アオゾラ誤爆 2006年6月27日21時04分から2007年10月31日19時48分まで ---------------------------- [自由詩]グレイ・メモリーズ/アオゾラ誤爆[2006年6月27日21時04分] 僕の弱い声で残すさいご 遺言は誰に届くだろう たとえば(さよならは) 僕ら(いたみ) せかいは永久にみずいろ 僕がもえつきて灰になっても それをさらう風が君であれば幸せ ---------------------------- [自由詩]どれだけ/アオゾラ誤爆[2006年11月10日21時02分] どれだけ自分を偽っても 消せることの無い本能がある 理性では制御できない 覚悟すら失せるような青 それは銀河のコウズイのような匂いを漂わせている 私は携帯電話をいじっている女子高生の隣に座っている 空は泣き真似をしている 吊革にはとどかない男の子は死んだような目で天井をみている、 ---------------------------- [自由詩]期限切れ/アオゾラ誤爆[2007年1月11日18時32分] 窓のない病室で 地球儀を塗り分ける 水彩絵の具の赤は 少しだけ優しい 冷蔵庫に 入れておいたの 私を生かす電池は もう使えなく なっていたから 安心を買うなんて 違反だって知ってても それでも 甘やかして 何度もせがんだ 白紙に戻らない 汚されたシーツの上で 今日も夢をみる 色のない世界に 迷い込む直前の、 音 ---------------------------- [自由詩]CO2/アオゾラ誤爆[2007年3月30日17時35分] 両手を伸ばす乾いたグラスのなか君が微笑む 吊革まであと少しのところで僕は身を屈める 消えかけたしゃぼん玉 サイレン 踏み切り 思い出にしてあげる 粉々 指きり まだ子供だったんだ、それだけだね 青い生命線 途切れたその日から僕らはもうゴミだ ---------------------------- [自由詩]つみぶかい/アオゾラ誤爆[2007年4月17日17時26分] みずいろのまちで しゃぼんだまのような おさないひびを かさねたぼくら なつかしさに、 めをつむるのも いいかもしれない ただ きみとぼくは べつのいきものだったね いつのひも ---------------------------- [自由詩]記憶の箱/アオゾラ誤爆[2007年4月22日11時44分] 色を失くす また夜が迫る 傍観者になりきれない この街さえ  新しくなっていくのに 思い出せなくなる みずみずしい指先が どういう風に この胸にふれたのかを シャープペンシルを握る 華奢な曲線を えがいた白昼夢を 思い出せなくなる ---------------------------- [自由詩]夕風/アオゾラ誤爆[2007年5月4日19時21分] 吸い込んだ肺が うすむらさきと群青のすきまで止まる 絶えられなくなって 風の匂いのせいにする つめたいガラスが知ってる よるの密度 ひとつずつはがしていく その指先で ---------------------------- [自由詩]夜と白昼夢/アオゾラ誤爆[2007年7月5日22時15分] きみの肌は何度たべても不味い そのことを告げたらきみはさみしそうに 笑った 汗をかいた君のよるが わたしだけのものになるから それはそれで幸せなんだよと いいたかったけどいえずじまいだった きみの肌は何度たべてもまずかった だからさよならに染み込んだその成分を 飽きるまで吸い続けてしまう だからすり抜ける群青の底で 今日も虫が鳴いて 背骨をきゅっと締め付ける夏の匂いと ねむれないわたしが たったひとつの空間を わけあうように きりわけるように おぼつかない呼吸のままで 誰かにくるまれたがっていることを だれかにしっていてほしい ---------------------------- [自由詩]やわらかく痛いもの/アオゾラ誤爆[2007年7月12日19時37分] きみの心臓をすこしわけて 羽根が生えたんだ ぼくにもさ 空はあおくて きみに出会えないカイトが 泳ぐ 捨てるべきものをぼくらは失くしたんだ 血がでたんだ 赤い血がでていた むかしのことだ なみだが乾いたら もうそこには何もない 煙のなかで 壊れたぼくらが 泣いている 叫んでいる 空虚で みたされすぎた 世界について 知らないから なにひとつ ぼくらは 君の名前で 歌わないから 足りないパーツが溢れて 石さえ呑み込むよ ああ 俺たちの電車がとおる きみの きみの 声に呼ばれていた さわれないばしょに 廻っていた 空で おいしい料理で すごく 痛い きみの羽根を ひとつ ください ---------------------------- [自由詩]いつか世界の終わりで/アオゾラ誤爆[2007年7月28日13時29分] 