服部 剛 2011年12月20日22時43分から2012年2月9日23時43分まで ---------------------------- [自由詩]はぶさん /服部 剛[2011年12月20日22時43分] はぶさんは、いつも  ぺっぺっと唾を吐く  所構わずトイレになる  介助しようと抱きかかえれば  細い手足で、殴る、蹴る  そんなはぶさんの細枝のような体が  実は末期癌に蝕まれていながら  痛みさえも忘れ果て  寝たきりの病人にもならず  一日、車椅子に座っている  「認知症」と診断されても  細い木の体に宿って ぼぉ と燃えるいのちの炎  ほら、油断すると  あごの下から小さい拳が、飛んでくる  危うく顔を避けた次の瞬間  「あたくしのおうちはどこお?」  ふにゃりと笑って、僕に聞く      ---------------------------- [自由詩]斧と氷塊 /服部 剛[2011年12月20日22時55分] 日常に潜む「?」という文字から  背を向けてないか?  逃げようとしていないか?  いつからか、目の前に  私と等身大の氷塊が、ある。  足元に一本の斧が、置かれている。  目を凝らしてみつめる氷塊に宿る  「?」の文字が視え・・・ 私は、予感する。  (あの中にまことの私がいる)  恐れてないか?  手にした斧を  一心に、振り下ろす時  無数に輝く水晶の  砕け散った後に姿を現す  (まことの私)と目の合う瞬間を ---------------------------- [自由詩]妻のひとこと /服部 剛[2011年12月31日21時54分] 職場で調子が出なかった日  凹んだまま布団に包まり、さっさと寝た。  目が覚めて、妻が見ていた  朝のニュースは  白鳥(スワン)の舞を 世を去った母に捧げる浅田真央  場内の大歓声に  僕はますます、目が覚めた。  次に出てきた村上佳菜子は  やりづらさを隠せずに  ものの見事に つるん、と滑ってずっこけた  競技の後のインタビューでは  「転んじゃった」と、大笑い。  「あなたも、あれでいいのよ」  そんな妻のひとことに  心の凹んだ穴はふさがり  僕は今朝も、歩いていった。  不器用な自分の影さえ  意気揚々と、引き連れて    ---------------------------- [自由詩]夢の階段 /服部 剛[2011年12月31日22時04分] 何もない所に 一つのドアと 見知らぬ場所へ昇ってゆく 階段があった 昔見た夢で ドアの向こうの階段に どう抗っても行けない所で ぱっと目が覚めたが 僕はこれまでの生の歩みで 何度も不思議な階段を 昇ってきたのだ 自分でも、知らないうちに ほら、ふりかえった背後に 伸びている 長い長い階段を下ってゆけば 開いたドアの向こうから あの日別れを告げた かけがえのない人々が 全く同じ年齢と姿で これから旅に出る僕に 無数の手を いっせいに、ふっている  ---------------------------- [自由詩]家族の船 /服部 剛[2012年1月1日13時49分] 一年の仕事を終えて  家に帰った年の瀬の夜  テレビで久しぶりに  「ガソリン値下げ」のニュースを見て  はじめて(嬉しい)と思う自分に少し驚く  僕の顔に似た赤ちゃんを  今夜も嫁さんはだっこしている  今年親父になった僕は、気がつくと  少したぶたぶの船長服を着て  すでに出航している 「家族の船」に乗り  めらめらと初日の昇る水平線に 目を凝らし  舵(かじ)の前に、立っていた    ---------------------------- [自由詩]甘酒の味 /服部 剛[2012年1月6日0時07分] お正月に風呂屋へ行き  入口でもらったサービスの甘酒を手に  目に入った「足湯」に  ズボンをまくって、足を浸す  紙コップから一滴(いってき)の甘酒がこぼれ  お湯が一瞬、白く濁り  数秒後には何もなかったように  透明のお湯に戻った  人間という一滴もいつか  透明の世界に消えるだろう  手にした紙コップの甘酒を  一口、啜る  おいしい  ---------------------------- [自由詩]明日のドア /服部 剛[2012年1月6日19時58分] 愛する女(ひと)と結ばれる前  この手は一度、天にあずけた  働く場所が決まる前  この手は一度、天にあずけた  これから家族3人で  叶えるたった一つの夢の為に  妻のぬくもる手を握り  息子の小さい手を握り  全てを天に、ゆだねよう  僕等の目の前には  明日へと入る、ドアがある  頭上の晴天に燃える  ひかりの顔が照らし出す   地上の夢を  ---------------------------- [自由詩]人の器 /服部 剛[2012年1月7日23時59分] 人は皆いつか「自分」という 透けた衣服を、脱いでゆく  その日まで誰もが人という  何処かが欠けた、器です。   (器にはゆるしという  一滴(いってき)の水が響く  )  「自分」という 透けた衣服を脱ぐ日  初めて人は、器になります。   かけがえのない人々の胸に  消えることない、面影を残して  ---------------------------- [自由詩]燃える人 〜箱根駅伝を見て〜 /服部 剛[2012年1月8日0時03分] 国道1号線を渡る前  信号待ちの車の窓から、遠のいてゆく  最下位のランナーのもつれた足で走る後ろ姿に  歩道から無数の旗をふる  人々の声援が、彼の背中を押していた  国道1号線を渡って  風呂屋に入り、店内のテレビでは  1位のランナーが瞳を燃やして  たすきを繋いだ仲間の待つ ゴールへの道を、走っていた  甘酒を飲みながら  足湯に入り  明日の仕事始めを思う  僕の体内で、今  ふつふつと  エンジンが燃えている  ---------------------------- [自由詩]「 ON AIR 」/服部 剛[2012年1月8日20時02分] 僕の背後にはいつも  ひとつの透明なカメラが浮いている  カメラを意識すると  この胸の奥で燃え始める  小さい太陽  日々目の前に現れる一人ひとりと  私がともに織り成す  全ての風景は  生放送の番組になる  宙に浮く透明のカメラは 歓びに、少し震えて  振り返った僕の目線の先から  ぱっと消えた    ---------------------------- [自由詩]さけび /服部 剛[2012年1月13日23時35分] なかなかはいはいが進まずに  布団に顔を埋めた周(しゅう)を  仰向けにしてやったら  全身を真赤(まっか)にしてうああ、と泣いた  周は、悔しがっているのだ。  夢中で声援を贈りながら  床を這って見守るパパとママに  もっといいところを見せたい、と――  がんばって、疲れた周に  思わず両手をさしのべて  胸に抱き、頭をなでれば  数分後には腕(かいな)の中ですやすやと  天使の寝顔は、夢を見る。  布団に埋めた顔を上げ  うああ、と叫びながら、前へ、前へ  小さい手足で布団を這った  周のガッツに  じーん・・・と打たれてしまったパパは  我が胸に抱く、天使の寝顔に誓うのだ    間違いだらけの日常を  うああ、と叫び  お前のように、這ってゆく  ---------------------------- [自由詩]夫婦の星 /服部 剛[2012年1月13日23時51分] 浜辺にて、両手で掬った  無数の砂に  たったふたつの光った粒は  あなたと私  無限に広がる宇宙の闇に  ぽつん、と浮かんだ地球の中で  たまたま出逢った  あなたと私 たとえ、世界のすべてが背を向けても  唯一の味方として  互いの手を握り  深い穴から這い出すように  いかなる天気の日にも  ふたりの思案をひとつに重ね  ふたりの夢をひとつに重ね  明日へと続く長い長い一本道に  足跡をつらねてゆくことは  どんなにかけがえのない日々でしょう  あなたもいずれ  潮騒の響く浜辺にて  両手で掬った  無数の砂に視るでしょう  ふたつの星の、瞬きを  ---------------------------- [自由詩]宝もの /服部 剛[2012年1月13日23時59分] 一日の仕事を終えた後  同僚がデジタルカメラの中から出した  小さいカードがないと言い  皆でうろうろ  あちらの引き出しを開き  こちらの机の下を覗いた  15分後、元気印のAさんが  束ねた書類のすき間から  ぽろっと落ちたカードをつまみ  右手をあげて「あった!」