藤鈴呼 2018年2月15日8時13分から2018年4月24日9時45分まで ---------------------------- [自由詩]長瀞/藤鈴呼[2018年2月15日8時13分] とろとろの眠気を抱いて通り過ぎた芝桜 一枚一枚の花びらが妙に奥ゆかしくて ふわりと笑えるくらいには近づけぬ 頃合いを見計らい オール片手に君が ゆっくりと瞳を合わせるように 擦れ違う 揺れ惑う 紛うことなき愛しさに 言葉が詰まる 擦りおろし林檎のように薫り立つ丘の上 ハミングを重ねたら不思議な穴から流れる音色 乾いた陶器のような楽器 見た事も 聞いた事も無い筈なのに 心に響くのは何故だろう 固いミルフィーユを岩畳と呼ぶ地域 風化せぬ堆積岩は何処の国へと飛び立った 見付けられた嬉しさに 見付かってしまった やるせなさに 口笛ひとつ 今夜のお供が決まる 一つ目は とろろ芋 二つ目は 蓮根 最後の一つが決まらない 今 種を植えるから 来春まで ゆっくり待って 頂戴よ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]クラムチャウダー/藤鈴呼[2018年2月16日10時43分] 寒さに打ち震える なんてのは きっと 大袈裟だけれども 何らかの 驚き話を 耳にした瞬間 サブイボが立つみたいに 自然に鳥肌めいた空気感を得る季節 コトコトと 煮込みたいの 箱の外には キャベツと書いてあるが 本日の主役は ホイコーロー キャベツは そちらに 摂られるからね じゃあ どうしよう そうだ 白菜が あったよね 残り物だけれど きっと福があると信じて 服を目一杯 着込んで もう寒くないと 吹きかけた息が 白く凍る 未だ氷柱には 出会えない この地は 氷点下になることが 珍しいのさ オタマと人参が 小刻みに揺れる シメジとジャガイモは 小躍りをして あれ アサリが ないよ 同じキノコだからって 馬鹿にして 忘れたなんて 言わせないから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]サクラ臀部/藤鈴呼[2018年2月21日11時47分] 産まれた瞬間から刻まれる印 私で在る証拠 存在感が透明感 薄くなっても クリスタルは 美しい 煌めくガラス細工 素材が儚げに見えて 軽く観てた 直ぐに 壊れるのだろうと 否 厚みを増して 見え方が代わる 牛乳瓶の底眼鏡みたいだ 其処には 真実のみが 映し出される 美しさも 汚さも 儚さも 力強さも 全て ミキサーがけした ミックスジュース とろりとした 夢の味わい 色合いも 可愛らしいのよ 例えば そう あの 庭園みたいにね 春になると ツツジやサツキが咲き乱れ 桃色一面に 生まれ変わるんです この時期 色付く ドウダンツツジ 色気づいた頬が 陽射し浴びながら 通り過ぎる 葉のシャワー 夕方までは 未だ早い 本物のシャワーには 未だ遠い 春になれば 桃色に染まる チェリーブラッサムズ ほんのりと描いた 大好きな香り 鼻先を掠めながら 通り過ぎて行く ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]シャケのニホヒ/藤鈴呼[2018年2月22日9時34分] シャリなんて シャレこきやがって 誰かの舌打ちが聞こえる町 待つことに疲れて 食欲に憑かれて そっと唇に運ぶ食材 シャリに載せると トロミを増すの サーモン そうだ サーモンピンクって色もあったね 言葉を耳に乗せる度 美味しいシャケのニホヒを鼻に乗せ ヒクヒクとヨダレを垂らす 嗚呼やっぱり私  食いしん坊みたいだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]鰻-うなぎ-/藤鈴呼[2018年2月23日9時22分] 冷凍していると すっかり忘れる存在 熱い鍋の中 洒落た食材達が乱舞する 冷たい豆腐の中に  隠れたウナギの論争 足先が熱い お前ちょっと出て行け 指先が冷たい お前もう少し こっちゃさ来い 田舎風の溜息が流れる町に 綺麗なランプが灯る 街が クリスマスカラーに染まるまで あと少し 気の早いサンタは クルクルと回りながら トナカイを調教中 早く タイヤ交換をしないと 轍に乗せられて ソリがはげるよ 塗装じゃあるまいし  剥げるもんかいと独り言 意思で固めた錫 