アオゾラ誤爆 2007年11月24日12時45分から2010年4月17日21時30分まで ---------------------------- [自由詩]花葬/アオゾラ誤爆[2007年11月24日12時45分] 白い手首から あかいなみだが滴りおちて 砂に染みた 日をしるたびに乾かされる ざらついた海の響きが 耳に刺さる あらゆる事象が眩しい それまでも花の咲く過程だときみはいう 半信半疑でわらっていても ふれてみたいと切望した まざりあう汗と 香水のすきまにしのび込む 体中の温度が 上昇するのを感じながら あおぎ見るその瞳の奥で やせ細った折れそうな茎が ゆいいつの色素をこぼす ぽろぽろ と ぽろぽろ ぽろ と 握りなおす手のひらに潜むのは あこがれに似た五感の象徴 何度まぶたをひらいても 時計はうごく 枯れ果てた骨はすべてを拒み 世界の心臓と同化していく ---------------------------- [自由詩]羽根のない日/アオゾラ誤爆[2007年11月25日15時22分] 覚えたての年号を羅列して 自慢げにわらう少女は 昨日みた星のいろを まるきり覚えていないという 羽根がほしい 羽根がほしい 微風がきせつを連れてきて 合図なんかいらない 気まぐれにあるくよ 近づいてとおざかって またすこし近づいたかな いそがしい その 落書きみたいな背中 教科書なんかおいていって かるくなって帰ろうよ 羽根がほしい 羽根がほしい ため息は輪郭を手にいれて 坂道をすべっていく 太陽がおちきったら あの日のそらに手をひかれてけ ---------------------------- [自由詩]熟れる頃 きみが泣く/アオゾラ誤爆[2007年12月5日20時15分] 橙のかげ 古い写真みたいにかすむ あの煙突からたちのぼる 霧のような灰が眩しい 太陽はしずみかけで 手のひらの大きさの池に浮かんでいる 死んでみたいとくちにした 動脈血のながれるくちびる 冬の空気にさらされて あかい 赤くてあかくて落ちてしまいそうに 熟れている あわく黄みがかる遠くの雲が 工場の屋根に隠れた 雪がふるかもしれないと思った いつもよりおおきな声で 囁いてみるように 爆弾に触るように とりはだが立つのを待たない だってほら掴んでしまえるよ 時間なんて気にしてないで きせつにならどうせ追いつけない 冷たい羽根ならぼくらには生えない 触れ合ったその場所から 腐っていくから気をつけろよ ---------------------------- [自由詩]ひかりについて/アオゾラ誤爆[2007年12月11日20時03分] 階段を降りている のぼろうとしてたのに でも迷わない うしろすがたは不安じゃない 夕暮れにはえる骨格 自転車の鍵はどこ きみのかかとが逃げていく ひかりのすまわない瞳を ふりむかせたくて 声をだす なまえを思い出しているよ そして 嘘 と似たそのひびきに こぼれ落ちそうになる こころ はてのない地上です 確かそうだといっていたな きみ ここはこわい いつか触れてしまうのも 絶えがたい痛みをかんじるのにも なれていくのでしょう 青いフリスク三錠と心中 わらっていうひとのかげを 見送りながら ねがいをすてた とけていくあの向こうのほうへ さよなら という まぶしさは ---------------------------- [自由詩]神さまとさよならする日/アオゾラ誤爆[2007年12月20日19時31分] ひとつひとつに 名前なんてなかった きみだけが知っていた 美しい世界 神さま ねえだから きみは神さま みんながうまれたときに さいしょに泣いてくれたのは きみだったな あわくするどいめの奥が 語りかけていた 青さを おもいだすことができるよ たった今のことみたいに 声や 温度も よわさも強さもなめらかさもかなしさも やさしさも どうして泣きたくなるのって 聞くたびに確認する この星も あの空も おなじように青いってこと きみの心臓 のような あお 止まることのない 時間の源泉 わたしは きみがつくってくれた 脈打つ宝石をかかえこんで ねむれないよ とても震えていて ねむれない わたし 眠れない ねむりたくない まだみていたくて 自転を感じたくて なんだかとても苦しい あらゆる角度から花を愛でて いろんな国の呼吸をしたい まぼろし に、似た きみのこえに 