と叫び  皆揃って拍手をした  一日働いて疲れた後なのに  皆で一つのものを探して  気づくと僕も重い腰をあげていた  職場も  家庭も  世の中も  地球という名の惑星(ほし)に住む  全ての人も  探しているのかもしれない  幼き頃に夢見たような  たった一つの宝ものを  ---------------------------- [自由詩]永遠の海 /服部 剛[2012年1月16日23時56分] 朝焼けに染まる海  昼の青空の日に煌(きらめ)く海  夜も更けた月の光を映す海  時に凪いだ小波(さざなみ)は  時に唸る大波は   絶え間ない交響曲を奏でる  小さい布団に  星の両手をひろげて眠る幼子は  瞳を閉じて  永遠(とわ)の海の夢を見ている  遠い記憶の波打ち際で  自分を腕(かいな)に抱く母の  優しい唄を聞きながら    ---------------------------- [自由詩]千鳥の群 /服部 剛[2012年1月16日23時59分] 国宝館に展示された  古の絵巻に描かれた  松林の青空を  千鳥の群が  羽ばたいていった  国宝館の外に出て、仰いだ  古の都の青い空にも  千鳥の群の 後ろ姿は消えていった  胸中に無数の羽音のざわめくまま  家路に着いて、夕餉の煮物を  箸でつまんで口に入れる頃  ふと、思う  あの千鳥の群は今頃  何処を飛んでいるだろう  ---------------------------- [自由詩]雲間の窓 /服部 剛[2012年1月19日0時29分] お年寄りが耳から外した  補聴器の電池が外れて  キーと、鳴っている  僕自身の内にある  電池も少し、外れているので  脳の何処かが キーと、鳴り  雲に覆われた空から (天の声)が聴こえない  だから僕は今日も職場で  誰かと争いそうになったのだ。  自らを小さく卑下してしまうのだ。  この胸の内にある  小さい太陽電池の丸みを  所定の位置にぐいと押しこみ  (もう一つの眼)を開く時   争いそうな人のこころに  縮まりそうな僕のこころに  雲間の窓が、開かれる  ---------------------------- [自由詩]空缶ノ声 /服部 剛[2012年1月19日0時33分] 道の暗がりに棄てられた  凹んだ空缶を拾い、日溜りに置いた。  遠ざかり、振り返った僕を呼んで  透きとほる手をふっている  ---------------------------- [自由詩]ひかりの人 /服部 剛[2012年1月20日2時52分] 深夜の海で独り船に乗っていた  やがて風は強まり、波はざわめき  震える両手をあわせ、必死に祈った  遠い暗闇からひかりの人が  こちらへ、歩いてくる  ずっと昔から私をみつめる目が  こちらへ、近づいてくる  互いの目をあわせる時  風は止み、波は凪ぎ  船の揺れは治まっていた  (こちらに来なさい)  ひかりの人の言葉が  胸に、響いた  船から離れた場所に立つ  ひかりの人の待つ方へ  私は船からそっと、足を踏み出す  ---------------------------- [自由詩]悩み相談ダイヤル /服部 剛[2012年1月23日23時55分] 心の空が雲に覆われそうな時、僕は  右手に家の電話の子機を持ち  左手に携帯電話の子機を持ち  番号を押して、両耳にあてる  ((もしもし))((もしもし))  自分の中の、相談役と聴き役の  片方はありのままの悩みを吐いて  片方はうん、うん、と頷く  ((ごきげんよう))((ごきげんよう))  電話を切って、話す前より  いくぶん気持はすっきりとして  心の空の雲間から、仄かな陽が射す  家の電話を充電器に、置く。  携帯電話をポケットに、入れる。  相談役の自分と  聴き役の自分は  煙のように  胸の奥へすぅっと消えた  弱虫よ、震える拳を握るのだ。   瞳を閉じた前方の  さんさんと陽に照らされた  明日の土俵をじっと、観据えて   ※この後携帯電話が故障したので    皆様は真似をしないようお願いします。  ---------------------------- [自由詩]珈琲店・さぼうるにて /服部 剛[2012年1月23日23時59分] 神保町の老舗・さぼうるで  戦後間もない頃から  50年、入口に立つ  80歳のマスターに、僕は尋ねた  「毎日が単調にならない秘訣は?」  「特にないねぇ・・・最近体調悪くてねぇ・・・」  レトロな空間で夢を見たくて  珈琲をもう1杯飲む為に  近所のコンビニのATMに  お札を1枚、下ろしに行った  昼間も寄ったコンビニの、同じトイレで  さっきは急いで切らしたままにしていた  トイレットペーパーを  見知らぬ誰かが付け替えていたので  (ありがとう)と呟いてから、外へ出た    一日の中にみちている無数の(ありがとう)に  気づいた歓びを胸に、神保町の小路を歩く僕は  洋燈のランプの灯るさぼうるの、ドアを開いた  ---------------------------- [自由詩]不思議な手 /服部 剛[2012年1月25日18時50分] 主よ、私は凡人ゆえに  敵を愛することができません  私の内側にいる(もうひとりの人)が  棘ついた人の心さえ、まぼろしの両手で そっと包みますように――  私は自らを信じられぬ、夜がある  私はどんな夜も信じられる、不思議な手がある    ---------------------------- [自由詩]贈りもの /服部 剛[2012年1月25日19時02分] 見知らぬ人から届いた  小包を開いたら  一つの箱が入っていた  ふたを開けたら  何処かの海がなみなみ  小波を立て  一艘の小さい舟が浮いていた  小船は夢の陸地を目指しているらしい  僕は海水がこぼれぬように  おそるおそるふたを、閉めた  目が、開いた。  何処かで鳥が歌い始める  いつもの朝に、窓からの日が  僕の頬を照らしていた  ---------------------------- [自由詩]言葉の槍 /服部 剛[2012年1月27日1時57分] どうして私はすぐに  一つの道から  足を踏み外してしまうのだろう  怒れば人と、ぎくしゃくする。  しょげれば言葉の槍が、飛んでくる。  強さと弱さの狭間で私は一体  どんな姿で立っていればいいだろう?  もう一度、もう一度  自らの信じるひとすじの道に戻ろう  何処からかふいに  言葉の槍が飛んできたら  胸に刺さったそれを抜き  血液の滴る槍を、唇を噛み締めながら  思い切り、投げ返そう――  目の前の敵ではなく  頭上の寛い空へ  ---------------------------- [自由詩]机上の本 /服部 剛[2012年1月27日2時06分] 開いた頁に散りばめられた  無数の文字の裏側に  薄っすら浮かぶ誰かの顔が  あなたに何か云おうと、口を開く  机の上に置かれた本は  いつでもじっと待っている  本を開いたあなたの心を   照らし出す、瞬間を    ---------------------------- [自由詩]詩人の魂 /服部 剛[2012年1月28日23時59分] 不器用な自分を忘れようと  彼はアトリエに入った  目の前にある石を  彫刻刀で、削る。  無心の者となり  夢中に、削る。   いつのまにか  とっぷり日は暮れて  暗闇の部屋の窓から  月明かりはそっと射しこみ  目の前にあった石が  跡形も無くなった、宙に  ぼんやりと古書が現れては消え――  古の詩人の微笑が現れては消え――  目の前には只  青い炎のひかりが浮いており  こちらに何か云うように燃えており  俯いていた彼の頬を  いつまでも照らしていた  ---------------------------- [自由詩]ある真夜中のポエジー /服部 剛[2012年2月1日23時59分] 街がすっかり眠り  オリオンが西の空に瞬く夜更け  部屋の中で一人の男が  ペンを走らせている  時の経つのも忘れ  言葉にならない思いを綴る深夜に  何処からか聞こえてくる列車の音    かたっことっ    かたっことっ     かたっことっ      かたっことっ・・・  