蝕まれる日のいろをぼんやりと眺めてた 次の宇宙がうまれるまで ぼくらはここに立たなくちゃならなかった 一度でもきみがさみしいを言っていたら ぼくだってその腕をつかんで 逃げ出せたかもしれないのに 冷めていく街並みのなか まばらな拍手がまだ聞こえている せっかく世界がおわっても ぼくらはここに立たなくちゃならなかった ---------------------------- [自由詩]肺をみたす(水葬)/アオゾラ誤爆[2007年8月17日22時42分] 水中ではうたもうたえない だけど泣いたってわからない ささやかなゆれはわたしの体温になって さかなたちの集うよるがくれば ふやけた指先からあふれていく あらゆる目線の延長上には おなじだけの朝をまつ手段がうかんでいる 手にとれるおもさの限界で ひろいきれなかったきみの成分は ゆったりとした波の中で つぎ足すことのできない、ゆいいつの幸せのかたち さみしいと口にすれば 心臓はうごくのをやめて この柔らかなくちびるからは 生ぬるい海水が浸入(はい)りこむ だまったまま水底に沈んだら ひかりもやみもとおくなって だれかの声がこだまする ねえ、きみ 息継ぎのやりかたを ずっとおしえてくれなかった ---------------------------- [自由詩]自称彗星アオゾラ誤爆/アオゾラ誤爆[2007年8月30日11時34分] ようやく朝がきているよ そんな嘘で早起きをした きみのなかはどうなってるんだろう 街中のプラスチック踏んづけて はだしできみを追いかける 冷えたアスファルトとうらはらに どんどん熱を帯びてく、 泣きそうに きみは歌うのがとても下手で それだから愛してる さよならをいえなくて可愛いから殴りたい たくさんの正しさを胸に置いたら その景色ぶっ壊して 間違ったっていいよね きっとお互いにゆるされる 「永遠ってものがあるとしたら 飛行機みたいな彗星みたいな あやうげな軌道にすがりついていたいな」 するどい加速を見せつけて ふたりの爆ぜる視線が上空の青を引っかいた いたるところに残ったきずあと なぞればきみの走りがちなフレーズも 太陽も酸素も花もすべて刺さっているさ 私を呼ぶきみの声 いつだって悲鳴みたいだったね きみを呼ぶ私の声 いつだって悲鳴みたいだった? どうせなら心臓に痛みも安らぎもおしこんで 宇宙の破片のみこんでしまおう まるでだれかのまねごとだけど 自称したらすこしでも愛しかった ほら 世界の終わりが窓を叩くよ とおいアオゾラをずっと みていて ---------------------------- [自由詩]世界の終わり/アオゾラ誤爆[2007年9月10日20時54分] パンの匂いが、する カラスの鳴き声で割れた やわらかい世界の殻 甘い時間をむさぼったあと すべてが失われていくまで もう僅か あなたは足の指の先まで すっかりふやけて偽物みたい 壊れた温度でわらってる どこかで狂った犬が なく ・ だらだらと続くだけの日々に そろそろ背を向けたいのと 慣れた手つきで紅茶をいれる 悩ましいくすりゆび くっきりと焼けた指輪のあとは まるで切り傷 美しい模様 滲んでいく太陽の軌道を 追いかける あなたは さっきから窓の外ばかり 気にしてる なんだか今日は街のいろが すこしおかしいみたいだ 空のいろが いつもより鮮やかに見えるんだ そう言った焦げ茶の目が ぐるぐると空中をさまよう これで最後なのと告げた 私のこえすら聞こえない そぶりで ・ 世界の終わりはまだこない 黒々と散らばる点 羽根のない鳥たちが 急降下でゆうがたを裂く やっと視線をしたにうつせば ことんと軽く鈍い音 ぼんやりと視界にひそむ 少女のようにか細い腕は やけに正確な仕草で ベージュのほうのマグカップにだけ 真っ白な結晶を沈める それでいい 砂糖はきみに似合わない ぼくだけがスプーンを手に取り ぼくだけが甘みを溶かす それがいい ・ からになったピンクのカップ あなたは猫舌だから その紅茶を飲み干すには まだすこし時間がいる 急かすつもりはないのだけれど 平べったい東の空に 赤い月があらわれたこと いおうかどうか少しだけ迷っている ---------------------------- [自由詩]抒情詩/アオゾラ誤爆[2007年9月17日20時55分] 眠れないからもう諦めることにして 空中に浮かんでいる音階を拾い集めては 群青の彼方へと放り投げている あれがいつか星になればいいとおもう ---------------------------- [自由詩]かぜになる/アオゾラ誤爆[2007年9月22日19時38分] ゆるされない原色のスニーカーをはいて/きみは逃げる。 閉ざされた校門をぎい、と引いて赤錆にふれる。 