チャリンと鳴るのはコイン 石で作った鈴 小気味良さは超一流品 温かい地で カヌーの姿を眺めながら 見つめる水面に 三つの輪が重なった 虹と希望と夢 憧れのスリーセブンだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ジオラマを囲む大人達/藤鈴呼[2018年2月26日9時39分] 幼い頃 自転車で潜り抜けたのは 大きな世界 低い位置から見上げた大人達は もっと偉大に思えた 今 こうして 眼下に広がる世界を 眺めるにつけ 登頂した 全ての山と 尾根の流れを  回想できる倖せを得たような 不思議な面持ちで  一服をする 錆び付いたボディーに張り巡らされた 幾つものアンテナ 海風に やられているけど 助け声は 必ず受信するから 大丈夫 大きな手で 頭を撫ぜられるような感覚 少し 歯がゆくもあり 不快感も持ちながら 見据えた空 抜けるような雲は 何処までも白く 何を 卓越したら良いものか ピンポン玉を 頭に 描きながら もう一度 考えて見る ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]藤色の空/藤鈴呼[2018年3月3日10時29分] 淡い空の色は 何時の時も 同じ色合いに非ず 暮れゆく紅色も 始まりの藍色も 揺れる程に 美しい 喩えるように 流れる雲に 我の思いを乗せて 割れた空の隙間に 埋め込むのは 永遠の 夢 儚い声色が響く 雷鳴が轟く上に 重なって 溶ける 飛沫の上がる海は 冷たいけれど 身も引き締まる 遠い空気感に 膨張した心を ゆっくりと 預ける ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]三角/藤鈴呼[2018年3月5日9時16分] 膨らむ形に埋め込まれた視覚 影と道に挟まれた新たな縁 機械的な背景に 人道的見地を携えて 脇腹を抑えて走る 痛みも笑いもごた混ぜの フラフープがくるりと巡る時 思い出すのはメリーゴーランド たまには コーヒーカップでもい い 切っ先の鋭さばかりを 必死で隠し続けるように ギザギザの メタメタの恐怖を 三角形で 覆い尽くした ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]鮭親子丼/藤鈴呼[2018年3月6日9時45分] 笹川流れで頼む昼食 海岸に沿い 歩んで来た二人は 親になること 叶わなかったけれど ここに 美味しそうな シャケとイクラが 仲良く座っているからね 慰め合うような米粒に敷かれた 彩り豊かな紅葉みたい 少し掬って 救われて 此処にスプーンは 無いけれど すくいあげて行こうね 哀しみも 痛さも 個々に居たさも かなぐり捨てて 晩酌に目覚める親子みたいに 素敵な瞬間を ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]痛みは/藤鈴呼[2018年3月7日11時20分] 目に見えないから 余計に 酷くなる 痛い 痛いと 必要以上に 騒ぐ人 ジッと堪える人 的確に 表現する人 それぞれの傷の大きさは 測れないから 比べることなんて 出来ないもの 傷を 舐め合えば 一瞬は 楽になる 乾いた瞬間 ピリリと音がする 痛みスパイスが 静かに弾け始める 良薬なんかじゃない ジワリと滲み出す汗が 全ての結末を 描き出して行く 分け合えば 何時か 自らに 降りかかる痛みに 想像力を 働かせて 身を固くする 何処まで 持つかな 幾つ 持つかな 両手を広げて 材料を 計っている 音と 同じだ 不協和音は いけない 虹と 似ている 隣には 美しい色を この傷が 一番に 映える姿を 考えて それまでは じっと 蹲って 生きる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]抗いの唱/藤鈴呼[2018年3月9日9時32分] あなたが いなくなった時 静かに 呟いた 一言が 忘れられない あの人ならば 世の中を 変えてくれるような気が していた ただ 奇抜なダケじゃなくて 何か 凄いことを してくれる そんな人だなって 見ていた だけど 結局 人間だものね こうやって いなくなって しまうんだね 抗えぬ 大きな力に 閉じ込められそうになる 一瞬だった 貴女の青春時代 どんな楽曲が 