藤鈴呼 2017年1月22日14時51分から2017年4月4日19時35分まで ---------------------------- [自由詩]煮込みうどんが出来上がるまで/藤鈴呼[2017年1月22日14時51分] あつあつ の うどん はふはふ と たべる ほおばる 舌が 火傷しそうな程の 熱で 溢れてる 仲良く 煮込まれたいと 欲しているかは 知らないが 分厚い 蒲鉾は 君の 唇 太くて長い 御饂飩は 私の 良し 意思 薄弱だ なんて 千切る歯を立てて 笑う グツグツと 煮える姿 泡の向こうに 煮え切らぬ表情の アイツ アツイほどの アイツの想い 握りしめた まま 握り潰せも せず オセロのように 引っくり返したり とっくり返したり 徳利を探したりしながら 時を待つ 松の上に留まる朱鷺が見られるのは きっと こんな季節 北風なんて なんのその だって 白と赤 あたたかな 鶏色は 幾つまで経っても  健在なのですよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夢の世界で/藤鈴呼[2017年1月31日7時50分] 哂う 山茶花 唇の色合いを 秤にかけて 軽く 溜息 笹で 囲われた 冬の風景が 気に入らないと 嘆く 雪の 白さも 空の 藍さも 自らの 青さに 変わるだけ 竹藪は 何時までも 続かない スッと 角度を 変えれば 見たことも無い 美しさに 出逢えるのでしょう 夢の世界に 還れると 安心しておいで 一つだけ 気を付けるならば 葉の切っ先 柔らかな お餅みたいに膨らむ 君の頬を 傷つける 予感がするから 要注意 余寒お見舞い申し上げぬ間に 消えた桜に 問いかける 花びらの色が ちょっと 濃ゆすぎたのですね キミは わらう ゆっくりと 歯を見せた 中心部分が いやに黄色くて 目を伏せた ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]金平糖/藤鈴呼[2017年2月1日1時56分] ゆっさ ゆっさと 揺れる竹 先に飾られた 幾つもの願い 海と陸とを繋ぐ 小路を抜けて 浪の花を そっと 眺めてる かわいらしい こんぺいとう あまい ちいさな つぶだから 犬歯で 噛み砕いたり 臼歯で 磨り潰したり しないようにって 注意を していたの 岸壁に 打ち寄せる 細かな形を 連想しながら 温かな部屋で 寛ぐ瞬間 ほんの少しの 罪悪感を 覚えます それが 何に向けてで 有るのか 上手く 説明 出来るほど 想いは まとまって いないのだけれど ちょっとした 瞬間に ほろりと流れた涙を 冷たい 北風の所為にする 余裕くらいは あるみたい 箱を 開けるのが 何時だって 楽しみだった ひな祭りの 季節には ぼんぼりが お決まりで あの ぽおとした 薄明りが 何て いじらしいのだろうと 幼心に 感じていた 手前に置かれた 平行四辺形は とても 固くて プラスチック製だから 余り 心を 奪われなかった 筈なのに 今では 箱の中に あの 色合いを 見つけ出すと 嬉しくなって しまう いつかの あられと 勘違い 白 桃 黄緑 この 三色だけで 生きて行ける 気がしていたの だから こんぺいとうの中に 黄色が 混ざっていた 瞬間は 本当に 狼狽えた 驚いて 口が開いて 止まらなかったけれど その唇に 沿うように 甘い 金平糖のような 波の花が 転がり込んだから 全て 許されるような 錯覚を 憶えた 今だって 夢の中で あの 刺々しいけれども 甘い 感触を 憶えているわ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]フリーダイヤル/藤鈴呼[2017年2月1日23時24分] 黄金の名器で在るかの如くに 煌びやかだけを 見せびらかしてる 白いレースのカーテンが 似合うような 部屋の奥で リリリン♪と オンプマークまで つけたがる クセ 氷の隙間で 犇めき合う 身を寄せ合うなら この季節に 似合う おしくらまんじゅう それは 決して 冷凍庫に隠した 雪見だいふくとは  違う 柔らかさ むにゅっとした ムキュッとした 不思議な音と 僅かの彩 豊かな胸よりも もっと  包容力のある カーテンの隙間から 木漏れ日が 差して 何かの舞う 気配がする 