藤鈴呼 2017年8月11日13時41分から2017年11月22日21時35分まで ---------------------------- [自由詩]暗渠 ankyo/藤鈴呼[2017年8月11日13時41分] 流された夜に 静かに呻く唄は 仄暗い水路に ゆるやかに隠され 存在すらも 不確かな 憂鬱 トドメは 鈍色の刃で 煌めく 星の瞬きより 深く 突き刺さるよう 凍る季節を待ち侘びて 鍵を待つ 扉は 占めたまま マヤカシ柄のトランプを弾く ゆっくりと 永遠に続く合いの手 パチリと置かれる碁石の色より不確かな間 閉ざされた石の隙間に 蠢く 深緑の苔 うるるの季節は もう過ぎた 白い飛沫の影だけが ゆっくりと 笑う ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]リボン色のゆううつ/藤鈴呼[2017年8月15日17時05分] すぅと伸びる愛おしさに  戸惑い ひとおっつ ダービー馬の 尻ぬぐいだけしている ポニィテェル ふたあっつ リボンは垂れるから バレッタを パサリと触れた 涼の手を ゆっくりと 振り払った 次の日揺れた 蜩の音 みぃっつ みにっつめいど 舌の間に挟んで 露知らず よっつめの隙間に埋め込んだ言の葉 いつうっつ もう それ以上は 数えられない ダンスホールの床面で煌めく ダイヤモンド 六角形の水晶と 見紛う程の美しさに 溜息ななつ 夕闇と 同じ色の カラスが啼いたよ 八つ裂きの刃  九重で生まれた牛の乳を啜る ガンジーの丘に 敷き詰められた  コスモス絨毯 黄色も白もピンクも ごったまぜで 御挨拶 こんにちは こんばんはだけ  言い返せない ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夢だと解っていながら/藤鈴呼[2017年9月3日22時22分] 脱出できずに苦しんでいた時もありました 声を出して 逃げ出した朝もありました 何時だって  起き出して 打ち震えた瞬間に 支えてくれる腕に  安堵の溜息を 漏らしていた気がしています 眠ることは逃げること 眠られることは 忘れられること 忘れられぬ夜は 忘却の彼方へ飛ばすこと ジェット気流に任せて 今宵のヴォイス ゆっくりと 強かに 乗せて 運べ ハコベの空へ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]カラメルソース/藤鈴呼[2017年9月10日11時26分] 私を敵に回すと怖いわよ 蔑んだような口調が 渡り廊下に響く 吸収素材ではあるが 温泉の如く 生暖かいような記憶 ぼこりと湧き出る雫は 不可思議に折れ曲がり 光の十字路を生み出した刹那 ゆっくりと 剥がれ始めた 屈折した心の奥に 闇の刃が佇んでいて 今斬ろうか 今切ろうかと 唇を開いて待っている 大きな断ち切りバサミが 布の手前にあって 包まれるのが先か 視界を閉ざすのが懸命か 悩んでいるふう ここに楕円形の米粒が一つあって さあ食べて御覧なさいと言われたら 一体どうするだろう 瞬時に感じる空腹感 我慢できぬ程の痛みを 炊飯器にブッ混んで  タイマーを押す プツリ途絶えた回線 物理的に円縄の方が楽だと知る 海に出れば 綺麗なホタルイカでも掬えるだろう けれども これから冬になって行くのだ はみ出した汗を拭く隙間も きっと残されていないに違いない 多分の隙間で 多聞に悩む 目耳にした物事の全てを どう消化してしまおうかと スプーン片手に プリンに乗ったカラメルを ゆっくりと 眺めている ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]いつも笑ってた/藤鈴呼[2017年9月13日18時31分] 夏には 黄色い向日葵 昼には 大きな 太陽 光の色合いは 凡そ そんな イメージ 歪んだ心を もっと傾げて 肩凝りが する位に 曲げた首を 何とか 支えたいと 頬杖を付く ツクツクホウシの鳴き声が ツクツクファイヤーに聞こえた瞬間 真一文字に結んだ唇が ふっと上気する ファイヤー 夕焼けの色 これから 沈んで行くから もう 会えないのだと 嘆く 今宵の月を 連想する暇も ない程に 疲れ果て 眠る 訪れた闇が この世の全てと絶望し 這い上がる術が 見出せないなら 月明かりに 照らされた身も 哀しいままだから 一条の光でもって 今度は 星に 祈りを込める 流星群の季節には 未だ 遠いけれど そっと重ねた影が わたくしの 両腕 まだ 丸を 描けるから きっと 大丈夫だと 呪文を 唱える ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]秋のさくらんぼ/藤鈴呼[2017年9月14日9時24分] ぷらりんと 垂れ下がるヒミツ 重力に従い 反抗することもなく 垂れるは贅肉 何て可愛げのないお話で 爆笑を?