沼谷香澄のおすすめリスト 2017年9月12日23時00分から2017年11月13日23時32分まで ---------------------------- [短歌]ロケット・パーツ/さわ田マヨネ[2017年9月12日23時00分] お茶の間の畳 私の靴下を波の形で受けとめている まだかたいタピオカパールを見おろして「雪1グラムぐらいの大きさ!」 もう眠い どうでもいい って宇宙船乗ってもいってそうな口ぐせ ものすごい光をここからぶつけたら満月になってしまったんだ (春に剥いた ふたりで割りきれない夏みかんは星の形にすこし似ていた) 打ち上げの飲み屋につけてきた銀の指輪が遠くに飛んでいく夢 すごい雨ですねと言ってやって来たサンタクロースがまだ風呂にいる じっとしてられない夜にふたをして片面カラープリントした月 ---------------------------- [短歌]あなたじゃなく、君と呼んでもよいですか/秋葉竹[2017年9月26日23時27分] あなたじゃなく、君と呼んでもよいですか 女装男子のトシさんの真似 あたしより綺麗な「ヤロウ」をゆるさずに なかよしになろ 「コツ」教えてね 真似しても勝てないげんじつ目をそらし 右から左へたのむ串焼き 酔ってても 追いつくげんじつ あしたは早い 君のねていた跡に添いねる のこってる 君の空気はとうめいで あしたあったら髪の毛撫でてね しんしんとやかん沸騰する夜の 冬なら冬の君に逢いたい ---------------------------- [短歌]猫/秋葉竹[2017年9月28日22時46分] 三銃士 スマホとお鍋と猫さんでいい この部屋あたしだけが要らない 夜に泣く からだ丸ごと抱いてくれ 一人寝の胸 マントルまで堕ち 高速のサービスエリアの木のベンチ「冷たいな」 で 拉致られたあす ののたんのけせらけせらなとこが好き?ただねせんせい、ゆびわははやいよ いやよいやからかいあたしを駄目にする蝶々がひらひらトラック横切る かなしみのとらえられない絶望とひからびた蝶 木で死んでいる 初登場 おすすめの味いかがです 目醒める感性 なんと 税込 銀ブラは 銀座をブラブラするんじゃない 銀座でブラジルコーヒーだってさ モーニング 香り高いと猫が啼く コーヒー窓辺に置いておくから ---------------------------- [短歌]なんとなく/水城歩[2017年10月4日1時19分] なんとなく中野で降りるネクタイを待ち構えてるラーメンの罠 水色のネクタイ水に浸してる 正しい水色を探してる ---------------------------- [短歌]ほおずきざんまい/そらの珊瑚[2017年10月12日8時58分] 夕闇に溶けてゆくまでほおずきは小さな庭を灯すままごと 窓際にほおずき掲げ猫を待つおまえはどこに行ったのだろう ぴりぴりと外を破れば顔を出すほおずきの内はト或る秘め事 昨日より幸せになるほんのちょっぴりほおずきの笛を鳴らせば 鈴なりの鬼灯(孵化を待つ)鈴なりの宇宙(唯ひとつの) 猫の鈴 ほおずきは小さな赤い星であり彼方の星と交信してる 雨は優しい子守歌ほおずきもこのかなしみを抱いて眠り ---------------------------- [自由詩]フラグメンツ/連音/AB(なかほど)[2017年10月15日12時08分] 6月23日   このからだのなかに   ながれているものが   うそ   にならないように   てをあわせます また、6月23日   ことしも   まだなんとかひととして   いきてます   あなたのとなえも   こころからであれと   てをあわせました ゆうなんぎい   いつまでも   僕の気持ちは   あの人の心の隙間に   繋がりたがって   ゆうなんぎいのいとの   そよとばかりに ミンナ草 イッター アンマー マーカイガー (あなたのお母さんはどこいった) ベーベー ヌ クサ カイガー   (やぎさんの草を刈りに)   また   祖母のしわがれた声がかすめてきて   今度は僕が採りに行こうと決めたのに   あのミンナ草のある場所さえも    もう探せない サバニ   やがて   波の音が聞こえ出すかもしれないので   確かめるほどでもない   と言い聞かせ   足を速めた   波の音は おーい って   波の音が おーい って   小舟の陰では カサカサ って はんだやー   よいしょ   と立ち上がり   押し入れから炬燵を引っ張り出す   