三上あず 2010年6月12日0時02分から2014年7月30日21時59分まで ---------------------------- [自由詩]日/三上あず[2010年6月12日0時02分] 息するように死んでいって 息するように泣いて 息するように嘘をついているね 嫌われたくないなんて嘘で 本当は嫌いたくないだけ 夢が覚めるのを恐れて 不眠症みたいになっている おはようとはじまり お休みで終わる さようなら、またあした ---------------------------- [自由詩]夕暮れ/三上あず[2010年7月21日0時19分] 夜が大きく手を伸ばして 落ちかけた太陽を捕まえようとする 呑み込まれそうな藍色に 目の覚めるような橙 空は虹色に染まる 笑っちゃうだろ もう何千年も 同じこと繰り返してるんだ ---------------------------- [自由詩]無題/三上あず[2010年7月22日2時03分] 柔らかいものをずっと 柔らかいままで残すためには 何が必要かなんてわからない 綺麗なものはきっと 綺麗なままではいられないのだと そう思った ただ そう思った どんなに閉じ込めて 封をして 鍵をかけて 隠して そうして忘れてしまっても 思い出した時には どこから入り込んだのか埃にまみれている 悲しくはない ただ少し ほんの少し寂しいだけ 寂しいだけ ---------------------------- [自由詩]猛暑/三上あず[2010年7月28日0時33分] ただひたすらに暑いから 手をつなぐのも 抱き合うのも なんだか嫌になってしまうね どこかのアニメじゃないけど ドロドロに溶けてしまえば 手もつながなくていいし ましてや抱き合わなくてもいいよね チョコとバニラのアイスが アスファルトで溶け合う 言わなくても分かる関係ってどうなんだろう ちょっとだけ考えて ゴミ箱に走った ---------------------------- [自由詩]携帯する心臓/三上あず[2010年9月8日19時41分] 小さな音で電話が震える まるで鼓動のようだ 簡潔な4文字が暗闇に浮かんで そして消えた しにたい その振動に縋る為に 何度だって返すよ だから だから 生きて また会おうよ もう寝るね、おやすみ ---------------------------- [自由詩]無/三上あず[2010年9月8日19時49分] 綺麗なものである 美しいものである そうであった それはもうない ---------------------------- [自由詩]夢/三上あず[2010年9月10日21時34分] それは覚悟かい 稚拙で陳腐でそれでいて 瞳の中に炎を燃やしている それは覚悟なのか 無謀だと一蹴することは簡単ではある 手折ってしまうことは後ろを向いていても簡単だ ただ、それでは消せはしない その瞳の火種を 何度願ったって無理なんだ そろそろ諦める気はないかい 私の中の少女、ねえ ---------------------------- [自由詩]空/三上あず[2010年10月20日2時11分] 笑っちゃうくらいに 社会の門は狭くて ごくごく普通の 一般人だった私には 門番さえ 見向きもしない 今流行りのコミュ力とかいう 得体のしれない力がないと わずかに開かれた門から 最上階までの階段を 駆け上ることが出来ないらしい どんな人にだって向き不向きはあるからさ 青春を本に費やした私は 営業なんてできやしないだろ いっそ研究者にでもなれたらよかったけど 別の社会システムがそれを阻んだ やってらんないよね もう いっそのこと無い内定の人を集めて グループに分けてさ 旅行でもしたらいいんじゃないかな そうすればほら 空の青いのが見えるだろう 夕焼けの虹色が分かるだろう ---------------------------- [自由詩]voice/三上あず[2010年12月26日4時27分] 小さな声が聞こえるかい 夢の中から  土の下から 空の上から 小さな声がしているのを 恐ろしいほど清らかで 悲しいほど静やかで 殺したいほど美しい その声が聞こえるかい ---------------------------- [自由詩]羨望/三上あず[2011年3月3日22時53分] 多くの 多くの望みを かなぐり捨てた 手に入れたものは あっけないほど 光り輝いた この手からこぼれおちたものを もう私は覚えていない たった一つのものがほしかった それだけだった 過去のそれは光り輝いて見えて 手の中にあるそれは ひどく穏やかな光 それを「違う」と言って 投げ捨てられるほど 私はもう子供ではない ---------------------------- [自由詩]一番欲しいもの?金だよ金、それしかいらない。/三上あず[2011年6月3日3時05分] 「社会人とは」 「大人とは」 それは幼いころの夢だった それは、つよい、ものだった それは 「SEX」 「化粧」 「男」 何を言われても 維持しなければならないものなのだろうか お金を下さい ---------------------------- [自由詩]一神教/三上あず[2011年7月2日2時19分] 私には神様がいた 美しく 正しく 何者にも代えがたいものだった それは正しかった それは美しかった それは強かった それは清らかで 何者も及ばなかった それだけが私の中で正しく それだけが神様だった ---------------------------- [自由詩]【同じ未来へ帰れたなら。】/三上あず[2011年7月8日22時28分] 覚えていないだろう。その昔君が空からおとされた時、以前君が流れ星だった時、凍えるほどの闇の中で二人固く手を握ったこと、恐ろしい程の夜の中で支えあったことを。チカチカ瞬く光が近付いてそして二人が別れたことも、その時の涙が時を超えて偶に降り注ぐということも。ゆるすとかゆるさないとか関係なんてない。それでも許しがほしいのならいくらだってあげる。だからほらもう一度手をつなごう。 星の降る夜を昔みたいに手をつないで歩こう。キラキラ道端で光るのが僕たちで、そうして生きている。夢のような夜が過ぎてそして目覚めるだろう。毎日、毎日繰り返す生きるということ。 やっと探し当てたんだ 離すものか 手をつないだ瞬間確信に変わる、それは過去の約束      (きっとずっとこうなるはずだ) ---------------------------- [自由詩]ミルフィーユ/三上あず[2011年7月30日1時18分] 大きいパナ○プを買ったら ホワイトチョコがちりばめられてて 「ミルフィーユの様な食感」だとか何とか チョコを食べたら鼻血を出すので 最善の注意を払って パキパキと音のする 不思議なアイスを食べた 偶に贅沢するとこれだよ これでお風呂に長い間浸かれないし 寝るときにエアコンも切れない 私はアイスが食べたかったのであって ミルフィーユが食べたいわけじゃないのよ ---------------------------- [自由詩]失声/三上あず[2011年7月30日1時33分] 悲しいかな上司に 散々 「sex」だの 「化粧」だの 「男」だの 「血液型」だの言われ 腰を触られ 毎週時間外2時間拘束説教され つづけて アトピーが再発し 心臓の発作が起き 抜毛癖が再発した揚句 声が出なくなった 怖くて 仕事は急に辞めざるを得なくなって 私が悪いのよね 分かってるのだけれど 今は只 この心臓が止まることの方が怖い 助けてと 叫べないことが怖い 死に体に鞭打って 朝から夜までの結果がこれかと思うと なんだか笑えてくる ---------------------------- [自由詩]火曜サスペンス/三上あず[2011年7月30日23時58分] 怖いだろ? 怖いだろ? 制御できない感情は怖いだろ? 言いようのない激情は怖いだろ? じゃぁ、じゃぁさ 理不尽に振り上げられる手は? 無秩序に飛んでくる足は? そして2時間ドラマのような光景が 夢でも何でもないことは? 私はあなたがいつか殺されそうで怖いよ (その人がだれか知らないけれど) ---------------------------- [自由詩]秘め事/三上あず[2011年8月17日23時58分] 囁いた 耳元で きみの 将来の 役職を 囁いた 耳元で 昨日の 言葉の お礼を そうして 二人で 見つめあって どちらからともなく 笑った ---------------------------- [自由詩]シンドローム/三上あず[2011年9月29日1時57分] その声でいくら呼んでも けして届くことはない ここは夢の中だ 有限な大きさの球体に追われても 濃くなる暗闇に突き落とされても 肥大した意識の中に閉じ込められても けして声を上げてはいけない 気付かれてしまう 目覚め方を忘れて どのドアも君を逃がしたりしない 君を追うものが何か知ってる? 後ろを振り向くこともできないのに 跳ねるように飛び起きて 冷えた水を飲み干す君は きっと安心しているだろう さあ後ろの正面だぁれ 目覚め方を忘れて どの窓も君に朝日を連れてこない 何が夢か知ってる? 君は目覚めてもいないのに ---------------------------- [自由詩]青い夏/三上あず[2011年9月29日19時27分] ピュイ、ピュイと鳥が鳴く 大潮の時の潮の薫り 夏に空から降る笹の音 雨降る前の土の薫り 田んぼからする謎の音 思い出すとすべてが美しかったのだと思う 猫の通り道 トカゲの消えた石段 カメのいる川 蛇の泳いだ用水路 背の高い草むら 眩しいね、目がくらみそうだ ---------------------------- [自由詩]最果て/三上あず[2012年6月16日18時17分] 僕はもう終わりを見つけてしまった 君のために祈る 知らない君が愛おしくて、同じように知らないふり 君のために願う 僕はもう終わりを見つけている すぐそばにある、君も気づいているだろう おびえた君が泣き言を言って そして何も知らない二人に戻る 気付いているでしょう 見つけてしまったでしょう しかたないよ、すぐそこにあったんだ いつでも終わらせられる 知っているんだろう その一言は、近くて遠い 終わりを見つけてしまった ---------------------------- [自由詩]助名願い/三上あず[2012年6月20日0時55分] 声を 大きな声を 声なき声を やめてよと泣いて縋れば あのものたちは帰ってくるのか それは違うね あの頃の私たちは 酷く子供で 大人になって そのことが解ったにすぎない ---------------------------- [短歌]狼少年/三上あず[2012年7月9日23時51分] おわりだよ おわりが来たと騒ぎ立て やってきたのは 幸せ一つ ---------------------------- [自由詩]ドロンパ/三上あず[2012年9月27日15時22分] 目が覚めたら 夢のような世界だった 楽しくて嬉しくて ほんとの世界を忘れてた あるときふと 目が覚めて 極彩色が チカチカと (ひとつも目に優しくないのね) そんなことを考えていたら もう一度 目が覚めた (やっぱりこちらは いくらかやさしい) もう一度目がさめるのを恐れて 夢の世界の人々に 手当たり次第に聞いた 「こちらが夢ですか あちらが夢ですか」 皆が皆不思議そうに 呆れたように 何のことだと 言うもんだから 言うもんだから (ばれちゃった) 小さく聞こえて世界が消えて 残ったのは 色のない部屋 (ばれちゃった) 小さな煙が 空間に溶けた ---------------------------- [自由詩]朝と夜の狭間で生きる/三上あず[2013年2月6日17時13分] 夢が帳を下ろして/朝焼けがやってくる 小さな声が夜にとけて/部屋の隅に消える これからは生の時間だ/生きるものの時間だ ゆるやかに/死んだように/おだやかに/僕は 太陽がもろてを振って/山の間に消える 空が虹色に燃えて/そして夜が追いかけてくる さあおやすみもうおやすみ/とろけるようにおやすみ ひそやかに/やわらかに/しずやかに/君は ---------------------------- [自由詩]無題/三上あず[2014年2月26日1時31分] 私の死を 誰かが殺してしまったので 私は生きることしかできない 私の生も 死と一緒に死んでしまったので 私は生きることもできない 返しておくれ 返しておくれ 私の大切な死を もう二度と戻らない私の死を返して そして助けてほしい 私の わたしを わたしをかえしておくれ わたしのちまみれのしたいをかえして ---------------------------- [自由詩]【蝉の悲鳴に別れを告げて。】/三上あず[2014年3月2日0時47分] 少女はいつものように限りなく、かぎりなくきらきらと輝いていました。それでも同じように夜は明けて朝焼けが訪れ、少女はいつものように歩くのでした。そこは夢でした。そこはゆめであり少女の頭の中でのできごとでした。少なくとも少女はそう思っていました。 いつもと同じように必然的に少女は輝いていました。もう時間はないのだと知りました。夜は訪れることはなく、少女の夢は終わったのでした。ゆるやかに終焉は訪れ、伴ってやってくるのは喪失でしかありませんでした。二度と夏が訪れることはなく、従って四季も少女の前から姿を消したのでした。 ゆめは何も言わずしずかに終焉を迎えたのでした。 ---------------------------- [自由詩]波打ち際にて/三上あず[2014年3月9日21時54分] 足元に広がるのは私の亡骸だ あれもこれもそれもどれも私であったものだ ひどく醜悪でそれでいてなんと切ないものか 打ち寄せる波が見えるかい あれは血潮だ涙だ脳髄だ 小さくか細い声が聞こえるかい 忘れて欲しいと泣いたあの頃の叫びを覚えている? ゆるゆるに緩んだ思考で何も、もう何もかもわからない 絶対に正しいものがあるのなら、それは何だろう 私はそれになりたい 揺らがないものでありたい 絶対に正しく、間違ってはおらず、揺らがないもの  それならば答えを、返答を 間違えることも、考えることもなにもないのに ひたりと目下に広がる水に足をつけると ゆらゆらと不安定な私の外殻が とろけてふやけて そしてそして するすると溶け出すのだ わたしはわたしにもどっていく ---------------------------- [自由詩]戦場に赴く/三上あず[2014年3月15日20時21分] ああもうだめだ 何にもできない そんな時はきっと一日寝ているに限るね そんなことを思いつつ 着替えて外出を始めるのだ 戦闘の準備はできたかい それでは ---------------------------- [自由詩]ニュクス/三上あず[2014年7月7日22時47分] 訪れるきみはだれだい 夜なんだろう  きっと永遠の 届かないものばかり 手をのばしていたね 憶えているよ 降り注ぐのは星だった 断罪を求める指は 切り落してしまうよ 明らかに続く 未来だけならいいのに 別れを繰り返して 僕等は何かを識る 結局最期はひとつなんだ それでも 僕等はいきている ---------------------------- [自由詩]memoires/三上あず[2014年7月30日21時59分] 霞みゆく視界を薙ぎ払って私の手に触れたのはあなたなんでしょう。 どれだけの犠牲を払って私は此処に居るの。 どれだけの悲しみや怒りを私は打ち消してまで。 それでも此処に居る事に何の疑問も抱かずに。 知ってる、下らないこと。分かってたつもりでも居た。 全てはあのときの真実で 今でも真実なんでしょう。 大丈夫だよきっと いきていける。 ねぇ元気ですか幸せですか泣いてなんていないですか。 君の仕合せが私の倖せだよ どうか笑っていて (もう君が私を見てくれなくても) ---------------------------- (ファイルの終わり)