抱きしめられていたい 嘘よりも 真実をしることがこわいなんて わがままだなあ わたし きれいなものが好きだから 殴られてしまいたいな そらに うみに とりたちに きみという存在に 溺れてしまいたかったなあ 手をぎゅっとしてみて 流れていくのは 宇宙だ ねえ はじめからあのなみだの味を わかっていた 気がするよ ぜいたくなじかんを食べて 消えないで わらっていた気がするよ 今日も たしか昨日もきっとあしただって 生きている あおさのなかで 痛いほどだよ 超えられて おいつけなくて すり傷から血がでてしまう ねえ てのひらで覆えるくらい かためた気もち 凍った息も しらないひとに届くんだろうか まぶたのうらは赤くて それを醒ますのが涙なら 正しさってどこにあるかな むかしから 呼ばれていたのは きみ、 きみは神さまだから ぜんぶぜんぶ見抜いていて わたしは 今から どこへゆこう ---------------------------- [自由詩]処女雪/アオゾラ誤爆[2008年1月3日21時59分] やっとのことでぬくもった指が 水にふれた 気がした また凍るのか 雪の味をいつまでも いつまでも憶えていて そういえばそれはひどく愛しかった はるか上空から 落ちてくる点々のひかりが まばゆく壊れて 肩にしずみ きえる 誰がつけたのか足跡に 果てまでみちびかれるような気分で あるく ありあまる白さに 圧迫されながら倒れたら ずっと深くまで埋もれてゆく しんしんと つのる 無音を聞いて ---------------------------- [自由詩]わたしは春にうまれた/アオゾラ誤爆[2008年3月11日22時06分] 梅のにおいだ がらんとした空洞のせかいに 手をひたす わたしがさわれて 感じられるものを おもいきり吸い込むために あざといまなざしに  淋しくかかげた いたみの芽 あわただしい忘れられかた なんて ひとつなくしたら、いつかあふれる にがいのは慣れている まだあおいはだしで 紙風船がぽとりとおちた うららかなる白昼の憧憬 たたみかけるようにうたう やっと追いつけたようで またきえてしまうから 泣いてみる ぬるんだ水のかるさ・浴びる日の健やかさ・しろい背中 花はまださかない 春、 わたしははるにうまれた ---------------------------- [自由詩]メーデー/アオゾラ誤爆[2008年5月1日22時09分] ほどけてしまいそうな 女の子のからだから 春をとり出してならべる つみぶかい瞳が まだそこにおよいでいる 名前の知らない五月の旗 活字から顔をあげて だれをみる 外をみた 窓の …… がらんどうの空に鳴く おちないつばさで昼を裂く 校庭のにおい さかなが つばさをもたないさかなが はためきながらそのすがたをみている 遠くへ、 とんでいく鳥たち 男の子は 女の子がすきで 女の子は 男の子になりたかった ---------------------------- [自由詩]回帰/アオゾラ誤爆[2008年9月14日20時40分] らせんのような共鳴を感じる ピアノをたたくゆびの柔さに似た 無邪気さの中で吸う空気 どこまでも青くひろがる 世界の端っこで どうしようもなくうばいあっては 求めあう わたしと君のすがたは きたなかっただろうか それとも やさしく微笑む吐息は わたしのずっと奥のほうへ染みこんでゆく 決してまようこともなく 白くしなやかな曲線をたどり たったひとつへ向かう 君 夢中でする懐抱の合間に わずかに濁ったなみだを拭いて それでもぽろぽろとこぼれる こぼれつづける わたし しょっぱいのか甘いのか 永久に知れることのない ひびきを持って君に伝う 音楽はやまない そっとつつみこむような流れに しずかに身を任せると からだが溶けてしまいそうだった ほら今にも 回帰する場所をさがして 君が何かを思うたび まじり気のない 君が生まれる わたしから ---------------------------- [自由詩]She's crying/アオゾラ誤爆[2008年11月18日18時49分] 冬の車道にぼくは蝉をみつける 暖房を効かせたひろい町のどこかで あの子がすきな作家の本を ぼくは読まないけれどたくさん持ってる 早朝につんとした風が耳を抜ける まぶしさに目を塞げるなんてうそ 名前のない音楽にふれている 実感よりもