侍フィクション 2006年11月14日16時49分から2006年12月1日15時26分まで ---------------------------- [自由詩]婚約指輪は結婚指輪/侍フィクション[2006年11月14日16時49分]  婚約指輪を失くしました。  大切にしたくってトイレの後、外して手を洗いました。  そしてそのまま忘れてきてしまったの。  30分後に電車の中で気づいたの。  心臓がドキドキ、ドキドキと今までで一番早く脈打ちました。  この世の終わりが来たのかと思いました。   どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。。。  虫の知らせか彼はそんな私にすぐ気づきました。  そして二人急いで電車を乗り換え、そのトイレに向かいました。  今日は結婚式場の下見だったから。  式場の中のトイレです。  すぐに式場の係りの人に話をして。  トイレを探しました。    上から下まで。隅から隅まで。端から端まで。    無いはずない。そんなはずない。お願い出てきて。。。  だって結婚式場のトイレだから。    幸せが溢れるはずのこの場所で。  こんなに悲しいことがおきるなんてありえないから。  だけど、どうしてもみつからないの。  係りの人にも落し物は届いてないっていわれました。  たくさんの時間を費やし探したけどやっぱりみつからなかったの。    二人は、ついにあきらめて式場を後にしました。    「式場で指輪落として見つからないなんて。       恐ろしい結婚式場もあったもんだね。            あそこはもうありえないね。             違う式場またさがそうね。」  彼はそんなふうに式場に毒づきましたが。  指輪を失くした私自身のことには何にも一切触れませんでした。    ぽろ、ぽろ、ぽろり。  目からたくさんの悲しい粒が。  やまない雨のように。  いつまでもいつまでもこぼれ続けました。    あれからもう3年も経ちました。  それでも今でもあの日あの時のことを思い出すと。  心臓があの時に戻ったみたく早く強く脈打ちます。  でもね。  私の左の薬指には。  あの日失くしてしまったのと同じ指輪が。    しっかりとやさしい光を放ち。  幸せを讃えるように輝いてくれてます。    婚約指輪はもうきっと戻らないけれど。  全く同じ指輪をもういちど。  今度は結婚指輪として彼が贈ってくれました。  もう二度と決して外したりしません。    ちょっと汚れたり傷ついたくらいじゃ。      二人の心は決して汚れたり傷ついたりしないから。                          ---------------------------- [自由詩]武士道/侍フィクション[2006年11月15日17時34分]  古人に武士道あり   忠誠を誓い        勇敢に生き     犠牲を厭わず。   信義を守り    廉恥を慈しみ     礼節を重んず。   名誉を高く置き                     質素を平静とし     情愛を信条とす。    即ち是、当代日本人よりもっともかけ離れし       尊き先人たちの昇華せし美しき魂の詩である。    今人に武士道無し   サラリーマンにして忠誠を誓わず        テレビゲームの中で勇敢に生き     犠牲なりしものを負け組みと鼻で笑ふ。   信義など劈頭より無く    廉恥の言葉すら存ぜず     礼節を軽んず。   名誉のみを貪欲に欲し    質素を恥辱とし     情愛は与えらしだけのものと信じて与えず。    即ち是、古の日本人よりもっともかけ離れし    悪しき当代人たちの退廃せし悲しき魂の詩である。   いざ、誇り高き日の本の同胞    この詩を踏み越えて、古き先人の屹立す     秀麗なる高みを望む。 ---------------------------- [自由詩]あなたを愛す。/侍フィクション[2006年11月21日17時36分] 所謂、出会い系の掲示板で知り合った あなたは、豆とプリンが好きですとだけ書いてあり 僕は何気なしにメールを書いた 所謂、メル友の全盛時代だったのだろう メグライアンとトムハンクスの映画が火をつけたらしい あの頃の僕は、今後の意識機構に暗い影を落とし続けるかのような失恋をし 寂しさと虚無感を紛らす為に 特に興味もなかったメールなんていうものをしてみたんだろう そのように今は冷静に内省できる ハンドルネームお豆さんは自然だった 同時に何人かのメル友ともメール交換をしていたが お豆さんへの返事だけは一番に書いていた 何がどうしてなのか 理由なんかなかった 格別楽しいわけでも 殊更引き付けられる訳でもなかったんだ 当然、顔も分らない訳だから ビジュアルに惹かれる訳でも何でもなかった 今、突然返事を書かなくなったら ぷっつりと細い糸は簡単に途絶える メールとはそういった類のものでしかなかったし それが普通だとごく自然に考えていた 実際に一度、お豆さんからメールが来なくなった 去るもの追わずの当時の僕としては 返事が来なくなれば はいそれまでよとばかりに 続けざまにこちらからメールをすることはなかった しばらく。。。 