藤鈴呼 2017年6月15日21時54分から2017年7月22日22時29分まで ---------------------------- [自由詩]見渡せば/藤鈴呼[2017年6月15日21時54分] 踏切の向こう側 校庭を囲むように 桜並木が微笑っている 少し進めば 市役所と神社へ向かう道にも 見え隠れしている 活きてはいるけれど 動かぬ枝たちは 見えたり隠れたりする 術を知らない 代わりに 花びらたちが これでもかと言う程の シャワーを演出してくれている 未だ 蕾ばかりで 花びらのマクロ撮影には 成功していない 近付かないから猶更 機会など 訪れない あなたと一緒に観ようと決めた桜だから わたし 独りきりでは  楽しめないのと 独り言 呟いた刹那 デキャンタの中で 幾つもの茶葉が ふよふよと踊る 少し 塩っ辛い位に染めた サクライロの紅茶は やや 出涸らし 枯れた肌を 何とはなしに 健康色に 染め抜いて だから ソメイヨシノ なんてね 笑いながら 振り返るけれど あなたは いない 今度 一緒に… そう 決めた 肌の上を伝う涙のように 液体の上を浮遊する茶葉のような 散り散りの心に 一体 誰がした そして 何時から 絞り込んだ 出涸らしの味 待ち侘びた 一滴が 胸に 痛い ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]見上げれば/藤鈴呼[2017年6月16日10時48分] 空から落ちてくる何かを 咀嚼しようとして すっと伸ばした舌先を 寸での処で引っ込めたのは 雨粒の不味さを 体感したから あれは屋根の雪 が 数日を経て象られた 氷柱 美しい刃先のようにも思えて 佇んでいた ドサッと言う音と重さの全てが  舌先を直撃し 真白だった雪の国に 要らぬ血液が 流れ始めた 屋根から外れた梯子が 所在なさげに もう これ以上  取り繕えないんですと嘆く 夫婦喧嘩のようだった 人は刺されたら 痛むのだろうか 肉片は 煮物を作るみたいに フォークで穴を開ける訳には  行かぬもの ちょっと 息苦しい毎日が  続いたとて 開けた穴が 塞がる保障も  ないのですから 窓を開けると きな臭い さっきまで 五月蠅かった サイレンが ひとしきり唸った跡  気が済んだと見えて 訪れたるは サイレント そんな 悠長な事  言っている場合では なかった 回転灯を閉じた車は  ただの梯子車 もう 屋根から 落ちる必要もない氷柱が 行方不明の太陽を探そうと 必死で 煌めいていた ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]『 結婚 写真 』/藤鈴呼[2017年6月18日0時52分] 何時も カメラを 向けては 色んな 人の  色んな 表情を  撮り 続けて 来た 写真 嫌いな キミだけど 今日ダケは  素敵な 笑顔 残して 下さい 写真が 好きな ボクだけど 自分じゃ 自分を 撮れないんだと 解ったんだ だから 今日は 撮って 下さい 大切な 二人の 旅立ちに 色んな 倖せの 気持ちを 精一杯 幾通りも 表現 しますから 勿論 全て 最高の 笑顔で ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ラブレターの行方/藤鈴呼[2017年6月18日8時43分] 送り届けた後で キスをする お決まりのワンシーンを見つめて 月が哂う 今日も お前達を 照らさねば なるまいか 路に長く伸びた影の分だけ 不満も積もる 其れが はらり落ちる 花びらならば 春の嵐とともに 吹き去るだろうに ウエディングケーキの上に重ねた蝋燭よろしく 吐息では 許されぬ問題もあるのだ 一つ年を重ねたならば増える 一本のロウソク 年輪のように 膨らんで行くのは 横幅ばかり 腹に浮き輪を溜めこんで 何処の世界を 泳ごうと しているのか あなたの愛しさを認めた それは わたくしの 愛おしさとは 似て非なるもの あくまでも 「あなたの」 に 他ならないのです 