藤鈴呼 2017年7月6日17時57分から2017年9月18日9時35分まで ---------------------------- [自由詩]パイプの先に/藤鈴呼[2017年7月6日17時57分] ねえ何か面白いことやっているよ えーっ 何なんだろう 一体 なんなんだろう って 私達を せめているようだ 違うよ ちょっと 指摘しただけ 私的な問題に留意していてね 詩的な私達は 蚊帳の外だと 知っていて ちょっと変な、なんて 修飾語を使う 飾り立てられることを 何よりも嫌う若者が いや 若者だった筈の私達は 今は老いているのか そんなことは置いて於いてと声がする方向を見つめると 肥え駄目 冷たい声がして 振り返る 氷を作り忘れた製氷機は ただの塊 四角い枠組みだけを 表示している 本当は カラン と  小気味よい音を聞かせてくれる筈ですが 今 ほんのちょっと 個人的な事情により 音が 出ないんです 情事ではありません 常時でもありません その内に また 小気味良い音が ひっそりと 聴こえて来ますから 舞っていてね ヒューっと 音がする 誰かが 囃し立てた二人 恋のバカンスを 楽しみます だなんて言っちゃって 真っ赤な口紅を はしたなく開いている 横一文字にするよりかは への字にしてみたり へらず愚痴を叩いてみたりする方がイイ バチを逆手に持ち替えて 逆上がりしようとして握る鉄棒よりも 鉄パイプと 禁煙パイポを咥えて ちょっと 格好付けた角度で収まるファインダー越しに ニヒルな笑顔 ただ それだけが 似合うのです 若者たち 若者達の町 待ちくたびれた若者 その どれもから外された私達は中年 何てこと言うっちゅーねん、なんて言いながら 冷たい笑いを繰り返す その唇に もはや赤い紅は刺さぬ 代わりにひび割れた氷ばかりが突き刺さる あの 白い眼のように いつか 芽になれたら良いな 例えばササユリみたいな ウォッシュアウトしてみればいいよ 鮮やかさは荷倍増しでヨロシクね そうしたら 桃色が浮き出るから ちょっとだけ 得したような気分になるから ねえ 試してみて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]暖炉/藤鈴呼[2017年7月8日0時01分] 戯れの猫が二匹 首を伸ばして寄り添っている コンロの上 いや違う それじゃあ 食べられてしまうでしょう?と お小言言いながらも 唇は歪めて笑う 勿論 口角は揚げる方向が一番だから カラリと揚がった天婦羅が 今夜の口上 誰にも邪魔させないの、とは言いながら この お抹茶色したお塩ってば 見かけ以上に確りとした味わいだから ちょっとねえ 舐めてみて? なんて 話し掛けている それでも二匹は寄り添ったまま 土台 無理な話なんだ 足元を括りつけられているから 例え 目の前で焼かれているのが 魚であろうとも ヨダレを流すばかりで 喰らぬ事など 到底 不可能なのに 理想郷ばかりを追い求めたら 足元が灰になっちゃった 例えば杯ならば 返盃している内に 四方山話も出来ない位に 酔っぱらっちゃって 千鳥足を抱えちゃって ふらぁりふらりと 猫の尻尾を振るような事だって 簡単でしょうけれども ねえ 何故なんでしょうねぇ なんて独り言 気付いたよ 今の季節には 相応しくない ここに在るのは コンロではないんだって オーブンでもないの 幾らピザが食べたいからってね そんな洋風な御洒落っ子サン ここには居ないのに ちょっと ねえ 間違えちゃったわ と 何時までも喋り続ける 囲炉裏の前で ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]目張らない生活/藤鈴呼[2017年7月11日9時55分] 遠くの金魚 見つめれば 尾鰭のついた噂話も 御姫様のドレス内に 包まれてしまって 只管 忘れられるかのような 産物 白濁した水面に浮かぶ目玉がとても白くて 青空と一緒に映り込む雲の欠片と勘違いしている ねえ坊や そう思うでしょう? 