音は 聞こえない 音は 見えない もし 見えたとしても レースの模様で 阻まれて しまうから 隠されて しまうのだから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]灰樹花/藤鈴呼[2017年2月3日10時41分] 何処から生まれて 誰と つるんで どんな習性を持つのか 環境の 所為だけにして 味わえぬ日々を 噛み砕くように ぬめぬめのスープに 割り入れた 鶏ガラの素 素材は 木野子 舞茸の中国名は 何と 読むのか 知らぬけれど 灰の樹の花と 描くのです ぬくぬくと 炬燵の上で 例えば 暖炉を鳴らすような パチパチと言う音 これが 一番 最高なのだけれど 天婦羅は  油が飛び散るから 熱いね 気持ちが 厚過ぎて 測れなくなった時 中から 出て来るように 心臓を 突きたいけれど 駄目なの 気持ちって 心臓の 中には いないから それじゃあ 脳味噌みたいな 白子鍋なら イケるかって? そういうハナシ スリムになって いくんです まいたけスープで この身ごと 磨り潰して 噛み砕いて 自らも 崩れ落ちる 手前で 留まる ナラ カシ シイ ブナ 呼び方は 沢山ある ただ お気に入りの心材に 身を寄せて あたたまる 胞子のように いつかの 夢を 飛ばす ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]キラキラ/藤鈴呼[2017年2月11日0時47分] 最近の 日の出時刻を 知らぬから 未だ 明けきらぬ どころか 明ける 気配すらも 見せぬ塩梅の 暗き空を 見つめながら 車 走らせた タイヤは従順で もう これ以上ないって程の音量で コーンと啼いた後 時計回りに 動き始めた 真横から 動画として 眺めるならば 逆回転しているかのようにも 思える トリックアートの世界ならば お得意分野でしょう? などと 笑う あなたの上げている足の下に 本当は 台座など 存在しないのです ガチャリと音がして 隣の住人の 気配を知る その頃になり 漸く世の中は 耀さを 取り戻したけれど カーテンの内に 引き籠る身としては 確認する術が ないのです 何となく 耳に残る 階段音を 耳障りと取るのか 何時も通りの 時計の針のように 気になるけれども なかったものとして 脳内で 消し去るかは ワタクシに 委ねられていて その結果を 提出する レポート用紙すらも 朝刊に 挟み忘れた チラシのように 存在を 隠したかに 見えた  だからかな ふと目についた三日月の  切っ先の鋭さ以上に その長さが 気になって 斜め下で 可愛らしく光る  キラキラの星が ちょっとだけ 可哀相に 思えたの 踵を返す もう一度 振り返った瞬間  廻り逢えたのなら この心に 収めてみるのも  良いんじゃないかって 瞳だけでは 足りないのだと  ぼやきながら カメラ一つも 残っていない  大きなポケットばかりを まさぐるのです 空気に触れた 掌が 段々と 温もりを 取戻し 私は ほんの少しだけ 指先の 冷たさを 忘れられました ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]紅の裏切り者/藤鈴呼[2017年2月15日23時26分] 流れた血の意味を考える 原因ならば幾つも有る 素手で硝子を強く持ったからだ 悔しくて握りしめた拳の先に 切っ先の鋭い物体が飛び出していたからだ 或いは その涙の色が 部屋の赤玉に 呼応したのかも 知れぬ 時が流れて 言う事が転がる相手を本気で恨むのは 実に下らないことだと考えた それは 時間の無駄だから 時計の針ごと 排除してしまおうと 鼓動が聞こえぬ角度に 枕を持ち替える あの日見た夢には 可愛らしさの欠片も存在していなかったから 驚くくらい冷静に瞳を閉じた瞬間を 思い出してしまうくらい 酷く青い雪が 視界を染めていたけれど 振り返る余裕すら なかったのだと 気付く 残り物を平らげないと 次の皿は 出て来ないのです スプーンとフォークが煌めいて 日光をも反射すると 何かと健康的な錯覚は受けますが 錯覚は どこまで進んでも 幻覚 幻惑は どこまで嘆いても 味覚には 叶わないのです そのイメージを作り上げる為に 嗅覚を働かせてみましたが アンテナ一本立てるのを どうやら忘れてしまったみたい 微々たる力を振り絞って 叫びます その電話番号は ワタクシのものだけど ダイヤル式の黒電話は もう我が家には ないんだってこと 今日も 何かしらの音が響き 私は呼気荒く 叫ぶ代わりに この子機を 握りしめる ハイハットが合わさる角度で拍手をすると スッと傷跡が 消えてしまうかのような幻想 それだけを 握りしめながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]眠る前に/藤鈴呼[2017年2月16日20時58分] 見上げる蛍光灯 ぶら下がる 何か 宙ぶらりんの想いも 飲みこむような夜が じわり じわり だけど 確実に 一日一回  廻って 来るよ その時刻になったら 地球の裏側に ジャンプしたい 固い アスファルト 思い切り 踏みしめて 軽く 地団太 今日の 喧嘩 示談にするには 暖かな 蛍光灯が 欠かせない パチリ 点けて 夜に 消しても 悔しいこと だらけなら パチリ 睫毛は 開いた ままだから そんな風に 心の眸 いつも オープンで 活きられたら いいな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夕暮れの あんドーナツ/藤鈴呼[2017年2月17日9時57分] 砂糖をまぶしただけでは飽き足らない ただの揚げでも駄目だ それは 魚くさいどころか 水くさいくらいの 懐かしさに 満ちていて 目を閉じても 浮かんで来る程 青空に 近い 雲のような 存在だった 中身なら 出来るだけ 詰まっているのが 望みだろう 頭だって 然り だけど 口ずさめば ハミングだと 認められる わけでは ない そういうことばかり 口走っては 窘められた 手で制されてしまえば 向こう岸へ 渡ることなど 出来ないから すり抜けようとして 空間を 探す 長いばかりの 葦の 向こう側 そっと伸ばすは 左足 どうして? うん、私、右利きだから 何時だって 逃げられるように 右側は 残して置くの 自分の 一番 近い場所 それは 真下 でもね、踏み出さないと、歩けないこと 知って いるから 水溜りの冷たさが 指先に浸透して  仕方が無いの 長靴だから ゴム製だから どんなに長いジッパーのついた靴底よりも 安心できるって 靴屋さんは 教えてくれたのに 一歩ちゃぷりと漬けただけで こんなにも 痺れるのよ ココロがね コトンって 音を立てて 崩れ落ちるような 感覚 ねえ あなたに 解るかな そう言いながら頬張る あんドーナツが やけに 甘かった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]素手/藤鈴呼[2017年2月22日11時42分] 何処まで 走りたいですか と 問いかけて どこまでも と 応える 最初は 同じなのだけれども 頷く頬の角度から 冷たい影が 伸びているようで ずっと 見つめていたら 風邪を引いた ウイルスなんて 目に見えないんだから 大丈夫だって 水で薄めた洗剤を ぽつぽつと 押す 容器の中で  それらは 固まり尽くしている 割り箸で 突くと 今迄 仲良かった 粒ぞろいの洗剤たちが イヤイヤと 首を振りながら ゆっくりと 離れて行くのです いや 違うでしょう もっと こう 固形なんだから 例えば そう スライムみたいな・・・ 言いかけて 止まる 吸盤に 吸いつく瞬間のように 彼等が 集まり始めたからだ ダッシュボードの上で 影が動く 右下がりなんだから 左側に 移動する訳はないのに 窓に残る 雨粒とは 反対方向に 動く そういうことならば 話は 早いのですが 何度も通り過ぎた シグナルの色が とうに 分からなくなるくらいの 暗闇 普通ならば その方が クッキリ ハッキリ する筈なのに いつもの あなたの 相槌みたいに ゆるやかな ペースで 苛立ちを 加速させる スライムみたいな 色の ちょっと 腐りかけている かつては シャキッとしていた葉を かき集めるのに 素手で 充分だ ゴム手袋なんて 今は 必要ないよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ふるえるチョコレート/藤鈴呼[2017年2月23日21時44分] サヨナラを告げる隙間風 ぽろん・ぽろん 流れ落ちたのは カラフルチョコレート この 涙の代わりに 窓枠を 叩きつけるような 透明な液体が 何度も横目に映るから 気が散って 仕方ない ワイパーは 動かしてないのに 次々と 嘆き続ける 右側の窓 飛沫が上がる度に かなしいよ さみしいよ くるしいよ どんな言葉が 飛び出して来るのか ちょっとだけ 期待した 言葉は機体に溶けて 想いは気体に溶かして ミックスチョコレート 全て 混ぜこぜに このボタンを押すと 次のカカオが 流れ出します 何処で止めるかは 自由ですが 一応 あなたが作るのは ケーキですから 3センチくらいは 必要でしょう それ以下ですと ちょっと春先の やる気のないゲレンデよろしく 下地が出て来て 格好悪いです 別に 性の格を 全て さらけ出したとしても 気の持ちようを 誤ち解きほぐそうとも 本物の愛の情ならば 正しく確り伝わるものだと 信じたいのですが 未だ不惑ですか 惑いながら 震えながら 活きて 行くのですね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]最高のチョコレート/藤鈴呼[2017年2月24日22時16分] この香りは モカ 香ばしい中にある 色気のような湯気が もっつりと上がる瞬間 急激に 餅が食べたくなった 半分だけ焼いた トースターの中 未だ まっちろいまんま そして 円形は崩さずに 仲良く 並んでる 前倣えをすれば 一番先頭のあの子だけが 汽車ぽっぽみたいで 本当はちょっと 羨ましかったんだ 色はゴールド カサカサとした包みを開くと てらてらとした液体が 流れ始める ウイスキー・ボンボン ネーミングが 何だか可愛らしくって オヤジから少女へ イメージは 七変化した あの 七色の鳥は 何 カラス 巷では 大嫌いと称される あの鳥が 電線の上で 震えてる 震えているの ねえ 見える? 揺れた 電線の裏で 風が 笑っているでしょう ゆっくりと 身体を 揺らすのよ それとは 気付かれないように 存在感を 消したままで 香りだけで 鼻先を くすぐる 最高の チョコレート みたいだわ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]額縁/藤鈴呼[2017年2月27日12時33分] 掌の中で あなたが 笑ってる 唇は ふんわり 柔らかい けれど つまむと ぷにっと ふるえるの 大声上げて 笑う瞬間にだけ 三角の 空洞が 出来るね 情熱的な紅筆で 何を描こう 何色にも 染まれる白は 誰に向けよう 全てを 包み込むような 黒幕を引くのには 未だ 早いから 見浸かりますように 安らかなる 想い 支えられて 重たくて 肩が 撫で型に 沈みそうな時には どうか 両側から 支えてね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]苺ショート/藤鈴呼[2017年3月2日10時10分] ショートの次は ダブルと 相場が決まっていて 表の裏は 裏だけど 模様は同じと 限らない 平等院鳳凰堂が描かれたコインは 誰にでも平等に配布されないし ピカピカの金色だったコインも 何時しか鈍色に 変化するから 新雪の上に挟まれた 惑いだね 銀板の上に乗った 甘いケーキを眺めて そう 表現する時 甘酸っぱさも 気味悪さも 同時に描くのでしょう その弧の周囲に 幾つもの合いの手が 挟まれて 生クリームのように 全てが 繋がって 行く ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]しあわせのチョコレート/藤鈴呼[2017年3月3日10時35分] あなたがこねた まほうのしずく 捏ねた? 何を? 粉を 雫? どんな? 