透明な封筒に貼る切手の色が 何時まで待っても 見つからぬのです 消印は 有効ですか 消えてしまっては  印には なりますまい リズミカルに響く スタンプ音と 窓に打ち付ける雨の 大合唱 心地良く 揺れる 花びらと ともに 暮れて 生きます ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]万能シルバー/藤鈴呼[2017年6月19日20時58分] 喜怒哀楽を失くしてしまったら ツマラナイなぁと思う一方 激しすぎる感情は 自らをも台無しにしてしまうのだろうと言う 危惧もあります 上手いこと調節してくれる器具が あったならば 毎度の食事どきに使う 箸の代わりに  たまにはフォークをカチャカチャさせて  みたいものですけれど デザートのスプーンで掬い上げるのは 甘い菓子が一番だから 足元を掬われることだけは 回避せなアカン そう思うばかりに  自らの感情を ストップさせてしまうこと これが一番 危険なのかも 知れませんね 歯止めを利かせて ニラミは効かせず  暴走し過ぎず 歩めるように 万歩計で 毎日測る 進路かな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]垂れ下がる ハートマーク/藤鈴呼[2017年6月20日10時03分] 華達が 空から降ってくる 柔らかな ソバ草に覆われて 側にいるよ 言い聞かされて いるかのように 真逆から 眺めた笠は 垂れ下がる ハートマーク グラデーションしながら 今日の心模様を 描き続ける ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]オカキは茶菓子/藤鈴呼[2017年6月21日10時15分] さながら 抹茶と炬燵が浮かぶ 冬のイメージくぐりぬけ 桜のトンネルすぐそこに はらり きらりと美しく ビーズ戯れ フリマ模様に そろそろ マルシェシーズン 早速 連休の案内葉書が届く だが サディスティックに生きたいと 思うんですよ あ、間違った  サドですよ 佐渡 一度 行っておきたいんですよねー あとは合掌造り 手を合わせてから箸を取る 端にも棒にも掛からぬ架け橋 あなたとわたしを繋ぐもの それは 言葉であったり 雫であったりする 見つめる心 何処までも 伸びる 夕暮れの影 降り注ぐ 爽やかな風 そんな季節は もうすぐそこ そう思っている内に 通り過ぎて しまいそうで 芽吹きの葉を眺めると 派閥なんて 関係なくて ただ そこに 太陽が笑いかけ 花が開いて行くのだと 思い知らされる風 頬を殴る 誰かの平手打ちよりも 柔らかく くすぐる 優しい風が好き 黄色の蒲公英を 眺めていると そんな時代のことを ゆっくりと 思い出すのです 宇宙と言う存在は 消して 届かないと思いがちだから 憧れるのね 乗れば頂上まで運んでくれる ケーブルカーみたいに 四次元をも彩る 不思議な形のゴンドラが  存在したのなら こんなにも 瞳を輝かせること なかったのかも 知れなくて 簡単に 虹の向こう側を覗く旅行だ などと 言わないでください 思いあぐねた挙句の台詞だと 解っては おりますけれども まるで 足を置けるみたいな物言いに ふっと笑みが 零れては 揺れる 遠い日の ぶらんこみたいだ 大地の鼓動を感じるために 手を合わせてみた 耳を澄ませる 鼓動が響く それは 木々の溜息であったり 自らの活きる力であったりもする ウッドビーズは 色落ちするらしいんです だからね あまり ふっかける訳にも いかなくって ひすいパウダーを使った ジェルネイルみたいに もっと キラキラするアクリルビーズは 腕で光って 欲しいもの どうしてかな 100円玉から 離れられないんです 握りしめて向かう 自販機が 夜でも 煌々と 待っていること 寂しい青年の 戯言も 哀しい少女の 悲哀をも 飲みこみながら 吐き出すから ガチャン 音がして 転がり始めた容器の中で 揺れる 炭酸水 陽気な季節を 通り抜けたら 葉桜は 食べちゃいましょうか そう 