komasen333 2012年11月22日16時25分から2013年3月8日1時53分まで ---------------------------- [自由詩]真っ黒な整列/komasen333[2012年11月22日16時25分] 指先に残る感触 現実感以上の幻想感 痺れるような弛緩が止まない直後 人差し指と親指が反射した いや、決断した 正義という大義の下で 防衛という前提の下で   なされた 論理的な思考とも思えぬ一連の帰結 感情的な思考とも思えぬ一連の帰結 理性的な思考とも思えぬ一連の帰結 人間的な思考とも思えぬ一連の帰結 刹那  突っ伏した背中 刹那  湧き上がった安堵 刹那  淀んだ背景色 ---------------------------- [自由詩]君がいなきゃ/komasen333[2012年11月23日14時59分] 君がいなきゃ 醤油さしがどこにあるかわからない 君がいなきゃ 大好物の中トロもさほどおいしくない 君がいなきゃ 窓の花もそんなに綺麗と思えない 君がいなきゃ チャンネルの取り合いもできない 君がいなきゃ トイレ掃除のじゃんけんもできない 君がいなきゃ 「風呂、先入る?」って聞くこともできない 別れて はじめて ようやく  気づいた 君がいなきゃ 日々のすべては 平凡なまま 笑っちゃうよ 笑っちゃっていいよ どうやら 僕という僕らしさは 僕のものではなく 君のもの だったみたい ---------------------------- [自由詩]北東の水族館/komasen333[2012年11月24日13時37分] 「キレイ」 そう指差す先にあるものを 同じように キレイと思えなくなって久しい 自分で精一杯 半径一メートルの事さえボンヤリ そんな時にも 作為のない共感で 「ほんとキレイだね」と 相槌を打っていた自分がちょっと懐かしい 帰りの地下鉄で 僕らの前に座っていた五十過ぎの男性 両手に荷物をもったおばあさんが来るなり さっと立ち上がって 無言の右手で席に座るよう促し 隣の車両へ歩いていった あんな風に 器用に スマートに これから僕は キミのために 誰かのために 何かを 真っ直ぐにしてあげられるのかな 「してあげる」 という上から目線を拭い去れるのかな 何一つ不自由なんてないのに 何一つ不自由なんてないからこそ 些細なことで苛立ってばかり そんな自分にタメ息ばかり それでもキミは この心の奥を知って知らずか 狐の嫁入りのような声で 「また、いっしょに行こうね」と この手をそっと握ってくれた ---------------------------- [自由詩]青/komasen333[2012年11月25日9時24分] 澄み切った青を見上げる午前 可能性の渦が西の彼方によぎる 単調な予告を告げる明日が東の彼方に漂う 変化の乏しい迷路の中で残り時間を地図をなくして消化 秋の風の中 飛ぶトンボに優しく語る どこに行きたいのかわからない もう明日にときめかない どうすればいいのかわからない 昨日の積み重ねを繰り返している 意味があるのかないのか2択ならば「ある」と答えるしかない日常 「ない」と答える権利はあると言われるが言わずもがなと暗黙の了解を強要される 憧れは明確なのに方法論を掴みにいく勇気を持てずに過ごしている 遅すぎることはないと言い聞かせたところで夢は夢物語のまま 変えれない過去に捕らわれたまま 渋り出される未来 欠片に託された無数の光 針に触れようとする仕草 それは中枢を握るようにも見える どんなに遠く投げられても どんなに深く掠れても 美しさは永遠に 時よ流れてしまえ 願い続けた9月の2限 屋上に駆け上り 仰向けで抱きしめた秋空 浮遊する 手を広げ 滑空するかのよう 最果てがあるのなら今すぐ飛んでいきたい 辿り着ける確証があるのなら歩いてでもいきたい 始まりも終わりもない世界に ---------------------------- [自由詩]知らずに済んだフクシマ/komasen333[2012年11月26日11時46分] ミリシーベルト、ミリシーベルト、ミリシ・・・ 一生、知るはずのなかった言葉 ベクレル、ベクレル、ベクレル、ベクレル・・・ 一生、知らずに済んだはずの言葉 一大キャンペーンのように バラ撒かれた バラ撒かれた 津々浦々にバラ撒かれた 無知は黙認に等しく 無関心と何ら変わりないこと 痛切に実感した 福島がフクシマになってしまってようやく 数値に求められ 毒気を抜かれたリスクとコスト 一つの天秤に乗せられ 維持を前提とし 見え透いた古典原能を誇大踏襲 「今、福島原発はどうなってるの?」 