1ヶ月くらいだろうか なんとは無しにお豆さんを思い出した僕は 前言をあっさり翻し なんとは無しのメールをお豆さんに送った その2日後くらいだったか なんとは無しにお豆さんから返信メールが届いた お互いに空白の1ヶ月には何も触れずに それが自然の事の様にまたメールが始まった 初めてあったのは、初めてメールをしてから半年後くらいだったか 新宿の南口に待ち合わせをしたんだ 僕は自分の電話番号をメールで教え お豆さんはそこにかけてきたんだ 偶然なのか必然か お豆さんは僕の目の前で僕に電話してきた 目が合った瞬間にお互いは 或いは僕だけだったのかもしれないが 相手を瞬時に認識することが出来た 仮想のお豆さんが現実のあなたに 近くて遠いような、見えるようでいて見えないような 透明な薄い膜のような絶対的な境を飛び越えた瞬間だった 2人のある意味2回目の初対面はやはり普通 よく言えば自然だった 所謂、昔の友達に久しぶりにあったような感覚 やや恥ずかしいような、緊張するような だけどすぐに打ち解けてしまう そんな会話がつらつらと自然に出来た 人見知りの激しい僕としては へえ、こんな僕がいるのかという新発見でもあった それから2人は自然に友達となり やがて自然と恋人となり 彼是もう5年もたったんだ そして、明日には連れ合いになる そもそもの始まりは そう僕の何気ない 若しくは不純なメールであったのかもしれない でも僕は、自然に伝えられる あなたを愛すと ---------------------------- [自由詩]かわらなきもの/侍フィクション[2006年11月24日19時01分]  絶対変わらない。  それがあなたの口癖  私への想い  あなたは真剣な眼差しでわたしに誓った  時に笑顔で  時に泣き顔で。  私はほんとに幸せものだ。  こんな私をこんなにも想ってくれて  こんなにも愛を降り注いでくれて  私を照らす温かい太陽であり優しい月である存在。  まるでそんな太陽と月が遠く遥かにたたずむように  518kmの距離が私たちのあいだを  いつも遠く隔てていたんだ。  でもそれでも  あなたはどんなに日々忙しくても  どんなに疲れていても  1日の休みさえあれば  日帰りさえも厭わず  たった5分でも  一目でも顔がみれたらと  流れ星みたいにシューって飛んで会いに来てくれた  わたしはその一瞬のきらめきが  ほんとにほんとに嬉しくて幸せで笑顔だった。  だけれど、けれど  わたしは負けた  ありきたりな距離の壁に  冷たいベットに  あなたの温もりを想い出す切なさに。  私はほんとに不届きものだ。  私は泣いた心底泣いた  ふがいない自分に  あなたの愛に応えられなかった自分に。  でもきっと  あなたはもっと  もっともっともっと。  涙を流したに違いないんだ。  凍てつかせてしまった冷たい心で  熱い涙をいっぱいいっぱい流したんだ。  絶対変わらない。  今でも昨日の事のように思い出す  あんなにも誰かに愛されることはもう一生ないのだろう。  そして今、風の便りで聞いたんだ  あなた幸せな結婚をしたって。  絶対変わらない。  ちょっぴり胸が痛みました。  でもあなた  やっぱり変わってないんだと思う  あの時と同じように  まっすぐひた向に誇り高く  愛を貫いているんだね。  私ももういかなくちゃ。  あんなにも大きくてあったかい愛に満たされることは  もう無いのかもしれないけれど  今度は私が愛を貫くんだ。  あの時のあなたの眼差しのように  優しく強く温かい太陽のようでいて月の様な。  ひた向きな愛を貫くんだ。  そしたらきっと。  あの時のあなたの涙を  ふがいない私の面影を  流れ星のようにシューって  追い越してけるんだ。  だから私ももういくね。  あの時一度も言えなかった事  遠い空から今こそあなたに伝えたいんだ。  いつまでもかわらないあなたへ  ほんとにほんとにほんとうに  ありがとう。  私はほんとに幸せものです。 ---------------------------- [自由詩]いざゆけ先輩!!/侍フィクション[2006年12月1日15時26分]  ある日のこと。  38歳独身である我が先輩は堂々と勇ましく宣言した。  先輩Tさん:『今まではホームランを狙い続け                空振りを繰り返してきたけれど。』    先輩Tさん:『今年は当てに行くわ!』  年齢的に日和ったか  どうやら結婚相手のランクを  ホームランクラスからヒットクラスに降格してでも  結婚をしにゆくという宣言のようだ。  私はボソリと言った。  私  :「あのー。先輩まだ打席にも                立ってないと思うんですが。。。」  Tさん:『・・・どうやらそのようね。。。』  Tさん:『今日も飲みいくよ!!』  私  :「ラジャ!!」  礼を欠くかもしれないが  こんな先輩を私は友達だと思っている。  いざゆけ先輩!! ---------------------------- (ファイルの終わり)