ツノルのおすすめリスト 2019年3月26日2時40分から2019年4月8日16時45分まで ---------------------------- [自由詩]文字/よーかん[2019年3月26日2時40分] 繰り返し ただの日常をやりすごし またもどる 寝付けない夜 どうにもならずタバコに火を点け パソコンを開く 文字を入力してもどる その文字をいじりまたもどる 繰り返せば 繰り返しさえすれば なんとか取り戻せると知っているから まだもう少し ここにいれる 世界中どこにでもいる ボクもそういう中年の一人 またもどり またもどる そうやって 自由にしていいんだから 文字だけは。 ---------------------------- [自由詩]婚活詩篇/春日線香[2019年3月26日11時34分] 刹那 ここを起点としてカンザスシティに熱い風が吹く。 推敲はしない。わけがない。 渦巻くウシュアイアのバルコン。 汗だくで田植えを終えたら トゥクトゥクに乗ってどこまでも行こう。 封筒豆腐に琺瑯老父。解体新書はアナトミア。 河出文庫の『西洋音楽史』を開いて もはや情報弱者の一人としてあり。 最近オペラにも興味あり。 マナスル登攀、そこまで産卵。 いつまでやっているのか。十一時半? このコーヒーを飲み終えたら、トーイック受けよう! 皿屋で皿買ってただけなのに 頭から真っ二つになるなんてオプションも。 伊勢神宮からまっすぐ続くレイラインが…… 阿蘇クマ牧場に八百頭のくまモンが…… 泥足が苦いから泥足にがえもん……日本会議が…… 地獄の第四圏の泥の底で カッフェーでコッフイー飲んでただけですか。 でも毎週ピッチャーできっついサッワー飲んでますよね。 やめ時がわからないっていうか、 あの人はたぶんふざけてるだけ。 「ほんとっすか!」「トスカーナ?」 キャリアとノンキャリアとバリキャリ。 あとカロリング王朝。 携帯でツイッター見ながら詩を書いてました。 気づかなかった。本当に? 「右は右翼の棚、左は左翼の棚」 「セクハラですよ」 「もう心臓止まってたし」 賽の河原も護岸工事したらいいし、 すまし顔ですまし汁飲んでる時代じゃない。 言葉の美とは、詩の効用とは。 (真面目?)(紀伊国屋書店?) グッピーディスカスサイゴン陥落。 川崎のパルコ一天にわかに掻き曇り、 女。 ならぬものはならぬ。 いかにして日本の精神分析は始まったか。 あそこラブホテル。どこラブホテル。 ここラブハリケーン。 カスパー・ハウザー夜更けに一人。 ニトリのベッドで起き伏し一人。 本当に心底それが必要ならば 失われし花と美と鼻水の国へようこそ。 あーぶくたった、にえたった。 パーソナライズ、リアライズ。 これは犬ですか? それとも四つ目のネコ? 幻ノ聲ノ先ノ根ノ國ノ吉ノ増ノゴーゾー? 紀伊国屋書店? 朝も夜も強く抱いたグーグルマップに弱点がある。 骨灰ギャラリー分厚い坂。反射炉さかしま鯨の胃。 バグパイプ鳴らすならず者。もう一人胡乱なならず者。 紅茶には塩、薔薇に蛆。有為の奥山けふ越えて。 ダイモーン三匹ねじれ六角柱。 「ここに空白を挿入しませんか?」 さあれ、雷様の陽気な瑜伽。 丸焼けタイヤ、伽藍堂。目刺しも目刺して骨の芯。 とっぷり日も暮れる。 ---------------------------- [自由詩]電子レンジ/ナンモナイデス[2019年3月26日13時37分] 電子レンジ壊れた 楽しくお皿回っていたのに 冷たい惑星のような ヤキイモ温めて ホクホク 食べようと思っていたのに 電子レンジ買った お皿のないのを 近くの電気屋で コーヒー温めながら サイトで値段見たら クルクル 目が回った ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ネット詩再考/ナンモナイデス[2019年3月28日18時21分] 詩が書けるヤツはドンドンアップすればいい。 ネット以前だったら新聞・雑誌に投稿しても、 選考するヤツの目にとまらなければ早々と水子にされる。 出版業者に頼んでみても「字が書けない脳性マヒの少女」 が書いただの、「連続殺人犯が獄中で書いた詩」だとか・・・ 紙の書籍ならば、これに感動しただのなんだのとはく付けに、 タニカワシュンタロウなどの帯がつけられる。 ただの貧困ビジネスと変わんないじゃんかよ、こんなのは! いいか諸君!! 