ぎ取るより 果実の美しさを 追及してみましょうよ 皺の形成は きっと その後で ゆっくり じっくりと 上目使いで作成するのが オツですヨと独り言 ふわふわの花びらが 揺れる季節に 愛しく下がる 桜ん坊 春の馨しさ ほんの少しばかり 思い出せましたか ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]道沿いのコスモス/藤鈴呼[2017年9月16日19時18分] 道沿いのコスモスが歌う 妖艶な触手を張り巡らせて おいでおいでと手招いていく こちらには 海と山と谷と渓谷がありまして--- ちょっと待ってくださいよ 谷と渓谷は どう違うんですかいのう 谷は谷折りの谷 良く使うでしょう? あなたの腰のように ひん曲がってしまっては 性格形成も困難になるわあなんて言っちゃって あははと笑う そんなら渓谷は どうなんですかいのう 山の隙間に走る 川のことですわいのう そんなら峡谷は どうなんですかいのう 谷の壁が連なる部分と言ったところですかいのう するってぇと 素肌じゃあ いけませんもんのう 藪蚊が寄って来るんですよ 誘っても いないのにね にゃあにゃあと絡み付く 猫のようですわ ふわりふわりと流れる香りで 桜の木を連想する頃 ゆっくりと 霧が 晴れて行く キリの無い 鉄砲水の隙間に 丸太を押しとどめて 橋を渡すみたいに 足は泥濘に 捉えられる寸前 サンダル履きでは キツイ階段 ふと香る彩りに揺られながら 硫黄色の 温泉を目指す ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]みるともる/藤鈴呼[2017年9月18日9時35分] からめるにからめとられてからまる からのまるをだきしめる めるもだんすをおどる るんるららとさけんでみる もるという単位を思い起こしてみれば 何だか小難しい計算式も脳裏を蠢いて もう読み方すら忘れた さいんこさいんたんじぇんとの続きとか しむろっくって言葉の意味だとか 社会の教科書を 窓の隙間に埋め込んで 昔ながらの座席で飲んだ 蓋付きの 透明なお茶を 思い出す もるもっとの話ならば もう少し簡単だ 毛むくじゃらの姿が 可愛らしいらしい 同じ毛むくじゃらでも 人と場所によっては毛嫌いするくせに お前だから大丈夫だなどと言う アルパカやキリンやコアラが本当は臭いと知っているくせに 絵や写真や動画や妄想の 離れた地点から歪めた角度で眺めているから きっと どうってことは ないんだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夕陽を眺めると/藤鈴呼[2017年9月23日8時17分] とろけそうな地の色に 流れ出す血の色が 映えている 生え際の隙間から 飛び出した 白い眼も 焼いた魚のように 静かになる夜 痺れるのは これが 電気ウナギだからだよ ひつまぶしでも いいや ひまつぶしでも いいやあ 小さな掛け声が 何処までも 響いて 響いて 遠ざかる 波間に隠れて 鈴虫が リーンと啼いた ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]風が流れると/藤鈴呼[2017年9月24日14時07分] 芋虫の行進 葉の隙間を ウネルように まるで 空が我等の大地であるとでも 言わんばかりに バカンスを楽しむ バカはカバだなどと言う格言は 唯だの言い間違いだと信じなさい 尺取虫と毛虫と蛹の違いを30字で表現しなさい そんな名言すっ飛ばして転がる絨毯 車が引き殺す銀杏たち 放つ悪臭は想像するだけで鼻がひん曲がると呟いて アスファルトに埋め込むことにした だけどどうだろう  ちょっとつらくないか 箒で集めた実の欠片達に 