藤鈴呼 2017年1月12日11時59分から2017年3月28日0時18分まで ---------------------------- [自由詩]コトコト/藤鈴呼[2017年1月12日11時59分] カレーのルウを  必ず2箱 使用します 一度も 使ったことのない それは 若干 緊張 するんです 世の中に  所謂「不味いルゥ」は 存在しないのだと 信じて 来ました 少し前 本気で不味いルゥに 出会ってからは ちょっとダケ 警戒して いるのです 人参がなくても 煮込むことが 出来る食材 豚肉に ちょっと芽の出かかった ジャガイモに 玉ねぎ 昔っから 涙の出る時間帯は 決まっていて ああ そろそろヤバイなあと 思う頃に 流れ始めるのならば 何ら 問題は ないのですが 世の中は  そうは問屋が 大根卸みたいな感じで グルグルと 廻り続けて行くのですから 例えば 鍋の中の 具のように そして 割り入れた ルゥは 元々の箱が  若干 違ったとて 何ら 関係は 無いのです そんな 問題は なかったかのように 仲良く 煮込まれて いきます クツクツ 美味しそうな 音を 立てながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]彩の中/藤鈴呼[2017年1月13日20時23分] 自意識を 自覚しているか 客観的な意見を 取り入れられるか そんな 葛藤をする 瞬間に 脳内カラフル花が 咲き乱れるのかも しれません そんな 彩の中では 漆黒の闇 なんて表現をされると ちょっと 落ち着かざるを得ないような錯覚をも 生まれますけれども 果たしてどうなのでしょう 何となく 漆黒も闇も 同じような世界観だよ、などと 分かったようなことを 言いながら  口笛を 吹いてみても ツイと 圧されたなら 別の色が 直ぐに 顔を出して来そうな 危機感にも 包まれている風景が 浮かぶのです。 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]雪兎/藤鈴呼[2017年1月20日22時39分] お前は白い犬ではないと 呪文の如く 唱え始めた 連なる氷柱  垂れ下がっている屋根の角度まで  あと どれくらい 走り始めたタイヤを 歯止めするかのように 馬の轡型に並ぶ 葉の絨毯を 眺めつ進む どう眺めても リードしか 繋げなかったであろう 早朝の陽射しは ハンパない程に 眩しいから サンバイザーを 真横に建て付けて その内 正面に戻すからサと 楯突くのです ゆっくりと作業しないと 頭上に落ちるから  注意散漫のままでは ひんやりした感覚に 苛まれますよ、 と 和尚 和の心を以てして この難問が 解けますか  などと 問う 質問者と 回答者の 比例分配 ここに 雪粒ひとつ また 二つ どうしてだろう 段々と 兎に見えて来た ウサギ年に貰った 雪兎シールが 未だ残っているから 早めに使わないと イケナイのに 手紙を出す相手が いないのです 空いた隙間に埋め込まれた 瞳は 南天 ではないのだけれども 空虚な面持ちで 静かに呟く その音が つー と 響くようで  いたしかたない ぎゅっと 握り潰す訳にも いきませんので 恐る恐る 歩を進める 真横に視線を 感じながらも ゆっくりとした テイストだけ 味あわせていて ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]クツクツ/藤鈴呼[2017年1月21日7時53分] 飛び出しそうな 苛立ちを 必死で 喰い留めるのは 御玉の役目 大きな柄杓が 有ったなら  全ての苦しみを 救い上げることが  出来るのに そう願って 空を見上げたら  当たり前のように 北斗七星 引っくり返った角度が  何時だって 格好悪いと  悪態 吐いていた 筈なのに その夜は 涙が 出た 御玉は ドロドロになった カレーを  必死で 救い上げてる 今日は 人参がない って  言ったじゃない ヒステリックな声が 響く 彩りは 何よりも 大事なのよ 私達は カラフルな世界に  棲んでいるのだから そんな 怖い顔して  凄んだって 駄目 太刀打ち出来ない ジャガイモの隙間に  今しがた 芽吹いたばかりの桜を 