乳母車を今にも手放しそうな老婆が静かに咆える キイ カタタタ 横から縦に編み続ける織物 反物なんて言葉から離れて数年経つ ミシンやボビンなんて必要のない生活 カタカタと回るのは 南部曲家の横で動く水車のみ その水を飲んでいた馬も 死んでしまった 鯛よりは重宝される代物 調理済みと言うから醤油一滴 垂らすのも 何だか失礼である気がして 縮こまる 茹であがったタコのような雰囲気に唇の形を持って行けば 非難と愚痴の鬩ぎ合い 聴く方だって こんなに辛いのだから 話すアナタは よもや唇を外してしまいたくなるのではないですか と言う言葉ごと飲み下す 泡の出るビールと一緒に そんな季節だ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]タモトユリ/藤鈴呼[2017年7月12日5時08分] 白い刻みの中で震える存在 颯爽と走る湿気の中に巣食う種は 一粒ずつ 欠片となって降り注ぐ 雨のよう 時に雹となり 我等を脅かすけれど 心配ないよと 優しく広がる両手の如く 柔らかな花弁が  胸に痛むのは何故 言い聞かせても 馨しさには叶わない 願いを込めようとして  何を祈るべきか 忘れてしまう夜のように 静かに 美しさを称えようとも  共に見る相手がいないのは とても寂しいのだ 目の前で揺れる花びらが 何時からか高貴に満ちて 楽しげな歌声は 何時からか疑惑に墜ちて 不協和音だと信じたくない位に 耳障りではない音列だったから 気付かなかった そこに 一輪の星が 瞬いて いたこと 百合の花粉は 白いシャツに染み付いたら離れない 二度と手を離さないと誓う 恋人達のように イラナイ口紅の後よりも もっと 厄介なのだ 袖の下に隠した金貨 いちまい にまい 三枚目が必要なのに いちまい にまい 断崖絶壁の光景など 想像するだに 御免だ 足を伸ばして にじり寄ってみても この身を 支えられるとは 限らないだろう その足先に埋め込まれた石粒が  今直ぐ砕けぬと 何故言える 何故癒えぬ  居住まいを正して 少し痛む腰を引きずって 白い湿布を貼り直して 少し歩いた 追い駆けて来るのは 百合の優しさ 馨しさだけ そのままにして ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]キリの先に埋め込まれた真実を探してみるかい?/藤鈴呼[2017年7月15日19時55分] 妖艶なほどに美しい花びらを翻す仕草を ゆっくりと見詰めてみる そこには シロツメクサの首飾りが 良く似合うだろう 知っているかい? 露を吸った時の甘味を 朝や雨明けの空にも 負けぬ程に 映えるよ 茎の息吹を感じられるのは きっと そんな瞬間 茶変色しても 簡単には 離れられない まるで あなたと わたしのよう なんて言ったら 笑うかな 少なくとも 怒ったりはしないって 解ってる そんなことは 起こらないから 今 こうして 一粒ずつのビーズを ゆっくりと 編み込んでいる 昔 三つ編みを編んだ指で 今はもう 切ってしまった 髪の毛の先に抱いた 夢の続きを ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]遠くへ/藤鈴呼[2017年7月19日9時36分] 百日紅が咲き始めた地上は非常に暑く 閉口することも許されぬほどに膨らむ ペットボトルを握りしめて 叫ぶ 薄く気化した炭酸を 追い駆けては 呟きの友と語らう 夢の中 背繋げに啼く鴉の群れが まるで 白鳥の如く V字に広がる 坊や 大きくなったら 何処へ行きたい 問いかけた台詞が 湖の奥へ 沈んだ 忘られるなら 遠く 空の向こうへ あの 飛行機雲を 追い越せるくらいまで 舞い上がって 踊れ 白鷺の花のように 象られた花が浮かぶ 水面に口づけるのは 干からびた 鳥の嘴 憂いの刃よ 切っ先を掠めたのは 緑の葉たち 大きすぎて 傘の花をも 包み込むくらい そのまま 静かに 影を閉ざして 見えなくなるくらいまで 夕餉の時刻が近付けば 聴こえ始める 蜩の かなかなかなかな タイピングの音と 何処か 似通っている 唇の端を歪めながら 自嘲気味に微笑う  あなたの表情にも 似ている 照り付ける 焦れた灰色から零れだす光 歩いてみても 足跡を探しても 全てが 繋がって行くことが 滑稽で 抜け出せない トンネルの向こう側 爆破する程の勇気は ない癖に 朝焼けまでは 待てないのだから 月の女神に 少しだけ 心 救われる 一枚 二枚 数え始めれば キリがない 遠くへ 行きたいけれど 船が 見つからないの 壊れたオールを抱えながら 唯だ 泣いている とても 静かな声が 聴こえる かなかなかなかな 変換できぬ程の 高速で認めた文字の向こうに 隠れてしまうくらいの 小さな つぶやき ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]斬新ダンシング/藤鈴呼[2017年7月21日9時39分] ペラペラと捲る領収書 最後のペイジで立ち止まる 余白に非ず 白い紙が もう 残ってはいないのだ 束が揺れる ボールペンの先 華麗な花びらでも 付属されていたなら 暇つぶしに 視線を泳がせることも なかっただろうに 言い合いが筒抜けの町 従量制だから イケナイ 鞄だって そうだろう マチが少なきゃ 物は 入らないんだ 多かれ少なかれ 片手が塞がってしまうならば 大きい方が良い 小さなお前の心ごと詰め込んで いっそ 踊れ ざんしん だんしんぐ ザンシン ダンシング ZANSHIN DANSING きっと たのしいぜ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ウォッシュアウト/藤鈴呼[2017年7月22日22時29分] 朝から暑いなあと思いながら  ゴミ捨てを 完了した朝  出掛けに 炭酸水を手持ちする癖は  最近のもの  神奈川時代から培ったのは  ペットボトルを 持ち歩く仕草  電車生活が 始まったから  何か有った時には 水がなけりゃあ大変などと  大義名分を 振りかざしてみるとともに  咳き込む瞬間が 唯だ 怖いからなんだ  乾燥した朝 会議中の喉を潤すのは  何時だって 緑色の飴玉なのだけれどもね  温暖化の影響もあるのかしら なんてことも思う  日焼け止めチューブを 初めて購入したのも この地に来てからだったなあ、と  それでも一瞬で 汗とともに 滴り落ちてしまうから 意味ないじゃん なんて言わない  やらないよりも やったほうがいい  そう思わなければ  全ての事象が 色褪せてしまいそうだったから  ウォッシュアウトする手前で留める 砂粒のように  ザラリとした感覚だけを 抱きしめて  今日も 塩一粒 こそげ落とすんだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]SummerBlue/藤鈴呼[2017年7月26日0時42分] 何処まで進めば「遠く」なのかを考える 1.あの道は通ったことがある 2.角の公園は行ったことがある 3.1キロ先の家から散歩中の犬に吠えられた 逃げ込む先は固い建物が良いと考える 学校か 家族の勤める会社か 買い物に出かけたショッピングセンターか 未だ「遠く」じゃない 自分を知らぬ誰かの住む場所 誰かも住まぬ土地 土地でもない何処か この町に求めるものは何もない ならば隣の町か 県境か 国境か 何処まで進めば自由になれる 命題は続く 十字路を過ぎた先に見えた雑草がやけに気になって その先に進めない タイヤはパンクしている 自転車を押す手が震える 怖いんじゃない 汗だと信じた粒が 赤い発疹だったから ほんの少し 魂を 抜かれただけ 直ぐに 戻るから ねえ 待ってて 低い声が アスファルトに乱反射して 自らの耳に戻る 手の震えは止まらない 何故 何故 留まらない 最近は誰のお葬式も出してはいないのに 目の前に鴉の群れが見えているみたい 声だけが不思議に響くのね 地に足を付ける感覚を忘れたから 今夜は ウォーターベッドで 寝てみようか パンパンに干したシーツが熱くて きっと 夢に 誘われは しないんだわ ゴムに貼り付けた 間に合わせのボンド 小指を繋ぎ合わせるみたいに カラメルの代わりにつけた マニキュア 応急処置 これで 合っているかしら 呟きが 煌めきと 交わり ゆっくりと 進み始める ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]リード/藤鈴呼[2017年7月26日10時02分] 擦れ違った何かを探しましょう ココナツの似合う丘 飲み物に入れることに飽きたから ヤシの実を探すことにしたの 葉が護ってくれるのは陽射し 落葉の頃に落としておけば良かった枝が 細かく重なり合って 行方不明になる 薪みたいに そう 例えば キャンプファイヤーみたいに 組み込んでみたら 何かが 変わるかしら 滴るのは汗ではなくて 昨夜のアルコール オカシイわね 塩と果実の記載しかないのに 私は何に酔ってしまったんだろう えげつないコマーシャルを眺めながら首を捻れば いつかの肩凝りを 思い起こす風 そよと哭けば もっと可愛らしい蝉が ゆっくりと転寝をした 目覚めないの ちょっと違うの 私が思っている音が 何時まで待っても 聴こえてこないもんだから 調子を崩したわ 例えば 柔らかなタオルならば この違和感を 拭えるかしら 擦れ違った何かが 首筋に絡み付いて 離れない まるで ロープで 縛られた風 そよと笑えば とても可愛らしい犬が リードを外して やって来る 噛み付かないように 噛み付かれても 構わないように 指先を そっと 出すんだわ そう ゆっくりと ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夕空/藤鈴呼[2017年7月27日22時01分] 太陽に にじり寄って行く雲を称えた夕空  クロスするのは 誰かの溜息  呆けたアオサギが 優雅に行き過ぎる  その羽根の向こうに 明日を思う ジャケットを脱ぐ バサっと音がする 立て掛けようとした座椅子が倒れて傷付く 引っくり返った蛙は 皆の笑われ者 躓いた石を 責める輩は誰もいない 濃い色グラデーション 生易しいほどに薄く切れた白身を あなたと重ねてみる ちょっと足りない もう少し 焦がれるようにと説き伏せられた 空気が一瞬だけ淀む ぐうるりと視界の先に潜む闇を飲みこめば カラリンとした透明容器が哂う 少し相撲スナックに似ている ねじり鉢巻きをした友を 思い出した ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]鞴  -ふいご-/藤鈴呼[2017年7月28日8時51分] あなたが ゆっくりと 息を吸い込む 「ふいちょう」 唇が その形に動く ゆるやかな流れとともに 水の音が響く 雨なのか 風なのか さざめく空気感は いつだって おんなじで 記号の向こうに忘れかけていた風が見えた気がしました 「ふいちょう」 唇を すぼめたままのアナタが 少しだけ ニヒルな角度に浮かべた 唇と唇の間の一本線が 何時からか 二重に見える きっと眼鏡が合わないのだ きっと 泣いているのだ もしかしたら 近眼なのかも知れない 根暗だったのかも知れない 塒(ねぐら)なんて 探さなくても 見つかるさ 君はそう言いながら 湖に ゆっくりと浸かる 「ここも 気持ちいいよ おいで」 案外 想像に難くなかった 君の行動 その先に オールがあるって 解っていたら ボートなんて 作らなかったのに 夢のボート 浮かぶ ぽろろんと響く 鍵盤の音が 揺れる 今度は 灰色に ふいごのようなゆめ とけた パンと鳴らした掌が痛くて 思わず目を閉じた そのまま 昨日の夢の続きを 夢想している 蒸し返そうなんて していない ただ 夢現の現実と仮想現実とドッキリゲームが続くから 「ふいちょう」 少し 息苦しく なった だけ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]さくらんぼサイダー/藤鈴呼[2017年7月29日10時46分] しゅわりとした甘さに 酸っぱさを ちょいと足して おちゃらかほい 網アミのストッキングじゃあ 縞しま模様はむつかしいのと繰り返す まだらに焼きたいの応え 懐かしい鯛焼きのソースは白 ジョージ 甘くもたつくカルボナーラを持って来て ひらひらの手を振る 少し傷めたみたい だから顔に似合わず 酸っぱい唇をしながら振り返るの ぺたあり ぺたあり じゅるるるる、と 静かに蠢く蒟蒻を思い出したらね 人形にポタンと落とす目玉の奥にある毛細血管が 脳味噌と繋がるかどうか 試してみて チャンスは一度きり ねえ きっとよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]花冠/藤鈴呼[2017年8月1日12時46分] 花かんむりを作りながら微笑を称えていた少女時代に 戻りたくなりました 少なくとも「おかんむり」の多い世の中を泳ぐ大人よりは 平和に違いないかな?って 戻れるかな 戻れぬかな 戻りたいかな 隊列を組めば シロツメクサの葬列が始まる 恥を忍んで駆けよれば 空に雲 いくつもいくつもポカリと浮かぶ アクエリアスの飲み過ぎはイケナイと教わったから 少しだけ塩分を溶かした夏特有の飴玉をしゃぶる カーンとかキーンとか言う鉄球が あちらとかこちらに浮かんでいて ここは空じゃないから 軽そうな雲みたいな夢見心地では 生きられないのだけれど 例えば冷たく黒いテーブル 爪を立てれば 一瞬で崩れ落ちそうな カクテルプール 注いで 注いで 泡の出るシャンパン 思い出を認めるシャープペンシル そして 花冠を編もうとして  これはアカツメクサと呼ぶのだろうかと考えました 後ろを振り向いても植物図鑑は落ちていませんでしたので 聞くことが できなかったの ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]例えば 愚痴の一つ/藤鈴呼[2017年8月2日23時15分] TITLE50 と言うタイトル ゴルゴのことはそっとしておいてね ねえ 面白いことを思いついたの 何処からが生まれた時には知らなかった言葉で 何処までが新しく見付けた景色なのかを知りたくて 境界線を探したわ かき分けて 進んだの 身長よりも大きな笹が邪魔で 肘を引っ掻いて 掻き毟って 血が出る程の後悔を溶かした 「つう」みたい カサブタって意味なんですって メスブタって呼ばれたら 絶対に怒る癖して 何でもない風で 例えば 冷たい瞳で こちら側を見やるのね なんにも 面白いことなんて ない 例えば 愚痴の一つ たとえることが なくなったって たとえば おはようと こんにちわのかわりに たとえばと告げれば その先が 確定されているような 安堵感 広がる それは 錯覚だけれど 丁度良い 冷たい床に 座る瞬間のような 心地よさが あるんだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]紛うことなき暗闇に/藤鈴呼[2017年8月3日9時29分] 隙間を埋める 魂の光 神々しさなど あるものか 気味の悪さに 埋もれた夜 ササクレるには 未だ早い ツメが 必ず伸びて 白く 染まるから 別に 今流行りの ジェルネイルなんて 必要ない 指の綺麗な女性の 美しい切っ先を 眺めながらの 言い訳 良い訳は 無いじゃない 光の無い世界には 煌めきなど 存在せぬと 何故 云えたものか なぜ 癒えたものか 撫ぜた手に 隙間が 埋まる 響く 重低音 胸の奥よりも もっと 深く 美しく 流れる 空気感が 好き ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]蔦/藤鈴呼[2017年8月4日22時17分] 河原に生れる ネコヤナギ 少し春の矛先を帯びた風に吹かれて ふわふわ ふわふわ 綿毛をも 連想する 頃合い 昔は ザクザクと 赤い筋を作りながら通り過ぎた 背の高い 緑のカーテンも 登山靴のような 大きな足跡で 埋めてしまえば まるで 何事も なかったかのように 灰色の ハードルとなる 乗り越えられるか その必要など ないと 普遍性に 背を向けて 呟くかで その後の人生は 随分と変わって行くけれども どうだい? 春の心地は これから 温かな季節が来ると知って 誰よりも 嬉しいかい? 誰にともなく呟けば まあるくなった やわらかな矛先が うぬ と 揺れる 大きくなった 瞳には ねこやなぎよりも もっと ふわふわの存在や とてつもなく 純白な気持ちも 知ってしまった この世の全ては 年を重ねる毎に 広がって この世の全ては 私の知る限りの全て、と言う感覚に 変換される あの頃 楽しそうだった タンポポの花びら 一枚一枚にも 西洋タンポポなのか ガクがあるのか ガックリするのか 綿毛のままで 一生を終えるのか なんて風に 幾つもの 問題が 散乱して かき集める内に 五線譜を 忘れてしまった 音符よりも 心地良い光に 包まれて そう それはきっと オカリナのような 不思議な形 穴が 幾らかあって 穴が 幾らもあって 指では とおしか 塞げないのに 何て はしたない格好も 出来ないから どうしても 大好きな和音に 辿りつけぬまま 道端の 犬の遠吠えを 聴くともなく 効いているように ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ハウスミカン/藤鈴呼[2017年8月5日8時38分] 建物の中は小さいけれど 太陽の恵みを 甘さへと変換している 空いっぱいに広がる明るさをくれたのは あの太陽 だから ハウスミカンの味は チイサナシアワセ 甘いと感じられる心は 大きな幸せ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]土砂降りの多い街/藤鈴呼[2017年8月6日10時28分] 雨樋から伝わる 激しい水が 白く染まる そもそも液体は 透明であるのに 疑問が浮かぶ しとしとと そんな音など 一度も聞いたことが 無かった 耳を掠めるのは 何時だって 誰かの愚痴だった筈だろう 霧雨に覆われるのは 山路 ヘッドライトに映る 幽霊 存在感のない 冷たい言葉に 翻弄されたまま 進む 心の物語 静かに 深く 浸透し 目の前の 細やかな粒が 煌めく 雨だと主張されれば 濡れるアスファルトにも 納得がいく 飴のように反発する霙(みぞれ)は カラリンと 不可思議な音を称え 静かに転がる 笑いながら 踊りながら 哭くことを 許されぬまま ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]あなたが笑うから/藤鈴呼[2017年8月7日10時31分] もしかしたら 