幾つの痛みを癒して 心を やわらかく して来たのだろう 私には 想像することしか 出来ないけれど これから生まれる 美しい世界を 出来る限り 共に 見定めて 生きたいと 強く 願う 心は 同じ そう 信じて 行かなければね 耳の中で 踊る 良く知らぬ バラードが 胸を打つ度に ことん と 一つずつの傷が 零れ落ちてくれれば 良いなあと 願う ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]光の帯/藤鈴呼[2018年3月14日10時42分] 北風の音で 眠れぬ季節がやって来た 夜の唱は 愉しいかい? 話し掛けようにも 勢いの強い風は 留まること知らず 対流しながら 我の心を 鷲掴んで 空に 飛ばしてしまいそうだと 身構える 布団にくるまり 風よ、お前なんかとは 絶交だ! 鼻息荒く 見た夢は 哀しげな気配 どんな朝にも 青空がくっついている 見えぬのは 雲の悪戯 相手をしようにも すり抜けてしまう ここが 空の上でも 絨毯みたいに 胡坐を欠いて 会話する訳には 行くまいぞ 天使の梯子が見えた夕刻 不思議な一団が 昇り始めたのかと 目を凝らして気付く 薄い雲に 覆われぬ部分のみ 光が見えているだけだ その路は 思う以上に遠く 簡単には 踏み出せぬ 一歩を思う 写真や記憶や幻想でしか出会えぬ虹 久方振りに掛かる 幾重もの筋に感動し ふとアクセルを緩めると同時に 心が ほぐれ始める きつく巻いた紐が ぷるぷるの幻魚を 羽交い絞めに しませんように 生臭さの残る ベランダから見上げる空 青の術 未だ 見えるよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]眠れぬ夜には /藤鈴呼[2018年3月15日7時35分] 無理に布団から這い出ると 危険ですよと 独り言 猫のポーズがお決まりの 病を避ける 良き仕草 昔隣のおばちゃんが 倒れていなくなりました その時知った病名が 大っ嫌いな蜘蛛に似て 恐怖イメージ 植えつけられた 白いシーツ 固いベッド 小さな願い事 震える声 それら全てに 否と応えることが 出来たなら それでも世界は 変わらないけれど 笑顔の数だけは 増やせるような気がして あがき続ける ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]冬ほたる/藤鈴呼[2018年3月16日9時51分] ゆっくりと流した涙を 重ねて作る 水たまり 溜まり過ぎて 川になって 何れ海へと 向かうから 塩辛い理由を そんな風に  考えることにした 海の中に浮かぶ 二つの島を 結ぶ存在 海ホタル 何て 可愛らしい ネーミング 辿り着いた 土産ショップ 木馬のようなオブジェに跨る ポニーテールも水に浸かると 重くなるよ 長かった髪と 同じ位に伸びた記憶が そっと囁く 街角で見つけた灯り 真っ先に思い出すラジウム こんな処で 君が 移ろいでいる訳は無いと 決め付けていた 彼等は 水の綺麗な場所に 集まるからね カメムシも そうだなんて 夢を 壊さないで 弦を弾く後の 余韻が全て 光の尾と 同じくらいに 妖艶 捕まえてはダメ 掴んでもダメ そっと 眺めるくらいが 丁度良い アスファルトジャングルには 似合わぬ光だからこそ 求めるのね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]近付けば/藤鈴呼[2018年3月22日6時55分] ぼんやりと浮かぶ 緑 黄 赤 原色までは 近付けず 柔らかな 芝の上を 思い出したり 仄かな 頬の温もりを 感じたりもする このあたりに 四手が あったよなあ アカシデだったかいやあ 街路樹になるヤツ  あれ 何て言ったっけなあ そうだ ケヤキだ なんて会話に包まれながら 近付いたら もみじ いや カエデ 一体 どちらが本当なの?と 繰り返す 裏も表も 彩り豊かで 空を見上げて 美しい溜息を吐く 赤子の掌を 触りたくもなるような 秋の気配を ゆっくりと 振り返る ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ワンモア/藤鈴呼[2018年3月22日22時51分] もう一つ 次への欲深さが 増す度に 表面張力を 試したくなる夜 ?