詰め込んで ここで 越冬する 小さな虫たちに  見せてあげたい 切り取った 空の光は 北極星 もっと 北へ行けば  もっと 北風に 当たることが 出来るから 柔らかな バナナも  カッチンコッチンに 冷たく 固く なってしまって 北極点よりも 問題点が 難解過ぎて  ちょっと 理解するのに 時間が掛かっているの 溜まったストレスを 自由に開放するために  甘い チョコレートを食べて 折り合えぬ 会話ごと 鍋で 溶かしてしまうより  仕方ないんだもの こんな 雪の日は  足跡も 直ぐに 消えてしまうわ 革靴の コツコツと響く音を  聞いていたいのに アスファルトも  まるで なかったかのように  埋もれてしまうから 私は また  ここで 丸くなって 眠るのね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・°  ---------------------------- [自由詩]煮込みうどんが出来上がるまで/藤鈴呼[2017年1月22日14時51分] あつあつ の うどん はふはふ と たべる ほおばる 舌が 火傷しそうな程の 熱で 溢れてる 仲良く 煮込まれたいと 欲しているかは 知らないが 分厚い 蒲鉾は 君の 唇 太くて長い 御饂飩は 私の 良し 意思 薄弱だ なんて 千切る歯を立てて 笑う グツグツと 煮える姿 泡の向こうに 煮え切らぬ表情の アイツ アツイほどの アイツの想い 握りしめた まま 握り潰せも せず オセロのように 引っくり返したり とっくり返したり 徳利を探したりしながら 時を待つ 松の上に留まる朱鷺が見られるのは きっと こんな季節 北風なんて なんのその だって 白と赤 あたたかな 鶏色は 幾つまで経っても  健在なのですよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夢の世界で/藤鈴呼[2017年1月31日7時50分] 哂う 山茶花 唇の色合いを 秤にかけて 軽く 溜息 笹で 囲われた 冬の風景が 気に入らないと 嘆く 雪の 白さも 空の 藍さも 自らの 青さに 変わるだけ 竹藪は 何時までも 続かない スッと 角度を 変えれば 見たことも無い 美しさに 出逢えるのでしょう 夢の世界に 還れると 安心しておいで 一つだけ 気を付けるならば 葉の切っ先 柔らかな お餅みたいに膨らむ 君の頬を 傷つける 予感がするから 要注意 余寒お見舞い申し上げぬ間に 消えた桜に 問いかける 花びらの色が ちょっと 濃ゆすぎたのですね キミは わらう ゆっくりと 歯を見せた 中心部分が いやに黄色くて 目を伏せた ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]金平糖/藤鈴呼[2017年2月1日1時56分] ゆっさ ゆっさと 揺れる竹 先に飾られた 幾つもの願い 海と陸とを繋ぐ 小路を抜けて 浪の花を そっと 眺めてる かわいらしい こんぺいとう あまい ちいさな つぶだから 犬歯で 噛み砕いたり 臼歯で 磨り潰したり しないようにって 注意を していたの 岸壁に 打ち寄せる 細かな形を 連想しながら 温かな部屋で 寛ぐ瞬間 ほんの少しの 罪悪感を 覚えます それが 何に向けてで 有るのか 上手く 説明 出来るほど 想いは まとまって いないのだけれど ちょっとした 瞬間に ほろりと流れた涙を 冷たい 北風の所為にする 余裕くらいは あるみたい 箱を 開けるのが 何時だって 楽しみだった ひな祭りの 季節には ぼんぼりが お決まりで あの ぽおとした 薄明りが 何て いじらしいのだろうと 幼心に 感じていた 手前に置かれた 平行四辺形は とても 固くて プラスチック製だから 余り 心を 奪われなかった 筈なのに 今では 箱の中に あの 色合いを 見つけ出すと 嬉しくなって しまう いつかの あられと 勘違い 白 桃 黄緑 この 三色だけで 生きて行ける 気がしていたの だから こんぺいとうの中に 黄色が 混ざっていた 瞬間は 本当に 狼狽えた 驚いて 口が開いて 止まらなかったけれど その唇に 沿うように 甘い 金平糖のような 波の花が 