只今即刻放棄されて 言葉をも見失う 杯に注ぐ 雲と言う名の毒 恐怖は青空に埋めてしまいたかったから ほんの少し縮れた空気感に しっとりさを足す 裂かれた葉の先は  太い枝から伸びた小枝が 薔薇の棘に見えたのと 同じくらいの憂鬱加減 ふうと隙間風に夢を託す 吸い込んだ石の中に意思はあるのと囁いて ゆっくりと歩き出す あの山も川も谷も海も越えてしまったから もう見えるのは天ばかりですと 点目で可愛らしく呟く ビーズ玉のぬいぐるみに 今度 話し掛けて みようかな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]銀杏の木と青空の映える時間帯/藤鈴呼[2017年9月25日0時37分] 朝は土砂ったんですけどね  直ぐに雨上がりと照り返しの太陽 暑いくらいだわ! 夏は終わったんかい! と ブツブツ言いながら闊歩する 雨樋の上にある杯みたいな形が  とても御洒落で思わずパシャリ 丁度 アラジンと魔法のランプばりに  雲が吸い込まれていくような角度感 太い枝から 薔薇の棘が伸びているように 見えてしまいましたの それは小枝で  その先に葉がついているだけなんですけどね 高い木なので下から見上げると  空の背景に銀杏が映り 淡い黄緑の葉たちの中に  ころころと黄色の実 そして茶色いのが  トゲの出る太い枝に見える訳だ! ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]猫のような雲/藤鈴呼[2017年9月25日23時42分] 秋晴れの庭園 左側に翡翠の原石 雲の向こうに にゃおんと鳴く猫を見た 銀杏並木とは言えぬ たった一本の存在感に デクノボウなんて癒えなかった傷を塗り込む仕草 後ろを眺めて前を向いて  トンチンカンな繰り返し 電車の名前は〃々〃ゞ 恥じらいを捨てたレール 滑車とトロッコの隙間に挟まった泥を落とすには 乾かさなければならないよ 未だ太陽が天に一番近いから もう少しだけ我慢してね 影を待つんだ 自分の影は自分じゃ踏めないんだって 知っているだろう 逃げ水ならばどうだ 反射角度を利用して 順繰りに逃げて行くんだ 大理石に映る 金色の影が 細く棚引く時間帯 上を見上げたら 同じ場所なのに ライトが2本見えるよ 片方は青 片方は黄色 どちらから 夕陽が差しこんだのかを  よくよく考えてみよう くよくよ悩むんじゃなくて 熟考するんだ  それが一番 大事だからね 銀杏だって 熟した頃が 一番美味しいんだよ 例えばレンジでチンしてさ 巷じゃそれを レンチンなんて 呼ぶらしいのだけれども どこかしら レッチリを思い出してしまうから あの映画 良かったよね  うん 良かった って いつまでも 語り継ぐために 忘れちゃ いけないんだよ  感動した あの物語を ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]栃の実/藤鈴呼[2017年9月26日8時32分] 垂れ下がる実の向こうに 今年の豊作を祈る 今回の方策は如何でしたかと 進言する若者 拒絶する重たい実が ごろりと横になる葉は 意外と頑丈 枝に掛けられた ハンモック 大きなリュックを背負ったまま 横たわっている 太いロープが 身体に喰い込んで ちょっと 痛いね もっと こう 安眠できるような気が していたのに 飛び降りた瞬間に 足首を捻り ウッと溜息 声にならぬ声を絞り出す心臓 静脈瘤の言う通り 掛け声と共に飛び出すハトの群れ 少し小さい 豆鉄砲の色が 薄茶色だった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]里に下りて/藤鈴呼[2017年9月27日9時01分] 哭きながら 栃の実を探す熊 今年は身入りが少ないのと嘆く 貴重な食料源を探し求めて山の中を歩くと 苔生した石が見えて来る 古びた南部曲家の奥に眠っていた馬たちを ゆっくりと回想する あの尻尾達に群がっていた蠅は 今頃どこへ行ったろう ジョバンニに聞いてみたい衝動にも駆られるけれど 銀河鉄道は未だ遠い 淵野辺駅の到着音が 銀河鉄道999になったそうだと驚く それはどうしてなのか 若者の多い街だから 未来へ向かうと創造するのだろうか そんな想像を引っ提げては立ち止まる 大きな公園の程近くに ジャクサが在っただろう イトカワの時には 大騒ぎもしたもんだ 駅前には鹿沼公園もあったろう 栃木を思い出す 同時に思い出すのは土地の実 それが きっと 本物の 栃の実 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]どの色すきなの?