサーは生きていた 万能LCRメーターでの測定値は0.4894μF 絶縁抵抗値20.1MΩとやや悪いが使えるだろうと、5級スーパー改造オーディオアンプで http://members.jcom.home.ne.jp/aoba/160814/5s.jpg 高圧279ボルトでの耐圧テストする http://members.jcom.home.ne.jp/aoba/160814/279V.jpg 漏洩電流値は約5μA 用途にもよるが使えるだろうと結論づけた 整流管12Fは完全に使えるようで、今も彼の整流した電流で鳴るラジオの音がここまで聞こえる 天気予報に東京はところにより雷とかよくわからないことをいう もうじきリオデジャネイロオリンピックの歓声を伝えるはずだ 早く書き終えてアップして大河ドラマ、真田丸を見たいのだ、 その前に夕食もしなくては なんと忙しいとかこっても自業自得 人生判ったような判らないことばかり、暑い曇り空も続く模様 マレー選手に敗れた錦織選手、惜しいチャンスを逃したなと 人ごとだから軽く言う私に向かって同じ声 俺は何様、安物の並四ラジオさと12Fのプレートが微かに震え  何処の部屋でも同じ声で鳴るのがラジオの務めとフィラメントも頷いた 初出「即興ゴルコンダ(仮)」 http://golconda.bbs.fc2.com/ タイトルは、洗剤奴さん ---------------------------- [自由詩]詩酔い/葉月 祐[2016年8月19日15時51分] 言葉と言葉同士を繋げた 未知の世界への扉が 目の前に 数えきれない程 並んでいる 片っ端から開けてみれば 知らない街の匂いがしたり 見た事も無い景色に息を呑んだり 深い七色の森の中に出たり 感じた事の無い心の海に溺れたり 懐かしい自分と遭遇したり どこから扉を開けても 驚きや感動は 尽きる事無く 時間も忘れてしまう程 各々の世界に 入り浸ってしまう   まるで   自分には描けない   その人自身の絵を   見ている様だ   それは   自分には奏でられない   その人だけの音楽を   聴いている様でもある   時には   私の心を揺さぶり   笑い転げる事もあれば   涙し、言葉が出ない事もあり   私の中にも   そんな言葉があったなら―――と   思わずにはいられなかったし   羨まずにはいられなかった 強烈な夕焼けの光で 黒髪が赤く染まる様に 透明な水溜まりに 傘の色がそのまま移る様に 何かの影響を受けて変わっていく そんな言葉も あるのかもしれない 一度出逢ってしまえば 言葉の持つ引力に強く惹かれて ハッと気付けばのめり込んでいる 色とりどりの言葉の中に浮かびながら 私は醒めない酔いの海を漂い続けている 詩に酔い 言葉の煌めきや熱に 心奪われながら 声に出来ない思いが溢れた ―――なんとすてきなかんかくだろう――― この先も酔いは 醒める事は無いだろう どうか二度と醒めません様にと 願わずにはいられない どんな酒より愉しく酔えるものに 私は出逢ってしまったらしい ---------------------------- [自由詩]アリスの夢/梅昆布茶[2016年8月20日23時10分] 運命は変えられるの? アリスは尋ねる 運命なんてありはしないさ きみが夢のなかで存在するように 偏在する夢が現在という一点に 結ぶ露のようなものが人生らしいんだが アリスは頷くと白兎とともに舞台の袖へ退く また不思議な夢の続きを永遠の子供達に伝道する使命に萠えて アリスに故郷があるように僕にもある筈の何かが解らなくて エンディングロールに答えを捜す 昔は夢だけでも結構2,3年は生きてゆけたものだが いまはブレードランナーのように日々を費やす愚か者 夢のなかで心理テストを繰り返す 新宿歌舞伎町の夜のように底なしの淵に立ってるみたいに 僕の人生はドライブレコーダーと保険で保証され 安い女と連れ子4人と古いオーディオシステムと