転がり込んだから 全て 許されるような 錯覚を 憶えた 今だって 夢の中で あの 刺々しいけれども 甘い 感触を 憶えているわ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]フリーダイヤル/藤鈴呼[2017年2月1日23時24分] 黄金の名器で在るかの如くに 煌びやかだけを 見せびらかしてる 白いレースのカーテンが 似合うような 部屋の奥で リリリン♪と オンプマークまで つけたがる クセ 氷の隙間で 犇めき合う 身を寄せ合うなら この季節に 似合う おしくらまんじゅう それは 決して 冷凍庫に隠した 雪見だいふくとは  違う 柔らかさ むにゅっとした ムキュッとした 不思議な音と 僅かの彩 豊かな胸よりも もっと  包容力のある カーテンの隙間から 木漏れ日が 差して 何かの舞う 気配がする 音は 聞こえない 音は 見えない もし 見えたとしても レースの模様で 阻まれて しまうから 隠されて しまうのだから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]灰樹花/藤鈴呼[2017年2月3日10時41分] 何処から生まれて 誰と つるんで どんな習性を持つのか 環境の 所為だけにして 味わえぬ日々を 噛み砕くように ぬめぬめのスープに 割り入れた 鶏ガラの素 素材は 木野子 舞茸の中国名は 何と 読むのか 知らぬけれど 灰の樹の花と 描くのです ぬくぬくと 炬燵の上で 例えば 暖炉を鳴らすような パチパチと言う音 これが 一番 最高なのだけれど 天婦羅は  油が飛び散るから 熱いね 気持ちが 厚過ぎて 測れなくなった時 中から 出て来るように 心臓を 突きたいけれど 駄目なの 気持ちって 心臓の 中には いないから それじゃあ 脳味噌みたいな 白子鍋なら イケるかって? そういうハナシ スリムになって いくんです まいたけスープで この身ごと 磨り潰して 噛み砕いて 自らも 崩れ落ちる 手前で 留まる ナラ カシ シイ ブナ 呼び方は 沢山ある ただ お気に入りの心材に 身を寄せて あたたまる 胞子のように いつかの 夢を 飛ばす ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]キラキラ/藤鈴呼[2017年2月11日0時47分] 最近の 日の出時刻を 知らぬから 未だ 明けきらぬ どころか 明ける 気配すらも 見せぬ塩梅の 暗き空を 見つめながら 車 走らせた タイヤは従順で もう これ以上ないって程の音量で コーンと啼いた後 時計回りに 動き始めた 真横から 動画として 眺めるならば 逆回転しているかのようにも 思える トリックアートの世界ならば お得意分野でしょう? などと 笑う あなたの上げている足の下に 本当は 台座など 存在しないのです ガチャリと音がして 隣の住人の 気配を知る その頃になり 漸く世の中は 耀さを 取り戻したけれど カーテンの内に 引き籠る身としては 確認する術が ないのです 何となく 耳に残る 階段音を 耳障りと取るのか 何時も通りの 時計の針のように 気になるけれども なかったものとして 脳内で 消し去るかは ワタクシに 委ねられていて その結果を 提出する レポート用紙すらも 朝刊に 挟み忘れた チラシのように 存在を 隠したかに 見えた  だからかな ふと目についた三日月の  切っ先の鋭さ以上に その長さが 気になって 斜め下で 可愛らしく光る  キラキラの星が ちょっとだけ 可哀相に 思えたの 踵を返す もう一度 振り返った瞬間  廻り逢えたのなら この心に 収めてみるのも  良いんじゃないかって 瞳だけでは 足りないのだと  ぼやきながら カメラ一つも 残っていない  大きなポケットばかりを まさぐるのです 空気に触れた 掌が 段々と 温もりを 取戻し 私は ほんの少しだけ 指先の 冷たさを 忘れられました ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]紅の裏切り者/藤鈴呼[2017年2月15日23時26分] 流れた血の意味を考える 原因ならば幾つも有る 