松岡宮のおすすめリスト 2017年4月15日13時28分から2017年7月24日19時08分まで ---------------------------- [自由詩]悪夢再び/ひだかたけし[2017年4月15日13時28分] 内なる外が押し寄せて来る 外なる内が押し寄せて来る 誰もいない、繋がりはない  白い空間奥まる深夜 圧迫され窒息する 深みへ奈落へ落ちてゆく (揺れ震える肉の魂) ぬらりと赤い舌に呑み込まれ 機械工場鋼の響きの連打、連打! ゆらり迫る闇の工員 剥奪される私の自意識 空虚を埋める匿名の物、 物たちの侵入は無差別に 物物物物物物物物物物物物物 物物物物物物物物物 物物物物物物物物物物物 物物物物物物物物物物物物物物物物物物 物物物物物物物物物物物物物物物物物物物物 埋め尽くされ埋め尽くし 恐怖の裂け目開く 乾き切った舌を出し 叫んでいる、叫んでいる 誰かの口が叫んでいる! ---------------------------- [自由詩]あしあと/虹村 凌[2017年4月27日22時38分] 実は二十七歳とか三十前とかに死ぬんだと思ってたんだ 別に悪魔と契約した訳でも無いけれど 気付けばおめおめと生き延びてる事に気付いたんだ 別にそれが恥の多い生涯でも無いけど さっさと和了って死にたいと言う人たちを横目に 寄り道をしながら流れ星でも待とうと思うよ それは射精にも似た甘美な匂いでした 真夏の夕方に飲んだラムネ越し覗いた空の様な もしくは飲み過ぎてしこたま吐いた後の様な 二日ぶりに倒れ込んだよく乾いた布団の様な 薄く黄色く青白い匂いを 音を立てずに肺にしまい込む それは何の匂いかわからないけれど もしかしたら煙草をやめて良かったのかも知れない 壊れかけた鼻腔の奥にある細胞たちが 少しずつ色を取り戻し始める それでもその匂いの先は想像ができない 来年の桜はどんな色でしょうか 再来年の台風はどれほど強いでしょうか 五年後の夕立はどんな匂いでしょうか 十年後の秋はどんな音でしょうか 季節を越えるとはどんな意味でしょうか 二人で湯船に消えていけるでしょうか 今日も交差点で悪魔を探していますが 煙草をやめてしまったので 上げる狼煙がない事に気付きました あなたは見つけてくれますか あなたの匂いを辿って そちらまで ---------------------------- [自由詩]花残り月/1486 106[2017年4月29日21時41分] 脇目も振らずに走ってきたよ 余所見をしている余裕はなかった 家と会社を往復するだけの毎日 ケースに入れたままのギター 若者の音楽を受け付けなくなって 大好きな歌も歌えなくなっていた しばらく連絡を取っていなかった あの人のことを思い出したのは 病院からの電話を受けた後 いつでも会えると思っていた あの人に残された時間は僅か 気付けば三月が過ぎていた 桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど 汚く萎れてしまっても夏が来るまで咲いていてほしい 桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど 小さく萎れてしまっても秋が来るまで咲いていてほしい 久しぶりに顔を合わせたのだから 文句の一つも言えばよかったのに どうして謝ったりするんだろう 見違えるほどに痩せてしまって きっと物凄く苦しいはずなのに どうして笑ってくれたんだろう いつでも会えると思っていた あの人に会えるのはあと僅か 四月の二週目が過ぎていた 桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど 汚く萎れてしまっても冬が来るまで咲いていてほしい 桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど 小さく萎れてしまっても次の春まで咲いていてほしい 病院からの最後の電話 脇目も振らず走り出した もう一度あの人に会わなきゃ 桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど 小さく萎れてもいつまでも咲いていてほしかった 桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど それを見ることはできなかったから確かめようがないな 全てが終わって病院の駐車場 いつもは暗くて見えなかった 桜の花はずっと咲いていた 気付けば四月もあと僅か ---------------------------- [自由詩]洗いざらし/はるな[2017年4月30日8時43分] さて今日も花が咲き 往来はあざやかな灰色 卵を割る指に思いが絡まって ( ) シャツを洗い シーツを洗い くつ下を洗い はがれ落ちる自意識をかき集めてくり返し洗い 窓を拭き窓枠を拭き床を拭き 洗いざらした自意識をとりこんでアイロンをかけ 双子の卵を焼き パンを焼き かわいてしめる肌を焼く この夢は現実だ ビルが建ち バスが行き そらを鳥がすべる わたしは立ち 服をつけ いちど仰向く 一生かけて忘れようとおもう だらしなくて愛しいあなたのことは ---------------------------- [自由詩]ひかりの風/もっぷ[2017年5月4日12時16分] そとのあかるさは 風のように部屋を訪れる 異国の布の隙間からのエトランゼ 誘うように歌いながら もう春のワルツでなく 初夏、その一歩だけ手前の ひと時だけの静けさへの招待状(いざない) のように みえない世界をふと思う よろこびやかなしみを超えた そんな名のない感情が 移ろいを 淡淡と 淡々と 淡々と―― まだ私には毛布がいる/ある けれど 件の風がやわらかくひかりを ――応えるすべを思い出せない ---------------------------- [自由詩]北の桜/乱太郎[2017年5月6日18時08分] とっくに終わったよと あきれ顔で南の国に言われそうだが 待ちに待った開花だ 長かった冬に別れを告げる合図だ こんにちは 思い出を咲かせる 友よ ---------------------------- [自由詩]五月の犬/むぎのようこ[2017年5月13日18時03分] 日射しにぬるむ木蔭に焼かれた 横たわるしろい肌 くるぶしを舐める犬の舌のざらつき 渇いていく唾液とこぼれる光は すこやかにまざるばかりで手放しかたを忘れながら あたまをなぜてやる 季節は、みどりは生い茂り わたしたちは埋もれるばかりに あせばんで 鳶のように同じそらを旋回するばかりに はりつめては はぜるときを待つ種子のように 寝息をたてていた こどもたちのあそぶ声はとおく さわさわと葉に葉にささやかな ことのはをちりちりと 風に吹かせては降りそそいで おおいかぶさる影の ふちどりが 静かにもえている ---------------------------- [自由詩]十文字/坂本瞳子[2017年5月15日18時49分] 両手を広げてみる 手の平じゃない 腕を 肩を張って 手を肩の高さまで上げて 腕を水平に真っ直ぐに伸ばして 手の平は地面に向けて 身体全体で十の字になって 真っ直ぐに立ってみる 特に目的はないけれど ふらつかずに 目を見開いて 呼吸はゆっくり 息を吸ったり 息を吐いたり 気持ちを落ち着かせて ただしばらくの間 こうしたままで 立っていてみよう ---------------------------- [自由詩]途中からよくわからなくなった習作/えこ[2017年5月29日23時29分] 火の消えたタバコを自分の左手に擦り付けた それがせめてもの断罪だった 罪と知らず犯す罪は 知らずの内に他人の罪になった 償うことも 学ぶこともせず大人になった 誰にも知られず犯す罪は 知らずの内に忘れていた 罰も受けず 繰り返していた 白線の外側に爪先を踊らすあなたと 白線の内側で立ち竦むままのわたし 何が参りましょう 便利な鉄の塊か わたしが参りましたか 白線か白旗か 灰まみれの左手で白線をなぞる あなたの輪郭を描く もう 見えない ---------------------------- [自由詩]生活の粒子/葉leaf[2017年6月6日16時12分] 傾斜を下り刺し殺された命たち 多くの者は海の最果てで 多くの者は自明な住宅で この土地で地を這い工事していると 命たちが呼吸に紛れ込んでくる もはや死んだ命たちは生活の粒子 我々の生活で食われ捨てられ思い返される 駅で列車を待つ空白の一コマにも 生活の粒子は浮遊している 夥しく散華した命たちは ごく普通に我々と共に生活している そして我々の息を強め 我々の生き抜く糧となっている もはや聖でも俗でもない それらを超えた生活の粒子 我々は今もこの傷んだ大地で 失われた命たちを呼吸している ---------------------------- [自由詩]ガラス窓の向こう/「ま」の字[2017年6月10日20時52分] ガラス窓の向こうで 風が吹いている 木々の梢は風になびき 空を掃いて 葉が細々(こまごま)と翻る  