例えば 桜餅にして ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]隙間愛/藤鈴呼[2017年6月23日9時46分] 北キツネに憧れて 電動のこぎりを動かした 三角の耳が 上手く切り取れずに 円みを帯びた思い出 指先は白く爛れ ラッカーの跡が 哀しく光った 網紐で括られた世界 挟まった一通のラブレターが 全てを掬った ザルのように酒をあおる毎日でも 隙間から零れる心が有るだろう 八重の桜と空の隙間に 陽光が差すように 私達は 限り無く 自由だ 擦り切れたスニーカーで 何処までも走ろう 唇の先が歪んだなら もう一度 縫い合わせて 秘密のおとぎ話は 胸の内に 仕舞って ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]蛙の夢/藤鈴呼[2017年6月24日12時10分] 鉄臭さの先まで 浸み込んだ憂鬱 鉢の奥まで 逃げ込んだ金魚が 沈み続ける恐怖を 時に描く 鰭で語る四方山話  弧の角度如何によって 結末の代わる運命 シナリオを書いたのは誰? 誇りっぽい町並みを走るケーブルカー すっかり観光化してしまった応対 巻き上げるタイヤの隙間に 涙が映る 湖面の白鳥を 思い出さないかい? 彼等の羽根 一つ一つを 摘み上げて 放り投げて 笑ってる オールを漕ぐのは 意外と力が要るんです 例えば ジャッキアップと同じで 片方が順手だったか 逆手だったか 両方とも同じ角度が良かったものか 説明を受けた時には 覚えていたコツを すっかり 忘れてしまっている 波間に埋め込んだ 魂 一つ一つみたいに 揺らりと浮かべた葉の 流れる先に 願いを込めた  遠い過去の ワンシーンのように 不確かな 想いなのです ふわりと香る桃の花 向こうの山際を 彩っている もう少しすると 藤が咲きますね 蕾のような 八重の桃色を ゆっくりと 眺めながら 集う 井戸端会議が ただただ 懐かしかった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]専門用語は何時だって難しいから/藤鈴呼[2017年6月25日11時16分] ころころと色を変える 春もみじを見つめながら 明日の天気を占えば 必ずしも晴れるとは 限らぬのに 自信満々のトーンが響く 派手な演出で 笑顔のあなた まるで 怖いものなど 何一つ 知らぬかのように イカラセタ肩で 風を切る代わりに 断ち切りバサミを手にすれば 擦れ違う 美しかった関係ごと ばさり たまに松の上に現れる アオサギの羽根よりも きっと 大きな音がした この時期が 一番 美しいのです、と ガイドの女性が告げた どんな都会の鴉よりも まるまると肥えた姿が 青天井の虚空を照らす 照明の方法など 関係なく 常に 光り続けていた 幻想的な闇が 瞬いている それで 明日は必ず 晴れるのですか 問いかけたが 応えはない 明日のことなど 誰にも 解らぬのだ 希望的観測で 物を言えば 笑顔の花が 咲き乱れるのに 余計な一言で この空間をも 断ち切ろうとする それが 迷惑だったと見えて 鋏の音が 余計に響く カシャン カシャン 三度目は 落下した音 何時か見た ピーナツの欠片より 大きな音 小気味良くは 響かず 向こう側までは 届かず ただ 私に 出来ることはと言えば 酒のつまみとして 主役には なれぬ代わりに 噛み下すことしか なかった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]黄色いスープ/藤鈴呼[2017年6月26日10時12分] 塩味の効いたオツな味わい マラソン選手が息を切らして駆け付けると 馨しさに舌も眩みそうになる 黄色いスープを 差し出されると言う 月桂樹はクスノキ科だと言う 箪笥にゴンゴン ナフタリン臭 漂う大人は御存知ですか などと言っては ニヤリと笑う唇が  薄く紅を引いて 福神漬けと化した あとは米粒 白く 艶のあるヤツがイイ 雪の季節は とうに過ぎ去ったし 