素手で硝子を強く持ったからだ 悔しくて握りしめた拳の先に 切っ先の鋭い物体が飛び出していたからだ 或いは その涙の色が 部屋の赤玉に 呼応したのかも 知れぬ 時が流れて 言う事が転がる相手を本気で恨むのは 実に下らないことだと考えた それは 時間の無駄だから 時計の針ごと 排除してしまおうと 鼓動が聞こえぬ角度に 枕を持ち替える あの日見た夢には 可愛らしさの欠片も存在していなかったから 驚くくらい冷静に瞳を閉じた瞬間を 思い出してしまうくらい 酷く青い雪が 視界を染めていたけれど 振り返る余裕すら なかったのだと 気付く 残り物を平らげないと 次の皿は 出て来ないのです スプーンとフォークが煌めいて 日光をも反射すると 何かと健康的な錯覚は受けますが 錯覚は どこまで進んでも 幻覚 幻惑は どこまで嘆いても 味覚には 叶わないのです そのイメージを作り上げる為に 嗅覚を働かせてみましたが アンテナ一本立てるのを どうやら忘れてしまったみたい 微々たる力を振り絞って 叫びます その電話番号は ワタクシのものだけど ダイヤル式の黒電話は もう我が家には ないんだってこと 今日も 何かしらの音が響き 私は呼気荒く 叫ぶ代わりに この子機を 握りしめる ハイハットが合わさる角度で拍手をすると スッと傷跡が 消えてしまうかのような幻想 それだけを 握りしめながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]眠る前に/藤鈴呼[2017年2月16日20時58分] 見上げる蛍光灯 ぶら下がる 何か 宙ぶらりんの想いも 飲みこむような夜が じわり じわり だけど 確実に 一日一回  廻って 来るよ その時刻になったら 地球の裏側に ジャンプしたい 固い アスファルト 思い切り 踏みしめて 軽く 地団太 今日の 喧嘩 示談にするには 暖かな 蛍光灯が 欠かせない パチリ 点けて 夜に 消しても 悔しいこと だらけなら パチリ 睫毛は 開いた ままだから そんな風に 心の眸 いつも オープンで 活きられたら いいな ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]夕暮れの あんドーナツ/藤鈴呼[2017年2月17日9時57分] 砂糖をまぶしただけでは飽き足らない ただの揚げでも駄目だ それは 魚くさいどころか 水くさいくらいの 懐かしさに 満ちていて 目を閉じても 浮かんで来る程 青空に 近い 雲のような 存在だった 中身なら 出来るだけ 詰まっているのが 望みだろう 頭だって 然り だけど 口ずさめば ハミングだと 認められる わけでは ない そういうことばかり 口走っては 窘められた 手で制されてしまえば 向こう岸へ 渡ることなど 出来ないから すり抜けようとして 空間を 探す 長いばかりの 葦の 向こう側 そっと伸ばすは 左足 どうして? うん、私、右利きだから 何時だって 逃げられるように 右側は 残して置くの 自分の 一番 近い場所 それは 真下 でもね、踏み出さないと、歩けないこと 知って いるから 水溜りの冷たさが 指先に浸透して  仕方が無いの 長靴だから ゴム製だから どんなに長いジッパーのついた靴底よりも 安心できるって 靴屋さんは 教えてくれたのに 一歩ちゃぷりと漬けただけで こんなにも 痺れるのよ ココロがね コトンって 音を立てて 崩れ落ちるような 感覚 ねえ あなたに 解るかな そう言いながら頬張る あんドーナツが やけに 甘かった ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]素手/藤鈴呼[2017年2月22日11時42分] 何処まで 走りたいですか と 問いかけて どこまでも と 応える 最初は 同じなのだけれども 頷く頬の角度から 冷たい影が 伸びているようで ずっと 見つめていたら 風邪を引いた ウイルスなんて 目に見えないんだから 大丈夫だって 水で薄めた洗剤を ぽつぽつと 押す 容器の中で  それらは 固まり尽くしている 割り箸で 突くと 今迄 仲良かった 粒ぞろいの洗剤たちが イヤイヤと 首を振りながら ゆっくりと 離れて行くのです