藤鈴呼 2017年12月12日9時30分から2018年2月16日10時43分まで ---------------------------- [自由詩]蓮華温泉/藤鈴呼[2017年12月12日9時30分] 散策コースの奥にある 硫黄温泉 一度 行ってみよう!って 云おうと思ってた 追い駆けて来るように フツフツと湯が描かれ 周りの景色と ゆっくり 同化していくようだ 足元に広がる 四角い箱 思わず手を差し伸べた貴方が ヒヤッと叫ぶ ヒヤッとしながら見つめると ひゃっこいよって アナタ 思わず笑う余裕なんて 当時の私には なかった 車に置き去りの 買ったばかりの登山靴 なんて大袈裟なモンじゃあないけれど 本当に一張羅 サンダル履きでも大丈夫だって 言ったじゃない 坂道は 吐きそうな程 石がゴロついて 空を眺める代わりに 貴方の後姿を 所在哭く見詰めた ここで待っててと言われた後で シーンとした山の奥 周りの葉は 早くも紅さに包まれていて 誰の足音も聞こえない ガサリと音がしたら 熊かも知れないと 横に遊ぶ リュックが揺れる度 ワタクシの存在を示す鈴が チャリンと嘆く 落とした小銭の色と 運のツキを掛けて 夜空を見上げる頃までには どんなに良い香りの温泉も 成りを潜めて夢の奥 桃源郷に行けなかった分 少しだけ 叫んでみようかな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]もつもつ/藤鈴呼[2017年12月15日22時32分] のっこりと言う表現が相応しいかどうか 私には分からない けれど てんこ盛りにされた皿の中身は どう見積もっても もつもつしている モツやハツはハラミには 慣れてない プニプニのコラーゲンを 持て余す若者時代も とうに過ぎた それが哀しいとか 悲しがった過去とか 涙を流したかった思いだとかを  重くのしかかる雲の上に さらりと乗せれば タルタルソースをかけるよりも  シンプルに仕上がるのだろう 指でつまんだ人匙の塩加減が絶妙で もう 何にもイラナイって 満腹の笑顔で言われる瞬間だけを 心待ちにしているように 串刺しにされたミートボールよりも 大きさが明らかに異なるネギマの方が肝心 美味しさとデリカシーの隙間風が吹く回廊 ぽろんと響く琴の弦は月の端まで飛ばされて 黒猫がにゃおんと鳴く 心底 楽しそうに 上唇を 目一杯 拓いて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]檸檬玉/藤鈴呼[2017年12月19日21時07分] 甘酸っぱい何かを めくるめく味わいに替えるために 必要な甘露 葉脈に吸い込まれた 小さく白い卵 底から何が 産まれ出るか 分からないのに 怖くは無いのか 逃げたくはならないか 語りかける時間が 見つからない ただ 見守ることしか 出来ぬ夕べに 川岸に 黄色の浮き輪が見えた 浮かんでは沈み 沈んでは浮かんで来るかに思えた いや そう 信じたかっただけだ 思いは夢の中に溶け コロコロと 舌の上を転がす 飴玉の雫 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]芙蓉/藤鈴呼[2017年12月22日0時19分] 陽射しに照らされた横顔 月明かりに包まれた素顔 どちらがどれだけ哀しいか 朝になれば コケコッコ―の声が 高らかに響き この世の邪悪はナンセンスであると 信じられる? 夜がくれば アンドロイドの姿が 賑やかに観え あの世の天使はコモンセンスかもと 歌い始める 刈り取られた稲穂の代わりに 田の色合いを鮮やかなまでに 七変化させる存在 道端の彼岸花には 毒があって ネズミを追い払う意味が あったのだと知る あれは 鶏の華 コケコッコ―の花だねって 昔 呼んでた 楽しそうに唇から放たれた音も 今は遠い 少し明るくなった左頬 未だ暗いまんまの右胸 ホロスコープで描く予定の胃袋 笑い袋は幾らでも膨らませてあげる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]親不知/藤鈴呼[2017年12月22日9時13分] 薄紅の空を見上げて 朝焼けなのか 