ときどきの新しい地平線で構成されている 論理的解答は数理のなかにあって 文学的解答はあまりに広汎ではてしなく 解をもとめる必要性もなくて ランヴォーのの燃え盛る詩編と 僕のつまらない短詩を比較しようもないが いつも通りアリスに逢いに行く いつも通りに ---------------------------- [自由詩]夜のスーパーマリオ/あおば[2016年8月24日9時59分]            160824 昨夜安部首相がマリオの姿で土管から顔を出し 鞍馬から牛若丸が出でましてと落語の台詞を言ったとか それを聞いたマリオは怒ること怒ること 新しい知事さんも贅沢は(素)敵ですと首相の扮したマリオに詰め寄る 一円でも節約して、リオよりもメダルの数を増やすのだと アベノミクスを否定するような指令を出したから堪りません お米が余り、生徒さんの給食の主食はすべてお米とする アメリカの押しつけた小麦よさらば グルテンフリーで頭の良い子に育てましょう 夜の深夜便にダイアルを回すと、ニュースが始まっているがその前には 一寸面白い話題があってマリオも聞きたいだろう 宮沢賢治の春と修羅には、修羅は樹林に交響しとあるが、 シンフォニーを交響曲と訳したのはかの森鴎外、それをちゃっかり動詞化したのさ それに賢治は大の音楽好きで、花巻はレコードがよく売れるといわれたくらい 買い漁ったとも聞く 農学校を辞職したときにもレコードコンサートを開催したともいう そんなことを話しているから賢治も聞いたであろう田園交響曲が聞こえるかなと 予想したら 果たして1923年録音レコードが流れ出す スクラッチノイズもうまくデジタル処理しているから そんなに聞き辛くないが、流石にぼやけた感は否めない 私が組み立てたばかりの、ドイツ生まれのイギリス製のDA30真空管アンプでその音楽をスピーカーで聞いたのだ 時代的には10年くらいしか変わらないのだから当時の人も聞いたであろう マリオは影も形も無い頃だから、70年後に生まれたマリオは交響しを ゲーム機の仲間と交響して遊んでいるのだから テレビみたいなブラウン管を見つめて、蜜豆を注文したりして 夜の更けるのも忘れていた君たちと交響し リオデジャネイロはおいらの古里と土管に隠れていられなくなり 田園交響曲が流れるやいなや顔を出して腰蓑一丁、裸で踊り出す 顔を面白く塗りたくったお祭りの装束を思い出せ お祭りが大好きな ホモサピエンスは汗をかけるから密林からサバンナに進出し 肉食獣の食べ残したお余りの肉や骨の髄を頂戴し動物性タンパク質を摂取して 頭を鍛えて 北方に進出して集団行動が苦手な前頭葉が未発達なネアンデルタール人を駆逐した それは150人がSNSのお友達の数の限度ですという台詞にも現れる マリオも分かるだろう それ以上だと、誰だか分からない人が続出して、実感を持ってのイメージできないのに クリントン氏に投票する人たちはどこまで実感しているのだろうか ブラウン管の中のマリオは考えるが土管の首相はなにを考えているのか分からない 分からないことを分かるように説明するのも難しい 春と修羅を読んで檜の花粉で嚔したのをきっかけに 自民党総裁になろうと考えている君は マリオの足下にも及ばない音痴だ ベートーベンの作曲したシンフォニーを一晩中聞き通せ マリオは隣に座って踊れ 土管に隠れている君たちは置いてけ堀に流されろ アメリカ大統領選挙は益々混迷を極め、マリオも憂いでいるが それならば 春と修羅を読みながらシンフォニーをもう一度聞きましょう トランプ占いはお仕舞いにして早く寝ろとの内なる声と マリオの(^_^)が交響しどこへゆくのか分からない 初出「即興ゴルコンダ(仮)」 http://golconda.bbs.fc2.com/ タイトルは、みずけーさん ---------------------------- [自由詩]嵐の後に/ひだかたけし[2016年8月25日19時48分] 三角が貫入する、  静けさの皮膜に包まれ わたしの意識は落ち着き払い、  自らの不均衡を捉える 薄黄色の光芒、横断する斜線  揺れる葉の緑に私は内側から語りかけた   [もう充分生きたよな]   [未だ燃え立つものがある] 成長、開花、衰弱、死滅、  そしてー 存在は変容し続け わたしは温かな抱擁の余韻に浸る  暫し束の間、前に進む力蓄え ---------------------------- [自由詩]Sea (断片)/水星まいあ[2016年8月27日10時44分] 呼応する 今朝見たシリアルのコンテイナーよりも 深く 囚われた私は 招かれるままに身を委ねる がらすは 硝子のようなそれは きらめいて、時に泳ぐもの達を展示する ああ わたしも一層 自由を感じながら陳列されれば…… ---------------------------- [自由詩]vision.10/ひだかたけし[2016年8月27日11時55分] 夕暮れとも夜明け前ともつかない薄暗さのなか 元実家近くの空き地の脇を通り過ぎようとした時 焦げ茶色の雲が空き地のすぐ上に浮かび揺れていた 静まり返った薄暗闇に浮かぶその雲は 眼を凝らしてよく見ると 無数の糸状のモノが絡まり錯綜して形を成し それらがそれぞれの響きを発し その響きには独自の音階があった 空き地の薄暗闇に浮かぶ雲  焦げ茶色にくすみ 薄暗闇の沈黙に浮かぶ雲  無数の糸状のモノの絡まり 沈黙の静けさに浮かぶ雲  響き無数の音階を伴い 静けさの時流に浮かぶ雲  細かく振動し震え 夢のなか 覚醒した意識の視界に浮かぶ雲 入り乱れていた響きの音階は次第に    ドソ ドソ ドソ     ぉお ぉお ぉお      ドソ ドソ ドソ    ぉお ぉお ぉお 界から界へと呼び掛ける音楽音声とナリ 律動し始める ---------------------------- [自由詩]生きる〇死ぬ/ひだかたけし[2016年8月28日20時44分] 沈黙の言葉が語りかける  響き ヒビキ 響き 歩道に落ちた蝉の死骸が語りかける   [生きワタシの命はバトンされタ] 叫びもなく怒りもなく耽溺もなく  只愉しみ求め交わり苦しみ 生き生きと調和の内に生き抜き 沈黙の言葉が語りかける  響き 響 響き 仰向けの蝉の死骸が語りかける   [生の意味観念は初めから堪忍してヤ] 秋風を聴いた、今日。   ---------------------------- [自由詩]太陽よ人々よ/ひだかたけし[2016年8月30日20時02分] 太陽よ、 絶え間無く爆発し続ける太陽よ この地球の善も悪も曖昧も 均等に照らし出す太陽よ その偉大な開け透けの愛 その圧倒的で広大なる愛 どうしたら この私的感情の波を あなたに合流させられる? 無尽蔵の爆発が尽きる頃 独り人は孤立無援でも あなたを受け容れ認識し 意識を明晰に保ち 善の領域に受胎できるか 繋がりながら繋がりながら 教えてくれ この病み行き詰まった魂に もう俺はぎりぎりなんだ 理解したならば、 私は躊躇なくこの身を捧げるだろう あなたに、人々に、宇宙に。 ---------------------------- [自由詩]白紙の季節/ゴースト(無月野青馬)[2016年8月31日19時31分] 何を求めていたのか 何を探していたのか 見えない 自分自身も見えない 詩に何かを求めたことが 間違いだったんじゃないか そういう風にも考えた 詩を好きだったから 見えなくなったんじゃないか そういう風にも考えた それに そもそも はじめから 本当は 何も求めていなかったし 何も探していなかったんじゃないか そういう風にも考えた 「風」は どこから来て どこへ行くのか 見えない そして ここは 途中 広いような狭いような 白いような黒いような そういう 途中 もしくは 白紙 そういうことは分かる 途中 で 考えることは山のよう そうして 考えていると 白紙 も だんだんと また 色付いていく 白紙の季節だった それは必要なものだった   自分自身を探す途中だった ---------------------------- [自由詩]天然/Lucy[2016年9月1日12時16分] 自販機で水を買う 百円の小ぶりのペットボトル 冷房の効いた車輌を待ちながら 冷たい水を飲む 汗が額から頬へ伝い 顎で雫となって 滴る あたたかい風が吹き抜ける ホームの日陰で 私は息を吹き返す ペットボトルに 「天然水」と書いてある ラベルには高山の写真 深い谷川を流れ下る澄んだ水 上流に湧き出る泉 あるいは雪解け水を連想させる (浄水場で大量の塩素に浄化された 使用済みの水ではなく・・) 天然からもう遥かに離れた暮らしの中で 「天然」という言葉が放つ 特別の光 天然ボケの私も 光れるだろうか 冷たい水が 一瞬正気に戻してくれたら 天然の言葉が 私の頭上に 夕立のように降るかしら ---------------------------- [自由詩]フィカス・ウンベラータ/高林 光[2016年9月5日11時03分] 土曜日の午後 少しけだるい空気の中で 僕の前に座る女と その後ろの大きな観葉樹 いつも小さな女の話し声が 今日はより小さく感じて 僕にはいくつかの言葉を聞き取ることができない それなりに長い間生きていると 知らないほうがいいことだってあると気づく 聞き取ることができなかった女の言葉に それほど執着しなくなったのは そのためかもしれない そんな都合のいいことを考えていると、ふと 女の後ろに立つ観葉樹のハート型をした大きな葉が 聞き耳を立ててこちらを向いているような気がして 僕が聞き逃した女の言葉たちが 観葉樹の大きな葉に吸い込まれていく もしかしたら 言葉にならなかった想いまでも すくい取ってしまうのかもしれない 決して積み上がることのない 不安定なよろこびとかなしみといらだち 身じろぎひとつしない観葉樹をただ黙って眺めていると 知らないほうがいいと思っていたことの中に本当は 僕が一番知りたかった言葉も 知らなければいけなかった想いもあったのではないかと 急に不安になりはじめた けれど もう 女の言葉たちはそこにはなくて 観葉樹の大きな葉だけがこちらを向いている ---------------------------- [自由詩]星詠み/あおば[2016年9月8日9時29分]           160904 えらくたんと釣れましたなぁー 太公望のお友達の屋根裏から お魚釣りの道具が出てきたよ といっても何十年も前の奴 平塚の浜辺でをイシモチを釣ったなぁ きらきら輝く水面をボラも跳ねていた だけど彼らは決して釣れないのさ 大物になると刺身にして捌くのだと 長靴で丸太を蹴るふりをしてから 金になるから シラスウナギをしゃくいに行くのだ 眼を異様に光らせた屈強の男達が 口出し無用と眼も眩むカンテラで 水面を照らす なにも知らないシラスは明るい方へと やってくる 一網打尽にすくい取る それが君の鰻丼の起源だ 知っていて欲しい 絶滅危惧種となった今 平塚の河に彼らが遡上することはあるのか それともないのか それが問題だ 星はなんでも知っているかは分からない 初出「即興ゴルコンダ(仮)」 http://golconda.bbs.fc2.com/ タイトルは、蜩さん ---------------------------- [自由詩]night moves /あおば[2016年9月10日14時28分]            160910 此所はどこの坂道じゃ 追分からヨドバシに向かうと 夜行バスの群れのエンジン音 残暑の夜を余計に暑くするよと 惰眠を貪る乗客達を僻目に ヨドバシカメラにフィルムを買いにゆく 今度安い店が出来たよと 友だちに教わってから何十年 丸い緑の電車道を突っ切って行くと うれしいカメラの店があるよと 歌詞を口ずさんだのも懐かしい 今でもお店はずらりと並び 一寸異様な風景に 青い眼の観光客は スマホ掲げて記念撮影している