いや 違うでしょう もっと こう 固形なんだから 例えば そう スライムみたいな・・・ 言いかけて 止まる 吸盤に 吸いつく瞬間のように 彼等が 集まり始めたからだ ダッシュボードの上で 影が動く 右下がりなんだから 左側に 移動する訳はないのに 窓に残る 雨粒とは 反対方向に 動く そういうことならば 話は 早いのですが 何度も通り過ぎた シグナルの色が とうに 分からなくなるくらいの 暗闇 普通ならば その方が クッキリ ハッキリ する筈なのに いつもの あなたの 相槌みたいに ゆるやかな ペースで 苛立ちを 加速させる スライムみたいな 色の ちょっと 腐りかけている かつては シャキッとしていた葉を かき集めるのに 素手で 充分だ ゴム手袋なんて 今は 必要ないよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ふるえるチョコレート/藤鈴呼[2017年2月23日21時44分] サヨナラを告げる隙間風 ぽろん・ぽろん 流れ落ちたのは カラフルチョコレート この 涙の代わりに 窓枠を 叩きつけるような 透明な液体が 何度も横目に映るから 気が散って 仕方ない ワイパーは 動かしてないのに 次々と 嘆き続ける 右側の窓 飛沫が上がる度に かなしいよ さみしいよ くるしいよ どんな言葉が 飛び出して来るのか ちょっとだけ 期待した 言葉は機体に溶けて 想いは気体に溶かして ミックスチョコレート 全て 混ぜこぜに このボタンを押すと 次のカカオが 流れ出します 何処で止めるかは 自由ですが 一応 あなたが作るのは ケーキですから 3センチくらいは 必要でしょう それ以下ですと ちょっと春先の やる気のないゲレンデよろしく 下地が出て来て 格好悪いです 別に 性の格を 全て さらけ出したとしても 気の持ちようを 誤ち解きほぐそうとも 本物の愛の情ならば 正しく確り伝わるものだと 信じたいのですが 未だ不惑ですか 惑いながら 震えながら 活きて 行くのですね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]最高のチョコレート/藤鈴呼[2017年2月24日22時16分] この香りは モカ 香ばしい中にある 色気のような湯気が もっつりと上がる瞬間 急激に 餅が食べたくなった 半分だけ焼いた トースターの中 未だ まっちろいまんま そして 円形は崩さずに 仲良く 並んでる 前倣えをすれば 一番先頭のあの子だけが 汽車ぽっぽみたいで 本当はちょっと 羨ましかったんだ 色はゴールド カサカサとした包みを開くと てらてらとした液体が 流れ始める ウイスキー・ボンボン ネーミングが 何だか可愛らしくって オヤジから少女へ イメージは 七変化した あの 七色の鳥は 何 カラス 巷では 大嫌いと称される あの鳥が 電線の上で 震えてる 震えているの ねえ 見える? 揺れた 電線の裏で 風が 笑っているでしょう ゆっくりと 身体を 揺らすのよ それとは 気付かれないように 存在感を 消したままで 香りだけで 鼻先を くすぐる 最高の チョコレート みたいだわ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]額縁/藤鈴呼[2017年2月27日12時33分] 掌の中で あなたが 笑ってる 唇は ふんわり 柔らかい けれど つまむと ぷにっと ふるえるの 大声上げて 笑う瞬間にだけ 三角の 空洞が 出来るね 情熱的な紅筆で 何を描こう 何色にも 染まれる白は 誰に向けよう 全てを 包み込むような 黒幕を引くのには 未だ 早いから 見浸かりますように 安らかなる 想い 支えられて 重たくて 肩が 撫で型に 沈みそうな時には どうか 両側から 支えてね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]苺ショート/藤鈴呼[2017年3月2日10時10分] ショートの次は ダブルと 相場が決まっていて 表の裏は 裏だけど 模様は同じと 限らない 平等院鳳凰堂が描かれたコインは 誰にでも平等に配布されないし ピカピカの金色だったコインも 何時しか鈍色に 変化するから 新雪の上に挟まれた 惑いだね 銀板の上に乗った 甘いケーキを眺めて そう 表現する時 甘酸っぱさも 気味悪さも 同時に描くのでしょう その弧の周囲に 幾つもの合いの手が 挟まれて 生クリームのように 全てが 繋がって 行く ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]しあわせのチョコレート/藤鈴呼[2017年3月3日10時35分] あなたがこねた まほうのしずく 捏ねた? 