頬っぺの紅く染まった君の顔が浮かぶたび   鼻をかんでばかりもいられないので れのん   つながっている   君の心と身体は   つながっている   海と月   のように   つながっている   月と細胞   のように   つながっている ほうげんふだ   そこにやすらぎがあるので   という理由で   前に進むことを停めた友へ   この頃そんな君の落ち着いた顔を見ると   ちょっとだけ痛い   先生もやっぱり痛かったのかな うるま   ゆうべのなまえ   にもどっても   もうそこには   ぼくんちない   んだから   あしたへ   あしたへあゆんで   うるま   うるま   はじまりのくにへ    ---------------------------- [自由詩]屋根裏に置かれたままのぼんやりとした記憶/宮木理人[2017年10月16日2時00分] 倒れた花瓶は音を立てずに 閉じた瞼の裏側に沈み たくさんの小人たちが行列をつくって どんどんどんどん階段をくだっていく夢を みています 雁字搦めに絡まった 優しい文章の尻尾の端を 夜な夜なほどく作業をしていて やっとの思いでほどけたそれらを 解放してあげようと それぞれの方向に解き放ってみたものの みんな意外と自由に走りださずに そこらでじっとしています あれ、と思ってみていると みんな一斉にこちらのほうを、無表情で見つめだして… (屋根裏部屋にて) 僕らは小さな窓から見える 向かいの道路に突っ立ったまま静止している 一人の老人を観察していた 彼女は窓に顔を近づけながら なにかを話し、僕は光のなかに 揺れる埃を浴びている、彼女の横顔を見つめた 同じ感情を、全く違う言葉で言い表してみせたかと思えば 全く違う感情を同じ言葉で表したりしている 老人の観察に飽きた僕らは 今度は天井の木目を迷路した 彼女はゴールを見失わないように、油性のペンでマークした ---------------------------- [自由詩]気の合わない夫婦/ホカチャン[2017年10月16日9時27分] 世の中 気の合わない夫婦と気の合う夫婦と どちらが多いんだろう 僕たちはもちろん気の合わない夫婦だ 僕は甘党ワイフは辛党 ワイフは野菜好き僕は肉好き 僕はスポーツ趣味ワイフは音楽趣味 ワイフは記憶力抜群僕は記憶力苦手 僕は酒は弱いが飲み会は大好き ワイフは酒は強いが飲み会は大嫌い 僕は現実主義ワイフは理想主義 しかし一つだけ気が合うことがある それはトイレだ 僕が入っていると必ず後から入ろうとする ---------------------------- [自由詩]闇/ひだかたけし[2017年10月16日17時27分] 暗闇に浸っている 暗闇に酔っている ゆったり落ち着く 午前二時二十分に 俺は闇と対峙する 三歳から在る闇と 時が消滅していく 俺は闇に沈みいく 凄く落ち着き払い 俺は墜落していく 悪魔と天使に魂を 捧げ剥き出す己が 闇と共に輪舞する 死に絶えていく生 ぎりぎり限界まで 己をキープし続け 魂の闇を凝視する 獣の匂いが充ちる 釣り合う二匹の獣 平衡が崩れたなら 闇が生動し始める 己を自らの領域に 取り込む欲望の火 夢の中で燃え盛る 幻想幻覚幻聴の渦 次第現に燃え移り 匿名化の粉砕機械 物という物を殺し 死体物質の山又山 次から次に排出し 混沌のっぺらぼう 自意識を占拠する 深夜の暗闇が溶け 雨の音冷たく響く 俺は呪縛を解かれ ゆっくり体伸ばす 鉛の魂明けに鎮め ぐったりと覚醒す 午前五時二十五分 ---------------------------- [短歌]受話器のおく騒ぐテレビの寂しさを言えずに私夜を越えゆく/颯太@[2017年10月21日21時22分] 受話器のおく騒ぐテレビの寂しさを言えずに私夜を越えゆく ---------------------------- [自由詩]さぷりまん/服部 剛[2017年10月22日20時09分] あなたは知っているだろうか? 秘密のさぷりのあることを 目には見えない あの透きとおる粒のさぷりを うつむく夜に ーーごくり ひと飲み で あなたの体内に具わる エンジンの炎は、闇に踊って 燃えさかり…燃えさかり… 明日の方位へ燃えさかり… わたしはいけるいけいける いけてるいけるいけいける いくいくきっともっといく さあ 一っ二のっさあああああん! ドアが開いた ---------------------------- [自由詩]飛ぶ/ピッピ[2017年10月25日21時55分] 走り出す、走っていく、ぎこちなく、しかしそれは必然的に正しいポーズで。