夕暮れなのかを決めるゲーム 喩え 100人の玄人が これは太陽に非ずと叫んだところで 貴方が認めれば それは 陽の光となる クラリネットの音だろう 錆び付いた色合いを連想する 金属臭い息の向こうに 吐き出された空気感 KYは 空気が読めないだけじゃない 汚い私 そう変換してしまえば 何者にも代えがたい悪寒ばかりに 足元を掬われてしまいそうで 佇んだ突起物の下に 吐瀉物が混ざり合う その泡の向こうに見える雄大な海に 何を翳そうか 七色に輝く 美しい虹の代わりに ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]浮き球/藤鈴呼[2017年12月22日23時22分] ポーンと投げる小気味良さに 小気味悪さをミックスして ジュースを作る コーラみたいに シュワッと弾けないところが 丁度良いんだ 弦を弾く楽器は 指先も痛めてしまうから 爪切りをしてから出掛けよう 厚着じゃないかい? 未だジャケットは早いよ 海っ端の風が 肌を切り裂く程に  冷たくなる季節には きっと 遠いから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]宇宙の色/藤鈴呼[2017年12月23日9時51分] 宇宙の色って何なんだろうと考えて見た  ブラックホールのイメージが強いからね  アンドロメダ星雲とか浮かんで来ると  どうしても 黒 紺 青 そんな印象が付きまとう  果たしてどうなんだろう  地球は青かった なんて名言もあるけれども  ぽわんと包み込む灯りの色と 「そのもの」の存在感は違うのが 日常なのかも知れないね  ---------------------------- [自由詩]苗名滝/藤鈴呼[2017年12月25日18時35分] ほんのちょっと 寒そうな色合いを連れて 風がやって来た パブロフの犬の代わりに パブロンをゴクリ 喉を伝う ソフトクリームの滑らかさに 舌鼓を打つ頃 意思を持った石を包む 水流の隙間が見えた 空気の層は はるか透明で ちょっと見には 分からなそうではあったが 目を凝らしてみると 存在感を 増すのであった そのまま そのまま テイクアウト テイクオフ 大縄跳びを 飛び越える瞬間のように ゴム跳びをした 少女時代を 連想する ここで ジャンプをすれば 越えられる筈だった はす向かいの蓮の花 蓮華色に 微笑む夕べ 灯りを探す 出口は どっちだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]狐/藤鈴呼[2017年12月26日8時45分] 広い草原を 横切るキツネ お前の尻尾には 昔っから 馬鹿されて来た ちょっと白くて または茶々くて フサフサで 可愛らしいからと言って オレはもう 騙されないぜ 素手で触る危険は 熟知している やつれた表情で やるせなさを 目一杯に描いて 芝に埋めた 碁盤の目ならば 黒か白 置く石は 決まっているから 奥行の長さも高さも 関係無いのでしょうに 事細かに 指示を出す 次の一手はこう まるで将棋戦 闘う前から 結果が分かっているかのような 痩せこけた狐 お前は 女狐か 雄々しく化かすのか 草原の向こうには 沢山の牛 モー沢山 藻色をした草を食む姿が 夕暮れの隙間に 色濃く映った ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]秋苺/藤鈴呼[2017年12月27日1時34分] 甘酸っぱさを 切なさの渦に埋め込んで 形を当てるゲーム 流行りの流木に載せた ラブソング エンディングだけ 見つからない どんな打楽器よりも 心地良い音を見つけた それは潮騒 打ち寄せては戻り 戻っては飛び越える 岸壁の導 岩の間に藻が蹲っては 寒いと嘆く 風が強いからね こんな日は 身に纏うコートが必要でしょう 今度 小枝を編んで 造ってあげる そんな約束も 思い出した 塩漬けにされた胡瓜が 少しずつ色を失い 若木の萌える季節を 思い出しそうになる頃 空に虹が掛かる 何だか楽しそうな雰囲気だと 首を突っ込んでくれば ミストシャワー 首元が やはり ひんやりとする 寒い、寒いよと また 