何を? 粉を 雫? どんな? 魔法 繰り返し 練り直す 冬休みの宿題を そろそろ完成させないと 卒業させて もらえないのと 君は 嘆く 例えば あれを見て御覧なさい 足跡の形に捏ねられた 二層クッキー 口にする度に 溶けるチョコレートならば 心地良いのは 丁度2秒だそうな カリカリと 砕けた姿を 連想すると 出来上がったばかりの絵画のように 愛おしいけれど これが 眺めるだけならば 意外と寂しい結末が 待っているのかも知れないの やっぱり 甘いものは 笑顔になれることが 肝心 涙色のチョコレートよりはね ちょっぴりビターでも  舌を出すくらい面白い出来事の後で 唇に触れた瞬間を 連想しているのが 素敵 このお菓子は 未来への 道しるべ 刻む度に小ちゃくなる葱みたいに 放置しておくと 勝手に涙も流れ出しましすが ちょっぴり味わい深いから  コクが出るまで待つのです 足跡 踏み締めて 地団駄踏んだ瞬間を  思い出せぬ程 大人になっても大丈夫 その味が あなたを 懐かしの世界へと  導いて くれますから その足で あなたは  歩めば 良いだけなのですよ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]スライス eyes/藤鈴呼[2017年3月6日9時45分] くり貫いた目玉に映るスライス お子様ライス 生卵 半分だけ とろけたチーズ ぐちゃぐちゃに かき混ぜる役目はフォーク 陥るばかりで 夢の隙間については それほど深く 考えたことが なかった 本当は もっと本気で 熟考すべきだったのかも  知れないが いかんせん 煙たいハンカチが 視界を染めていて 砂埃よりも 雪の舞う季節柄 それらは ちょっとだけ突出した 桜の蕾よりも はるかに目立った わしゃあ寝るばい 何処の台詞なんだか 分からないけれど 布団を丸めたままで 呟くと 枕が 飛んで来た そのまま ふわふわの豆腐に ぶつかって はじけたかに 思えたが 夢は そこで 途切れた 違う 私が欲しかったのは オムライス 出来れば 甘くないやつ 塩ぱっぱ そのくらいが 丁度 良いのですが 叫び声が 響くから もう 人匙だけ 甘味を足そうと思うのです いかがでしょうか ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]トッピング・チョコレート/藤鈴呼[2017年3月7日13時33分] ちょいちょい 放り込んで来る もう 今日は お腹一杯だって 言っているのに 巻物ならば 中身がなけりゃあ 意味ないじゃん 床の間に 飾るならば  水滴が 落ちないように 気を付けて 二階の住人に 騒がないようにって 釘差す台詞だけ ちゃんと 考えておいてね 薄い生地に ゆっくりと 乗せる とっておきの トッピング 何処にでも有る形じゃあ ないの オンリー・ワンだから 憶えておいてね 全体が 茶色に染まっているのは  鉄分が 足りているから 私の体 小麦色に 焼けているでしょう? 本当は 雪焼けなんだけれども あなたに 分かるかしら 今は ティラミスの 季節だからね チョコレートが とろけそうな程 トラックの中は 大紛争 約束に遅れたと  電話が じゃんじゃん かかってくるわ 小さな箱の中で きっと トリュフは 泣いている 早く 救出しなくっちゃ!! 