くろく空裂く鳥の群れか とおい湖の 波間の影かの ごとく 音は聞こえない あれだけ葉が揺れても音が聞こえないとはどういう事かと 子どものようなことをかんがえる そうか 「こチらはすコし あタたかいか ということ は 「向かふ は サむいのでセウか? (これを益すに凶事を     もって す     ) ガラス窓の向こうは あいかわらず風が吹いている 工事現場の旗も揺れている 緑の十字 こちらでは 背を揃え考査を受けている生徒 八百八十余名 ---------------------------- [自由詩]紫陽花の坂/星丘涙[2017年6月12日18時44分] 繰り返される日々の中で 身も心もすり減ってゆく 紫陽花が咲く坂道を駆け下りる 雨色の風が頬を撫でる ここまで生きてきた どこまで行くのか わからぬまま 歩く 蛍火はなつかしく揺れ 故郷へと誘い 夢うつつに 絹の夜がわたしを包む 夏を待ちわびる歳でもない ただゆっくりと夏の訪れを眺める 校庭の隅 優しい雨に濡れ 咲いていた紫陽花 あれは はるか遠い道 故郷は何処に行ってしまったのか 帰りたい 帰れない あの故郷 今日も紫陽花の坂を下り 雨色の風に吹かれ歩いている ---------------------------- [自由詩]解体/渡辺八畳@祝儀敷[2017年6月20日19時23分] 無数にドライバーを突き刺され 美しきあなたの肉体よ 鋼鉄の逞しき肉体よ それが端から崩されていく 何百人もの工員があなたの上を這って いやらしく群がっては蠢いて そしてみずみずしい肉体を剥ぎ取っていく 指や足の肉片が 横たえるあなたよりも高く積み上がり 赤き血と粘性の重油が混じりあっては垂れる ああ、美しきあなたよ 長いまつげをぴんと張らせて 最後の時まで凛としている 肉体のいたるところに穴が開けられて 秘めたるモーターにもメスが入れられる 艶めかしく汁したたる動力よ それさえも今では取り外され がらんどうになったあなた ああ、あなた、あなた ついに頭部だけとなった 日に照らされ 鈍く反射する首の断面には 残されたボルトが傾いている ああ、あなた、あなた 崩されてもなお美しく 切り離された鉄板一枚一枚までもが艶やかで あなた、あなた 巨大な鉄球が勢いよく振り下ろされ 途方もないエネルギーがあなたに直撃する あなたの肉体は破裂するが如く一瞬で砕け散り あなたの破片は四方八方に飛散し あなたは一瞬にして消え去った もう何も語らない ああ、あなた それでも美しい ---------------------------- [自由詩]ウジ虫/間村長[2017年7月2日6時31分] ウジ虫を高い所に置くと 簡単に落ちて来る ニラレバ炒めの香りにやられて 簡単に落ちて来る トレーナーのミッキーに ウジ虫を鍛えさせた ウジ虫の多種類の筋肉を 広く短く鍛えさせた ヒキガエルが詩を歌って居る 保育園の裏庭で 草を刈って居る我ら三人には ミッキーの苦悩が分からぬ 次第に鍛えられるウジ虫 寺にも陳情して ウジ虫を鍛えて貰った みしみしみしみし みしみしみしみし 鍛えられて行くウジ虫に 木のヒーローが誕生しそうなほど 自然と共感し始めたのを 私は感じた ---------------------------- [自由詩]大雨警報/服部 剛[2017年7月5日18時55分] 灰色の街に 今日もじゃぶじゃぶ降りしきる 情報洪水の雨達 駅のホームに立つ人々は 小さな液晶画面 の上に 人さし指を滑らせる ひとり…ふたり…と 人がロボット化してゆく様を 眺める僕も、気がつけば 人さし指を滑らせる じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ じゃぶじゃぶ埋もれる僕 じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ 人よ、久しく忘れていた あの雨上がりの、小さな太陽に もう一度 ひとすじの手をのばせ   ---------------------------- [自由詩]ダウンロード・スクリプト/st[2017年7月12日4時53分] 地球のどこか遠くから 一瞬で 青空を飛び 星空を越え 風を切り  雲の中を通り やがて銅線や 光ファイバーにのり  やってくる HLSの  神秘的な宝石たちは スクリプトで集められ 美しい映像と音楽になる たった14行の 驚異の文字の集まりは PC上で動作をはじめる  var objIE = new ActiveXObject ('InternetExplorer.Application'); objIE.Navigate ('about:blank'); while (objIE.Busy) WScript.Sleep (10); var _textarea = objIE.document.createElement ("textarea"); objIE.document.body.appendChild (_textarea); _textarea.focus (); _textarea.innerText = ""; objIE.execWB (13, 0); var strUrl = _textarea.innerText; objIE.Quit (); var wsh = new ActiveXObject("WScript.Shell"); var cmdtxt = "ffmpeg.exe -i " + strUrl + " -c copy output.avi"; WScript.Echo( cmdtxt ); wsh.run(cmdtxt,1,true); wsh.run---ダウンロードがはじまり 連続して実行されるステートメントは DOS コマンドプロンプトに表示されはじめ 起動されたメディアプレーヤーが再生する   数々の物語りや音楽は 今この時も 地球のどこか遠くから 一瞬で 青空を飛び 星空を越え 風を切り  雲の中を通り やがて銅線や 光ファイバーにのり   やってくる ---------------------------- [自由詩]雪/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月13日20時56分] 雪は音を吸い 空間は静寂する 踏まれた雪は含んでいた音を漏らし ぐもっ ぐもっ ぐもっ と音をたてる 雪は彩度を吸い 空は鈍色になる 彩度を吸った雪は重くなり 空から落ち 地を白く染める 音は無く 空は濁る 山の斎場からは煙が一本 すーっとまっすぐに昇っていた ---------------------------- [自由詩]夏の朝/葉leaf[2017年7月15日10時51分] 太陽がまだ昇りきらない 鈍い光の中 近所の大きな公園を散歩する 芝生は朝露に濡れて 紫陽花はしとやかに 私はひもを引っ張るように 快楽と安寧を手繰り寄せる 公園にあるものはすべて美しい ベンチも他の散歩者も 何もかもが美しいいっとき 私には感傷が訪れる 社会人になってからこのかた 嫌なことが星の数ほどあったな ---------------------------- [自由詩]折り紙/やまうちあつし[2017年7月18日13時48分] 朝を折りたたみ 昼を折りたたみ 犬を折りたたみ 猫を折りたたみ 自宅を折りたたみ 通りを折りたたみ 横断歩道を折りたたみ バイパスを折りたたみ 街を折りたたみ 都市を折りたたみ 飛行機を折りたたみ 浜辺で ひとりの ひとと会う そのひとは 折りたためない やがて日が暮れる 夕焼けを折りたたむ 海を折りたたむ 世界は一羽の鶴だから 風を折りたたむ 音を折りたたむ 色を折りたたむ 心を折りたたむ ことばがわたしを 折りたたむ     ---------------------------- [自由詩]わたし の/ひだかたけし[2017年7月21日13時58分] 宙に 浮かんだまま 漂っている 意識 が ふらふら  ふわふわ   流れ続ける時のなか    痛みながら呻きながら    肉と繋がり   引き留められ  わたしの在り処を 探している 宙吊りで ふらふわわ 宙吊り の 行き場無し ---------------------------- [自由詩]キリモミングフィールド/かんな[2017年7月24日19時08分] ことばに小さなドリルで穴を開けていく。覗くとことばの裏側が見えるので試しにやってみて欲しい。小学生や中学生の夏休みの自主課題に合っているかもしれない。ことばを選ぶのが難しかったら、分厚い辞書や書籍を何でも良いから選んできて、目をつぶってパラパラとめくって決めるといいよ。夏休みの課題ならフィールドワークの方が良い?そうか、そうかもしれないね。それならば外に出てみてあらゆる物質の名前に触れてみると良いし、もちろんドリルで小さな穴を開けて裏側も覗くのも良い。キリモミングフィールドワーク、と名付けたいと思うので、ことばを最高に楽しむ夏休みを過ごしてね。 ---------------------------- (ファイルの終わり)