その音が暗幕の闇を潜り抜け  彼の心の入口に届いて 体内に広がってゆき  ますます時を忘れた彼は  何かがのりうつったように   詩作に没頭する  部屋の中は時計が時を刻む音  電気の微かな、じーーという音  紙の上にペンを走らせる乾いた音  人々が夢を見ている頃  この眠れる世界の何処かで  貨物列車は今夜も走ってゆく  荷物を目的地に届ける為に   かたっことっ    かたっことっ     かたっことっ      かたっことっ・・・  この真夜中に  詩人はペンを走らせる  言葉を大切な人々に届ける為に  彼の心の中を走る列車は  大いなる闇に突入し  深く深く走り続けながら  やがて銀河系へ昇ってゆく  列車が時の無いトンネルを走り抜けると  果てしない宇宙空間が広がり  暗黒の世界に  無数の星達が煌いている  宇宙空間を銀河の流れのままに  走ってゆく列車の音が  深淵なる場所から響いてくる   かたっことっ    かたっことっ     かたっことっ      かたっことっ・・・   ポエジーという名の宇宙空間を  走る列車の音を聞きながら  真夜中に詩人はペンを走らせる  彼の心の滴が  紙の上に落とされ  結晶となってゆく  命を吹き込まれた  一篇の詩に  ありのままの人間を  愛する思いがあるなら  詩人の手紙が一人ひとりの心に  届く日は来るだろう  真夜中 詩人の生きる鼓動が  命の音が聞こえてくる   それは今夜も宇宙空間を  たった一つの場所へ向かって  走り続ける銀河鉄道の音   かたっことっ    かたっことっ     かたっことっ      かたっことっ・・・     ---------------------------- [自由詩]星の友達 /服部 剛[2012年2月7日23時27分] 飲み屋の座敷で  一人酒の盃を傾け  いつしかこの頬は赤らみ  脳みそは何処までも歪み  おぼろなる意識の内で  転寝(うたたね)にかくんっと首の抜ける時  夢の夜空にたった一つの星が  しきりに(何か)を云うように  強く、瞬いていた  目が、覚める。  閉店間際の飲み屋はいつのまに  しーんと静まり返っていた  「ごちそうそま」  暖簾(のれん)をくぐって  コートの襟を立てた僕は  先ほど夢に見た一人の友を探して  冬の夜空を仰いだ  ---------------------------- [自由詩]天使の羽 /服部 剛[2012年2月8日23時21分] 自由とは  小さい両手を左右に開き  仰向けのまま瞳を閉じる  0歳のきみの姿  両腕の翼を広げ  きみは今  夢の空を飛ぶ天使だ  いつからだろう?  僕等が大人になるにつれて  空を飛べなくなったのは  僕が時折訪れる夢の街で  ビル群の間を歩く  スーツ姿の人々の背に  日が射して  薄っすらと透けて視える  天使だったあの頃の名残が  ---------------------------- [自由詩]正義の味方 /服部 剛[2012年2月8日23時48分] ふいに巻き起こる北風に  働くおばさんの手にした  書類は飛ばされ  ガードレールの下から  川へと落ちそうなその時  ほっ!と短い足が出て  サラリーマンの きらりと光る革靴から  拾い上げておばさんに手渡す  頭の薄いおじさんは、正義の味方  ウルトラマンのように  空の上から飛んでくる  ヒーローなんぞには  そうそうなれるものではないが  短い足をほっ!と出す  あのおじさんみたいに  何の変哲もない、正義の味方なら  この街をゆく群衆の  あちらこちらに隠れている気がして  なんだか少しほっとした僕の口から  白い吐息が、宙に昇った  ---------------------------- [自由詩]流れ星 /服部 剛[2012年2月9日23時43分] ふと立ち止まり仰いだ夜空に  一瞬、星は流れ  願いごとを言う間もなく  黒い幕の裏側へ しゅぅ・・・と消えた  もし、あの一瞬の光が  無限の宇宙に含まれた  一人ひとりの一生ならば   私は今日という日に  たった一つ、何を願おう?      ---------------------------- (ファイルの終わり)