照りを出すなら ローリエがおすすめですが 一度も肉とのデートを 楽しんだことがない 鍋の中で  ぐらぐらと煮込むシーンばかりを夢見ては 毎夜 魘されるばかりで 結論は 早い方が良い その冠 被らさして もらえるんですか 雌雄異株ですから  どちらの瞳が真実なのか 解らない 語れない正解のマークが まるで オムライス上のケチャップみたいに 自己主張をはじめた 黄色いスープだから スパイスが 思い切り効いているってことぐらい 直ぐに 連想できるのでしょう 本当は 脇役だって 構わないのに うっすい味わいの方が 印象に残るようなことも あるのでしょう? 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ハートマークが たくさん 咲くから そんなこと 知っていたでしょう? そんなこと かまわないでしょう? ねえ もう私に かまわないで? 幾つの 疑問符を散りばめたら 綿毛を飛ばそうか 本気で 考えている 緑の芝だから 映えるの 白い 花火も あなたの 心模様も 同じように 美しかったのに 白髪は老人の象徴だから ちょっと 哀しいのね なんて 言わないでいて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]歩く人/藤鈴呼[2017年6月30日9時11分] 可能性を歪める大人が多すぎるから 傷付ける言葉も 横行するのでしょうね 見たまま ふわふわで かわいらしい と それが 唯一の 褒め言葉で あるかの如くに 教わったでしょう あなたが褒めたつもりでも わたしは蔑まれている気持ちになるの 春は花が咲く 必ずしも 美しいとは限らない 馨しい花びらを  蹴散らしながら 歩く人だって いるんだわ そういう事に 気付けなかったから 私の笑顔が 引きつっていることにも きっと 一生 気付けないのでしょうね あなたは ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]バリバリに癒される/藤鈴呼[2017年6月30日23時21分] 噛み砕く度 大きさの違うあなたを 円を描くような角度で見つめれば 空から舞い降りる 太陽光線よろしく 包まれたような 雰囲気 広がる 時にゆったりと 時にまったりと その違いなど 微々たるものでしか ないのだけれど 明確に 表現しようがないところが 不思議どころ さりとて ゴマを練り込んでみたら良いのか 砂糖粒を ちりばめてみようか パウダー状なら 零れ落ちてしまうものか 考える前に 唇に乗せた言葉が ふわり それだけで 充分だった 今 目の前にある一枚が 今日の凡て 居住まいを正して 果たして 正解と 云えるのか 正当な 癒え方と 言えるのか 円をなぞる 少し ふっくらとした縁に 問いかけてみる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]赤き葉の/藤鈴呼[2017年7月1日7時41分] 言葉巧みに近付いて来る 笑顔の角度が嘘くさいから目を閉じた 光を受けぬと苦しいのだと言う その花びらこそが 石楠花 そろそろと蕾を開こうと ヤツは必死だ 最近の天気予報は 悉く当たるんです 画面を見やる 嘘くさいとほざく 嗚呼 本当に・・・ その後に続く 溜息すらも 通り過ぎる角度で 蛙が啼いた 必死に捕まるけれど 雨音には 逆らえぬ この時間帯には 傘を差すことが必至なのです あなたが 大きな 赤き木野子ではないと 言い張れば 空の隙間に浮かぶ雲が 瞳と化して いつか還った 猫がにゃおんと蠢くの 雷は さながら 頬の傷 大きな蛇の目傘だね 人っこ一人 寄せ付けぬ 派手な文様なのに 我が身もろとも 包み込んで しまうのだ おお怖い 恐ろしいよと 後ずさり ずしりと肩に乗る モリアオガエルのにやけ顔が 忘れられないのです ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ぼたん/藤鈴呼[2017年7月2日12時42分] 久し振りの笑顔が映える 例えば 両手を広げて 何かを 迎え入れる覚悟を持った 兵のようだ 一つ一つは とても儚くて 散り散りに存在しているものたち 凝固する瞬間だけは 涙も鼻水も ぐっしゃぐちゃの笑顔で 引き攣りながらも 生き永らえる 俺たちは仲間だ 決して裏切らない あすこに敵がいる 今すぐ灯りを消して そんな叫び声ばかりが 轟けば キーンと鳥が啼き ケーンと駆ける 今まで一度として 聞いたことのないような音 ハウる耳鳴りの合図 その代わりに 両手で閉じたい 耳たぶの やわらかさ そうだ もう 人生は めまぐるしくも 面白くも 回るのだ 昨日まで 泥のように眠っていたハトも 今日は 豆鉄砲喰わされたような瞳で 瞬かせた隙間に 泉のような雫が舞い踊る そこに風がなくたって ここには自然が溢れているから きっと 大丈夫だよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ベータ/藤鈴呼[2017年7月2日21時47分] 俯く君の背に つける薬が有るとするならば  それは何だろう ぼんやりと考える暇もない程に 吹く強風を潜り抜け パンフレットの波を越えたら  花びらに辿り着いた きっと それとは知らずに 必死で駆け上がる魂が 底には巣食っていた筈だろう 登っても 登っても 頂上が見えぬのは  きっと 当たり前 視界が拓けぬのは  闇の中に生きる 証拠なのですけれども たまには光も診たくなるのと 一人ごちる 寂しい言い訳ばかりを繰り返す若者は  もう沢山なのだと 無口で足音ばかりを響かせる 雪道がイイ 見た目は真っ白でも わずかに残る汗が 地と 空気と 自らの 存在証明を してくれるかのように 一歩ずつの勇気が 結果を生み出すだなんて 綺麗事に埋もれるつもりなど ないのだ 起きた瞬間の 重い瞼を創造した悪夢 すえたニオイの先に浮かぶ  灰色の煙の揺らぎ具合が 今 βの形に ゆっくりと変わった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]豆と丸/藤鈴呼[2017年7月3日10時38分] 潰れてしまうと 痛いから そっと撫ぜて その固さを ゆっくりと 確かめた 指を飾る 一つの輪が 全ての作業を じっと 見守っていた 甲斐甲斐しく いや この場合は まめまめしく、とでも 表現した方が 良いだろうか あっちからも こっちからも 摩の手が伸びて 避けようとして 必死だったの いつの間にか 裂けてしまった心を また まあるく 彩るために まめ と まる を 交互に 見つめる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]君は そらまめ/藤鈴呼[2017年7月4日19時46分] 天井に 空豆が 張り付いている 暑い 夏の午後 美味しそうだナ ビールでも 飲みたいな いや 違うヨ? ちょっと ちゃんと見てみて おくんなせえ 青空の向こうから 声がして 見上げると 白い雲 ぷかぷか 誰かが 何時か くゆらした紫煙に 鼻ごと ひん曲がったような 記憶まで ゆらゆら 流れてく 身体の凡てが 丁度ハマるから 甚く 心地 良いんです お茶を一口 飲んだ後の ぷはぁ〜っ と言うような音で 君が 呟く 此処は 天井ではなく 門構え 護って下さるのは 豪く 嬉しいが 門構えの仕事も 大変と見えて ちょいと 顔を 洗いたいって 申します 雑巾片手に 迷う朝 ビクンと 身体を震わせて キミは 飛びあがった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]星輪/藤鈴呼[2017年7月6日9時15分] 風を止めようと思いました ふんわりと歌う 白いカーテンに 話し掛けましたが 反応が ありません もしかしたら 聴こえていないのか、と思い もう一度 声を荒げてみましたが 風は ふんわりと 翻るまま まるで 弄ばれても いるようです 白いカーテンだから 駄目なんだ 闇に溶ける瞬間を 