フィルムも売ってますが みんななにを買いにゆくのだろうか 僕は16年ぶりでブローニーフィルムを買う 5本入りで4900円、随分高いね 40枚で約5000円 樋口一葉さんが飛んで行く 現像代やらを考えたら 写真一枚200円かかるねと 口ずさみながら暮れゆく雑踏の中を よちよち歩むのです どこから来てどこに流されるかは分かりません 感光した光のつぶつぶがゼラチン膜の中に銀を そっと黒化させるのは知っていますが それから先は知りません シャッターを夜空に向けること2分間 星々が同心円を描き出す頃にやっと撮り終えた 終電車を気にしちゃ好い写真は撮れませんぞと ホームレスの老人が嬉しそうに語りかけるので コンビニおにぎりを分け合って食べる 今頃バスは小仏峠を抜け甲州を疾走しているだろう 乗客達は眠れているだろうか 運転士は眠らないで欲しいと願うが 彼も流れ星と渾名された若い頃があった 日は東に西に バスも東に西に 北口に向かった僕は とうとう終電車に乗り遅れ 薄暗い夜空を一晩中眺めながら 時々シャツターを切り お金の無駄遣いをしている さらばさらば一葉も逃すまいぞと 夜の秋風が耳元で囁くけど 野分の手下ではあるまいにと 誰も気にしないのも確かだ 日が差さない夜は余り風は吹かないんだよと 山仕事もしていたホームレスの老人は一口追加した なにを、決まってるじゃん、焼酎とウィスキーさ 初出「即興ゴルコンダ(仮)」 http://golconda.bbs.fc2.com/ タイトルは、さわ田マヨネさん ---------------------------- [自由詩]魂ノ行方/ひだかたけし[2016年9月11日19時39分] 失う 出会い 築いては 失い続けて 底を貫く本質 掴み取れたのか 沈んでしまうのか 進む船の舵取り主は 己が意志、病に抗う意志 沈んでしまうのなら仕方ない 精一杯やるんだ、もう一度精一杯 アカ 、 アオ 、 ムラサキ 声     故郷   響き      魂ノ 高い高い秋の天空に舞い上がれ! 高い高い秋の天空に舞い散れ! 躍り歌い交わる肉の血味わい尽くせ! この噴き上がる聖なる血潮を ---------------------------- [自由詩]荷と足/ひだかたけし[2016年9月17日12時22分] 聖なる頂きへ独り人は 己だけの荷を背負い 前のめりに一歩一歩、 あらゆる痛苦を受け容れ 寄り添う天使の気配に微笑み 螺旋階段を只ひたすら昇って行く 荷は鞭 、足は杖 天使は独り人を知悉し 死の迷路を導かれ行く、 力は独り人から溢れ出し。 ---------------------------- [自由詩]おもいで/梅昆布茶[2016年9月19日11時18分] おもいでのまちをとおりすぎて おもいでのまちにかえる おもいではとうにうせてあきのそらがひろがる なんだかかなしくてくちぶえをふいてみる おもいでのいちばではなにをうっているのだろう はつこいとかははのせなかあるいはだいすきだったかおのないにんぎょう おもいでのがいろにぼくはいなくて よそよそしいたにんのおもいでだけがとおりすぎてゆく おもいではうせてきみもいまはいない ぼくのこころはあのころにすみついたまま おもいではしょうじょのかおをして すたすたあるきさってゆくが ちょっとふりかえって にっこりわらってくれたありがとう ---------------------------- [自由詩]言 霊/ひだかたけし[2016年9月20日20時44分] 意識 溶け拡大していく 限りなく宇宙の楽音に共鳴し 混交する闇光 すべて受け入れ 委ねるのだ 保ち 鋼の強靱 しなやかな弓の強度に震え 私欲思考ヲ停止シ 死に思に詩の言葉の飛躍に! 反感から 共鳴寛容へと! 論理を一気に越え延びる声 光は爆裂しひたすら無音の意味、 開示スル瞬間の永遠を掴み取り。 ---------------------------- (ファイルの終わり)