藤鈴呼 2018年3月31日10時09分から2018年6月20日0時23分まで ---------------------------- [自由詩]10年後の姿/藤鈴呼[2018年3月31日10時09分] 猫も杓子も地鶏が好きとは限らない 自撮りは得意な世代が増えた 手鏡を 机上に置いて 自らの 乱れチェックを したオケ部屋に 響く音量 大きな苦情 あの頃から 口紅なんて 忘れてサ 持ち歩くのは 色つきリップ リップサービス忘れない ディップサービスしたくない 笑顔 引き連れ 引き攣らず 意図は持たずに 横に弾く 邪さえも ハシタナク 歩く隙間に コーン揺れ 化かされキツネ 思い出す 灯りは左斜め上から照らして 視線は斜め45度でキメてパシャリ 一番若く見える方法なのよって 誰でも知ってる 遣い忘れた手鏡を  床と平行に置いて 覗きこんだら分かるわよ これが10年後の私 思わず閉口しても平気 確かめる頃には そんなこと きっと 忘れちゃってるわ ポップコーンとはまた違う 四角いクランチチョコレートを連想するの 空色のホワイト味は スッキリビター 味わっていると 森のくまさんも 一緒に踊ってくれそうな雰囲気 冬眠前に 仲直りして 楽しく笑い合いましょうよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]金魚の悩み/藤鈴呼[2018年4月4日18時32分] 惜しみなく埋める 余白に乾杯  赤とか白とか  少し墨のついた 筆を垂らした文字とか   幾何学模様から流れる 音符のような階段の先に 咲く未来  それが 来年と言う名の 時間帯なのですね うねる 鱗 ロコモコ丼の上から 黄色のソースが ゆっくりと漏れる ちーたらたら 流行の金管楽器 小脇に抱えて 甚振っても良いよ 弦は短く張ったまま 小さく降る頭 ヘッドヴァンの小刻みさ 繊細な精神 バイオレット色の バイオレンス パインの混じった オレンジジュース どれも 撹拌した 巻き返さない 巻き戻らない 何度 薪を代えても 焔は 小さなまま だから 冷たい心を 色濃く 映すのね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]黄色の薔薇/藤鈴呼[2018年4月6日12時12分] 夢を見るなら 楽しいのが良い 将来の夢も 眠る時の夢も 両方とも 微笑みが 返って来るような角度で 見上げてみたい 夢を観るなら 叶えられるくらいの 現実味も 欲しい 夢を抱くなら 両手いっぱい はちきれんばかりに覆う 大木のような存在であって欲しい そのまま両手を 空の方向まで立ち上げたら 虹の輪が 出来上がるから 例えば 叶わなかった 悔し涙で 誰よりも 素敵な虹を ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]幻想石/藤鈴呼[2018年4月8日13時45分] キラキラ光り出す存在 空に瞬く星 オリオンや北斗七星 カシオペアに ホッとする 一息ついた後で飲む 温かなココア マシュマロみたいな甘い泡に カラフルなチップが 散らしてあって 遊び心満載の ティーカップの中で メリーゴーランドで観たような馬が 今にも飛び出しそうな勢いで 吠える その声が 響きそうな頃合い 闇が訪れ 気温は低くなる 雨上がりの路は 艶やか 枝先で揺れる雫と どちらが美しいかと 競い始める ストローで 冷たい苺ジュースを飲む瞬間 色合いのまろやかさに気付けば ミルクを思い出せる メニューにはない隠し味も こうして 穏やかに流れる心に触れて 更に溶け出す 綺麗なモニュメントとなるから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ボジョレヌーボー/藤鈴呼[2018年4月11日9時52分] 珍しく衝動買いした赤ワイン 電動オープナーの使い勝手が掴めなくて  旦那に丸投げ 最初 コルクが上手く取り出せなくて  四苦八苦 ボタンを押し続けて  最後まで一度 押し上げる必要があるのね と気付いて 問題解決 新し物好きだから 問題が起きるのね 喰わず嫌いのままならば 新鮮さは 感じられない いつまでも 昔の杵柄 気にしてサ 木に成らぬ実の行方を 目で追ってる どんなミキサーで撹拌しても 絞り立てのジュースには 叶わないのに さも斬新な味わいで あるかのように 心まで 楽しませる 気泡の奥に 一粒の夢 閉じ込めた 扉の外には フォークが待っている 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ちょっとダケ 違うのかい? 