嘆いている ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]なんにもない/藤鈴呼[2017年12月27日9時13分] 空間の奥行を描く想像力 創造力には長けていないから せめてもの思いで 脳味噌フル回転 せめてもの思い出作りに奔走中 ここは何処 コンビニが入るの 何だろう セブンかなあ ローソンかなあ 昔ならばやっぱり サンクスかなぁ とか 言ってたんだろうな  何処に住むか 行くかで変わる 連想力 怠惰はやだよ 臨場感を持ってさ それが どんくらい重いのかなんて 分かんない 翡翠の比重を以てしても 追いつかないのかも 知れないけれど そんなの関係ないやって 笑いながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]秋蒲公英/藤鈴呼[2018年1月7日0時46分] 根本から抜きとるコトは不可能 地下系が発達している アカカタバミのように 繋がって仲良く出て来てはくれない 血止め草みたいに 可愛らしい苔を いじめぬきは しない 茎の隙間から ミルクが流れ出す 赤ん坊に飲ませたら  苦くて吐き出してしまうよ 汚らしい言葉も 愛嬌だけの笑顔も通じない 純真無垢な花嫁に 貴方が言える台詞は たった一つ ありがとう そして またね 春になったら また会おう ギザギザの葉が 可愛らしくも思えるね ヒイラギの季節だから 指先に触れた 冷たい感触ごと 憶えておいで きっと きっとよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]数多ほこりも愛しかりけり/藤鈴呼[2018年1月8日10時35分] ワタクシの中身は ワタクシメにも 分からない 見えるのは 表 コインを飛ばした 掌のように 一瞬にして 解読できたら 器用でしょうに 解毒作用のある 高名な飲料を以てしても 流し去る事など不可能な 痛みのように キリリ カリリ 我が意の腑を 覆い尽くすかの様 さながら涼し気な図体で スルリンと入って来るから 有り難き存在かと思うけれども 身に染みるのです 時間を掛けた 一言の意味合いが ずっしりと 積もっては逝く 頭痛の様で 偽物との違いは何でしょう 裏側に書いてある文字を信じて進む 銀色の存在が冷たさを分け与える 金色の太陽など 存在せぬと知って生きる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]思い出のカクテル/藤鈴呼[2018年1月13日9時24分] 光の中で 輪になって 踊る人達 喧騒を離れた アスファルトジャングル 照り返しの陽射しも 落ち着きを取り戻す カクテルナイト ライトアップされた 幻想的な雰囲気に 包まれて ほんのりと サクライロに 頬を染める 温もりと 愛おしさを いっぱいに抱いて もう これ以上はない心地良さに 酔いしれる夜 シャリン 時を告げる鐘の音 チャリン 夢を描く 存在感 コイン手にして 裏表 どちらが出ても 大丈夫 きっと あなたと 一緒なら 何が あっても 乗り越えられるよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]重曹風呂/藤鈴呼[2018年1月14日15時57分] 白い泡が むくむくと湧き上がると 美しい組手が とある型を描き始める その一撃で倒せるものは 空いてののうみそ 相手の脳みそ 味噌味の醤油ラーメン 細く 長くも思える 縁起物の蛇 ヘビの皮で作った財布から 取り出した コイン 汗をかく度に 旅の恥を思い出し 端に寄る 夜になれば 箸を持ち 粗食をつまむ 高温になった油加減のように 浮き上がる ぷくり ぷくりとした 透明な縁を眺めていると 妙に心地良い 若しくは 足蹴にしたい その空間に差し込む夕陽の 切っ先を 闇に染めて 息を止めて 取り出してみる 銀色に見えた ブレスレッド 勿論シルバーの素材 机に置いて パシャリ 老いても 美しさへ駆ける執念だけは 絶対に 譲れないのだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]のりしろ/藤鈴呼[2018年1月19日10時06分] 和紙の向こうに浮かび上がる透かし細工 綿飴を舐めた舌が 二度目に撫でる曲線 比例・反比例・Y字曲線・ねじれの位置 正反対の等比例 バカボンのパパに聞いてみな これで良いのだ OK牧場 あなたが どんなに 迷っても 進む道なら 一本で 一番★に 憧れている 「貴方の人生を 和紙に描いてみました。 