魔法 繰り返し 練り直す 冬休みの宿題を そろそろ完成させないと 卒業させて もらえないのと 君は 嘆く 例えば あれを見て御覧なさい 足跡の形に捏ねられた 二層クッキー 口にする度に 溶けるチョコレートならば 心地良いのは 丁度2秒だそうな カリカリと 砕けた姿を 連想すると 出来上がったばかりの絵画のように 愛おしいけれど これが 眺めるだけならば 意外と寂しい結末が 待っているのかも知れないの やっぱり 甘いものは 笑顔になれることが 肝心 涙色のチョコレートよりはね ちょっぴりビターでも  舌を出すくらい面白い出来事の後で 唇に触れた瞬間を 連想しているのが 素敵 このお菓子は 未来への 道しるべ 刻む度に小ちゃくなる葱みたいに 放置しておくと 勝手に涙も流れ出しましすが ちょっぴり味わい深いから  コクが出るまで待つのです 足跡 踏み締めて 地団駄踏んだ瞬間を  思い出せぬ程 大人になっても大丈夫 その味が あなたを 懐かしの世界へと  導いて くれますから その足で あなたは  歩めば 良いだけなのですよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]スライス eyes/藤鈴呼[2017年3月6日9時45分] くり貫いた目玉に映るスライス お子様ライス 生卵 半分だけ とろけたチーズ ぐちゃぐちゃに かき混ぜる役目はフォーク 陥るばかりで 夢の隙間については それほど深く 考えたことが なかった 本当は もっと本気で 熟考すべきだったのかも  知れないが いかんせん 煙たいハンカチが 視界を染めていて 砂埃よりも 雪の舞う季節柄 それらは ちょっとだけ突出した 桜の蕾よりも はるかに目立った わしゃあ寝るばい 何処の台詞なんだか 分からないけれど 布団を丸めたままで 呟くと 枕が 飛んで来た そのまま ふわふわの豆腐に ぶつかって はじけたかに 思えたが 夢は そこで 途切れた 違う 私が欲しかったのは オムライス 出来れば 甘くないやつ 塩ぱっぱ そのくらいが 丁度 良いのですが 叫び声が 響くから もう 人匙だけ 甘味を足そうと思うのです いかがでしょうか ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]トッピング・チョコレート/藤鈴呼[2017年3月7日13時33分] ちょいちょい 放り込んで来る もう 今日は お腹一杯だって 言っているのに 巻物ならば 中身がなけりゃあ 意味ないじゃん 床の間に 飾るならば  水滴が 落ちないように 気を付けて 二階の住人に 騒がないようにって 釘差す台詞だけ ちゃんと 考えておいてね 薄い生地に ゆっくりと 乗せる とっておきの トッピング 何処にでも有る形じゃあ ないの オンリー・ワンだから 憶えておいてね 全体が 茶色に染まっているのは  鉄分が 足りているから 私の体 小麦色に 焼けているでしょう? 本当は 雪焼けなんだけれども あなたに 分かるかしら 今は ティラミスの 季節だからね チョコレートが とろけそうな程 トラックの中は 大紛争 約束に遅れたと  電話が じゃんじゃん かかってくるわ 小さな箱の中で きっと トリュフは 泣いている 早く 救出しなくっちゃ!! 唇を歪めて もう直ぐ 温めて あげるからね などと言う 温まった瞬間に 溶けて なくなって しまうこと 知っていながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]天丼/藤鈴呼[2017年3月12日8時33分] ねえ 一体 何時から 誰かを心配する気持ちに衣をつけて カリッカリに 揚げちゃうような 世の中に なっちゃったんだろうね カリカリするばかりでサ 喜怒哀楽の 二番目の感情でしか 物事を 捉えられないなんて 何て やるせないんだろう 丼ものには そりゃあ 色々 あるよ 親子丼は 出汁が効いていて ちょっと薄味 トンカツは ソースがテロンと のっかっていて 腹もちも イイ 天丼って 意外と 甘辛党 議員は 一等賞になって 舞い上がるんだ 迷い込んだ 大葉と 一緒になって 大運動会 玉入れの代わりに 天かすを ぶっこんで 綱引きの分だけ 他人の足を 引っ張るの 嗚呼 だからかな 思ったより ご飯粒は 薄かったのに 平らな分だけ 存在感が 増しちゃって 全て 平らげること 叶わなかったんだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ぽつり あなたが つぶやいた/藤鈴呼[2017年3月13日11時05分] 田舎者!! と言われると イラっとする ことがある 田舎が良いねぇ なんて したり顔で 呟くのは 都会の便利さを 知ってしまった者の 戯言 今度 何処が良い? 