チャイムを背中に叩きつけられながらそうっとすきまを抜けていく。 クラスメイトの顔はもう忘れることにして、小走りで空気をさいていく。爽快。 ほんのすこしの罪悪感をまじえながらいきをはく。 決してふりかえらない。 きみは逃げる/月曜日の午前11時。 道端に伸びているよく知った、青々とした草/名前はしらない/をちぎっては放り投げる、 どこにも届かない気がしている。すべてを追い抜く速度で飛んでけ うしろへ、うしろへ ながれていく景色の完成を待たずに次の景色をみる。 こまやかに髪が洗われていく。シャボンの香りを連れてくるのは、風。 錯覚の教師の声にびくついて、耳をすませ/安堵したわらいを漏らす。 すり切れた鞄からトイカメラを取り出してさんさんと落ちてくる太陽を閉じ込める。 あらわれた映画色の世界のなかに、たったひとつの居場所を見つけて/浸る。 まえへ、まえへ 散歩中の犬の唾液が/しみたアスファルトを踏みつけ行く、 きみはとおざかるきせつのうたを聞こうとしてる。/聞いている 走れるっていうことは、とべるってことだったよ、きみは彼の嘘をみずからに溶け込ませながら 途切れない構造のフィルムを網膜にうかべている/空。 束ねられた収穫の象徴からめをそらしてコントラストの低い路地へ、迷い込む きみは/逃げる。 坂道をかけのぼったさきの、子供たちがいる公園で、あらゆるものを切った/シャッター それでも絶えない花の色に、身を寄せている。 どこかへ、どこかへ こういうとき口笛ができればと、いつもおもっている。/眩しくて潔く目をとじる 陽はもう当分さめない。 すべてを追い抜く覚悟でもって、きみは逃げる 新聞紙がさすらえてゆくように、空き缶がころがるように きみは/逃げる ほどけたままの靴紐を無視して/きみは逃げる 球体をたしかに感じている。今日の空に、適当に名前をあげた。/きみは逃げる かぜに/なる。 ---------------------------- [自由詩]十四歳/アオゾラ誤爆[2007年10月9日21時28分] 血がでてるよ 言われて気付いた そういえば痛い なでるような叩くような信号が破壊されてるような 感覚 いつ配線を傷つけたのか 正常のなかの異常な部分がむきだしになる 滲み出る ああ、私天才じゃないんだ なに言ってんの 冗談だよ。 ……絆創膏。 - さっき ドラッグストアに行ったら工藤がいたから手でも振ろうかなと思ったけど止めた 去年のクラス、私はすきだったけど 工藤は今のほうがきっと楽しいんだろう 彼女と同じクラスになったんだもんね、よかったじゃん それを言いたかったけど別に 私が言うことでもないしもう10月だ、今更かとおもって 店内の、お菓子売り場よりもちいさい 薬売り場に工藤がはいってくのをみすごした。 一番最初の席替えで隣だったこと、もう、忘れたよね 結構嬉しかったんだけどな、でも 私もあんまり覚えていない 母親に頼まれて買った天然水2リットル2本、 重い 徐々に冬になるマンションのエントランス、抜けて エレベーターを待っている。 はやく、はやく迎えにきてよ - 洗うべき肌 シャワーのぬるいお湯が私を流すけど たとえば今おなかが痛いから、ここで倒れこんだとして 誰にも気付かれなかったら死んだりもするのかな すこしずつ髪の毛が抜けて排水溝につまって、お風呂場にお湯がたまって 病院の待合室の 角のまるい水槽みたいに ゆたゆたと戯れる液体の間に溺れてしまうのかな そんな思考を妨げるみたいに すこすこ、と音を立てて 小さな泡が宙に溶けた ボディーソープが終わる 私は、眼を瞑る - チャイムが聞こえない うちの親父超キモイんだけどー うちもうちもーマジうざいよねー死んでって感じ ありえないよねー なに、それ 死んでって感じって どんな感じ ねえ チャイムが聞こえない いってえ、誰だよ黒板消し投げた奴ー 忘れてた、あたし今日日直じゃん さおりー彼氏呼んでるよー あ、その消しゴム俺の! チャイムが聞こえない でさー、ラストシーンがマジなけるのお 結局主人公死ぬんだけどーほんと感動したしっ チャイム チャイムが聞こえない そーいえば西川さん …したかもしれないんだってー 工藤が  検査  買ってるとこ偶然見ちゃってさー うっそーやばいじゃん もしできてたら退学とかなんのー? ならないっしょ中学なんだし そっかあ え、今  なんて言った チャイムで聞こえない - ねえお母さん、 私、毎日詩を書いてるよ 夜中にいつまでもメールしてるなっていうけど メールなんて嘘だよ ねえお母さん 私、毎日詩を書いてるよ。 淋しかったり嬉しかったりちゃんと苦しいよ。 泣けない。 ――痛い あ、眩しい。 12時をさす針の色に今はじめて気付いた。 痛い。 ---------------------------- [自由詩]少女たちと海について/アオゾラ誤爆[2007年10月14日10時15分] いらないものがおおすぎるんだ ねえ私たちは 両手でそらをはかろうとする 出来ないよ できないよできないよ わかってるのに希望をすてない あしをとられて倒れこむ 砂地 じんわり自分をしみこませて 満足する 満足したふりをする あ、あ、あ、 声はまだ出るか あ、 もうだめかな 何度もためす テトラポッドをカメラに収めれば もう二度と海にこなくても 生きれるような気がするけれど あ、あ、あ、 嘘をついた 太陽は嘘をついた 私たちは嘘をついた 私たちは うそを 疲れた しゃべる言葉たちが 汗をかいているようにみえて 思わず目をこすった たぶん錯覚 乾いて 肌は適応する 潮風に撫でられて しだいに敏感さをなくす あ、あ、あ 声はまだ出るか いつか出なくなるのかな ぶれていく話題 三半規管 って たぶんこのへんだよね 細い髪にくすぐられる 小指 どこかに捨ててあった花火と どこから来たのか野良犬が ちょうどいい ね、こういうとき、映画だ 私たち、映画のなかだ 無邪気に ひざまでぬれて スカートを両手でおさえて 息が白い 冬の星 もうみえない はじめから知らない だって 夕方すらまだ遠い あ、あ、あ、 あ 嗚呼 ねえ生きている? 確かめるまでもなく すべてのものがリアルで 逆に偽物みたいだった 笑える わらえてしまう あ、あ、あ 大事なものがおおすぎるんだ ひとつこぼすと 死にたくなるから 無重力を味わって 息をしている 好きなんだ好きなんだ好きなんだ 絶望 その次に浮かれて ざらつく循環にさらされている 錆びたり腐ったりするまでに なにができるのかな たまにかなしくなるんだ どうしようもない 美しさに 消えてしまいたくなるんだ ね、くだらない、感傷で 傷だらけの足首を つかむ遊び あ、あ、あー  糸電話よりも危うい みえない線があるのかな ほんとうに あーーー 聞こえますか きっと殴りとばすよ 都会の喧騒もなにもかも 追い抜いてこの声は 飛べ おねがい とんでほしい あ、あ、あ すきといって きらいなものがおおすぎるんだ 私たちには ねえこたえて 知っていること全部全部 おしえてよ わがままに 流れている時間も とめて はねるしずく 短く切った髪にひかる シャッター シャッターシャッターシャッター あ、あ、あ あ、鳥 シャッター あの鳥たちはどこへ行くかな 私たちの しっている国だろうか 川もビルもない場所を 見たことがあるんだろうか 私たちはないよ もうずっと 与えられた世界のかけらを 片っ端から疑うことだけ しているから 愛しいんだ あ、あ、あ 海 うみだ ねえ うみだ うみだよ ---------------------------- [自由詩]スワロウテイル/アオゾラ誤爆[2007年10月29日16時05分] あかるい空 カーテンをひいて包(くる)まれて そのどこかに羽根をみている 呼吸が彩度をわすれて いつか廃れた街のようだった 足音は屋根をつたって きみに会いにゆく こぼれてくるひかりは きみがながした涙に似るから できるだけ目を伏せる くもの巣みたいな糸を 追う視力はいくらか減って もう底 うまれたときの眩しさを 再現できない左手 灰色のうすい紙を ながめては破り捨てた はだしで水たまりを踏めば 跳ねたしずくに眼をやる つないだ手をすっかり忘れた頃 まどを叩く振動を聞いて 横たわる 痛みのとなりに安らぐ 帰ってこれた世界の無音 いとしい 空中を舞うすべてに 焦がれて腕をのばしてしまう 焼きついた景色を ふりはらうには脆すぎる からだはきみを覚えていて こころがずっと呼んでいた きみのうたが染み入って はだ色 確かな傷がついている 同じ場所 ひみつのばしょに ---------------------------- [自由詩]冷え切った冬の最果て/アオゾラ誤爆[2007年10月31日19時48分] 産まれたのは透明な冬 冥王星のなまえをもらった 彼女は海に飛び込む 後姿は蝶の背骨 白い指で息を止めても 朝はきっと来ない 細い髪がやわらかくゆれる スローモーションで罅割れる肌に 突き刺さる いのる、くちびるの、僅かなうごきで 紡がれた物語 誰も知らない物語に なみだする 寝台 結露した窓に はりつける頬は冷たい 流れる景色にみとれている 空気は凍って モノクロの古いフィルムが 網膜に灯す像だけ 色あせながら尽きていく 鳴き声が聞こえる 割れたガラスを拾い集めて コンクリート傷つけた 彼女がみてた夢を描くんだ 失くした指輪のことも わすれて 叫んでいる? 消えたのはとうめいな冬 呼ばれて連れて ころんだきりの ---------------------------- (ファイルの終わり)