ニュアンスを放つ。蠢く、うねる。私がじっくりと存在をもっている。汗。無量大数なんていうまどろっこしい言葉を使わなくても、ゼロをいくらでもつけていけばいい、そんな秒、刹那。動く。生命を描写する。あなたのインターネット回線は、もうこの詩を、最後まで読み終えている。しかし、それはどうでもいい。それは結局、瞳に追いつかない。ただの欺瞞。テクノロジーの敗北。跳んだ!私は跳ぶ、飛ぶ、翔んだのである、その肩甲骨を昆虫の羽根のようにグロテスクに!空気を断えず搏ち続け、肉体は宙を舞う!む、飽きたからもう最後まで飛ばすと言うのか、私がこんなに綺麗に、一糸の乱れもなく、人間が考えうる、いや、人間を逸脱して飛んでいるとしてもか、いや飛ばさない、お前は一字一句私の言葉の克明なデッサンに惹かれ、私が生きている証を網膜に刻みつけるはずである、そう!私は空を斬りつけ飛ぶ!それは強靱な脚力から生み出された跳躍力のみならず、飛ぶに相応しいフォルム、そして飛ぶという鮮明な志向、つまり心技体の全てが!もう少しで終わるから黙って聞け。全身全霊を込めて、人間的な熱を帯び、軽やかに、私という存在が、あなたの見えないところまで、どこまでも飛んでいく。 ---------------------------- [短歌]君にもあげる/水宮うみ[2017年10月28日12時53分] 「僕だけのものだ」って言葉思う度虚しくなるので君にもあげる 僕たちは言葉の種を温めてこの寒い季節乗り越えていく 絵に描いたみたいな空を飛んでいく飛行機に乗る人が見る空 手をつなぎ貴女と道を歩いてく耳では聞けない会話をしてる ---------------------------- [自由詩]小名木川のほとりで/服部 剛[2017年11月1日23時43分] はじめて新橋の飲み屋で、あなたと 互いの盃を交わした夜の語らいに いくつもの言葉の夢がありました あなたと出逢ってからの 日々の流れのなか 小さな、言葉の芽がようやく 土から顔を出した頃 あなたは未知への旅へ出てゆきました 何日も、何日も、降り続く雨の出来事 なのに 少しの間を置いた 今日 あなたの大きな面影の ふしぎな明るさが 僕等の間に、漂います もし、小名木川が――昔々 炎に燃えた哀しみの川であっても また春の訪れに、桜吹雪の舞う下を 煌めく川は流れゆき あなたの意思も川となり 明日の物語へ流れゆく 僕等のなかに流れる小名木川 ほとりに佇む旅人の頬を、風は掠(かす)め 水面に乱反射する、笑い声 何処からか ひびく ---------------------------- [自由詩]受容と共有/青の群れ[2017年11月2日18時09分] 飛んでいったコンビニ袋が 最近見なくなった野良猫に見えました 木枯らしが渦を巻いて? 去っていく名前のない怪物は 耳の端を赤く染めている そのうち冷めるからといって 一瞬のぬくもりを抱きしめずにいられない ウールを選ばない日は カシミアを選ぶこともできる、わたしたち ただ包まれた記憶だけ 母親のような日差しも、日曜日も、人混みも 父親の背広姿がすり抜けていく 誰にも触れられないビルの隙間に 色褪せた花弁が吹き溜まっていた 紛れてしまう、冬の小さなつむじ風 ---------------------------- [自由詩]その夜の、三日月の/noman[2017年11月3日9時33分] 誰もが 待ち望んでいた夜 その月の色 その空気の匂い その風の温度 あまりにも整然と 満ち足りていて 涙の形でさえも 完璧な造形で 誰も 何も それが夜なのかでさえも 気にしなかった その夜の その月の手触り ---------------------------- [自由詩]恋をしたい/無限上昇のカノン[2017年11月3日12時51分] もっと もっと恋をしたい 男なんてもう懲り懲りだなんて言っていないで もっと もっと恋をする 私は夫に恋したい 憎しみばかりの人生じゃ あまりにもじぶんが可哀想 もっと もっと恋をしたい 何十年も前のように恋して愛して夢中になって そうしたら 幸せな毎日を送れるはずじゃない? ---------------------------- [自由詩]20171103_work0000@poetry/Na?l[2017年11月3日17時33分] 膝小僧とは時々対話をする 仲は良い方だと思うが いつも私の邪魔をする 風邪は悪化した 早起きの習慣が終わりを告げ 