夕方のニュースを見ながら 上の空で答えながら、ふと気づく 「よくわからない・・・」 いつの間にか あんなに溢れていた関心が薄れている あれから まだ5ヶ月しか経っていない蝉時雨 ---------------------------- [自由詩]ニ大政党制/komasen333[2012年11月27日13時11分] いっぺん委ねてみましょう ダメもとでいってみましょう 少しは褒めてあげましょう  たまにはいいでしょう 褒めれば伸びるか縮む どちらにしても何らかの反応は測定されるでしょう 勇気を与えてやりましょう 調子に乗っているなら いっぺん鼻をへし折りましょう 最終的にはどちらのためにもなるでしょう いっぺんそっぽ向きましょう 積極的に示してみましょう 少しは冷たくしてあげましょう たまにはいいでしょう 冷たくすれば伸びるか縮む どちらにしても何らかの刺激は観測されるでしょう 休息を与えてやりましょう 意気込みがあるなら いっぺん鼻を高くしてやりましょう 最終的にはどちらのためにもなるでしょう いちいちやってあげましょう そうしないと気づかないでしょう そうしないと気づけないでしょう そうしないと落ち込んだままでしょう そうしないとあぐらをかいたままでしょう めんどくさいもんでしょう 世話がやけるもんでしょう まあ そんなもんでしょう ---------------------------- [自由詩]あの日から/komasen333[2012年11月28日10時49分] 「大丈夫ですか?」と聞かれ 「大丈夫ですよ」と答えるばかり 勢いで 喜怒哀楽を漏らして 記憶の海原に投げ出されるくらいなら 一つも残さず グッと呑み込み しまっておいた方がまだいい 何もかも 誰も彼も つけられる はずだった無数の句読点を置き去りにして・・・ いっそ あの日に物語という物語が      おわってくれていたら           楽になれたのかな・・・ 不謹慎? そうかもね。 でもね。 そう、思わずにはいられないんだよ・・・ 前を見つめる眼差しに 上を見据える歩幅に ついていけるほどの折り合いを まだ つけられそうにない (ゴメンナサイ・・・・・・) 声なき声がする どうしても、声にならない声が聴こえる   あえて、声にされない声が聴こえる     五感を通して 響き渡る      その一つ一つを静かに受けとめる       その日が来るまで        その日を信じて ---------------------------- [自由詩]時事/komasen333[2012年11月29日13時16分] 世界は昨日もこんなに泣いていました 1人  リビングでコーヒーをすすりながら目を通す 相変わらずこんなにもひどいままです 良くも悪くも映像は気軽に教えてくれる 1人  リビングで蓄えていく 話のタネにでもなればと思いながら 世界は昨日も泣いていた そして今日もまた泣くのだろう 1人  リビングで物思う 世界の中でどう映ってるのだろう あんなにも泣いている場所があれば こんなにも笑っている場所がある あの場所から見れば 僕は笑っている場所にいるのだろう でも僕自身は その中間のような場所にいると感じている だから時々 笑っている場所よりも ずっと泣いている場所に 憧れに近いものを感じる ---------------------------- [自由詩]夜明けの食卓/komasen333[2012年12月1日13時31分] きらびやかな回路 敷設する真夜中過ぎ 2LDK 奥深く 冷たい重低音 書き表せない感情を言葉にする矛盾 月明かりを蹴散らすかのようにライトアップ 暗闇知らず 闇夜知らず 哲学とは何なのかから始まる自己実現 寝転がるホームレス 悪気はないのに隅へ隅へ ありふれた朝が摩天楼に霞む 喰い散らかす残飯 遅ればせながら収集車 あふれ始めるスクランブル あの頃が今も続いていたなら 仮定は現実よりも鮮明 飛び出した黄色い太陽  広がる白いキャンバス 手馴れた手つきで揺らし とれかけのまぶた 精一杯くっつけて 傷つけてしまった面影 取り戻せはしないけれど 今朝も眠気覚ましで 小さくとも重い太陽をいただきます ---------------------------- [自由詩]民は広場へ/komasen333[2012年12月1日13時32分] しわ寄せは民に向かう 大誤算は最下層が被る 根本的な歪みが 少しでも露わになればあまりにも脆い 「文明」とはもはや呼べぬ文明 責任はなすりつけ合いの道具 いつからかそれが当たり前となり 原因は入り組みすぎて 解明は将来世代にまで持ち越し 世界平和を願いつつ 自国さえよければ闊歩 余裕がある時は 自然と上から施し目線 余裕がなくなれば 堂々と「構ってられるか!」