笑えるかもと 楚々とした 風に乗せて あなたが笑うから 馨しさのみが 心に残り 私はもう 何も 癒えなくなって しまうのでした ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]楕円の月 /藤鈴呼[2017年8月8日10時27分] ふと見上げた夜空に 月が浮かぶ様も 眺められぬ 日常下にて  ツキを探すことばかりに かまければ  星空と見紛うこと  いと哀し つきはまるいと だれが きめた 護ってくれる筈の 女神 杖を失くして 立ち竦む 池の中に 大切な存在を 隠してしまったんです どうか 探しては くれませんでしょうか 細く繋がる美声に ゆっくりと 耳 傾ける 聴いているからと言って 効いている 訳ではないと 知っていたのにね カラン と 音がする アイスティーのグラス内で 重なる氷が ふたあっつ ああ ほんの すこし 月の色 みたいだね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]蝉の色は/藤鈴呼[2017年8月10日10時22分] 透明な羽根に感動したことも忘れて 思い出す春巻 カリカリの茶色めいたクッキー 忘れかけた ツクツクホウシの音色 明け方の轟音  眠れぬ枕元に立つ人形 誰が動かすシャレコウベ 雲の流れに合わせて浮かぶ 色梨月 シャクッとした瑞々しさを垂れ流す 透明な頬の向こうに流れる液体を 唯だ 抱き留めて 側溝へと埋めた ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]暗渠 ankyo/藤鈴呼[2017年8月11日13時41分] 流された夜に 静かに呻く唄は 仄暗い水路に ゆるやかに隠され 存在すらも 不確かな 憂鬱 トドメは 鈍色の刃で 煌めく 星の瞬きより 深く 突き刺さるよう 凍る季節を待ち侘びて 鍵を待つ 扉は 占めたまま マヤカシ柄のトランプを弾く ゆっくりと 永遠に続く合いの手 パチリと置かれる碁石の色より不確かな間 閉ざされた石の隙間に 蠢く 深緑の苔 うるるの季節は もう過ぎた 白い飛沫の影だけが ゆっくりと 笑う ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]リボン色のゆううつ/藤鈴呼[2017年8月15日17時05分] すぅと伸びる愛おしさに  戸惑い ひとおっつ ダービー馬の 尻ぬぐいだけしている ポニィテェル ふたあっつ リボンは垂れるから バレッタを パサリと触れた 涼の手を ゆっくりと 振り払った 次の日揺れた 蜩の音 みぃっつ みにっつめいど 舌の間に挟んで 露知らず よっつめの隙間に埋め込んだ言の葉 いつうっつ もう それ以上は 数えられない ダンスホールの床面で煌めく ダイヤモンド 六角形の水晶と 見紛う程の美しさに 溜息ななつ 夕闇と 同じ色の カラスが啼いたよ 八つ裂きの刃  九重で生まれた牛の乳を啜る ガンジーの丘に 敷き詰められた  コスモス絨毯 黄色も白もピンクも ごったまぜで 御挨拶 こんにちは こんばんはだけ  言い返せない ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夢だと解っていながら/藤鈴呼[2017年9月3日22時22分] 脱出できずに苦しんでいた時もありました 声を出して 逃げ出した朝もありました 何時だって  起き出して 打ち震えた瞬間に 支えてくれる腕に  安堵の溜息を 漏らしていた気がしています 眠ることは逃げること 眠られることは 忘れられること 忘れられぬ夜は 忘却の彼方へ飛ばすこと ジェット気流に任せて 今宵のヴォイス ゆっくりと 強かに 乗せて 運べ ハコベの空へ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]カラメルソース/藤鈴呼[2017年9月10日11時26分] 私を敵に回すと怖いわよ 蔑んだような口調が 渡り廊下に響く 吸収素材ではあるが 温泉の如く 生暖かいような記憶 ぼこりと湧き出る雫は 不可思議に折れ曲がり 光の十字路を生み出した刹那 ゆっくりと 剥がれ始めた 屈折した心の奥に 闇の刃が佇んでいて 今斬ろうか 今切ろうかと 唇を開いて待っている 大きな断ち切りバサミが 布の手前にあって 包まれるのが先か 視界を閉ざすのが懸命か 悩んでいるふう ここに楕円形の米粒が一つあって