転勤族の 私達 新天地への 憧れは 常に 尽きない ・・・田舎が いいな ぽつり あなたが つぶやいた うん いいよね 何処からが 田舎なのか 田舎は否か なのか 都会の喧騒も 全て 排除するのは 寂しいものかも しれないけれど ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]はいどうぞ/藤鈴呼[2017年3月18日9時44分] 後ろ手に隠す 大切な宝物が 何時だって 輝いているとは 限らないけれど ともすれば 前方からの攻撃に備えて  隠し持っているのかも 知れないし もしかすると  大きな 塗り壁みたいな 固い存在が 背中側にあって 自らの 身との間に 挟み込むことによって 護っているのかも 知れませんね。 取り出して見せたいと思う相手に 出会えるかどうか 取り出した瞬間に 魅せられる 存在なのか どうか 取り出して 店に並べた瞬間にはかき 他の誰かに奪われて 売り切れて しまうのか その 宝物の正体を 考えてしまう夜 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]バチのオト/藤鈴呼[2017年3月19日11時15分] 定期的に響く カツン カツン ちょっとだけ 思い出すのは ピンヒール コンクリートジャングルから 離れて もう 数年になるのか 楽しかった記憶は いつまでも 笑顔とともに 脳味噌の中に 張り付いていて スクリーンが 歪んでも 汚れても 外が嵐でも 誰かに荒らされぬ限り 同じ様な残像を 流し続ける 蹴られた瞬間のことを 連想すると ちょっとだけ 痛い 雪で全て埋もれた 石段に 初めて足を 踏み入れる 瞬間のような 清々しさを わたしに ください きっと 雪の色が 桃色でも オレンジでも 同じような 気分なのでしょうが 世の中が 真っ白に 染まる瞬間 何処か 新しさを感じるのです 集めた雪玉を ゆっくりと投げる 何処か 山の向こうに反響しながら 打ち返してくる バチの音 カツン カツン 叩きたかった 石橋が 雪に埋もれて 見当たらないもんだから 探しているのですね バチを持つ手は 夏には きっと 浅黒くて 薄着をしながら 水色の液体なんかを 流し込んだ喉も 今では ウイルスに侵されて 咳き込むばかりの 日々 沢山 沢山 語りたいことが ありすぎて 咳き込むのとは  訳が 違うのです それでも 言い訳のように ここには 加湿器がないから、と 小さな声で 呟くのですが カラカラの喉では 音に ならない どちらかと言うと 階下に響く 子供達の歌声に かき消されて しまいそうで ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ふるえる瞳の物語/藤鈴呼[2017年3月20日15時06分] くるくる まわる ちいさな 夢を 追い駆けてる 全ては メリーゴーランドのようだって おとぎ話から 飛び出して来たかのような きみが 言った 少女と乙女と淑女と祝辞の境界線が ちょっと 分からなくなった ふりふりのカーテンの向こうで 微笑んで居る存在に対しては 全て 拍手で 称えなきゃ そんな 強迫観念が 芽生えて その日から ぼくは あの 赤い チューリップも この 黄色の たんぽぽも もしかしたら 白くなるべき 頭の毛も  ひっくるめて みな 愛でたいのだ そう 表現するように なったのだ だけれども ゆっくりと こぼれた ライターの灯が それは ちがうよ と言う角度で 微笑んだ 筈は ないのだけれど そんな風に 見えたから ほんの ちょっと 戸惑った その 止まった空気の中でも 燃え続けるもの それが 愛だと 君は 主張して ぜったいにぜったいにぜったいにぼくは まちがってなんかいないやいって つぶやくから もう ぼくは なんにも いえなくなって しまっていて 癒えなくなって しまって生て ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]棘の角度/藤鈴呼[2017年3月21日21時01分] 蕾のような薔薇は これから咲き誇る美しさを秘めているようで ちょっと わくわくする 華拓いた瞬間 見詰める瞳の煌めきを 全身に 浴びること 互いに 前進して 行くことをも 