酒に似合う一合を探す 今夜は熱燗 立冬も過ぎて 寒い頃合い 温もりが欲しくて 手を繋ぐ恋人達 はしゃぎながら 笑いながら 通り抜ける イルミネーション クリスマスが近い 年末になれば 何かを捨てて 始まりの合図とともに 新たに 生まれ変われるような 予感とともに まやかしの希望でも なんでも良いから はちきれそうな心を 繋ぎ止める糸を ゆっくりと 引っ張る ワンモア ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]炭水化物パレード/藤鈴呼[2018年3月23日9時24分] 米粒たちが 踊る街 クリスマスソングが もうそろそろ 響き始めても 良い頃だよねと 笑う 嗤われるのでは ない あくまでも 主人公は 口角なのだ 広角レンズを 目一杯に構えて シャッターチャンスを狙うと 米粒に描いた文字が ゆっくりと 浮き上がって来る 一文字に思えた 象形文字 一見しただけでは 意味の判別が 付かぬような彩 言葉のアヤを見つけながら 思う 半べそ交じりに作った 東京タワー 一人では繋げなかった 毛糸の束 回しても 回しても 胴体が隠れなかった 手編みのセーター チクチクする カーディガン ふわふわの アイツ 指網で 何処まで行けるか 競争してみよう よーい どん! チャンスとともに 閉じたドアを いつまでも 眺めながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]紅葉花/藤鈴呼[2018年3月24日8時54分] 手首茎からパラアリと広がる 指の先に光る マニキュアの花 染まる色なら 勿論 紅 エキスをくれない? 首を傾げて聞きかじった枝が ボンタンの先にポタンと落ちる 滴るのは霰  アレ 今日は寒いから アラレが見えたの? 大きな眼鏡が丸いから 可愛らしいような気がしたけれど 垂れ目なの その方が可愛らしいわよと パンダの溜息 黒か白か灰色か グレイの雲か 空を見上げる度  もみじの朱さが目に染みる 色合いの空虚さを感じるのは こんな瞬間 冷たい朝 ぬくい昼  夜の温度は急上昇 風呂上りに加工する体温 布団でくるめば 幸せな気分に包まれる 少し 守られて いるような 錯覚を 抱きながら 紅葉の鼻先に 眉を顰める ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]なんでもパスタ/藤鈴呼[2018年3月25日7時18分] 色んな物を スライスしたら 小さな畑が 出来上がる 稲穂の実る この季節 小降りの霰 振り切って たわわな笑顔  生み出しました 温かな湯気 転がり始め シルバー達も 仲良しで チャリン チャリンと  鳴りました 満腹サイン 成りました 大きな私 作られましタ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ツリーの魅力/藤鈴呼[2018年3月28日6時38分] 空を見上げると 光達が 一番星に向かって 集約されている だからかな 三角形が 煌めく理由は そう 云いながらも 輪になって踊る 噴水の周りに集う影たちが 一瞬にして 立ち止まる わらわらと 一つ跳ぶ粒 はじけるシャワーのような葉が 色を失っていく 次にそまる 雪色に寄せて 希望だけを 蓄えている 艶のある瞳に映る 逆さまの景色を これほどまでに 美しいと感じられるのは 今が 冷たい夜だからでしょうか ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ブラックライトの儚さに/藤鈴呼[2018年3月28日22時19分] 名前を付ける前に 白さを失ったニキビ まるで 産まれた瞬間から そこに 佇んでいたかのような自然さに 節々が きしみをあげながらも 叫ぶことだけ 出来ないでいる 足元を見ると いつかのゼリーを 思い起こす ぬるま湯に 浸かった分だけ まるで 宝石のような色合いで 若干 綺麗にも思えてくるから 不思議だ 金属をつけた瞬間の ケロイド状に 剥けた肌に 猫を抱きしめ眠った夜の 裂けた鮮血を閉じ込めた肘に ブラックアウト ねえ 知ってる? 