さあ食べて御覧なさいと言われたら 一体どうするだろう 瞬時に感じる空腹感 我慢できぬ程の痛みを 炊飯器にブッ混んで  タイマーを押す プツリ途絶えた回線 物理的に円縄の方が楽だと知る 海に出れば 綺麗なホタルイカでも掬えるだろう けれども これから冬になって行くのだ はみ出した汗を拭く隙間も きっと残されていないに違いない 多分の隙間で 多聞に悩む 目耳にした物事の全てを どう消化してしまおうかと スプーン片手に プリンに乗ったカラメルを ゆっくりと 眺めている ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]いつも笑ってた/藤鈴呼[2017年9月13日18時31分] 夏には 黄色い向日葵 昼には 大きな 太陽 光の色合いは 凡そ そんな イメージ 歪んだ心を もっと傾げて 肩凝りが する位に 曲げた首を 何とか 支えたいと 頬杖を付く ツクツクホウシの鳴き声が ツクツクファイヤーに聞こえた瞬間 真一文字に結んだ唇が ふっと上気する ファイヤー 夕焼けの色 これから 沈んで行くから もう 会えないのだと 嘆く 今宵の月を 連想する暇も ない程に 疲れ果て 眠る 訪れた闇が この世の全てと絶望し 這い上がる術が 見出せないなら 月明かりに 照らされた身も 哀しいままだから 一条の光でもって 今度は 星に 祈りを込める 流星群の季節には 未だ 遠いけれど そっと重ねた影が わたくしの 両腕 まだ 丸を 描けるから きっと 大丈夫だと 呪文を 唱える ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]秋のさくらんぼ/藤鈴呼[2017年9月14日9時24分] ぷらりんと 垂れ下がるヒミツ 重力に従い 反抗することもなく 垂れるは贅肉 何て可愛げのないお話で 爆笑を?ぎ取るより 果実の美しさを 追及してみましょうよ 皺の形成は きっと その後で ゆっくり じっくりと 上目使いで作成するのが オツですヨと独り言 ふわふわの花びらが 揺れる季節に 愛しく下がる 桜ん坊 春の馨しさ ほんの少しばかり 思い出せましたか ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]道沿いのコスモス/藤鈴呼[2017年9月16日19時18分] 道沿いのコスモスが歌う 妖艶な触手を張り巡らせて おいでおいでと手招いていく こちらには 海と山と谷と渓谷がありまして--- ちょっと待ってくださいよ 谷と渓谷は どう違うんですかいのう 谷は谷折りの谷 良く使うでしょう? あなたの腰のように ひん曲がってしまっては 性格形成も困難になるわあなんて言っちゃって あははと笑う そんなら渓谷は どうなんですかいのう 山の隙間に走る 川のことですわいのう そんなら峡谷は どうなんですかいのう 谷の壁が連なる部分と言ったところですかいのう するってぇと 素肌じゃあ いけませんもんのう 藪蚊が寄って来るんですよ 誘っても いないのにね にゃあにゃあと絡み付く 猫のようですわ ふわりふわりと流れる香りで 桜の木を連想する頃 ゆっくりと 霧が 晴れて行く キリの無い 鉄砲水の隙間に 丸太を押しとどめて 橋を渡すみたいに 足は泥濘に 捉えられる寸前 サンダル履きでは キツイ階段 ふと香る彩りに揺られながら 硫黄色の 温泉を目指す ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]みるともる/藤鈴呼[2017年9月18日9時35分] からめるにからめとられてからまる からのまるをだきしめる めるもだんすをおどる るんるららとさけんでみる もるという単位を思い起こしてみれば 何だか小難しい計算式も脳裏を蠢いて もう読み方すら忘れた さいんこさいんたんじぇんとの続きとか しむろっくって言葉の意味だとか 社会の教科書を 窓の隙間に埋め込んで 昔ながらの座席で飲んだ 蓋付きの 透明なお茶を 思い出す もるもっとの話ならば もう少し簡単だ 毛むくじゃらの姿が 可愛らしいらしい 同じ毛むくじゃらでも 人と場所によっては毛嫌いするくせに お前だから大丈夫だなどと言う アルパカやキリンやコアラが本当は臭いと知っているくせに 絵や写真や動画や妄想の 離れた地点から歪めた角度で眺めているから きっと どうってことは ないんだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- (ファイルの終わり)