本来詩とは直接関係のない事柄で選ばれたり・販売されたりする不条理!! この不条理から超越することこそが、 詩サイトに投稿するというではなかったのか!!! 販売部数や賞取競争に明け暮れしなくても、≪ひとつの詩≫だけで、 投稿できる。このことこそが革命的な出来事なのではなかったのか!!! 各自再考するべきである。 いかにも詩人面したヤツ・アラシなどの言葉に惑わされるな!!! ---------------------------- [自由詩]海のかたちがある。/ぽりせつ[2019年3月29日8時00分] 海のかたちがある。 水を蹴る一枚のうすい尾ひれがそう 波に浮かんだふくよかな船体がそう 同じく、 空のかたちがある。 土のかたちがある。 宇宙のかたちがある・・・ 〈美しい〉という現象はもれなく 綺麗でないものから発生すると考えてよろしい。 壁も廊下もなく 隣接し続けるこの病室に 美は常にあたらしい患い。 詩人はあらゆる祖母と同じ病棟ーー あらゆる日没と 同じ病棟ーー 「美術と芸術のちがいは  模写と模倣のちがいだよ」と、男は云う。  流体力学がフールス紙に記述される遥か昔から  白鯨はこの海を飲み込んでいたよ さて 人を殺すかたちがある。どうしてもなくならないのである。 命に近づくほど わたしたちは美が上手くなるから 不意に訪れるものしか信じる意味がない。 シャルレ社製 登山用ピッケルの美しさを見よ! そして思い出してほしい 局地戦闘機震電400ノットの美しさをーー 人を生かす誠実にも 人を殺す誠実にも ひとは平等に魅せられる・・・ 「芸術は必ずしも、  綺麗や心地よいと同義ではない」と知っている男。  美を享受する心は  夕陽を眺めるためだけにあるのではない? 珊瑚礁も貝も フカヒレも 深海に化石する三葉虫の群れも 沢蟹も お口に含めばみんな冷たいのだ。 わたしより温かいものなど何もない場所で 最初の一滴になった海が 命を秘めて 空から降りてくる。 ---------------------------- [自由詩]スーパースター/ペペロ[2019年3月30日19時48分] 雨が降る 花粉が減る 加齢臭が消えなかった 国会議事堂はどれだけ臭いのだろう 政策判断に影響がなければよいが 春の白い花があざやかだ もうすぐ死ぬから ごちゃごちゃしたくない ぐちゃぐちゃになりたい 夢なんて寝て見る スーパースターの引退会見 かげりがそれでひかり出す もうすぐ死ぬから ごちゃごちゃしたくない ぐちゃぐちゃになりたい 夢なんて寝て見る 雨が降る 花粉が減る 加齢臭が消えなかった 国会議事堂はどれだけ臭いのだろう 政策判断に影響がなければよいが 春の白い花があざやかだ ---------------------------- [自由詩]ボビー・コールドウェルと僕のために/吉岡孝次[2019年3月30日23時55分] こう寒くては 昨日も今日もあったものじゃない ヒーターのスイッチも加減の憂き目に遭う! 私事を語れば少しく 時間に及ぶ慣わしが 峠の冥さを補っている 「時間愛?」 音を立ててパジャマに着替える僕は 自答も忘れてキーボードを引き寄せた 新譜はもう耳をはさみ込んでいる いい って自分で言え 僕はいい気分だって自分で言え 終わるな ---------------------------- [自由詩]潤むモザイク/ただのみきや[2019年3月31日9時14分] 雨は解かれる時間 こどもたちの声の重なり 散る 花のモザイク 煙は祈り 空は響かず 水は光を乗せて黒く笑う 蛇のように去る なめらかに 井戸に落ちた人 井戸が歩いている枯渇した 死臭を隠し 人は風を掻き分ける 海辺まで来て 開いた 過去が裂け 景色の裏側の白紙 蹄が刻む砂浜と鳥の視点 無花果を剥くように 手の中の痛点 限りなく流れ出る虚実の 血の青さ           《潤むモザイク:2019年3月31日》 ---------------------------- [自由詩]◯ 3月31日、ポエム終戦日 ◯/足立らどみ[2019年3月31日9時55分] 一ヶ月 準備電位の刻をへる 前夜の今日 ポエムは終わる 「わたしたちの研究は、初期に現れる準備電位は、のちに自動的な決定に繋がってしまい意識的なコントロールは不可能なのか、それともわれわれは“拒否”することで決定を覆せるのかに着目したものです」 ジョン=ディラン・ハインズ教授 繰り返す、ど素人どもは火傷した(という事実の証明^^? 被験者は人、真似たのはアマちゃん(という事実の証明^^? 