暗闇の中で飲む ソーダ水 ジントニックの向こう側に光る 白いセーター こぼれた八重歯の角度で 今日の気分が 分かるんですって ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]やまがら/藤鈴呼[2018年3月30日21時52分] 山雀の チュンチュクチュンと 近付きたるも いと愛し 竹を集めた細長箒で蜘蛛の巣取りをしようかと 少しずつ 近付いて行くと 可愛らしい音が響く どうやら鳥らしい 以前は その頬の色から  ホオジロかとも勘違いをしたが ヤマガラと言う名の鳥である様子 何羽もいる 我が近付いていることを察知せず 唯だ 餌を求めて ついばんでいる大地には 枯葉の残りや 小石が 散らばっている 静かな恋が生まれそうなほどの ときめき 山の一部になってしまいたいような雰囲気 足を止める ポケットからデジカメを取り出す 少しずつ 近付く鳥に 逃げるなよ と 静かに祈る やわらかな時を求めて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]10年後の姿/藤鈴呼[2018年3月31日10時09分] 猫も杓子も地鶏が好きとは限らない 自撮りは得意な世代が増えた 手鏡を 机上に置いて 自らの 乱れチェックを したオケ部屋に 響く音量 大きな苦情 あの頃から 口紅なんて 忘れてサ 持ち歩くのは 色つきリップ リップサービス忘れない ディップサービスしたくない 笑顔 引き連れ 引き攣らず 意図は持たずに 横に弾く 邪さえも ハシタナク 歩く隙間に コーン揺れ 化かされキツネ 思い出す 灯りは左斜め上から照らして 視線は斜め45度でキメてパシャリ 一番若く見える方法なのよって 誰でも知ってる 遣い忘れた手鏡を  床と平行に置いて 覗きこんだら分かるわよ これが10年後の私 思わず閉口しても平気 確かめる頃には そんなこと きっと 忘れちゃってるわ ポップコーンとはまた違う 四角いクランチチョコレートを連想するの 空色のホワイト味は スッキリビター 味わっていると 森のくまさんも 一緒に踊ってくれそうな雰囲気 冬眠前に 仲直りして 楽しく笑い合いましょうよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]金魚の悩み/藤鈴呼[2018年4月4日18時32分] 惜しみなく埋める 余白に乾杯  赤とか白とか  少し墨のついた 筆を垂らした文字とか   幾何学模様から流れる 音符のような階段の先に 咲く未来  それが 来年と言う名の 時間帯なのですね うねる 鱗 ロコモコ丼の上から 黄色のソースが ゆっくりと漏れる ちーたらたら 流行の金管楽器 小脇に抱えて 甚振っても良いよ 弦は短く張ったまま 小さく降る頭 ヘッドヴァンの小刻みさ 繊細な精神 バイオレット色の バイオレンス パインの混じった オレンジジュース どれも 撹拌した 巻き返さない 巻き戻らない 何度 薪を代えても 焔は 小さなまま だから 冷たい心を 色濃く 映すのね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]黄色の薔薇/藤鈴呼[2018年4月6日12時12分] 夢を見るなら 楽しいのが良い 将来の夢も 眠る時の夢も 両方とも 微笑みが 返って来るような角度で 見上げてみたい 夢を観るなら 叶えられるくらいの 現実味も 欲しい 夢を抱くなら 両手いっぱい はちきれんばかりに覆う 大木のような存在であって欲しい そのまま両手を 空の方向まで立ち上げたら 虹の輪が 出来上がるから 例えば 叶わなかった 悔し涙で 誰よりも 素敵な虹を ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]幻想石/藤鈴呼[2018年4月8日13時45分] キラキラ光り出す存在 空に瞬く星 オリオンや北斗七星 カシオペアに ホッとする 一息ついた後で飲む 温かなココア マシュマロみたいな甘い泡に カラフルなチップが 散らしてあって 遊び心満載の ティーカップの中で メリーゴーランドで観たような馬が 今にも飛び出しそうな勢いで 吠える その声が 響きそうな頃合い 闇が訪れ 気温は低くなる 雨上がりの路は 艶やか 枝先で揺れる雫と どちらが美しいかと 競い始める ストローで 冷たい苺ジュースを飲む瞬間 色合いのまろやかさに気付けば ミルクを思い出せる メニューにはない隠し味も こうして 穏やかに流れる心に触れて 更に溶け出す 