猪突猛進 色んな臓器を突き抜けて 酔っ払いの向こう側へと走る その先には何が見えるか 夕闇 朝焼け 酔いどれの唱 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ぽっと/藤鈴呼[2018年5月5日20時22分] 陽だまりだなんて心地良さも 少なくなって行く季節 黒く映る大木に ラジウム色の蝶が留まる わずかに広げた羽根が 首を傾げる仕草にも似て 向こう側を照らす光は 希望と夢を詰め合わせた 少し早めの クリスマスケーキ 朱かった紅葉が 少しずつ黄褐色に変化する頃 思い出したのは 紅茶 突然に 飲みたくなって ポットの湯を ゆっくりと注ぐ ほんのりと浮き上がる香りは 愛おしさの シルシなのかもね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・: ---------------------------- [自由詩]刻み紫蘇の様に/藤鈴呼[2018年5月6日11時13分] 広がりのある空を演出するのは雲 一つ一つの流れが急で 視界が追い付かぬ瞬間も 心ばかりはゆっくりと携えて進む あと一歩で冬景色 その前に 踏み締めた足跡を 刻んでいきたいね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]これからも/藤鈴呼[2018年5月8日9時55分] ちょっと塞ぎこんでしまいそうな時に 思い出すのは 眠る場所があって 食べるものがあって  大切な存在があることは しあわせだ ということです しあわせって しあわせな瞬間には  実感しづらいものかも知れないし 失くして気付くものって意外と大きくて 通り過ぎてからでは後の祭りになりかねないけれど 今の私に出来ることは 目の前の人に 精一杯  伝えたいことを恥ずかしがらずに贈ることなんだな そんなことを思い出しながら これからも 進んで行けたら良いな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]笑いジワ/藤鈴呼[2018年5月9日9時03分] 口角を上げると 今がたとえ 悲しい瞬間であっても 脳が 楽しかった時の気分を思い出してくれる と聞いた時から 出来るだけ 笑顔でいたいなって 思うように なりました ただ 豊齢線が気になることも しばしばありて そんな時には マッサージなんかしてあげて また 新しい笑い皺が増えて そんな風に 笑顔を沢山つくりながら 楽しい角度の笑いジワの残る おばあちゃんに なりたいな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・: ---------------------------- [自由詩]ツリーのように/藤鈴呼[2018年5月15日20時05分] 月が真っ二つに割れた夜 空を仰いで これが下弦の月なんだよねと 呟いた 会話の中の匙加減は案外と難しく ヤベエ!と思った瞬間に 間違ってイイネ!ボタンを クリックしてしまったりする シマッタ!の冷や汗も凍る季節 寒気団が少しずつ踊り始める 山が在るから 吹きおろしの風が溜まり 濡れているから 着込んだレザーのジャケットも 意味を為さない ポツンと離れた星ひとつ 何て名前だっけえな 星座表をくるり動かすことが出来れば 確認できるのに 今 出来ることはと言えば 正座するくらい 膝の裏が しっとりと濡れて 痛いよと呟くから 組んだ足を 一度解いてやり直し 見上げたツリーのように 上手く編み込めたなら 最高なのにな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]そんなこと/藤鈴呼[2018年5月16日9時31分] 涙ってしょっぱいんだって  ふいに気付く瞬間ってあるよね ふいに、じゃあないね そう気付けるのは 涙が流れている時だものね まさに号泣と呼べるような瞬間には 涙の味も感じられないほど 息を吐く暇もないくらいに哭けてしまう そんなことも。 