夢の中で俺は死んだ 強制的に人格を変えられることは 無い それが どれほど 嬉しいことか を 正義は知らない 正しくあろうとしているものが 道を 間違えた 一例 私は守れるだろうか 私に救えるだろうか とにかく 明日に ならないと 何もわからない くれぐれも遅刻はしないように ---------------------------- [自由詩]あきらめのわるい/坂本瞳子[2017年11月4日11時38分] 左の肘の曲がり具合が気に入らない ふと、そんなことに気づいた 角度を変えてみたり 腕を上げてみたり 手の平をひっくり返してみたり 肩をまわしてみたり 顔の向きを、そして 身体のいろんな部位の 向きや角度を変えてみたり 鏡に映して見たり 上から横から下から見たり 斜めの角度から見上げてみたり 這いつくばった姿勢になって見たり 思いつくことはしてみたけれど なにをどうしたって気に入らない 形状の問題か 気の持ちようか 所詮自分などこんなものだと 諦めたい気もするのだけれど それでもまた 見てしまうのだ ---------------------------- [自由詩]コーヒーの淹れ方 ゴルコンダ・スタイルで/即興ゴルコンダ(仮)投稿/こうだたけみ[2017年11月4日22時02分] 左手でつかんだ豆を放り上げては落ちてくる男は山高帽かぶって静止と落下の両方の手で受け止めたいうまくいかないことによろこびをうれしみをほほえみをいつだって太陽の方を向いて顔を綻ばせますヒマワ・リーさんのつかんでは離さない夏のイメジ静止した正午に蝉は鳴いていたか透明な水を張ったように静かな仮名カップ覗き込むそこ底に沈殿する言葉が攪拌してブレイクするぅした舌に残る苦味かみ砕く紙のみぞ知る足の早さが加えた酸味を取り落す犬はワンと鳴け広がる波紋に ---------------------------- [自由詩]埋めたてて/渡辺八畳@祝儀敷[2017年11月5日16時50分] 暗く淀む沼があって、 底のない沼があって、 死体でそれを埋めたてて、 若者達の死体で埋めたてて、 死体はどれも血まみれで、 瞳は濁って光が無くて、 なかには首が折れているのもあって、 そんな無残な姿をした死体達で、 それを一体一体ひとりひとり沈めていって、 暗い沼に沈めていって、 死体で沼を埋め尽くして、 その上に家を建てて、 家は小さくてかわいくて、 そこに若い夫婦が住んで、 笑顔があふれる夫婦が住んで、 家の床板を外すと骨があって、 埋めた死体の骨があって、 長い年月で真っ白い骨になって、 血まみれの肉は腐り落ちていて、 だけど骨だけは残り続けていて、 その上に夫婦は住み続けて、 いつまでも仲良く住み続けて、 ---------------------------- [短歌]言歌/水宮うみ[2017年11月9日8時06分] 僕たちの生活を越えて軽やかに言葉が飛んでいくのを見ていた 宝石のような言葉ひろい集め短歌という名の首飾りにする 聞いたことないような言葉ふと呟くあの人にずっと憧れている ---------------------------- [短歌]「風の止まり木」 五首/もっぷ[2017年11月10日22時48分] 夕星(ゆうずつ)の夕より深い夕が来て十一月の宙の産声 箱舟の群れが港を離れゆく未明という名の時間(とき)の幕間 金と銀そしてこちらは銅の夢おさない日日のトラウマが問う 三日月に腰掛けて見るこの星の瑠璃色想うウサギ小屋の窓 夫亡き後わがかなしみのひとしおの波のまにまに浮かぶアネモネ ---------------------------- [短歌]立秋/白糸雅樹[2017年11月11日3時43分] 「なんで時が止まったような食べ方を」「だってかき氷だもん冷たい」 蜩の真昼間に鳴く大社ちいさなちいさなもみじわくらば 利根川の岸を洗うばかりにて我を呑み込むこともせぬ波 立秋の陽が背を焼くそのままに尽きることなく話し続けた 小野川のほとりで鰻ほろほろとほどけるからむあとあじのこる ---------------------------- [短歌]「立冬二〇一七」 四首/もっぷ[2017年11月13日23時32分] 住む場所の変わりて水は甘くなりわれ懐かしむ塩素の匂い きょうからは花野綴じられ立冬の訪れしこと足から沁みる 旅立った秋を追うことゆるされずこの世の生の切なさ想う みあげれば東の空はうっすらと黒く霞みて故郷の証し ---------------------------- (ファイルの終わり)