「対エスキモー戦争の前夜」 傷ついた老兵は、いつも何も語らない あなたが詩人ならば、1ヶ月間、抗いなさい?? 或いは詩人になれる最後の刻かもしれないのに 詩の書けない詩読み人の一市民から言えることは 守りたい人だけを守りますと、 逃がしたい人だけを逃がしますと、 心に誓うことだけですからねぇょ 一ヶ月 準備電位を遡り 魔法のGP、ポエム終戦日 // ---------------------------- [自由詩]戦争/ねむのき[2019年3月31日10時09分] 牛になって 風にふかれながら 草原を食べていたい できれば あなたとふたりきりがいい ---------------------------- [自由詩]猫になりたい/立見春香[2019年3月31日11時36分] 春の雨いつまで続く 猫になりたいかって なれるものなら、と。 いっぴきの猫なんて なにもできないし 力も無い いっぴきの猫なんて 桜の枝から 飛び降りるだけ 花びらといっしょに 黒いむねには 自転車の鍵が刺さっている それが一番自由な道をしめしてくれる それさえあれば いっぴきで行けるかもしれない どこ? 海 が見たいと啼く 沸騰して大騒ぎをしている ヤカンみたいなせっぱつまった声で 海、海、海、うみぃー! 海のない夜空に金平糖を探してみても 牡牛座のしあわせそうな笑顔があって どうしてもそっちに 目が行ってしまうから 小さくていいから 海に連れて行ってよ ってお願いしてみたけど 笑われたままでいいから ってお願いしてみたけど 月にお祈りしてみても 啼いておねだりしてみても ムダらしいから楽しみにして ずっと待ってるね ってそれだけ諦めないよ って猫にさえなれれば ずっと待っていられると思うんだ でも、 いったいだれに お願いすれば叶うのだったのかしら? それだけ、わからないままで 猫になりたいなんて ---------------------------- [自由詩]桜の樹のもとへ/長崎螢太[2019年3月31日12時04分] 夜明け 窓を開けると 薄暗い空に、明星が瞬いている テーブルに零した、煙草の灰を 手で、掬いとっている うちに 夜が、終わっていく 春先の 暖かい雨は、降り止み 朝日が、微かに差し込んで 神経が泡立つ 開け放れた、窓 カーテンが揺れる先の 桜の花を眺める 花びらの、散る音が聞こえる 薄紅いろの淡い 花の音 あるいは風の うすい色 散っていく花びらで現れた 銀幕に 記憶のかけらが、映っては、消えて 風に、舞っていく 目のまえに、手をかざす 仄白く 青いゆびさき 霞んでいく視界のなかに 幾つかの、 ひかりをみる いつの間にか、あたりは明るい 吹きこむ柔らかな風が 外へ誘う 春の、淡い外気 足のうら 大地の感触を踏みしめ 桜の樹のもとへ 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水に流して しまいましょうね) 銀の針に白い糸とおして 桜の花びら縫いましょう あしたには枯れてしまうのよ 淡いピンクのくびかざり 花真珠のくびかざり。 散りぎわの桜がみせる 甘くて柔い 花の顔の幻よ 後ろ髪 引かれて いくど ふりかえっては ……きこえるはずのないおとが……花の雨  はら、 はら   はららら ららら、 るる らっ、 らっ    ぽと ぽとととと さら、 っらっら、 風のかたちに花が舞い 春のつむじ 桜の蜜は女のにおい。少女は、娼婦は、少女は、みなしご。 春のうた 春のおうたを うたいましょ。  (はないちもんめ はないちもんめ  百年まえも  百年あとも  必ず咲いて  そうしていつもとかわらず散った  百年まえも  百年あとも  あしあとのこし 消えてゆけ) 桜並木が揺れている 銀とピンクのトンネルは 雪のようにくずれながら みんなに おうたを うたっているよ。 ※「はないちもんめ あの子が欲しい」童謡 はないちもんめ 歌詞より ---------------------------- [自由詩]二十七時の秘密/十一月の失敗作[2019年4月3日19時12分] 理由は瞳でも言葉でもなく 甘い棘でいたぶって 囁きながら堕ちていかせて 憧れていたの 散らしたのは何度目の夜 秘密はいつもドロドロしてる 苦い香りに慣れた頃 横顔をなぞる煙がいびつ ねぇ だれの声を求めているの ねぇ どんな声を求めているの ねぇ ねぇ ねぇ 溶けていった約束の糸 床一面の日常 まやかし妖し貴方は無表情 ほら 秘密はいつもギラギラしてる 甘い棘の魔法をちょうだい 堕ちていったその先の 気づいていたわ 誤魔化しながら目を閉じる 愛しい愛しい二十七時 桜照らすあの月が眠る頃 ---------------------------- [自由詩]小さな手/梓ゆい[2019年4月5日8時38分] 甥っ子の手を握る時 妹が生まれた日の事と 父の手を思い出す。 