知っているような 誇りに 満ちている そんな 表情 埃は 避けて アスファルトに映える色も 多いのだけれど 出来るならば 土色の大地に 咲かせたい 棘の角度は 内向きに 外側に 出し過ぎると 観客席に 悲鳴が 響いちゃうから 堪忍ね 内弁慶の子供が 思わず 大笑いしちゃうような曲 まるで 楽しい 踊り出すような 瞬間を 想像しながら  眺めてる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]おいで おいで/藤鈴呼[2017年3月23日20時28分] リズミカルに弾けている理由 雫は 丸いからね どの方向にも 飛んで行けるのと 笑っているようで 少しだけ 泣いている ころころ 坂道になれば 転がって しまうから だけど 時折 受け口のキツネが 手招きしているの おいで おいで その声に 誘われて 大きな尻尾に 包まれて 赤いポストを 見下ろせば どこまでも 続く ハート模様が 見えるのね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]天使の梯子/藤鈴呼[2017年3月25日1時46分] ゴミ捨て場に群がるカラス 性質の悪い笑みを浮かべる人間よりは 美しい 羽根が 七色に染まる度 描く曲線は 一度 空へと舞いあがり 再び 地上に 降り注ぐ 天使の梯子のよう 細やかな気遣いを 霧雨が覆う コールタールの仲間たち 水溜りに映る 青空 カーキ色に染めたTシャツ インディゴブルーのジーンズ 羽織るのは真白なコート 唯だ 何色にも 染まれるように 透明人間には 成れないから 仕方ないのだと 呟くの ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]貝殻の記憶/藤鈴呼[2017年3月28日0時18分] ザプンと飛沫が上がる度 痛みが 一つ 弾けます 空は 真っ新なほどに 青くて 白くて 耀く太陽が 全てを覆い尽くす程に ツライのですが その言葉を 発する手前で 光が 消して しまいます 砂に書いた言葉が いけなかったのでしょうか 否 きっと 手にした棒に 描いても 同じだったのだと 信じて 前を 見つめると ザプン さっきよりも 少し大きな波が 何かを 弾き出しました あれは 珊瑚 岩場に貼り付く 貝殻みたいに 無言では ないの いや 違うね 本当は ホタテみたいに 中身は 面白いのだけれども 普段は 脳を 閉じているから 見えない だけなの 右か左か あなたは 揺れながら 歩くのが 癖だから 分からないけれど とにかく 私が 眺めているのは 一部分だから ・・・ね? カプン 貝殻が 食べた わたくしの 指が ちょっと 痛い でも 大丈夫 もう一度 口を開けば 取り出せるから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]鉄クサイ男 水臭い女/藤鈴呼[2017年3月28日21時45分] 口の中に広がる 錆びのような味 毎回 思い出す 鉄棒のシーン Tシャツの裾を 括りつけて 何度も後ろ手に 回り続ける 逆手にするのが 邪道だった 順手のままで 十手を持つ構え 帯はラム色 新しい名札を もうすぐ貰えるの ニコリと笑う唇に スッと引く紅と 同じ色 伸びきったシャツが 斜めに垂れ下がり あの人の 目尻のようだと思ったら 吐き気がした にやけ顔の似合う 頬の線と同じ角度 笑顔の線を想像する時 何となく仏に見える曲線が 良い人に見えた あなたは何も言わない ただ しんみりと 思い出話をするように 語り始める 一つの物語なのだと 読み込む前にスルーして 読後感を認める スタンプなんて 作成出来ないの 絵心が ないから いや 違うね 必要なのは スマホケース ちょっと 布のような 角ばったヤツ 矛盾するボタンで そっと留めたら 全てのアナウンスを 拒否できそうだった 鉄棒を持つ手が 冷たくなり始める 体温を 奪われたのだ あの時 順手に 持ち替えていたら この 血液を 送り込むことに 成功したのでしょうか 鉄棒の内側に流れる 脈々とした回路を 今でも 感じるのです 逆さまの空を 思い出す旅に 朝から 出掛けます ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]石橋の唄/藤鈴呼[2017年3月29日18時58分] 間違いを犯した 誰かが和えた カルボナーラ いつもの 生クリーム しっとりとした 蜜の味 他人の秘密 人間と言う 大きな括りの中で カテゴライズを してみる 履歴書にも 肩書きにも 組み込まれない これは 秘密の味なのです 茫然自失 正に そう呼ぶに相応しい 状況としては 否定的 さも有り南無 そんな言い訳ばかりが バラバラと 降って来る バラバラに 振って来る 団扇か 扇子か どちらを選ぶかは 君のセンスに 委ねられ 私は 結果論を 待つばかり 論調は 優しいが 反論は 許されぬ 下されるだけの 運命 和えるものを 間違えたのだ 漸く 気付いた 傷付いただけでは 恐らく 足りなかったのだ 惧れを成す 必要悪まで 茄子炒めにしてしまったから ピーマンの代わりに パプリカを添えても 結果は 同じなのだと 今度は どうしましょう ホウレンソウが キライなのですね されば 胡麻は 黒く 塗りたくりますか? 二度と 逢えぬように 二重線で 消した言葉だけが 宙ぶらりんで ぶら下がる 二本の箸で作られた レール状の 空間が 笑う 日本の橋は そんなに高くない 一度 登ってみると 良いですよ 商人が 呟いた瞬間 高いの意味を 勘違いしていたと 高笑い 金ピカの コイン 幾つ 積んでも 石橋は 完成されない ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]墨が離れた/藤鈴呼[2017年4月2日13時24分] パラリと言う音が 今にも聞こえそうな程 距離感は 遠くもなく 近いとも呼べない 厚みは ゴムほどではないが  紙ほどは 薄くない 一本の髪の毛が すっと風に攫われる瞬間のような 美しさを称えて 光が笑う こんにちは その表現 間違っていますよ  と 問いかけようとして 口を噤む 最近のパソコンは御洒落だ 外観のみならず 自らの打ち間違いをも  自動的に訂正してくれる そんな機能を持つ 昨日は 選ぶことに 夢中だった 間違えたつもりの変換を 楽しむ余裕さえあった その変化に 自ら 戸惑っている ふりをする 大きく振りかぶる ストライド  指の先に コンパス トドメを刺されないように 同時に できるのならば  後ろ指だって 御免蒙りたい コブラツイストって技が あったでしょう アレ 一度で良いから かけてみたいんだ 君が言った 一度だけだよ 念を押した筈だったのに 傘は破れ 穴という穴から 水滴が溢れて来る ずぶ濡れになるのを隠すための長靴も 真上からの攻撃には避けきれない キレない器が欲しいね とっておきの陶器よりも 真っ白い心の中に また パラリ 昆布のような 墨短冊が 落ちた世 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]田舎のサービス/藤鈴呼[2017年4月4日19時35分] 鮮やかにサドルを漕いで 通り過ぎて行く サドルは焦げぬ 尻にかかる重圧が なんぼのもんじゃい ジュウジュウと焼き色を付ける もんじゃの湯気が 眼鏡を曇らす 元々 ピーカンばかりを連想するから  曇天で暗くなるのだ 最初から「雨が好きだ」と豪語していれば こんな微妙な気分で新聞を広げる必要なんぞ  なかろうに 少し 屈託のない笑顔の裏で 寂しそうに呟くと 彼は そっと 跨った そのチェーンが 独りでに 回り始める タイヤとタイヤの隙間を縫うように 進み出す ここは校庭 地面の高低差は有りませんが 華麗なジャンプをキメるには 少々テクニックが必要ですと先生 雲梯やブランコが 行く手を邪魔する 滑り台の頃は良かった 大抵 坂道の終わり  半径10メートル以内に近付かなければ 怪我をする必要なんて なかった ところが今じゃあ どうだ ブランコは 前後に動くばかりではない 左右にだって 時折 宙を舞う大ジャンプなんかで魅せる さながら田舎のサービス チケットはお安くしておきますよ 今日はお休みなんですか なんて語りかけている間に 雲梯から飛び降りた誰かの足型が 頭上でハミングを続けるのだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- (ファイルの終わり)