宣言 地球は回る あきらめることなく 地球は回る 期待することもなく 行き場を失くした民は 怒りを持て余した民は 大きな 大きな 広場へと向かう この世界のおかしさを分かち合うため この世界の貧しさを改善するため 利口ぶった 政治と経済の肩を叩くんだ 「 もっとマシな方法があるはずだろ? 」と ---------------------------- [自由詩]何才からでも研修中/komasen333[2012年12月2日10時15分] 胸に【 研修中 】の札 「 いらっしゃいませ 」と、深々としたお辞儀 ゆっくりと 「 一点、二点・・・ 」 声に出しながら ミスのないように丁寧に 傍らには先輩社員 さり気なく袋詰めのサポート 列に並ぶお客のあたたかな眼差しの中で 店内アナウンスは方言全開 「 一人暮らしを始めてすぐにアルバイトを始めました 」 そう言わんばかりに 何にも染まっていないイントネーション 商品の陳列はテキパキ 商品の質問をされるとドギマギ 迷ったり、焦ったり 泣いたり、笑ったり、行ったり来たり 何才でも研修中 何才からでも研修中 時にハラハラさせる初々しさ 段々と目を見張るほどのなめらかさ その過程はただただ美しい 過去の 未来の 現在の 自分のような あなたを見かけるたび 心の中で ( がんばれ! ) と応援 ---------------------------- [自由詩]だからこそ/komasen333[2012年12月3日16時46分] 声にならない だからこそ 叫んでいく 言葉にならない だからこそ 綴っていく 少し振り返ると とてもよく似ている 混沌としていたあの時代に 行きつ戻りつしていたあの転換点に お金があるかないか 夢があるかないか 有名であるかないか 偉いか偉くないか 性別とか年齢とか出身とか経歴とか 一番気にしているのは その時々の自分自身でしかない 声にならないこと 叫んでいく 言葉にならないこと 綴っていく 生きている土壌に構わず そこから  また  何かが・・・ そこから  また  誰かが・・・ 君の声が  私の言葉が 私の声が  君の言葉が この世界の その世界の 希望 と 絶望 を左右してゆく ---------------------------- [自由詩]パラノイア・セッション/komasen333[2012年12月4日14時08分] ずっと 近づけば近づくほど 絡まって 離れれば離れるほど 解けてゆく そう、信じていた それが突然、真逆へと雪崩れこむ 近づけば近づくほど 解けて 離れれば離れるほど 絡まってゆく 深い窓を見つめながら ネオンの背中を撫で 懐かしい あたらしい 自分と出逢い 細い夜を越えながら 涅槃の吐息を重ね 知らなかった 知っていた あなたと出逢う 幸せとは何かと 考えられる幸せに包まれたまま この時の代償を 今日も世界のどこかで 誰かが 何かが 被っていること 忘れそうになる ベールを脱いだ 青白い空をキャンバスに 「恋とは、かくも不思議なものですね」と わかったような 茶化したような口で幕を引く 嫌味のない笑みを添えて その場面を その日々を 今でも、忘れられずにいる ---------------------------- [自由詩]どうせ、私一人が投票しても/komasen333[2012年12月15日22時52分] 10年前だったとしても 流行るかどうか実に怪しい 成長神話に しがみついて がなる、がなる 少々の疑問を感じながらも 「頑張るなら頑張ってよ」と 古臭い期待に しがみつき 委ねる 任せる 同じ構図  同じ都心  同じ郊外 先送りを先送りして 緩やかに 穏やかに 首を絞めてゆく 同じ公図  同じ都心  同じ公害 先送りを先送りして 駆け込みの警鐘 いいように唆され 疑問文を忘れる 変わっていく 渇いていく 一票の価値 「どうせ、私一人が投票しても・・・」が 全国で何十万、何百万、何千万人 お任せ民主主義  即効でなければ 「期待が裏切られた」と 容赦なく お任せ民主主義 公約通りでなければ 「話が違うじゃないか」と 容赦なく 本当は  選挙後からが 本質的な闘いの始まり 当選とか落選とかは 所詮は前菜 よく見て  よく聞いて  よく声を挙げて  よく介入して 時には しっかりと拍手 しっかりと援護射撃 しっかりと非難轟轟 「国民」と 呼ばれる  一人一人に課せられている 選挙後からの 見えない わかりにくい 責務 政治家は 選挙だけでは 育たない 政治は  ほかっといたら 成熟しない 応援団になるべきは選挙時のみにあらず 監視団になるべきは選挙時のみにあらず 選挙だけで  何もかもが 変わるならば 独裁主義にすぎない 選挙だけで  誰もかれもが 変わるならば 民主主義などではない 選挙と選挙の合間こそ  一人一人の 声が 行動が ものをいう めんどくさい?  難しい?  興味ない?  それでも  どうにかこうにか 参画していくのが 民主主義 参画することでしか  深化は望めない それこそが民主主義 委ねたら終わり じゃなくて しっかりと応援 任せたら終わり じゃなくて しっかりとツッコミ 選挙後  満たされなくなったら 選挙以外の形で 一人一人が  民主主義のピラミッドに入り   汗を、涙を流す それがデフォルト ---------------------------- [自由詩]Unopened Reality/komasen333[2012年12月16日10時50分] リアリティが持てない 同年代の半分が投票に行かない 期待を抱けない この一票で何かが変わるとは思えない 一億二千万人も住んでいるこの国で 各地域の代表が 各地域の声を 各世代の声を代弁しきれるわけがない 代弁できたところでどうにかなるとは思えない 三十七万㎢もあるこの国で 各地域の代表が 各地域の声を 各世代の声を掬いきれるわけがない 掬いきれたところで政策につながるとは思えない ねじれ国会、議員特権、一票の格差、議会改革・・・・・・ 自らの懐を 率先して差し出さない政治に 公平な利害調整などできるわけがない 官僚依存、財界依存、原発依存、米国依存・・・・・・ 旧態依然な権力闘争と 利益誘導しか持続できない政治家に 新たな理念など、明確な政策など実行できるわけがない リアリティが持てない 公約を、演説を、主張を読み聞き比べても 期待を抱けない 理念を、政策を、警鐘をぶちまかれても  リアリティが湧いて来ない ---------------------------- [短歌]26歳の老後/komasen333[2012年12月20日11時40分] 絡みつく糸が意図へと変わる朝に絞り出した最後の誠意 あの頃の自分と語る糸電話から零れてく無色の琥珀 社会人一年目の友が語り出す社会の壁の高さと深さ 入るなりずらっと並ぶ面接官その背景でゆれるプラタナス 盛大な空振りをして幕閉じた夏は今でも永遠の夏 この胸に迫る色彩しっかりと一色一色なつかせてゆく 翌朝の新聞開き探したがあの殺人もミジンコレベル 差し出した右手にスッと滑り込むポケットティッシュに残るぬくもり 駅前に先月できたパン屋から大切な何か漂ってくる 死の影を垣間見せる微笑に詩の花束を無言で捧ぐ チャンネルの取り合いをしたリビングに"ぽん”と置かれた離婚届 大便が跡形もなく消えてゆく行方をじっと見つめる次男 返信の文面どこか寂しげで思わずすぐに電話する夜 一握りとわかりながら応募する大企業ほど筆記で落ちる すらすらと当たり障りのない答え面接官に笑顔で渡す 面接で手に汗かいて演じきるこの自分とは何者なのか 同い年とは思えない目映さでシュートを決める海外組 エントリーシート延々書きながらこれでいいのか自問自答 持て余す時間を埋めるものはもう詩歌を書くことくらいしかなく 二十五で遠い老後の先取りをするかのようにひきこもり続く 才能がないとつぶやく労力は惜しまぬくせに努力は皆無 平日の真っ昼間から両親と外食のため助手席に乗る しわくちゃに稟議書丸めゴミ箱へ投げてはみるが入らぬ夜更け 挿しかけのコンセントへと伸ばされる仔猫の爪が土曜を暗示 ベランダでスキニージーンズ持ったまま飛行機雲を見送った春 降りしきる花びらを見て思い出すあの雪のなか来てくれたこと 片隅でちらちら揺れるホコリたち見て見ぬふりでいなす月末 読みたくて仕方がなくてそそくさと仮病を羽織りバイト早退 買ってきたばかりの白い炊飯器しずかに和室で映えて魅せる 頬杖の魔力を知らぬその人にか細き声を滲ませた夏 コンビニへ出かけるように今月も父は薬をもらいにゆく 無駄のない朝焼けを見る横顔は一人残らず綺麗な一重 お土産の芋羊羹を不味そうに食べつつ義父は無言貫く 「さらば」だと敬礼する甥っ子に背筋を伸ばし敬礼返す 宝くじ買う余裕などなかろうとこのサンダルは言うこと聞かず 冷えきった両親の仲をほんわかと取り持つ我はまさに鎹 海岸に打ち上げられた亡骸にかつての鏡を重ね欠伸 