私をずっと守り続けてくれた 大きくてごつごつとした手を。 小さな手を眺めつつ すーっ。すーっ。と 寝息を立てる口元に そっと耳を近づければ いつでも思い返すのだ。 父に手を引かれ 生まれたばかりの妹を探して歩いた ガラス越しの新生児室を。 お宮参りの参道で 父の人差し指を握り続けていた 丸くて小さな妹の手を。 ---------------------------- [自由詩]【 決戦 】/豊嶋祐匠[2019年4月5日11時43分]            結論から先に言え。            いつもそう言って      俺の努力もアンタへの気遣いも      不毛にしてしまう上司。            今日こそ、結論から言ってやる。            そう決めた俺は      上司の前に立つなり      デスクを乗り越え、両手で首を締めた。            話せば解る      話せば解ると、命を乞う上司。            結論を望んだのはお前だと      俺は首に嵩ませた指を      小指から、さらに絞り上げた。                ---------------------------- [自由詩]夢路/梅昆布茶[2019年4月5日13時09分] ぼくの朝は完結しないつめたい夜を引きずってはいない ぼくの大腸は閉塞して夜をためこんでいたけれどもね カーテンを引くと天使はねぼけまなこで羽ばたいている 窓からのぞくと景色のはじに満開の桜の樹があって いくつかの峠道をへて空にのみこまれてゆく路がある それはだれでもがたどれる路なのだろうか それともときどきしか垣間見れない夢路なのだろうか ぼくの夜は道玄坂か代々木公園のあたりに紛れ込んで ちょっと休息をとっているだけかもしれないのだ ---------------------------- [自由詩]金曜日の夕方に/坂本瞳子[2019年4月5日22時21分] 落ち込んだりもするけれど うなだれて ふてくされて しばらくは動けなかったりするけれど じっとそのまま寝そべってもいられなくって お腹と背中の間あたりがジリジリとし始めて 伸びをして欠伸をして意外に大きな声が出たりして 涙がちょちょ切れたりするのに 悲しい気持ちはまったくなくて それだのに喪失感というか倦怠感というか どう言い表したらよいのか分からないような あいまいな気持ちが充満していて 眠りすぎたときのように頭の中がぼんやりとして きっとま抜けた面をしているんだろうないまの自分はと 口元だけはきっちりしっかり閉じてみたりする ふん ふんふんふふんふんふふん 鼻歌なんてきっともう何年も唄っていない 歌が歌いたい訳じゃないんだ 大きな声で叫んでみたりしたい訳じゃないんだ 暴れだすほどの気持ちをさらけ出してみる 矛先が見つからなくて ちょっと誤魔化してみたりしたくなるんだ それでもやるせない気持ちは消えなくて だからこそ周りを見回しても視点が定まらず 挙動不審なふりをしてふらついてみたり 雨に降られてみたり風に吹かれてみたり 自動ドアに挟まれてみたり 階段を駆け下りながらよろけてみたりするんだけれど 高速エレベーターの中で目と耳と毛穴と鼻の穴とを全開にして 天井を見たまま瞬きせずに息もせずに 到着した五九階でジャンプしてみたい衝動を必死に抑えて ドアが開くなり駆け出した 薄暗い非常階段を全速力で駆け下りて 地上階には辿り着けたんだったっけ ---------------------------- [自由詩]地元で一番の安売りスーパーで/こたきひろし[2019年4月7日8時11分] 女性の必需品買い忘れました。 六十四歳父親です。 いくら父親と言っても娘に頼まれた生理用品一人で買えるほどの強い心臓兼ね備えていません。 買い物はいつも十歳年下の嫁と二人です。 女三人と暮らしているといつもその内の一人は生理中です。 「お父さんは男だからいいよね。お股から血が出る女の気持ちなんてわからないでしょ。」 