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]忘れて/藤鈴呼[2018年5月19日11時28分] 真夏は シャーベットが ありがたかった ザクザクの路面で そんな日々を 思い出す ギザギザの心は まるで 氷柱みたいに 心を 射抜くから 少し 温まる頃 陽光に充てて 安らいだ 時間 力を抜くのは夜と 決まっていた筈の 勝手に思い込んでいた ワタクシの心臓が トクン ゆるやかに 揺れた カタン 誰かの足音に ビクン もう 振り返る事も 忘れて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]進行方向/藤鈴呼[2018年5月20日10時04分] 手が凍えると 少しでも 温めようとして 両手をこすりあわせる 身体が凍えた時に おしくらまんじゅうをした 子供時代を思い出す 足が震えたら 地団駄を踏んでみる 足元の氷が割れて 道が顔を出す これが進行方向 そう信じて歩行する 芳香 大好きな曲 その全てが 楽しく リフレインし始めて 終に 笑顔が隠せぬ程 幸せな気分に包まれる そんな季節感が イイ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]仄桃/藤鈴呼[2018年5月22日12時20分] 少しずつ 近付いて来る 大切な季節は 楽しみに しているのは 雪でもなく 撒き散らされた 愛でもなく あなたでした ふらふらと彷徨う町に イルミネーション 色合いが青いからと ブルーな心の言い訳を 重ねて 重ねて この雪のように どっかりと 積もった 哀しい気持ちを 払拭して くれるかのような 仄かな 桃色が差した頬が 一番 綺麗ね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]プチポエム/藤鈴呼[2018年5月25日11時28分] 小さな、と言う表現は 縮こまってしまいそうな印象も受けるけれど リトルマーメイド そう書けば 何だか 可愛らしさまで 浮かぶ ぷちっ と 可愛らしい透明模様を描いた円を 少しずつ 潰していくように 緩衝材よりは プチプチと呼んだ方が 可愛らしいね プリティー ちょっと 洒落たイメージ 可愛らしい 可哀相 色んな言葉を鏤めて 私なりの 世界を探す プッと 吹き出してしまいそうな 斬新さと ふっと 息を吐き出しながらの 安心感 双方がシーソーゲーム ゆれる めぐる また まわる ゆがむ は ごめんだ プールサイドで 佇む 傷に染みるから 本当は 濡らしたくなかった、と 裸足の爪先を見つめる 伸び放題で どんなペディキュアも ハシタナク映る頃 血豆が消えた 伸び過ぎて 良いこともあるね 例えば 猫のように 思い切り 両手伸ばしてみたら ちょっとは 楽に なれるのかもね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]みるくてぃー/藤鈴呼[2018年6月1日10時20分] ミルクが甘いのは 優しさが 詰まっているからかな ちょっと 胃が キリキリと痛む日も 何となく 柔らかなイメージで 喉を 潤して くれるから 赤ん坊を抱くと いつだって ミルクのにおい そう 代弁されるけれど 実際に 感じる機会は 意外と少ない いつも 毛嫌いしている  泣き声も 叫び声も 心の声を 上手く伝えられぬ その 代わりなのかも 知れない そう 云えなかった頃 私達は どうやって 濡れた頬を 乾かして いたのだろう 今は 想像することしか 出来ないけれど 大人になったから ではなく 目の前に ティッシュがあって 拭うと 涙が消えると 知ったから 活用できること そんな風に 一つ一つ 重ねて行けば 良いんだね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]うみねこたち/藤鈴呼[2018年6月2日9時30分] だらだらと流れる水が ダダ漏れするならば こんな瞬間 水滴が躍るのは イルミネーションの内側だけ 例えば 光に重なった 偽りの 文字の分だけ 想いは 重りに量られて 謀られた分だけ 透明に 近付く 角度が不明だ 反響した壁の向こう側に たわわに実る房がある ぽよんぽよんと音がすれば どんなテクニカルボールよりも 乗りこなせるバランスを 生み出せるのに だらだらと流れる粒は 今 固まって 小雨に代わった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]虎の尾/藤鈴呼[2018年6月12日19時45分] 暗がりの中で揺れる存在感に やわらかさを ふわり足して 葦の穂と知る 呻くような叫びも 穏やかな笑顔も ここに 光 あればこそ 美しく 魅せるのでしょう されば 明順応の手前で 視界が悪いことにも脅えず 進みたくも なるものかな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° 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スッと刺した頬紅の色が 暁を思い出すようで 睫毛の下に浮かぶ影は きっと 夕暮れ 