誰のせいにもできぬまま海原でニートは今日も似た者探し 何もかも壊そうとしてキーボード叩いてみるがアクセスは0 穴が空き捨てようとした靴下を重ね履きする冷え性の祖母 取り立てて不安も不満も見当たらぬ時代が続くそう信じてた やかましいネオン街をすり抜けて深呼吸する発電所 外面を磨いて磨いて乗り越えた果てに流れるせせらぎ黒く もっともらしいことほどしっくりと来ない思春期sora見上げる 五感に触れるすべてが七五調になりたがる朝に飲むコーンスープ くるくるとバトントワリングのようにスプーンからハチミツ垂らす 買うほどの本ではないと言われてもそっと手に取るベストセラー 心にもないこと平気で連ねてはシュークリーム五つまとめ買い 中華屋の前でキミが笑ったら明日もきっといい日になる 翻る洗濯物を見つめれど転調らしい転調は来ず ---------------------------- [自由詩]糖分当分ゼロ。/komasen333[2012年12月21日17時55分] 海を 静かに 渡ろうとして やっぱり  怖くて  恥ずかしくて  止めにして そんなこと 繰り返して 繰り返してはならない 季節になっても 繰り返して、繰り返して 生きるか、死ぬか 毎時、毎分、毎秒 駆け巡る 自問自答 甘ったるい ってもんじゃない 山を 和やかに 登ろうとして やっぱり  怖くて  めんどくさくて  止めにして そんなこと 繰り返して 繰り返してはならない 漆黒になって 執行延長の申請を繰り返して 色がなくなってから  どれくらいの時が経つだろう 朝、目覚めてみれば  色が 全くないんだ 音がなくなってから  どれくらいの時が経つだろう 朝、目覚めてみても  音が 全くないんだ 現実のようで 現実じゃない 現在進行 進んでいる感触なんて  行っている手応えなんて  皆無  生まれてこの方、皆無 海を 静かに 渡ろうとして やっぱり   怖くて  恥ずかしくて  止めにして 山を 和やかに 登ろうとして やっぱり  怖くて  めんどくさくて  止めにして 生きるか、死ぬか 毎時、毎分、毎秒 駆け巡る 自問自答  甘ったるい            けれど、糖分が足りない ---------------------------- [自由詩]何人、殺してきたんだろう?/komasen333[2012年12月23日8時09分] 何人、殺してきたんだろう? 胸の奥深くに蘇る  最後の最期の表情  作り笑いも たくさんあったな 「用」という名の欲望を わざわざ羽織り 街へ繰り出す 人々を眼下に 理由不明の涙が溢れ出す 期待されなかった命が  暑苦しい愛を  照らし出す 期待されなかった光が  鬱陶しい夢を  引き立てる 裏腹な反響が 歪みを 覆い隠してゆく 「格差」という言葉にくるまれた 話にならない絶望無数 置いていかれた命は  鑑賞用の愛に  紛れ消える 置いていかれた光は  高層用の金に  掬い取られる 裏腹な正義が 歪みを 覆い隠してゆく 「自責」という言葉にくるまれた 話にならない絶壁無数 「鬱」という名の欲望を わざわざ着込み 街へ繰り出す 人々を眼下に 自己満足な詩が溢れ出す 何人、殺してきたんだろう? 胸の奥深くに蘇る  最後の最期の表情 そっくりな鏡も たくさんあったな 何人、 何十人、殺してきたんだろう? アルバム 記憶 メール 日記      いちいち 鮮明な 思い出 読み返すたびに 嗤える 何人、 何十人、 何百人、殺してきたんだろう? 自殺件数 殺人 児童虐待 ホームレス      やかましい たのしい 報道 知るたびに 咽ぶ 何人、 何十人、 何百人、 何千人殺してきたんだろう? 飛行船感覚で 陽気に 夜空 横切ってゆく      戦闘機 見上げるたびに 項垂れる ---------------------------- [自由詩]無償の絵画/komasen333[2012年12月25日13時04分] どこまでも続く空。 12月の空。 特急の窓に広がる雲。 飽きない。 いつまで 眺めていても飽きない。 まさに これは無償の絵画。 特急券と乗車券の値段を除けば 無償の絵画。 ---------------------------- [自由詩]Finally, Love wins./komasen333[2013年1月30日17時55分] 昔 『愛は勝つ』って歌があったよな。 最近 「 『愛は勝つ』って歌、あったじゃん 」 っていうCMが流れてるよな。 あれって、正しいよな。 でも、ちょっと違うよな。 