/藤鈴呼[2017年9月28日8時00分] クリア オーロラ レインボー あなたは どれが すきですか わたしは ホワイト 忘れ得ぬ 幽霊みたいな 美しさ 重ねて行けば ブラックに 代わる不思議も あるでしょう 戻る戸惑い 感じつつ パレットの上 並べたら 絵具チューブは 踊り出す ポンポンポンと 空気出し 泡に塗れて ジャンプする 海と空を司るブルー 暁と夕を染めるパープル 情熱の薔薇のレッド 太陽光線のイエロー 冬は蜜柑だオレンジ 茎の優しさグリーン 大地に立つのブラウン ちょっと痛いのブレイン ねえ 引っ掻き傷が出来ちゃって ちょっと治らないの どうしたら良いと思う? それなら 埋めちゃえば いいんだよ 太い筆に 好きな色を含ませて トントントンと 叩いてごらん それで 浸み込んで行くよ ゆっくりと じっくりと ホログラムの行方を考える時 マジックミラーの不思議を鑑みる時 あれは 完璧な美しさではない 作られた 世界の闇なんです 夜になり 灯りを点ければ どうしたって 見えてしまうから 例えばミラースモーク張ったったって 中で寝ていたら 直ぐに見つかりますよ くわえ煙草で ゲーム画面を見つめるサラリーマン 銀色の球を 見つめている 吸い込まれる杯は金色 ピカピカと鳴る音とジョークはショッキングピンク 勝てば家族にお土産欲しいのショッピングピンク の服が欲しいと強請る女の子 髪飾りは桃色 スカートは梅色 シャツはサーモンピンク ねえ 大体同じ色だけど、と言いながら 吐き出す息が 灰色だった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]鉄壁の笑顔/藤鈴呼[2017年10月3日10時24分] 青空を海に見立てて 中央の粒を見やる 角度によって 黄色っぽくも 見えますし  周りの色合も それぞれなので  オリジナル感覚が 広がる 鯉を突く 鷺の姿を 直接 眺めた訳では ありません 半分になった 魚の 尻尾部分を 眺めながら 言う 可哀相 でもあり  弱肉強食 でもある  総合すると 食物連鎖 となる光景 春の海豚は跳ねる 冬の季語だそうな あの人が 教えてくれた 善し悪し事を 今宵 四方山話に替えて 白い画面に 入力していく時 流れ星が キラリと見えた 飛蚊症と言うのですよ 白衣の天使の笑顔 鉄壁のガードだ 紺碧の空に浮かぶ 晴天の霹靂 どんな壁画よりも美しい 何色の絵具を以てしても 描き切れぬ 透明模様 底に模様が 存在するのか いくら透明に近い海の底でも ババアサザエくらいの大きさになれば 隠れる隙間がありません 潮溜まりの中で ジッと身を潜めて その時を待つ 泡が少しずつ流れ始めて 重曹の効果を知る瞬間 やけに重たいぬめりが 鱗から剥がれて行くのを 感じながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]目玉/藤鈴呼[2017年10月5日21時04分] ぐうるりと動かして ぎょろりと留める 黒玉の部分は どうやったって動くから 白い部分が 均一になることはないと独り言 画面の余白に従って カーソルと動かすと カースト制度に促される 三角形の頂点に突き刺さるマツゲに 似合うマスカラを 今すぐください カウンターでは 小気味良い話は聞かれない 小声で語る 良し悪し毎にプラスして 硝子をドンドンと叩く音がする ここに ゲンゲを 干してあるんです 鴉避けに ディスクをおしくらまんじゅうして 背面と 背面が ぺったんこ 羽根がキラリ耀く面に 貼り付いてくれたらめっけもの その先は どうしますか パタンパタンと せせこましいばかりで 優雅な休息が得られない そうでしょうとも 万年睡眠不足なんです 万年から千年を引けば 今の齢と違わぬ弱さ 導き出せますか シグマもマグマも分からない 計算式の向こうで 割り算をする 手元の札束と 何を足してから引けば良いのかが 分からないままで ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]たまごあえ/藤鈴呼[2017年10月13日11時07分] 物を知らないと言うことは 恥ずかしいことだと思いなさい 人の心を思いやると言うことよりも 重大な過失だと信じなさい 十代の頃 硝子のハートを抱えた僕は そんな台詞に 一喜一憂したもんだ お父さんの言うことは絶対です お母さんの言うことは最もです じゃあ 一体どちらが 豪いんですか ほんわか雲に包まれて 何処までも昇ろうか 底が天国だったなら 鍋の蓋を 御玉で綴じて 卵和え 出汁が効いていないとね 美味しくないみたいなんです 昔あったでしょう? 色は味噌汁なのに  味わいがコ足りないの 何か 親近感が湧くのは 何でなんでしょうね 枠に囲まれて 船は行く ここから先は 落ちる危険性がありますから ぎゅっと抱き合ってくださいと 卵たちに告げる ゆで卵だった過去のたまごも 卵焼きだった過去のたまごも みんな 一斉に 空洞を通る 御玉の真ん中を 一斉に通り抜けて 楽しげな たまごとじと なる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]メンコ/藤鈴呼[2017年10月14日8時16分] 人の裏を掻くマゴノテ 孫の手が育つ迄には あと二十年位必要ですからと ニジュウボシテントウが 黒目の代わりに玉のような背中を こちらに見せて呟いたけれど 信憑性はどのくらい 太陽とニジュウボシテントウの背中の色を 見せあいっこしながら徒競走 百足レースは苦手だから無理をしないで無駄足ふまないでと 独り言 引っくり返る蛙 泥の中から飛び出した茶色の カメレオンみたいだなお前って 話し掛ける手前でピョーンと小気味よく飛んだ 何処までも跳躍 躍起になって追い駆ける視線 互い違いの長い葦のような葉が切っ先を掠めて 思わず手を引っ込めたふう ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]鮃  ひらめ/藤鈴呼[2017年10月15日1時14分] ヒラリヒラリと舞う花も 雨に濡れて くったり萎む時間帯 朝顔 昼顔 夕顔と ずっと眺めていられないから 美人は得なのね 印象的だから すっと視界に入ったまま 脳裏の奥深くに蠢いたまま 離れない そんな華 はらりゆらりと舞う花粉 白粉のような甘い香りは天花粉 天の花の粉だなんて何て馨しさ もう一匙ちょうだいなと手を伸ばす 妖艶な指先に 全ての方向を定めてもらうように 指示器が壊れたら分度器も歪む 直角三角形の定規の切っ先で 皮膚をも切り刻めるかも知れなくて ただ 突き刺さる玩具は コンパスだから 必ず 容器に仕舞っておくようにと指示したばかりで その先の 直立不動の定規に叩かれる可能性は示さない 何者にも代え難いリボン 昔の体操選手のようなシナヤカサ はためく穂のような重さで 全てを吹き飛ばしてしまうかのような感覚 サクリ 歯の隙間で揺れる 少し磯臭い身の焦がし方が 何よりも 素敵だった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]辛夷/藤鈴呼[2017年10月15日11時42分] 風邪を引いたら桃缶と相場が決まっている家庭で 炬燵に蜜柑を乗せる程のステータスには包まれなくて 冷風を待ち侘びながら真夏に食べた冷風麺は かの土地で「冷やし中華」と呼ばれた風 素材も見た目も同じなのに 味が違うのはどうしてと 幼子のきょろんとした目に見詰められた時のような歯がゆさ 上手く説明出来ないのだ 目の前に御玉がないから 救おうとした桃の実も 腐ってしまう季節だからね 一体 旬は 何時なのだろうと独り言 全国各地のスーパーで 何時でも売ってる桃缶を パクリ 口に入れたが最後 ウッと呻いてしまいそうで 吐き出すのは桃ではなくて 咳とか痰の筈なのに 間違って 要らない言葉が飛び出しちゃったりして お茶目な笑顔を向ける相手も見つからぬまま ゆっくりと木を見上げたら 淡い桃色の辛夷が目に入ったよ ふうん こぶしの実って 可愛らしいんだねぇ 桃みたいに やわらかいようなイメージだけれども きっと 触ったら 固いんだろうねぇ 拳握り締めながら 誓った約束だとか コブシキカセテ歌い上げた楽曲だとかを 色濃く 思い起こす夜に ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]マスカッツ/藤鈴呼[2017年10月28日21時34分] 粒揃いの中に 大きさ違いが三つ 一つは大きすぎて 一つは小さ過ぎて 一つは太過ぎた 太巻きの中身ならば 多い方が喜ばれるんだもの あとはカラフル模様に散りばめられて たまに絵なんか描かれていたら どこぞの金太郎飴よりも高く売れますよと呟いて マッチをシュッと擦ってみた 今日は雨だからね 何度擦っても 火など点きませんよと 煙草吸いながら 呟く真似ばかりをする 明日も雨だからね タイヤ鳴らしながら走り抜けたら 壁にぶつかるかも知れませんから 気を点けなさいよ 何処に着けたら良いのだろう 何処を突けたら良いのだろう 何処へ漬けたら良いのだろう 歯車の付かぬ滑車を滑りに任せて滑川 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]情熱クローバー/藤鈴呼[2017年10月29日11時35分] 情熱って言葉は何となく青臭いよなー なんて語っている今が青臭かったよなー なんて思うのは何十年後なんだろうね その頃私はいるんだろうか 今の情熱ってば何じゃらほいって考えてみたら 目の前に梅飴があったので 例えばこんなことかなって考えて見た 梅飴を舐めるでしょ? 酸っぱいでしょ? ツバが出るでしょ? この瞬間に電話が掛かって来たとして 如何に飴の存在を気付かれぬように会話するかって そういう事に神経を注ぐ時点で疲れるよね 若い頃の情熱ってば単純だったんだ ボーリング行って ストライクとりたい 真っ直ぐ投げた カーブなんて 投げる技術が無かったからね 例えばそんな感じで 年ばっか無駄に喰っちまうと 色々 頭ばっかり使っちまうから 素直さがなくなったりも するんだな 本当は 真っ直ぐな球で 良い筈なのにね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]まつやにブーン/藤鈴呼[2017年11月4日11時47分] 剥がれ落ちた欠片が 今日のアナタの証 一つ哀しさ 一つ嬉しさ 憂いまでをも詰め込んで 飲みこんで 飲み下す ミキサージュースにして 葉で掬う スプーンの代わりに 松脂固めた プラスティック 透明に瞬いたなら 眼帯なんか なくったって 大丈夫 真っ直ぐ 歩けるよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]飛び立ちのとき/藤鈴呼[2017年11月7日0時12分] 音も無く忍び寄るシロサギの バササと言う翼ばかりを連想しては立ち止まる 後ろを振り返り 松の実が溶けるまで待つ 全て重ねて煮出したら どんなお茶よりも馨しいスープが出来上がるんだってサ 淡い朱色にも思える一部分で思い出すのは朱鷺 朱き鷺なのだから さも有りなむと一服をする カチャカチャと打ちまくるキーボードに たった今 コーヒーが零れた キーの色が 黒で良かった 白かったなら トキと同じ窪みに入り込んで 立ち上がれぬところだった 雨の降る 秋の一日は 苔の色とともに濡れて 眼鏡の隙間から落ちる雫に 全てを預けたふう ゆっくりと 確実に近付く ツバサの哀しみを 紐解きながら 見上げながら 歩む日々に ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]あたる/藤鈴呼[2017年11月11日9時24分] 辺りは暗がり 今宵どうしても 太陽に会いたいのだけれど おてんとうさまは ゆるしてくれない 代わりに お月様が微笑んだ 不思議な夜 すうと音がして 棚引いているのは雲 明日の朝になれば 緑色の隙間に 蜘蛛の糸が ぶら下がる 天使の梯子みたいな美しさを称えて 得意になっている笑顔が 浮かぶ ボートの上で オールはないかと 必死に探した そもそもの理論を間違っている 底を御覧 穴から水が浸み込んでいる 素材は木 もう 其処からが 違ってた 即席麺の待ち時間は 三分かと思っていたら その瞬間に鐘が鳴る 「おめでとうございます!  一等賞です!」 目の前に 美味しそうなスープが 湯気を昇らせて 今にも伸びそうなのに 食べるまでの時間だけが 儚く延びそうだ 深く伸びをして 深呼吸とともに 今は 我慢の時と 言い聞かせる 当たりは何処だ クジを引かないと アタリに惹かれることは 決してありません アナタのツキまで 消してしまうのに 何故 そこのところに 気付かぬまま 傷付いて しまうのでしょうか ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]限りなくグレイな空に/藤鈴呼[2017年11月12日11時42分] ぼんやりと浮かぶ 黄を載せた雲が ゆるやかに流れ始める時間帯 風は切なく 冷たさを予感させながら動く 訥々と語り出す恐怖に慄いて 切っ先の鋭さを誇示する風 流れた先に 淡く歪む月が 見事に閉ざした 前と言う名の路すがら 唯だ アクセルを踏み続ける深夜 綴じようとする書類と 閉じ始めた睫毛の角度が やや同じ方角に傾いては蠢く 光 明 陽 そんな言葉ばかりを追い駆けた 昼間と言う名の 浅はかさ 砂利を踏むと 足の裏の感じた 存在感 確かに 何かを 越えて行くようだと 信じなければ 前に 進めは しないだろう 雲の隙間に見える 空の向こう側を 眺めては 溜息を 吐く ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]橋に映る景色/藤鈴呼[2017年11月13日22時51分] イ草の匂ヒは昔から 得意ではなかったの、と 小さく呟いた蟻ん子が 畳の隙間で隠れん坊 絶景からも 借景からも 隔離された 清き空間に 注ぐ液体 それは 透明な水 真ん中に甲羅があって 二つに分かれ 降り注ぐ 今日の雨は きっと白糸 ファインダー越しには 気付けぬ隙間も 色濃く映し出すから デジカメの好意的な視線は素敵 パタンと本を閉じるように 窓枠を 折り畳んだら どうなるかしら 一枚 二枚  取り出す旅に 違う景色を切り取って あなただけの 絵本を作るのね 笑顔も泣き顔も苦しみも全て飲みこんだ葦が 来年には生えるのでしょう きっと 映えるから 今は 這える指の先に そっと 力を込めて 栄えある日を 待つのみ 暗がりの中で 向こう側の光を眺める 緑が色濃く映るのは 今日が 雨だからだよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]太陽の実/藤鈴呼[2017年11月14日10時23分] 枝の隙間を埋める 幾つもの とろけそうな太陽 光が集まると 何か 楽しいことが やって来る 子供心に わくわくしたことを 今 こうして 思い出してる ねえ 見て? お正月に お餅を挿すでしょう 赤い南天の実は 未だ 今の季節は 緑か茶なの そんな風にね 紅白の お餅を 枝に差して 美しいねと 呟くでしょう 水を差す 台詞なんか 一切なくって 唯だ 楽しんでいれば 酔える夕陽が この世に 幾つ 在るのかな とろけそうな太陽の実を 一粒 くださいな 出来れば ぬくたまる風味の 心地良い角度の 美味しい雰囲気の広がる蔦が良いな 灰色の壁面を 愉しく着飾って 空まで 舞い上がるような 太陽の実を ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]枯葉の先に/藤鈴呼[2017年11月22日21時35分] 動き出す為に必要な何かと 語り始める為に必要な何かを掛け合わせて 世界に一つぽっきりの 暗号を作った その言葉は 丸太に描かれて ポッキリとは割れない 小枝のようには崩れないと言う 声ばかりが 闇に響くふう 半鐘 反響 半和音 すばしこい犬が 三回廻って吠える瞬間を きっと 捉えよ タンバリンを手にしても良い カスタネットに指を挟まれたって良い ただ 太鼓を鳴らせ 空腹に胃薬だけは 御免だと振り向いたら 影が見えた 造影剤と言うのは 影を作る為に在るのですから たまには 上手い角度を証明する必要に駆られるのでしょう 狩られるのは焦燥感に非ず 絡めるのは甘いソースアラモード 目覚まし時計を留めると 遅刻スレスレだった そんな悪夢を 何度 観ただろう 階段を昇る度に 飛び降りたいと欲した夜も 必ず光が 救ってくれたように この世は 明るい Turn to Born 色鮮やかに 生え変わる 葉のブラウン アクトレス 鮮やかに 認め始めたラブレター 空に 届きますか ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- (ファイルの終わり)