唇を歪めて もう直ぐ 温めて あげるからね などと言う 温まった瞬間に 溶けて なくなって しまうこと 知っていながら ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]天丼/藤鈴呼[2017年3月12日8時33分] ねえ 一体 何時から 誰かを心配する気持ちに衣をつけて カリッカリに 揚げちゃうような 世の中に なっちゃったんだろうね カリカリするばかりでサ 喜怒哀楽の 二番目の感情でしか 物事を 捉えられないなんて 何て やるせないんだろう 丼ものには そりゃあ 色々 あるよ 親子丼は 出汁が効いていて ちょっと薄味 トンカツは ソースがテロンと のっかっていて 腹もちも イイ 天丼って 意外と 甘辛党 議員は 一等賞になって 舞い上がるんだ 迷い込んだ 大葉と 一緒になって 大運動会 玉入れの代わりに 天かすを ぶっこんで 綱引きの分だけ 他人の足を 引っ張るの 嗚呼 だからかな 思ったより ご飯粒は 薄かったのに 平らな分だけ 存在感が 増しちゃって 全て 平らげること 叶わなかったんだ ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ぽつり あなたが つぶやいた/藤鈴呼[2017年3月13日11時05分] 田舎者!! と言われると イラっとする ことがある 田舎が良いねぇ なんて したり顔で 呟くのは 都会の便利さを 知ってしまった者の 戯言 今度 何処が良い? 転勤族の 私達 新天地への 憧れは 常に 尽きない ・・・田舎が いいな ぽつり あなたが つぶやいた うん いいよね 何処からが 田舎なのか 田舎は否か なのか 都会の喧騒も 全て 排除するのは 寂しいものかも しれないけれど ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]はいどうぞ/藤鈴呼[2017年3月18日9時44分] 後ろ手に隠す 大切な宝物が 何時だって 輝いているとは 限らないけれど ともすれば 前方からの攻撃に備えて  隠し持っているのかも 知れないし もしかすると  大きな 塗り壁みたいな 固い存在が 背中側にあって 自らの 身との間に 挟み込むことによって 護っているのかも 知れませんね。 取り出して見せたいと思う相手に 出会えるかどうか 取り出した瞬間に 魅せられる 存在なのか どうか 取り出して 店に並べた瞬間にはかき 他の誰かに奪われて 売り切れて しまうのか その 宝物の正体を 考えてしまう夜 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]バチのオト/藤鈴呼[2017年3月19日11時15分] 定期的に響く カツン カツン ちょっとだけ 思い出すのは ピンヒール コンクリートジャングルから 離れて もう 数年になるのか 楽しかった記憶は いつまでも 笑顔とともに 脳味噌の中に 張り付いていて スクリーンが 歪んでも 汚れても 外が嵐でも 誰かに荒らされぬ限り 同じ様な残像を 流し続ける 蹴られた瞬間のことを 連想すると ちょっとだけ 痛い 雪で全て埋もれた 石段に 初めて足を 踏み入れる 瞬間のような 清々しさを わたしに ください きっと 雪の色が 桃色でも オレンジでも 同じような 気分なのでしょうが 世の中が 真っ白に 染まる瞬間 何処か 新しさを感じるのです 集めた雪玉を ゆっくりと投げる 何処か 山の向こうに反響しながら 打ち返してくる バチの音 カツン カツン 叩きたかった 石橋が 雪に埋もれて 見当たらないもんだから 探しているのですね バチを持つ手は 夏には きっと 浅黒くて 薄着をしながら 水色の液体なんかを 流し込んだ喉も 今では ウイルスに侵されて 咳き込むばかりの 日々 沢山 沢山 語りたいことが ありすぎて 咳き込むのとは  訳が 違うのです それでも 言い訳のように ここには 加湿器がないから、と 小さな声で 呟くのですが カラカラの喉では 音に ならない どちらかと言うと 階下に響く 子供達の歌声に かき消されて しまいそうで ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]ふるえる瞳の物語/藤鈴呼[2017年3月20日15時06分] くるくる まわる ちいさな 夢を 追い駆けてる 全ては メリーゴーランドのようだって おとぎ話から 飛び出して来たかのような きみが 言った 少女と乙女と淑女と祝辞の境界線が