知っていますか 少しずつ 星空が 近付いて 来るのです 本当の距離など 知る由も ありませんが 遠く 遠く 絶対に 手の届かない場所だと言うことぐらいは 幾ら 知識の足りない私とて 知っています それで 行方不明の時計を 捻り倒すのです 時間よ止まれ 時間よ止まれ そんな呪文が 全く意味を為さない事ぐらい 知って おりますのに それでも 止められないのは 自ら荒げた 声 そのものでした 風も 止まろうと 思いました きっと 私は風では ありませんけれども もし ワタクシが 風であるならば 一度くらいは 止まろうとするのでしょう 狂おしい位に 泣き叫ぶのは 何か 悲しみを背負った所為 表現する術を 知らなくて 書き殴る 時間すら なくて あるのは この ユビばかりなのですけれども 合う輪が 見つからない 目の前には キラキラと光る リングが在るのに その輪とも ちょっと 違うのです 淡い光のようで 遠い お話 あと とお 数えますから ゆっくりと 退場して くれませんか 闇の主に 語りかけました 風は 少し 耳を傾けました 荒げる声に 反応した訳では ありませんでしたが ほんの少し この声が 届いたかのようで もう それだけで わたくしは 安心して 眠れるので ありました ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]パイプの先に/藤鈴呼[2017年7月6日17時57分] ねえ何か面白いことやっているよ えーっ 何なんだろう 一体 なんなんだろう って 私達を せめているようだ 違うよ ちょっと 指摘しただけ 私的な問題に留意していてね 詩的な私達は 蚊帳の外だと 知っていて ちょっと変な、なんて 修飾語を使う 飾り立てられることを 何よりも嫌う若者が いや 若者だった筈の私達は 今は老いているのか そんなことは置いて於いてと声がする方向を見つめると 肥え駄目 冷たい声がして 振り返る 氷を作り忘れた製氷機は ただの塊 四角い枠組みだけを 表示している 本当は カラン と  小気味よい音を聞かせてくれる筈ですが 今 ほんのちょっと 個人的な事情により 音が 出ないんです 情事ではありません 常時でもありません その内に また 小気味良い音が ひっそりと 聴こえて来ますから 舞っていてね ヒューっと 音がする 誰かが 囃し立てた二人 恋のバカンスを 楽しみます だなんて言っちゃって 真っ赤な口紅を はしたなく開いている 横一文字にするよりかは への字にしてみたり へらず愚痴を叩いてみたりする方がイイ バチを逆手に持ち替えて 逆上がりしようとして握る鉄棒よりも 鉄パイプと 禁煙パイポを咥えて ちょっと 格好付けた角度で収まるファインダー越しに ニヒルな笑顔 ただ それだけが 似合うのです 若者たち 若者達の町 待ちくたびれた若者 その どれもから外された私達は中年 何てこと言うっちゅーねん、なんて言いながら 冷たい笑いを繰り返す その唇に もはや赤い紅は刺さぬ 代わりにひび割れた氷ばかりが突き刺さる あの 白い眼のように いつか 芽になれたら良いな 例えばササユリみたいな ウォッシュアウトしてみればいいよ 鮮やかさは荷倍増しでヨロシクね そうしたら 桃色が浮き出るから ちょっとだけ 得したような気分になるから ねえ 試してみて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]暖炉/藤鈴呼[2017年7月8日0時01分] 戯れの猫が二匹 首を伸ばして寄り添っている コンロの上 いや違う それじゃあ 食べられてしまうでしょう?