女たちによく言われてしまいます。 「男だって大変なんだよ」 と反論すると「何が?」と娘に聞き返されてはっきりと答えられません。 そんな時は私にしか聞こえないように嫁が言ってきます。 「男は出すだけでしょ。気持ちよく」 確かにそうかもしれないけれどそれが男の役回りだから。 地元一番の安売りのスーパーで女性の必需品買い忘れました。 明日も買い物に出かけるんだから買ってくるよ。と言い訳をしました。「なぁかあさん。」 いつもそれを買う度にレジ打ちのおねえさんが素早く銀色のビニール袋に入れてくれるんです。女性ならではの心遣い。私もつられてすばやくそれを手にします。下手したらキモい行為かも。 でも、それは夫ならではの心遣いか、それとも優越感か?何だかしあわせな気持ちが入り雑じっているんだよな。 男なんて単純な生き物だから。 ただ、気持ちよく射精するだけの。 射精したいだけの。 ---------------------------- [自由詩]左曲がり/イオン[2019年4月7日18時24分] 左曲がりだけで 目的地に着けるでしょうか 右に進行方向を変えたいなら 左を2回曲がって直進すればいい 人生もなんとかなるものだ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]廃墟のホームページが無化されました。/ナンモナイデス[2019年4月7日21時51分] ジオシティーズが無化されたようです。 間借りしてい座っていた我がサイトも あえなくネットから消えてしまいました。 20年前ニフティからはじめたHP運営 ではありましたけれどもとにかく知らない ことばかりではありましたけれども、 面白かったです。アクセスカウンターを つけたり、掲示板を置いてみたりと、 つたないサイトではありましたけれども、 サイトの管理人も悪くはなかったですね。 哲学的な断章めいたコンテンツを一応、 メインにしておいたのですが、画像を コラージュするのが楽しかったので、 そのようなコンテンツをおいてみたり、 もちろん詩のコンテンツもおいていました。 この20年でネット環境も驚くほど変貌 してしまいましたね。商用サイトが君臨し、 もはや個人サイトの存在する意味も揺らいで きてしまっています。とはいえ手作りホー ムページもいつか古本のような意義を もたらされる日が来るかも知れませんが・・・ ---------------------------- [自由詩]ネット詩人は/こたきひろし[2019年4月8日1時17分] 風俗以外の女性は知らなかった。 不潔かな。欲望が一人で歩き出したら抑えきれない。男子の体の仕組みはそうなってる。 そんな時は誰にも迷惑をかけられないからマスターベーションで欲望を鎮める。 不潔かな。自慰だけではどうしても充たされないから給料が入ると夜の街に出掛けた。 理屈ではどうにもならない本能の欲求だ。 世の中には女子に好かれてセックスに不自由しない男子とその反対が存在する。 これは揺るがない事実だ。 公平ではなかった。不公平の極みである。 先天的な不公平である。俺はその不公平に悩み苦しまなくてはならなかった。 そんな負をかかえた男子に女子はいたって冷淡であるのが常だ。選択肢から容赦なく外す。 当然、恋愛と性的対象から除外する。 除外された俺の行き場は風俗しかなかった。 いたって自然のもたらす流れだった。 不潔かな。 勿論、俺は不潔で汚い存在だから女子は嫌うのだが。 ここで明確にしなくてはならない。 俺は詩人じゃない。インターネットに言葉を垂れ流している俗物だ。 美しい魂なんで持ってないし、人格に優れてもいない。 しいて言葉にするならさ迷う欲望の隕石だ。 その内どこかに激突して砕け散るさ。 ---------------------------- [自由詩]スカルパーラの謎/墨晶[2019年4月8日1時37分]   それはン族の世界は存在ない概だったが夢す る者はいかもしない。しか生活圏外部世をわ ずかにる、とある員の間ったの仮説流布に り、そは、我々がく知るあの瓢箪」あるとい うえが定となっ。これは、念と実態をった植 を取り違えのではく、そそもそれら区別がな く価であン族のあいではししば起り得るこ とったが、こ「瓢箪」が周知のうに長ン族の いだで君臨ることになた背景はン族の生圏に は箪が育ず、ン族のとんどが実の瓢箪見た者 がいかったに加え瓢箪を必要する状況がく無 かた為だと推される云い換るならば、箪同様 ン族とって心のない事は多く在し、の問題は 取立てて彼ら大きな響を齎す事認知さ得なか たのだ。