繰り返したら 一日が終わる 繰り返せたら 一日が また 始まる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ジンジャーはちみつレモンティー/藤鈴呼[2018年6月18日0時32分] 煌びやかなネオン通りや  切なすぎるメロディーよりも 心潤す存在があるとすれば  喉を潤す生姜紅茶だろう 君は何時も 何かを勘違いしていて  ジンジャーティーと言えば ブレッドマンと続けたり 甘ったるいクッキーの味を連想して  にやけてみたりもする そういう処が可愛らしいのだけれど、 とは思うが 刺激を含んだドリンクのように  一瞬 詰まったりする 会話の中で  二の句を継げなくなったりすることは 有り難いことに 最近では  ほぼ 無くなった 昔は  「沈黙の時間が苦じゃない相手が理想」  なんて言っては 長かった髪をかき上げて 頬杖ついたりも  したもんだ 君が勘違いしている「何か」が 「なに」で在るのか 説明しようとすれば  上手く言葉が出て来ない 要らぬ台詞ならば  ゴマンと出ては離れないのに もしくは君の心を  閉じ込めてしまえるものならば もっと 良かったのにね 喉の奥に 小骨が刺さったような… 否 今日の気分は洋食に決まりだ だって クリスマスなんだもの 魚の小骨じゃあ なくったってね 本当は 自分が肴になる位が 丁度良かった 食事の最中  君は何度も繰り返した 窓の外を駆け抜ける 大型トラックを眺めては 「かわいそうにね、今日は クリスマスなのに」 宅配トラックを眺めては 「仕事だろうけど、大変だね、クリスマスなのに」 少しの同情と憐み  ともすれば優越感や安息をも 表現された 一言だったのだろうか 振り返った 僕の瞳には  涙雨が伝う 硝子が見えた 僕が 泣いていたんじゃない  空が 代わりに 哭いてくれたんだ そんな 洒落たことは 言わないけれど ちょっと  代弁してくれているような気がして ホッと一息ついてしまったのは 否めない たった一言が 衝撃派となって 何度も押し寄せて来る そんなコトってあるだろう 丁度 テレビ画面で誰かが喋っていた 「心が風邪を引いて云々…」 嗚呼、そうなんだ!  そんな感覚なのかも知れない ほんのちょっと ガサガサした 喉みたいに 小骨の代わりに 生姜の欠片が挟まった 歯の隙間から 苦しいよって言う代わりに  呻き声が 漏れるみたいに 聴き様に寄っては 鳥の囀りに似てなくもない 勘違いするならば 聖なる鐘の音だとも思いたい そんな錯覚が 許されぬ程  破壊力のある 一言がある あの日 少し 風邪気味だったので 何時もはしない料理を 君がしてくれた メニューは何かのパスタだったと思う そうだ 君の好きな ミートソースパスタ その後で 年賀状を書かないと…  と パソコンに向かって 私はテレビに向かって 閉じそうな瞼を こじ開けていた あの音に関しては  今更 驚くべきことじゃあ ない 君の言う通り  もう 何千回も 放った音 くしゃみが ハックション! と 表現されるとして おならが ぷ〜う! と 放たれるとして しゃっくりは 人それぞれだろう ひいっ 引き笑いのようになってみたり  アレンジが入ってみたり 何度か続いた後で 一言 ぼそっと呟いた 「きたない」 汚い キタナイ き た な い 出会って十年程になるが このタイミングで ワタクシは キタナイソンザイとして ニンシキされたのだ アナタはワタシの方を チラリとも見やることなく 視線は画面に釘付けで その後のフォローもなかった たった それだけのこと 何の気なしに 放った一言は 放屁よりも馨しく 我が心を打ち破ったから こりゃ一大事 寝ても覚めても 私は 汚い者として生きることを余儀なくされた 枕が濡れるのに不思議を感じたのは  何故だろう そうだ 涙が 上に流れて行ったからだ ドラマのように 格好良くは いかない 耳の穴に入って行く水滴は 結構えげつない ぞくっとする そんな自分に ゾクッとする 身震いがする 熱が上がる 朝が来る 昼になる 夜になる 二人になる 朝が来る 一人になる 私は眠る 夜になる 私は眠る ワタシハネムル 何かが スウッと引いて行くのを感じた 清々しいミント味のキャンディーならば 思い切り 深呼吸 出来るだろうに あなたは 薄荷が キライでしたね 思い出の中で そう呟けば キシリトールが呟く 歯の健康は命です 芸能人じゃないから 今更 歯の黄ばみなんて 気にしないとか言いながら 血が出るまで 電動歯ブラシを動かしてみたりもする ほんの とお 数えた頃 それくらい昔の ある夜 私達は 冷えた身体を  ジンジャーティーで 温めた あの頃 