宣隆 2008年9月17日5時02分から2016年3月7日13時07分まで ---------------------------- [自由詩]ゼロサムゲーム/宣隆[2008年9月17日5時02分] 何か掴んで 握りしめた手 開くことさえ できない僕は プライドだけに 腕を通して いつものように 服を着替えた 行き先書いた 破れた地図も 部屋のどこかに 忘れたままで 昨日の景色 引き算をして 残った今に また迷い込む やり直せると 麻薬のように 軽く言葉を 投げてはみても オセロのような ゲームの色で 答えの上を ただ跳ねていく ---------------------------- [自由詩]あの日の景色に/宣隆[2008年9月18日4時23分] 取り残された あの日の時間 心の傍を 行ったり来たり 言葉の奥に 伸ばした腕で 君と僕とを 線で結んだ 確かなものは 見えないけれど 心の温度 感じてとれて 触れた瞬間 繋がる景色 優しい色に 彩られてく ---------------------------- [自由詩]心の着く場所/宣隆[2008年9月19日15時43分] 思い描いた この空のむこう 今日から明日に 風を受け 行き着く先は どこなんだろう 近づく距離だけ 未来が変わり 重なり合っては 波打つ心たち 何度も打ち寄せては 僕を連れ去ってく 耳を澄ました 貝殻の奥に あの日の波音 聞くように 透明な答え 手繰り寄せては すべてが過去だと しまい込んでた だけど結局 ここにいる理由は 他の誰かではなく 僕の中にある ---------------------------- [自由詩]そんな時の僕/宣隆[2008年10月1日12時11分] まるで完成のない パズルを目の前に 置かれた気分だ この限りなく 広がる夜空で ふたり同じ星を 指差すようなもので 君と僕の 言葉の意味は 同じ座標上に あるのかな だとしたら 愛の言葉なんて きっと今は 必要ないよ ひねくれた事を 言う時の僕は お喋りの時間じゃなく キスの時間にしたい ただそれだけなのです ---------------------------- [自由詩]冬色/宣隆[2009年1月7日20時51分] 「もういいよね」って 風の色を 真似した僕は 揺れる足跡 置き去りにして 手のひらに落ちた 雪が色を 失うような いつもの道に 残した言葉 ほどけた靴ひもを 結ぶことさえ できないくらい 精一杯の気持ちで 歩いていくことが あの頃の僕らには 全てでしたよね 沈む足音と 冬の色が 重なる夜は 今でもやっぱり 躓くのです ---------------------------- [自由詩]約束/宣隆[2009年1月21日13時21分] 繋がる時間の中から 切り取ってみた満足と 引き換えることに どれだけの価値を 求めるのだろう 幼い日に感じていた 大人の狡さで着飾った 無責任な言葉に どれだけの意味を 見い出すのだろう 小さな手に感じた 精一杯の温もり 生まれた時の約束を 思い出してみよう ---------------------------- [自由詩]最後の賭け/宣隆[2009年1月27日18時08分] 生まれたての朝が 静かにベールを脱ぎ 胸の時計が刻んだ コマ送りの世界の中で 思い描いた風景と 引き込んだ色とが 混ざることを拒んでる 緑に囲まれた空を 鳥たちが飛ぶことさえ 切り捨てる覚悟で 太陽の赤を消して 暗闇に落ちることさえ 受け入れる覚悟で ここまで来てしまえば もう後には引かないさ 願いを伝える前に 消えた流れ星の行方を 追いかけるような想いで 次の扉をくぐり抜けた ---------------------------- [自由詩]嘘/宣隆[2009年2月9日10時59分] いつもの背景 崩れる関係 いつかの嘘が 息を潜める 巻き戻しした フィルムの中まで 過去のふたりは 他人の顔 シナリオ通りに 期待はないさ だけど台詞が 空白ばかりだ 空の切れ目で 虹の化石を 掘り起こすような 話にしようか 沈黙の行間を くぐり抜けても 迷宮入りを 決め込む結末 今の居場所は 捜索不能で 疑問自答を 積み上げた君 ---------------------------- [自由詩]いつもの朝/宣隆[2009年2月11日20時08分] 窓から射し込んだ 朝の雫で目を覚ます 夜の河を渡った 君を乗せる右腕 変わらない景色に ふと安心する 伝わる寝息に そっと合わせる 2人だけの時間を 独り占めしてみる もう少しここで 揺られていたいけど いつもの時間で 目覚まし時計になる ---------------------------- [自由詩]帰り道/宣隆[2009年3月5日2時14分] 次へと向かう 夕日との 約束ごとで 明日の空に 靴を飛ばした 背中押されて 真っ直ぐに 伸びていく影 追いかけながら 家に急いだ そこには 少しばかりも 寂しさに 背を向ける 必要はなく 時計回りに 朝が来て どっちにしても いつもの場所で また「おはよう」だ ---------------------------- [自由詩]夏の共犯者/宣隆[2009年8月7日1時46分] 空の不具合 塗りつぶし 雨の服装 脱ぎ捨てた 虹の伏線 引きながら 恋の複雑 すり抜ける 夏へ吹く風 手を引かれ 傷を含めて 混ざり合う 理想ばかりを 砂に描いて 波にさらわれ 消されてみよう 言い訳なんて 用意しないで 君との事は 沈めておこう 秘密の舟に 乗り込んで 月の明かりに 揺られてみよう 夏に吹く風 手を引かれ キスで繋いで 絡み合う ---------------------------- [携帯写真+詩]夕日の色/宣隆[2009年9月17日21時04分] 照れてることを 見破られないよう ちょうどいい角度に 傾いてみたんだ 海の色は夕日の色 僕の色は夕日の顔 ---------------------------- [自由詩]待ち合わせ/宣隆[2010年2月5日4時13分] 緩やかに 夜の装い 着飾ると すれ違う 街並みたちが 急ぎだす 止まれの色の 人並みを 交わして前に 僕の気持ちは 時計の周り 行き交うばかり 進めの色で 踏み出せるよう 精一杯に 息を吸い込む ---------------------------- [自由詩]独りよがり/宣隆[2010年2月9日16時48分] 指切りして 交わしてみれば ほんの少し 軽くなるけど 混ざり合うと 馴染むほどに 痛くなるから 決まりごとは 書かれていない 重さなんて 抱えもしない 足が向かう 風の先に 流されるんだ ---------------------------- [携帯写真+詩]今日の日が終わる/宣隆[2010年5月22日0時11分] ありきたりだと 思えた1日も 実は違ったんだ そこに気づいた時に 次の日が待ち遠しく なったのです ---------------------------- [携帯写真+詩]明日に転がる/宣隆[2010年5月22日0時13分] 他人の顔の 僕を真似して 語り合うのは いつものことだ 明日に転がる 数字次第で どこに進むか 任せてみるさ 空に両手を 広げてみても 雲にこぼれた 夕日みたいだ ---------------------------- [自由詩]ひとつになる/宣隆[2010年6月10日12時34分] 悲しい文字が 流れゆく紙面を 通り抜けて たどり着いた 行き止まりの空は 崩れ落ちた それでも 僕らは 滲んだ明日を 振り払らう それでも 僕らは 希望を語る ひとつになる ---------------------------- [自由詩]今となっても/宣隆[2015年7月20日11時16分] 次へ向かうと決めた 太陽が過ぎ去ると 予定時刻に合わせ それを追う角度で 君は近づいた 偶然を装って 通り過ぎた雨音は 静かさだけを 置き去りにして 星が滲む銀の夜を 足下に映し出した 前髪を伝う雫と 頬を流れる感情を 振り払う仕草で 最後の言葉を ただ台本通りに 演じきった女は そして遠くの人になり 今も綺麗な人でいる ---------------------------- [自由詩]円を歩く道/宣隆[2015年7月20日14時12分] 月が描く円を 薬指に通して 遥か未来を見つめ 星の道を歩く 物語の優しさで 今は肩を寄せる ---------------------------- [自由詩]あとがき/宣隆[2015年7月26日11時18分] 本を閉じるように 重なり合って 行間を埋めただけの 「愛してる」の言葉 夜が明けるまでには また恋に書き上げた ただ淋しかった ただ満たされたかった ただ逃げたかった 駄目なのは知っていた でも引き返せなかった 最後のページは 読めないように 朝の雑踏に 馴染むように消えた そして二人は それを「過ち」 とは名付けずに それを「優しさ」 と名付けた あとがきには 「今夜いつもの場所」 とだけ書き込んで ---------------------------- [自由詩]今だから/宣隆[2015年8月3日15時02分] 思い出の街の いつもの背中で 待ち合わせ 太陽が消える時に 歩幅を合わせて アナタの名前を呼ぶ もう決めたの 散り散りの想いを 繋ぎ合わせると また迷い込むから もう疲れたの 温もりを奪うように 降りだした雨に 昨夜の涙も流されて もう戻らないの 貴方に嫌われるなら 答えに意味なんて 必要もないから もう少しだったのかな 枯れた涙に包まれて 何も残らないよう 最後の言葉が流れていく ---------------------------- [自由詩]月の部屋で/宣隆[2015年8月6日0時59分] 月のない部屋で 夜の靴を脱いだら 恋の魔法を閉じて ひとつの影になり 込み上げる指先で 君を包む線を描く 無くさない強さを そっと背中で結ぶ 煌めく星のような 刹那を綴りながら 流れ落ちた衣装が 引力を失った傍を くぐり抜けた後の 目を閉じる場所で 温もりを分け合って 揺れる軌跡を重ねる 無重力になるまで ---------------------------- [自由詩]着地点/宣隆[2016年1月18日17時00分] 匿名希望の 姿に着替えた 弾く指先で 雲の模様は 今日も流れる 賛否両論の 風に乗って 線を引くけど 空か海かの 拘りはない ただ何気なく 着地してみる ---------------------------- [自由詩]次の一行に/宣隆[2016年1月22日13時00分] 溢れる涙は 崩れそうな空と 歪む舗道との隙間に 転がり落ちた 星の音色に踊った夜も 鐘の囁きと越えた朝も 全てを塗り潰して 明日に跳ねた 転がり続ける 時間と意識の 境界線上では 想う未来を 曖昧に描くことさえ 許されずにいる 幸せとは ほんの少しずつを 確かめあえることだと 今となっては 遠い過去となる一行に 並べたばかりなのに ---------------------------- [自由詩]裏切りのないキス/宣隆[2016年3月7日13時07分] 壊れていく足跡から 息を切らして逃げて 鍵をかけた扉に背を向け 昨日までの灯りを消した 誰に聞かされたのか 振り返ることは苦しい 時計の針を追い越して 洪水のように震える鼓動が 胸を押し潰す気がした 責任と覚悟が持つ意味は ウイスキーに浮く氷が 時間とともに薄めるような 曖昧さで混ざりあった 言葉足らずの願いを 投げかけた明日に どこまでの未来を 追いかけることが 許されるのでしょうか だけど今は 裏切りのないキスに 身を委ねる ---------------------------- (ファイルの終わり)