しし静かな革が起き。元老院のュ師 の突な仮が一部のンにあった暗とした界観に 一条活路と云うべきっかけをえたのだ。ュ師 はだ、その朝を洗い卓につ、湯気の立メラス ゾモを一匙もうとしたのとき何気な「瓢箪で はい」と呟いしまっだけだった無論、ュ師は 身の発言の響力を良くかってた。しかし夫人 がれを女に話し、女と肉体関係ある下がそれ を男仲間にし、そてあとは周の通りだ。正に 魔が差したとしかいようない出来事よって、 ンの存亡左右された云う訳ある。ュ師の失踪 当然だった「そんものになる。」とうひとと が書かれ紙切れをイ二世にして。イュは図ら も真実語ってしまた。それは命する族の消息 を早知る立てがい事から推も容易だろ。肯定 否定も、そて時空概念す同値と考え彼らにと っ、敢え「瓢箪」を定するが眷族しかも元老 から現れるとは       ---------------------------- [自由詩]家族は唐揚げ/石村[2019年4月8日16時45分] 「家族は唐揚げ」 どこからともなく 湧いて出た その一句 そのしゆんかんから なにゆえか 俺の心を とらへて離さぬ 幾百万もの言葉があり 百の何乗だかの組合せがある中で 天使か悪魔のはからひか かくも見事に生じたる 一期一会の この機縁 この一句 「家族は唐揚げ」 いい じつにいい なんともいへずいい ふるひつきたくなるほど いい一句ぢやないか 風韻がある 滋味妙味がある 俳味もある 豊かな陰影を宿しつつ 簡潔にして明快 かういふのをポエジイといふのだ さうはおもはないか いやしくも詩人たるもの これを一篇の詩に物せずして 何を詩にするのか これほど響く言葉 身に染み 胸に迫る言葉が 詩にならぬといふ法はない そこで俺はこころみた 「家族は唐揚げ」を 一篇のみごとな詩と仕上げ この不朽の一句が 未来永劫 人類の脳裏に 刻まれんことを期して まづ俺は 心の中で 大鍋を火にかけ いくたりかの家族に 唐揚げ粉をまぶし 180℃に熱した たつぷりの油で からりと揚げてみた うむ どうもこいつは あまり詩的な光景ではない やうだ つまりこれは 文字通り字義通りの言葉ではない 叙事叙景ではだめなのだ ならばこれはどうだ 「家族は唐揚げ  ハサミはペンギン  男は故郷  女は海峡  バハマは不況……」 それから えー―――― 違ふ さうぢやない 言葉遊びではないのだ 「家族は唐揚げ」は そんなうすつぺらな 上つつらな 響きだけの 調子がいいだけの 一句ではないのだ ことによると俺は 宇宙の深奥 秘中の秘に迫る真実 神の一句を手にしてゐる  かも知れないのだ これを駄洒落や語呂合せの一部に 埋れさせてしまへば 末代までの恥辱とならう しからばそれはメタフォアか はたまたシンボルか いづれにせよ何らかの観念を 表象するものか 否! 否、否、否、否! 「家族は唐揚げ」は 修辞ではない アレゴリーではない 表現技法ではない 一個の存在そのものだ 無謬完全の意味観念を豊かに内包し 大銀河に悠然とひろがり ありとあらゆる生物無生物の 原子核の核にまで浸潤する 普遍妥当性をば有する 美を超えた美 叡智を超えた叡智 フェルマーの定理もリーマン予想も 物の数ではない それほどの真理の精髄が この一句に 集約されてゐるのだ だが ああ! 俺にはこの一句を 詩に物するすべがない どう足掻いても 書けはせぬ アダムとイヴ以来の プロメシュース以来の この神秘の一句が内包する 宇宙の内奥に肉薄するには わが詩魂はあまりに貧しく 思想は低く 着想乏しく 想像力に欠け 技量はあはれなまでに拙い 無念なるかな 遺憾なるかな  痛憤痛惜の念に堪へずして 俺は唇を噛み 歯をきしらせ 血涙を呑んだ ああ 天にまします神なる御方は 何ゆえに この妙なる一句を わたしなぞに授け給ふたのか! それでもやはり 家族は唐揚げ かぞくはからあげ カゾクハカラアゲ kazokuwakaraage いい じつにいい なんど反芻しても いいものはいい 家族は唐揚げ ああ なにゆえに かくはわが心を悩ませる この一句 家族は唐揚げ 家族は唐揚げ 家族は唐揚げ もひとつ行かうか 家族は唐揚げ さあ 皆さんも どうぞ ご一緒に 家族は唐揚げ (二〇一八年四月八日) ---------------------------- (ファイルの終わり)