ちょっと 分からなくなった ふりふりのカーテンの向こうで 微笑んで居る存在に対しては 全て 拍手で 称えなきゃ そんな 強迫観念が 芽生えて その日から ぼくは あの 赤い チューリップも この 黄色の たんぽぽも もしかしたら 白くなるべき 頭の毛も  ひっくるめて みな 愛でたいのだ そう 表現するように なったのだ だけれども ゆっくりと こぼれた ライターの灯が それは ちがうよ と言う角度で 微笑んだ 筈は ないのだけれど そんな風に 見えたから ほんの ちょっと 戸惑った その 止まった空気の中でも 燃え続けるもの それが 愛だと 君は 主張して ぜったいにぜったいにぜったいにぼくは まちがってなんかいないやいって つぶやくから もう ぼくは なんにも いえなくなって しまっていて 癒えなくなって しまって生て ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]棘の角度/藤鈴呼[2017年3月21日21時01分] 蕾のような薔薇は これから咲き誇る美しさを秘めているようで ちょっと わくわくする 華拓いた瞬間 見詰める瞳の煌めきを 全身に 浴びること 互いに 前進して 行くことをも 知っているような 誇りに 満ちている そんな 表情 埃は 避けて アスファルトに映える色も 多いのだけれど 出来るならば 土色の大地に 咲かせたい 棘の角度は 内向きに 外側に 出し過ぎると 観客席に 悲鳴が 響いちゃうから 堪忍ね 内弁慶の子供が 思わず 大笑いしちゃうような曲 まるで 楽しい 踊り出すような 瞬間を 想像しながら  眺めてる ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]おいで おいで/藤鈴呼[2017年3月23日20時28分] リズミカルに弾けている理由 雫は 丸いからね どの方向にも 飛んで行けるのと 笑っているようで 少しだけ 泣いている ころころ 坂道になれば 転がって しまうから だけど 時折 受け口のキツネが 手招きしているの おいで おいで その声に 誘われて 大きな尻尾に 包まれて 赤いポストを 見下ろせば どこまでも 続く ハート模様が 見えるのね ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]天使の梯子/藤鈴呼[2017年3月25日1時46分] ゴミ捨て場に群がるカラス 性質の悪い笑みを浮かべる人間よりは 美しい 羽根が 七色に染まる度 描く曲線は 一度 空へと舞いあがり 再び 地上に 降り注ぐ 天使の梯子のよう 細やかな気遣いを 霧雨が覆う コールタールの仲間たち 水溜りに映る 青空 カーキ色に染めたTシャツ インディゴブルーのジーンズ 羽織るのは真白なコート 唯だ 何色にも 染まれるように 透明人間には 成れないから 仕方ないのだと 呟くの ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]貝殻の記憶/藤鈴呼[2017年3月28日0時18分] ザプンと飛沫が上がる度 痛みが 一つ 弾けます 空は 真っ新なほどに 青くて 白くて 耀く太陽が 全てを覆い尽くす程に ツライのですが その言葉を 発する手前で 光が 消して しまいます 砂に書いた言葉が いけなかったのでしょうか 否 きっと 手にした棒に 描いても 同じだったのだと 信じて 前を 見つめると ザプン さっきよりも 少し大きな波が 何かを 弾き出しました あれは 珊瑚 岩場に貼り付く 貝殻みたいに 無言では ないの いや 違うね 本当は ホタテみたいに 中身は 面白いのだけれども 普段は 脳を 閉じているから 見えない だけなの 右か左か あなたは 揺れながら 歩くのが 癖だから 分からないけれど とにかく 私が 眺めているのは 一部分だから ・・・ね? カプン 貝殻が 食べた わたくしの 指が ちょっと 痛い でも 大丈夫 もう一度 口を開けば 取り出せるから ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- (ファイルの終わり)