勝つのは「愛」だけじゃないよな。 最後に愛は勝つ。 最後に夢は勝つ。 最後に願いは勝つ。 最後に想いは勝つ。 最後の最後に勝つのは 愛の、夢の、願いの、想いの強さだよな。 そう思ったよ。 しみじみと思ったよ。  トランクスを脱ぎながら。 ---------------------------- [自由詩]有権者A/komasen333[2013年2月6日17時44分] アベノミクス。 大いに結構。 その波及効果が給与増加に広く反映されるのか 雇用の増加につながるのかどうかが気になるところ。 とか言いつつ、 内心では政府も野党も国民も 波及効果は限定的だと はなから悲観的な予測。 仮に広く給与上昇や雇用増加の動きが見られても それによって冷えきった消費マインドが積極的消費に転じるのかって話。 社会保障を始めとして先行き不透明感が強い中で 「給与が増えた!」 「雇用が増えた!」 「就職が決まった!」 それで財布の紐がそんなに簡単に緩むもんかね? 経済成長によって魅力的な商品作りが活発化するって? 企業は積極的な設備投資に踏み切るのかね? 貯め込むだけじゃないかね?個人も、企業も。 参院選と消費税増税までの期間限定のカンフル剤乱射? 輸出関連企業が潤えば万事OKって? そんな大雑把な「景気回復」でいいのかね? 広く給与上昇や雇用増加のうねりが生まれなかった場合 政府は 「 輸出関連企業を始めとして   もっと国際競争力をつけて富を拡大していく必要がある。   そのためにもTPP参加も前向きに推進せねば 」と 雪崩れ込むつもりなんじゃないかと疑いたくなるところ。 杞憂? あまりにも杞憂? 杞憂で結構 過剰なまでの杞憂に走ってこそ 我ら有権者 選挙と選挙の合間の膨大な暇 つぶし甲斐があるっていうもの ---------------------------- [自由詩]孤動グラデーション/komasen333[2013年2月15日18時22分] 待ち合わせ時刻三十分前 集合場所の金時計前に着く 街の風を 人の色を この肌とこの五感で味わいたくて 初夏が近づいてくる 淡く華やかな ふんわりとしたファッションが多い 歩いていく一人一人 涼しげな空気を起こして じっとりした梅雨 しばし忘れさせる このまま ずっと、ずっと この場所で待ちわびながら この人波をいつまでも眺めていたい 待ち合わせをするたび よく考える どんな格好で来るのか どんな表情で来るのか 行き交う同年代を眺めつつ キミの今日を予測したり どんな会話を展開するか どんな喜びを展開するか 同年代のカップルを眺めつつ 今日のボクを予習する 会うまでのその時間 何よりもかけがえのない時間 この街に来てよかったと 深く想う 街の風が 人の色が 手を振る キミを縁取るように グラデーションを高鳴らせる ---------------------------- [自由詩]ポスト喪談/komasen333[2013年2月16日15時15分] 物語が終わったそうだ 大きな物語が終わったそうだ 政治も   経済も     文化も 確かに 見渡してみれば 「すばらしい」と 言われるすべてが既視感満載 物語がなくなったそうだ もたれるべき物語がなくなったそうだ 改革も   成長も     発展も 確かに 見渡してみれば 「美しい」と 思われたすべてが既聴感満載 大きな物語が終わった もたれるべき物語がなくなった と言われて久しいが 実際のところはどうなんだろう 仮に 大きな物語が 既に終わっているのだとしても これから もたれるべき物語が なくなっていく流れなのだとしても 「大きな物語が終わった」 「もたれるべき物語がなくなった」 という 物語がなくなることは決してないのだろう ---------------------------- [自由詩]しなれサンドバッグ/komasen333[2013年2月17日12時30分] しなるサンドバッグ うっすらと遠のく自意識 息遣いは忙しなくクレッシェンド 煌々と 蛍光灯が燃える 小さなビルの三階 チャンピオンは出ていない 名の知れたプロも出ていない それでも熱は この街の片隅で闇を切り裂いていく シュッシュッ フッ シュッシュッ スッ  未来でも過去でもない  この"今"だけを抉るアッパー シュッシュッ ブゥン シュッシュッ グゥン  経済でも政治でもない  この"今"だけを抜くストレート 滴る汗 静かに受け止める靴紐 じっとりと重力を増すことで 軽快なステップを目覚めさせてゆく 連打の果てに浮かび上がる     愛のように眩しい     影のように狂おしい 何かが欲しいというよりも 何も欲しくなかったからこそ 自覚できた欲望のままに 誰かを守りたいというよりも 誰かを負かしたいというよりも 誰も振り向いてくれなかったからこそ 自覚できた空虚のもとで くり出すパンチ 吸い込まれぬように 延々と続きそうなこの日常に向けて 今夜もその一撃を夢見てる たしかなその一撃を求めてる この街の片隅で   小さな、小さな、小さなビルの三階で ---------------------------- [自由詩]除き、洗いました。