二つの心は  同じような角度で 綻んでいた 結ばれた紐が 解けるのは 道理 それぞれの 旅立ちへ向けて 準備を始める頃 素敵なジングルベルが 鳴り響く 同じ湯船に浸かっても 何だか生温い それは なまぬるいカンケイ なのではなくって ココロがササクレダッテイルだけのお話 お箸を取り直して  取り零したものを 一つまみして それは そう 例えば  この季節なら 年越し蕎麦 かしわ汁を作って 柏手を打つ頃 私達は 空の上 南の空へ 飛び立つのね あのね、あなたいつも まちがえているんだけれど あのひ のんだのは はちみつジンジャーティーなのよ 檸檬なんて ひとっかけらも 入っていないの うん だけど 何となく 合うような妄想も してきたわ どんな味が するのかしらね お店のお姉さんに 質問された クリーム系の味って 飽きない? 私はドロドロ系が大好きなので 飽きないけれど 誰か他のお客さんに 言われたんですか? ううん、違うの。わたしがね、飽きるから。 「ワタシガネ、アキルカラ」 褒め千切った翌朝の胃もたれは  二人 おんなじ あれ あんなに おいしかったのに おかしいねって 笑い合ってる 大きなカップの中で 生姜の欠片が ぶつかり合って その内 喉の中に 共に 吸い込まれて行く 胃袋の中で はちみつと 紅茶と 同化して どうかしていた過去なんて どうでも良い位に 笑える位の おとぎ話に 代わっていくから だから どっちかって言うと 生姜は  磨り潰してない方が 好きだな 喉に刺さった 小骨の代わりを 見つけた 言いたかった 台詞の渦だ 渦潮に遭遇した記憶はないが 船の上から眺めると  きっとこんな感じなんだろう 自分だけ ずぶ濡れ回避しておいて 水滴の一つ一つを 綺麗だね、なんて言いながら 眺めて居る それこそが 汚さ だったんだな 例えば他人の車のワイパーの動きや イコライザーから 眼が離せなくなったりする夜に 目の前のシグナルが 青から赤に代わろうとも 関係ない と 言うみたいに 黄色、だったなら 何か 代わっていたのかも知れない 中途半端な 今の自分と  同じくらいの 色合いだったなら ちょっとは気にして 立ち止まったりも したんだろうって 思う 私は 一連の出来事を 小さなカードに認めて 彼に渡した 二人 とびきりの笑顔で 満腹になった その後で 「・・・なんで ここに こんなこと 書くかなあ」 そんな言葉が凝縮された  第一声 「そうですか」 そうですか そうなんです 躁ですか? ソウかも知れません 楽しい時の波が 引ける時の早さ 小波が 溶ける瞬間の 儚さを見た気がした 立体型のカードの方を 開いてくれたなら 良かった そこには きっと こう書いてあった筈だ 「あなたに ずっと 着いていきます」 だから 連れていってね どこへ? 小波の向こう側へ ワクワクする出来事を乗せて ちょっと違う 一緒に行こうね 愉しい日々を探して 穴だらけのヒビの深みにはハマらないで そう祈るだけのクリスマスがあっても いいよね 湯気が消える 流石の生姜力も 何時間もは 続くまい そう 知っているから 早めにカップを持ち上げて わたしは また  はちみつジンジャーティーを 飲み干そうと している ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]音の懐/藤鈴呼[2018年6月18日14時31分] ゆっくりと振り返る 前なのか 後ろなのか 右のような気もするし 耳が詰まっているだけの話で 本当は左側かな とても近いかも知れないけれど 案外と小さいから 遠いのかも 鳴っていることは 分かるのに 出所が 分からない 虹みたいに 生えている訳でも ないしなあ  なんて 考えている内に 一瞬訪れるは 静寂 シーン しーーーーーん、と言う音が つーんと響き 鼻の奥で 水たまりが破裂する 瞳が腫れて ポインセチアの色になる ゆっくりと 染まるから 境界線が 分からないのね それでも 自分の中で響く 心のお話だけは 失くしたく ないな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]左右の階段に積もる雪 /藤鈴呼[2018年6月20日0時23分] 昨日のと 一昨日のと  明々後日の雪は 積もる手前で 出番待ち  握りしめる欄干に にじり寄る  この空気感で  いっそ 溶けてくれないかと  願い 込めながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° 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