その形は鷲 いいえ、言葉遊びではありません。 存在意義が遊びの角度で染められて ハンドルと同じなのです 余白がないと 勤まりません」 と独り言 サイン・コサイン・タンジェント・シグマの位置で 立ち止まる もう 足すことも引くことも出来ないのだから 駆け引きなんてウンザリなんです、と、涙を流し 流し目で見上げた瞳が一番艶やかだったから もう 息も止まる程の美しさ 雅の意味を 視覚で知った ここから三分間 目を閉じて見ましょう その間の空気を 全て集めた容器を眺めながら 祈るのです 折り目正しい着物など 一度も羽織った事が 在りません 足袋を履く旅になど 出掛けなくても 分かります どの道を進んでも 戻ることは 出来ないけれど  進み方を変えることは 何時だって 出来ると信じて  人生には「のりしろ」が きっと ある筈だもの。 今 一杯一杯でも  余白がなければ 紙切れにしか なれないからね。 形になるには のりしろ 必要☆  今 決めた道は 「のりしろ」に なるかもしれないって 少し気楽に 思えたら良いね。 出来れば 自分にとって 後悔ない生き方が 一番だけど  それも 行ってみなきゃ イバラがあるのかどうか 見えないんだよなー。 見えれば 楽なのにね!! 流れ星が光る 眩いヒカリに包まれて  目が眩んだ角度で 睫毛が止まる パサリ これからの道を示す 一筋が 影に映った ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ニシキギ/藤鈴呼[2018年1月20日9時43分] 高らかに歌う 昔 ハマったアーティスト達の ヴォイス ヴォイス ヴォイス これでもか! と 言わんばかりの大音響で 流れ続ける 店の前 気の振れた角度で 何度もリフレイン 気持ちは分かる 昔の自分を 思い起こすかのようだ なあ、この楽曲達ったら 最高だろう? そんな気概めいた狂気も孕んでる 紅い葉で 心模様を象りました 人はそれを ハートと呼びます ラブ そう訳する方もいると聞きます お聞き及びかとは思いますが 要するに そういう事です 私たちは 幸せですから どうか お気に召しませんとも 邪魔などせぬよう  お気遣いくださいませ 静かな口調で そう呟いたピエロが 秋の最中を突っ走る 大きく口を開けた石像が 葉を呑み込む角度で立ち止まる そのまま もう 動かない ここに吹く風と 巷に席捲する風邪と ビタミン剤の中に隠したウイルスが 競合している ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夢の向こうから/藤鈴呼[2018年1月21日12時05分] 忍び寄る 紅葉の影 ぽつり ぽつりと 話し始める 呟きのようだ 一つは雨粒と化して 一つは涙と別れ 一つは空に還る 嗚呼 だけれども 葉が揺れるたび 切ないよ どうにも出来ぬ物事が この世には多すぎて 世知辛い どんな辛さなのかって 薬味の全てを遣っても 表現できやしない 小口ネギでも 生姜でも 茗荷にもない痛み キリキリと 這うような存在とも ちょっと違う ほろ苦さ 第三のビールが もう 当たり前になっている 横行している 蛇行している 匍匐前進など出来ぬ 横断歩道の上で 二人は 千鳥足 抱こうとしたら 引っ叩かれる そんな 当たり前の摂理を 当たり前の生理加減で 整理 できない 拒絶できたら 楽なのにと 拍手の途中で 掌に バタークリーム たっぷりと塗って 咀嚼した パラリと落ちた葉の先に 巣食う テッポウムシ 紅葉も 感動も 台無しにしてしまう 虫 無視できぬ 存在だから 蹴散らすことも 出来なくて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]首筋と雲/藤鈴呼[2018年1月23日10時28分] 