と お小言言いながらも 唇は歪めて笑う 勿論 口角は揚げる方向が一番だから カラリと揚がった天婦羅が 今夜の口上 誰にも邪魔させないの、とは言いながら この お抹茶色したお塩ってば 見かけ以上に確りとした味わいだから ちょっとねえ 舐めてみて? なんて 話し掛けている それでも二匹は寄り添ったまま 土台 無理な話なんだ 足元を括りつけられているから 例え 目の前で焼かれているのが 魚であろうとも ヨダレを流すばかりで 喰らぬ事など 到底 不可能なのに 理想郷ばかりを追い求めたら 足元が灰になっちゃった 例えば杯ならば 返盃している内に 四方山話も出来ない位に 酔っぱらっちゃって 千鳥足を抱えちゃって ふらぁりふらりと 猫の尻尾を振るような事だって 簡単でしょうけれども ねえ 何故なんでしょうねぇ なんて独り言 気付いたよ 今の季節には 相応しくない ここに在るのは コンロではないんだって オーブンでもないの 幾らピザが食べたいからってね そんな洋風な御洒落っ子サン ここには居ないのに ちょっと ねえ 間違えちゃったわ と 何時までも喋り続ける 囲炉裏の前で ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]目張らない生活/藤鈴呼[2017年7月11日9時55分] 遠くの金魚 見つめれば 尾鰭のついた噂話も 御姫様のドレス内に 包まれてしまって 只管 忘れられるかのような 産物 白濁した水面に浮かぶ目玉がとても白くて 青空と一緒に映り込む雲の欠片と勘違いしている ねえ坊や そう思うでしょう? 乳母車を今にも手放しそうな老婆が静かに咆える キイ カタタタ 横から縦に編み続ける織物 反物なんて言葉から離れて数年経つ ミシンやボビンなんて必要のない生活 カタカタと回るのは 南部曲家の横で動く水車のみ その水を飲んでいた馬も 死んでしまった 鯛よりは重宝される代物 調理済みと言うから醤油一滴 垂らすのも 何だか失礼である気がして 縮こまる 茹であがったタコのような雰囲気に唇の形を持って行けば 非難と愚痴の鬩ぎ合い 聴く方だって こんなに辛いのだから 話すアナタは よもや唇を外してしまいたくなるのではないですか と言う言葉ごと飲み下す 泡の出るビールと一緒に そんな季節だ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]タモトユリ/藤鈴呼[2017年7月12日5時08分] 白い刻みの中で震える存在 颯爽と走る湿気の中に巣食う種は 一粒ずつ 欠片となって降り注ぐ 雨のよう 時に雹となり 我等を脅かすけれど 心配ないよと 優しく広がる両手の如く 柔らかな花弁が  胸に痛むのは何故 言い聞かせても 馨しさには叶わない 願いを込めようとして  何を祈るべきか 忘れてしまう夜のように 静かに 美しさを称えようとも  共に見る相手がいないのは とても寂しいのだ 目の前で揺れる花びらが 何時からか高貴に満ちて 楽しげな歌声は 何時からか疑惑に墜ちて 不協和音だと信じたくない位に 耳障りではない音列だったから 気付かなかった そこに 一輪の星が 瞬いて いたこと 百合の花粉は 白いシャツに染み付いたら離れない 二度と手を離さないと誓う 恋人達のように イラナイ口紅の後よりも もっと 厄介なのだ 袖の下に隠した金貨 いちまい にまい 三枚目が必要なのに いちまい にまい 断崖絶壁の光景など 想像するだに 御免だ 足を伸ばして にじり寄ってみても この身を 支えられるとは 限らないだろう その足先に埋め込まれた石粒が  今直ぐ砕けぬと 何故言える 何故癒えぬ  居住まいを正して 少し痛む腰を引きずって 白い湿布を貼り直して 少し歩いた 追い駆けて来るのは 百合の優しさ 馨しさだけ そのままにして ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]キリの先に埋め込まれた真実を探してみるかい?/藤鈴呼[2017年7月15日19時55分] 妖艶なほどに美しい花びらを翻す仕草を ゆっくりと見詰めてみる そこには シロツメクサの首飾りが 良く似合うだろう 知っているかい? 露を吸った時の甘味を 朝や雨明けの空にも 負けぬ程に 映えるよ 茎の息吹を感じられるのは きっと そんな瞬間 茶変色しても 簡単には 離れられない まるで あなたと わたしのよう なんて言ったら 笑うかな 少なくとも 怒ったりはしないって 解ってる そんなことは 起こらないから 今 こうして 一粒ずつのビーズを ゆっくりと 編み込んでいる 昔 三つ編みを編んだ指で 今はもう 切ってしまった 髪の毛の先に抱いた 夢の続きを ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]遠くへ/藤鈴呼[2017年7月19日9時36分] 百日紅が咲き始めた地上は非常に暑く 閉口することも許されぬほどに膨らむ ペットボトルを握りしめて 叫ぶ 薄く気化した炭酸を 追い駆けては 呟きの友と語らう 夢の中 背繋げに啼く鴉の群れが まるで 白鳥の如く V字に広がる 坊や 大きくなったら 何処へ行きたい 問いかけた台詞が 湖の奥へ 沈んだ 忘られるなら 遠く 空の向こうへ あの 飛行機雲を 追い越せるくらいまで 舞い上がって 踊れ 白鷺の花のように 象られた花が浮かぶ 水面に口づけるのは 干からびた 鳥の嘴 憂いの刃よ 切っ先を掠めたのは 緑の葉たち 大きすぎて 傘の花をも 包み込むくらい そのまま 静かに 影を閉ざして 見えなくなるくらいまで 夕餉の時刻が近付けば 聴こえ始める 蜩の かなかなかなかな タイピングの音と 何処か 似通っている 唇の端を歪めながら 自嘲気味に微笑う  あなたの表情にも 似ている 照り付ける 焦れた灰色から零れだす光 歩いてみても 足跡を探しても 全てが 繋がって行くことが 滑稽で 抜け出せない トンネルの向こう側 爆破する程の勇気は ない癖に 朝焼けまでは 待てないのだから 月の女神に 少しだけ 心 救われる 一枚 二枚 数え始めれば キリがない 遠くへ 行きたいけれど 船が 見つからないの 壊れたオールを抱えながら 唯だ 泣いている とても 静かな声が 聴こえる かなかなかなかな 変換できぬ程の 高速で認めた文字の向こうに 隠れてしまうくらいの 小さな つぶやき ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]斬新ダンシング/藤鈴呼[2017年7月21日9時39分] ペラペラと捲る領収書 最後のペイジで立ち止まる 余白に非ず 白い紙が もう 残ってはいないのだ 束が揺れる ボールペンの先 華麗な花びらでも 付属されていたなら 暇つぶしに 視線を泳がせることも なかっただろうに 言い合いが筒抜けの町 従量制だから イケナイ 鞄だって そうだろう マチが少なきゃ 物は 入らないんだ 多かれ少なかれ 片手が塞がってしまうならば 大きい方が良い 小さなお前の心ごと詰め込んで いっそ 踊れ ざんしん だんしんぐ ザンシン ダンシング ZANSHIN DANSING きっと たのしいぜ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ウォッシュアウト/藤鈴呼[2017年7月22日22時29分] 朝から暑いなあと思いながら  ゴミ捨てを 完了した朝  出掛けに 炭酸水を手持ちする癖は  最近のもの  神奈川時代から培ったのは  ペットボトルを 持ち歩く仕草  電車生活が 始まったから  何か有った時には 水がなけりゃあ大変などと  大義名分を 振りかざしてみるとともに  咳き込む瞬間が 唯だ 怖いからなんだ  乾燥した朝 会議中の喉を潤すのは  何時だって 緑色の飴玉なのだけれどもね  温暖化の影響もあるのかしら なんてことも思う  日焼け止めチューブを 初めて購入したのも この地に来てからだったなあ、と  それでも一瞬で 汗とともに 滴り落ちてしまうから 意味ないじゃん なんて言わない  やらないよりも やったほうがいい  そう思わなければ  全ての事象が 色褪せてしまいそうだったから  ウォッシュアウトする手前で留める 砂粒のように  ザラリとした感覚だけを 抱きしめて  今日も 塩一粒 こそげ落とすんだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- (ファイルの終わり)