/komasen333[2013年2月18日16時12分] もう戻れます 除きましたから、除きましたから もう戻れます 洗いましたから、洗いましたから 白々しく 「安全」を呼びかけて わかりやすいようで わかりにくい数値を並べ立て 「安心」が さも確保されたかのように 日常へと戻るように催促するばかり コレは 国民のことを最優先した 官僚としてのご提案なのですか? コレは 将来のことまで考えた 政治家としてのご決断なのですか? いくら数値が 正常の範囲内でも 五感が拒否するのです そんなに 簡単に 信じてはならないと いくら説明が 論理的なものでも 記憶が疼き出すのです そんなに 簡単に 決めてはならないと もう戻れます 本当ですか?心の底から思っていますか? だったら 永田町ごと 霞ヶ関ごと ココに引っ越してきて 普通に生活してみてくれませんか? ---------------------------- [自由詩]ダーク ・ ライン ・ シャドー/komasen333[2013年2月19日16時45分] 絡み合う時     あらゆる景色が落ちていくよう 理性は、限界を気取りながら眠りゆく 何が正しくて 何が間違っているでもない 不思議なドラマ 紡がれる普遍螺旋と  つながれてゆく太古からの記憶 その丸みを帯びた 光るラインにそっと触れていくよ やさしく強く 静かにゆっくりとなぞらせて   たしかな楔を探すため 湧き上がる炎のような高鳴り   導かれるように   何度も確かめて 解き合って   落ち着いたかと思えば すぐにまた絡まってわからなくなる そんな営みに試行を散りばめ     そのたびに互いの知らぬ側面が暴かれ そんな営みにifを散りばめ      そのたびに互いを越える感覚が生まれ 上に下に目まぐるしく   彩り豊かに平衡芳情   闇に光に目まぐるしく     彩り確かに不均衡豊穣 すべてが消え去っても構わないと 心の底から想える瞬間の連続 どこかで夢見たまま どこかで醒めたまま 見上げるまでもなく      宙が寄せては返す 見下ろすまでもなく       時が溶けては浮かび揚がる 蓋然性が奇跡のような瞬きを認め 唇は、思わず耳を澄ます 醜く宿命づけられた諸々 ふとした瞬間に美しさを香らし始めて 儚く宿命づけられた諸々    ふとした瞬間に久遠を滲ませ始めていく 裂ける微かな点    揺れる確かなサイン    なびく黒の先      笑う艶やかな円         零れるしたたかなペイン          止まる黒い針 何もかもが正しいようで 何もかもが間違っているよう 不条理なドラマ 紡がれる普遍螺旋と  つながれていく懐古からの報告 その憂いを帯びた 甘いラインにそっと触れるよ 強くやさしく 静かにゆっくりとなぞらせて   たしかな草木となるため ---------------------------- [自由詩]数cmフユウ/komasen333[2013年2月20日10時38分] 在来線から私鉄へ   乗り換えるために     長い、長いコンコースを歩いていく よそ見してると  すぐに人とぶつかりそう さすが日曜日  老若男女がゴチャゴチャ 色んな看板  色んな表情   ついつい目移り ふと  右斜め前から歩いてくる  男性か女性か判別しにくい人を見て  目が、点となった 疲れてるのかと思い マンガの主人公みたく 目をゴシゴシと手の甲でこするが どう見ても 見間違いではなさそうだ 「あの〜  浮いてますよ」 気づいたら、反射的に声をかけていた 「ああ」 気の抜けた声を聞いても 男性か女性かはっきりとわからない 「大丈夫なんですか?  よくわかんないですけど、  こんな人混みで浮かんでいたら・・・」 できるだけ 小さな声で問いかけると 「ああ。  あなたみたいに  浮いてるって気づく人は  めったにいないから」 そう微笑んで 「お気遣いありがとう」と その人は立ち去っていった。 じゃなくて、浮かび去っていった。 ---------------------------- [自由詩]春めいた街/komasen333[2013年2月21日11時32分] 自宅の向かいに 鍼灸店が新たにオープン 昨日の夕方 店主が挨拶回りでお菓子をもってきた 予報と外気の狭間で 悩みながら少し厚めのコートを着て 向った駅のコンコース 定期券売り場に 大学生や新社会人の長蛇の列 今年もパッとやってきた 春を感じる瞬間 桜はまだ 映像でしか見ていないけど 街のいたるところで春が咲き始める 沈みがちだった心象 ゆっくりとしっかりと晴れてゆく 意識して入れ変えなくても勝手に跳ねる鼓動 何かをまた 改めてはじめてみようかなとか 誰かとまた  新しく仲良くなってみようかなとか 現金なもので 性懲りもなく今年度も 色んな想いが 静かに 高らかに 駆け巡ってゆく ---------------------------- [自由詩]宇宙で1番最後に書かれた詩/komasen333[2013年2月24日15時12分] 数えきれない星を見上げ 限りある鼓動に耳を澄ませる夜 この瞬間も この宇宙では無数の命が微笑みを咲かせて この瞬間も この宇宙では無数の命が息を引き取って 寄せては返す 波のように生き死には繰り返していく そこにそれぞれの解釈はあっても 絶対的な意味が宿ることはなく 前を向いて 絶え間ない歩みを続け、情熱を焦がして 上に向けて 絶え間ない失敗を重ね続け、夢を灯して 似たような歌  何度も、何度も、作ったり聴いたり口ずさんだり いつかの自分を慰めるように これからの自分を励ますように 似たような詩 何度も、何度も、読んだり書いたり消したり 自分と似た誰かを見つけたくて 自分と似た誰かを勇気づけたくて 無から零れ 有から有を積み重ね やがて、もれなく無へと還る そのすべてに途方もない虚無感を抱き そのすべてに果てしない安らぎを覚える もう一度 会う会わないは別として 「それじゃあ、また」と何度も何度も旅立っていく この一瞬一瞬を この一生一生を 有から無へと還すために 信じられないことが次から次へとやってきて この身にたどり着くまで無数の魂が繰り返して 今、 何代もの魂を背負って 殺めてきた命を代表して すれ違ってきた憎しみを溶かして 分かち合ってきた愛や光に包まれて 無へと向かう旅路 有から有を生み出し、鮮やかに縁取っていく 数えきれない星は静かに見守っていてくれる 限りある鼓動は静かに寄り添っていてくれる それが続いていく それだけが続いていく それだけが繰り返していく ---------------------------- [自由詩]猫背道/komasen333[2013年3月8日1時53分] 何もなくても光が 降り注いでいた日々を思い返す 傍らでいつも咲いていた笑顔 徐々に枯らしてしまっていることにも気づかなかった 1人きりの道 背を少し丸め歩いていく すれ違う家族連れ ささやかな優しさ すべてあげる すれ違うカップル 僕の分も 未来を 楽しんでくれ 夜がやってくると 寒くもないのに震えてしまう 朝がやってくると 予定もないのに慌ててしまう 選んだ孤独に包まれ 選んでくれた孤独を抱きしめる この詩を求める誰か 遠い未来にいるはずの誰かへ この詩を求めた何か 遠い過去にあるはずの何かへ 時代がめまぐるしく 色を変えていく中で 瞬きをすることにも疲れて 環境が狂おしく 音を変えていく中で 五感を開くことにも疲れて 世界よ、ありがとう 感謝しきれないのを承知で感謝したい 人生よ、ありがとう 報恩しきれないのを承知で報恩したい せめて、詩を書くことを通じて 傍らでいつも咲いていた笑顔 枯らしてしまって ホントごめん 傍らでいつも咲いてくれた笑顔 どうか どうか 幸せになっていて 1人きりの道 背を少し丸め歩いていく すれ違う同年代 微かに残る この情熱を託す すれ違う老若男女 幸、多からんことを祈るよ 鏡の前で座り込んだ 遠い未来にいるはずの少女へ 雑踏で空を見上げた 遠い過去にいたはずの少年へ 今、この詩を贈る 届かないとしても 今、この詩を贈る 響かないとしても 何もないけど この今にも光は降り注いでいるのかな いつかこの今を振り返れば「光に溢れていた」と思うのかな 風にゆれる季節 愛に溢れる街角 月が照らす公園 夢が芽吹く駅前 当たり前だったすべてが やけに美しく見える なつかしい香りを背に あたらしい風景を胸に 1人きりの道 背を少し丸め歩いていく 1人だけの道 背を少し丸め歩いていく ---------------------------- (ファイルの終わり)