触れてはいけぬ世界の扉をそっと開けると ブルウに満ちた世界が広がっていて そっと息を吐いたつもりが 余りにも早い雲の動きに目を奪われて そのまま 立ち尽くしてしまう そんな 夢を観た 瞳を開けたら 眩いばかりの赤 沢山の命が乱舞する ランプ代わりに乱反射する陽射しを観たかい 水面と藻に挟まれて 動けなくなる 金魚のような 細やかな鯉の群れ 彼等もその内 恋をするだろう それが 愛に代わるのかどうか 見極めるよりも先に 内側に 閉じこもらないでね 何時だって 内輪話は楽しいもの 団扇片手に 右側ばかりを 見定めて 居たいのよ 名も知らぬ芝生の群生地 水芭蕉の花を思い出したら 一面のホワイトアウトを思い出した もう直ぐだね 初冠雪した山も 多いみたいよ そこかしこに散らばるトンボの群れが 塵のようにも 埃のようにも感じられ 少しだけ 計算高い瞳が 誇り高き角度で ひっそりと うなだれる 首筋と 雲の隙間だけが 同じ色合いだった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]かんずり/藤鈴呼[2018年1月24日8時43分] 汗を掻きたい 恥よりも 先に 端に寄って持つ菜箸の色ほどには 焦がれている肌を持つ 決して怒らずムみあう 揉み合う、の 間違いではないのか 当初は奮闘した ギザリとした瞳で 世界を斜めに横切ってみたり 綱渡りをする時に カニの真似もした ものだけれども 無一文になって気付く悪魔 小悪魔なんて生易しさではなく 肌のように生ぬるくもない 熱燗ならば 酔っぱらえるものを ぐらんぐらんと巡る世界は 今まで一度も 経験がなかった 頬を撫でる北風が 切っ先を鋭くして 目に見える程 痛々しくなる その前に 何らかの策を講じなければ、と 生ぬるさだけを満たす心で 必死に考えている ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]あきのゆうぐれ/藤鈴呼[2018年1月25日16時04分] 紅葉ツアーのバスに乗ると 初冠雪の地に 連れて行ってくれる 最近じゃあ いつからが秋なのかが 分からない 飽き飽きするほど 考えたでしょうよ 薄手の長袖の活用法 ゴム手袋で 凌げるような気もして来た アームカバーでも 物足りるカナ 回廊の手前では 案内役 ショップに立つと 売り子に大変身 庭では ホッカムリして 草とりババア どれが一番 お好みですか?と 思案中 三日月の光る季節には 夜空の星も 綺麗です 逆さまの だぶりゅう ひしゃげた柄杓は北斗七星 昔のように 指幅では 探し出せない 北極星 圧倒的に 空が足りない 絶対値は 何時だって 同じなのに 相対評価が 良いものか 赤ペン先生と一緒に 考えましょうよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]首飾り/藤鈴呼[2018年1月26日11時16分] この素材は シルバー? プラチナ? ゴールドじゃあ ないことは 一目瞭然 色合いを眺めるならば 先ずは 着古した洋服が吊るされている ハンガーの奥まで 一気に回想してみな その後で 夏に何度 海水浴をしたか 肌の色に 聞いてみな 錆びても朽ちても 金具が外れても 失くせない存在 胸元のブローチは ダイヤモンド どんな鉱物よりも固いのですと呟いて 真鍮製の財布を ゆっくりと開けば 世にも不思議なコインが踊り始める どんなドレスよりも 軽やかな周り節で シンバルを叩くよりも 小気味良いハミングで お遊戯会の輪のように ロンデルを組み合わせて作る 首輪の部分 犬のジョンを眺めてみれば 直ぐに分かる 冬でも蜜柑を踏み越えて 元気に走り出すだろう 最早 素材なんて関係ないと 豪語してみな いっそ シロツメクサの群生地 少女の姿に変身して 夢の首飾りを作りたいくらい 時を巻き戻して カセットテープを くるくると回すみたいに ダイヤル電話を イライラと眺めるみたいに 時を巻き戻して 何よりも 素敵なブローチを 首に巻く その素材は アクリルだって 良いんだよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]彼女の髪はキューティクル/藤鈴呼[2018年1月28日11時06分] すべすべの肌に憧れる 色白の美しさは  太陽光線に ちょっと弱いんです カモシカのようだけど 食パンをカリリと焼いた時の 耳のような足首を眺めながら 下を向いた日々 舌を巻いたヒビ あのマンホールに 今更 何を 突っ込もうかと 考えましたが フィッシュボーンに してみました ツルツル過ぎて 編み込んでも 直ぐに 無かったことに なってしまう 三つ編みよりは 少し 形が 残るくらいの 四つ編みと言う 表現では 何処となく 不安だから あなたの ファンでいても いいですか 揺れる 扇風機 エアコンの温度は 急上昇 カラカラと 音が鳴るには 理由があるんです 金具がね 一生懸命 絡み付いているの マフラーの先に 笑顔が 括り付けられていること 早く 気付けば 良いのだけれど ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]コーンスープラーメン/藤鈴呼[2018年1月29日22時29分] 昔懐かしい味がやって来る フライパンの上で踊るポップコーンを 彷彿とさせる 沸騰した湯に 取り出した黄味を入れる 気味の悪さを払拭した闇の中で 何杯も堪能した熱さ 気持ちばかりが急いて 薄着なのに 気合ばかりで乗り切った冬 あの頃の何倍も 粒揃いの倖せを得たと 豪語できますか 箸の持ち方が なっていないと 豆を掴むのが難しい 何かのゲームみたいに 一つまみずつ 確かめていく その感触が とてつもなく苦痛だった ミックスベジタブル 色合いだけは 素敵なんです 何となく人参の風味を残した紅色と 少し カスカスになった玉蜀黍 グリーンピースは嫌いだから チキンライスには入れないでねってキミ 茹で卵の中に 全てを封じ込め グラングラン 厚手のガウンを羽織っては 武者震い もう直ぐ 出来るから 待っていてね 少し太めの麺に 絡むスープが 良い風味を 連れて来てくれるから 少し 漬け置きした方が良い でも 伸びる前に 取り出して はふはふと 食べる 唇が ふやけぬように 気を付けながら 舌が 腫れぬように 気遣いながらね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]エーデルワイス/藤鈴呼[2018年2月3日9時59分] 旦那の居ない夜 酒を酌み交わす 相手は自分の頭脳と心と身体と精神 五人に誤認 両手に華を携えて走る へべれけの道 その先に 千鳥足でしか渡れぬ橋がある 踏み出してみるかい? 渡り切れるとは 限らないけれど 近所に 諸葛川ってあったろう? あの語源を 知っているかい? 諸々の葛湯を集めて 風邪を治す方法より 難しいかも知れない事実が 認められているのさ くたくたになった茄子とピーマン 彩りが全てだから 赤い唐辛子を加えなさいと 口を酸っぱくして云っていたのに 早速酔っぱらっちゃって もう何言ってんのか分かんない 何を言いたかったのかも分かんないからいっかって 押し流そうとしている支流の先に燕が止まる 両側に飛び出した翼と 切っ先の鋭さ クラウチングスタートの見事さに目を奪われる 物が二重に見えるのは  ボクが酔っぱらっているからダケじゃなく 近頃 近眼なんだ この痛み キミならきっと 理解してくれるって 信じてる 薩摩色した汁に 小口ネギを浮かべて ついでのように取り出した 鶏ひとつ 本当の主人公は かんずりなんだ 頬ずりしながら 落ちそうな頬 ひとつまみ 御馳走様って言う前に もう一度だけ 笑ってね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]薄皮饅頭/藤鈴呼[2018年2月7日16時38分] 空気の膨張する季節には  おしくらまんじゅうの息苦しさよりも  少し 穴あきの 心たちの方が  自由発想を 発送できるのかも 呟いたままで ぎゅうと詰めた餡 本当は 粒揃いの方が お好み 知っているけれど 今日の濃さは 粒餡じゃあ 表現できないんです どうか 諦めて くださいませんでしょうか 丁寧な口調で ノーと告げる悪魔 それは素直な真実だから イエスマンの笑顔よりも きっと晴れやか 明かり取りが 上手く行かぬのは 冬の所為 雪で埋まってしまって 間接照明が 言うことを 効かないの 上皮餡から透ける腕が見えない 鍋を振るう度に重なる重石 増えるばかりの苦痛を練り込んだら 納豆のように糸を引いてきた あなたとわたしの台詞 一体 何処からが 笑える真実? ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]イコライザー/藤鈴呼[2018年2月13日10時46分] 右か左か迷う道 看板が 曲がってはいないか 平衡感覚は 失われては いないか 自問自答する瞬間は  何時だって 閉口するだろう 奥歯を噛み締めて 次の弾が来るのを待つ 弾けた姿は好きかい? はじけ飛ぶような風船に乗って 何処まで大きくなれるのだろう 心の重み 身体が増えても 変わらなずに 齢を重ねても 何も増えない 大人びた仕草 その中に 弾丸を 隠し持っていてね チコチコと動く 少女の足元 時に光る 素敵なミュール 彼女の中心部に住むミューズ 今は姿を見せない きっと 大人になれば きっとと 待ち望んでいる 今わの際のジャッジメント 未だ間違ってはいないか 迷いながらも 放つ一言に 重みを乗せて ブレないように 真正面を見据えた 際立つ空気 真空寄りの美しさに 瞳に光る 涙 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]センブリの目線から/藤鈴呼[2018年2月14日8時48分] 誰かの悪口を言う人は嫌い 唇が歪んで 涙で滲む視界よりも もっと酷い景色を 雨樋越しに 押し付けられるかのような 不快感が あるから 愚痴っぽく火照った頬に スコールの粒ひとつ 直ぐに止むから 傘を取りに行かなくったって 平気 上機嫌なままで振り返れば 見たこともない景色 背が低いと嘆く勿れ 誰にも見付けられず 足蹴にされてきた金貨に 気付ける 美しさ シミッタレタ心のままで 染みっ垂れた雫を眺めると 太陽が 乱反射して 止まらない 笑顔 もっと続けば 良かったね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]長瀞/藤鈴呼[2018年2月15日8時13分] とろとろの眠気を抱いて通り過ぎた芝桜 一枚一枚の花びらが妙に奥ゆかしくて ふわりと笑えるくらいには近づけぬ 頃合いを見計らい オール片手に君が ゆっくりと瞳を合わせるように 擦れ違う 揺れ惑う 紛うことなき愛しさに 言葉が詰まる 擦りおろし林檎のように薫り立つ丘の上 ハミングを重ねたら不思議な穴から流れる音色 乾いた陶器のような楽器 見た事も 聞いた事も無い筈なのに 心に響くのは何故だろう 固いミルフィーユを岩畳と呼ぶ地域 風化せぬ堆積岩は何処の国へと飛び立った 見付けられた嬉しさに 見付かってしまった やるせなさに 口笛ひとつ 今夜のお供が決まる 一つ目は とろろ芋 二つ目は 蓮根 最後の一つが決まらない 今 種を植えるから 来春まで ゆっくり待って 頂戴よ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]クラムチャウダー/藤鈴呼[2018年2月16日10時43分] 寒さに打ち震える なんてのは きっと 大袈裟だけれども 何らかの 驚き話を 耳にした瞬間 サブイボが立つみたいに 自然に鳥肌めいた空気感を得る季節 コトコトと 煮込みたいの 箱の外には キャベツと書いてあるが 本日の主役は ホイコーロー キャベツは そちらに 摂られるからね じゃあ どうしよう そうだ 白菜が あったよね 残り物だけれど きっと福があると信じて 服を目一杯 着込んで もう寒くないと 吹きかけた息が 白く凍る 未だ氷柱には 出会えない この地は 氷点下になることが 珍しいのさ オタマと人参が 小刻みに揺れる シメジとジャガイモは 小躍りをして あれ アサリが ないよ 同じキノコだからって 馬鹿にして 忘れたなんて 言わせないから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- (ファイルの終わり)