綺麗なモニュメントとなるから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ボジョレヌーボー/藤鈴呼[2018年4月11日9時52分] 珍しく衝動買いした赤ワイン 電動オープナーの使い勝手が掴めなくて  旦那に丸投げ 最初 コルクが上手く取り出せなくて  四苦八苦 ボタンを押し続けて  最後まで一度 押し上げる必要があるのね と気付いて 問題解決 新し物好きだから 問題が起きるのね 喰わず嫌いのままならば 新鮮さは 感じられない いつまでも 昔の杵柄 気にしてサ 木に成らぬ実の行方を 目で追ってる どんなミキサーで撹拌しても 絞り立てのジュースには 叶わないのに さも斬新な味わいで あるかのように 心まで 楽しませる 気泡の奥に 一粒の夢 閉じ込めた 扉の外には フォークが待っている ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]えびカレー/藤鈴呼[2018年4月20日11時47分] 旦那作のディナー 最後の最後まで  迷惑と言う名の置き土産を残しつつ 後ろ髪を引かれて来た夜 不思議なスパイスを絡めたようなカレーの香りが 鼻先をかすめた 一仕事を終え 帰宅したならば エビの殻むきと 幻魚の下処理に翻弄される覚悟で 玄関を開けたから 余計に広がる有り難さ 口当たり良く まろやかな甘さは 箱に記載されている 中辛とは異なるようで 不思議な角度で頬を染めた感動も一入 天ぷら粉を散らしたゲンゲに一塩ふりかけて 涙の代わりに呑み込むは 小骨 途中で見つけた小さな吸盤 これ・・・ イカ? いや タコだよ ちょっと漏れた笑顔以上に頬が歪む 唇が歪むのは もう御免だ 心が凍てつくのは もっと御免だと 何度も運んだシルバーが 舌先の火照りを ゆっくりと 癒して往く ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]CATS/藤鈴呼[2018年4月21日11時01分] 沢山の猫たちが集まるカフェテラス 我が部屋では 時代遅れのラジカセや パソコン置き場になっているパイプ棚が 時に彼等の遊び場となる 引くと点いたり消えたりする電気コードも 座ると心地良いのだろう合皮製バッグも みんなみんな 絡めても飽きぬ最高の玩具 弄ぶことと 弄ばれることの違いを知ってか知らずか 鳥居のような漢字の意味など 感じる必要は無いのだと にゃあと鳴いてお終いなのか とにかく伸び過ぎた爪と毛の処理だけは確りと 抜かりないのは擦り寄る頬ばかり 放心状態でも 眠くても お腹が空いても ウザくても 相手をしてくれる人間は きっと 都合が良いのでしょう 段々と解って来るよね 尻尾を向けられる瞬間 ビー玉のような視線から 一体 何を感じろと お喋りは続く くっちゃべって ですからね べちゃくって では ないのです 会話は 食べられない 喰われることは あっても 魚には なれないから 肴になるのが 一番良いですよ いつかの誰かの続きを いつまでも 反芻している ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]葉小判/藤鈴呼[2018年4月24日9時45分] 零れ落ちそうな笑顔が光る瞬間はと言えば 心地良い香りが漏れ聞こえるような湯気と 煌めく想いが触れ合う瞬間 少しでも重さが増せば 支えきれずに 落ちるのでしょう ねえ 知ってる? 雪吊の方法 太い枝は 自ら雪を 支える力が在るからね 小枝こそ 吊らなければ イケナイのに 美しさに釣られて 本来の目的を 忘れてしまっちゃイケナイよ 放射線状に蠢くロープを  何度 手繰り寄せても 真実には届かないって 知ってる あの頂上までは  どうやったって 昇れやしない 安全ロープも 下で支えてくれる綿もなく ましてや 雨に濡れたもんでから ぺしゃんこになって しまうんだから 憶えておいてね 小判の活用方法 狐が相手ならば 何とかなるかも知れない 狸が寝ていたら 無賃乗車 出来るかもよ そのまま 終点まで 固いベンチに座ってさ ホームの端にある 白い椅子と 同じ角度で うっつら うっつら 居眠りしていたら 夢の先まで 辿りつけるのかもね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- (ファイルの終わり)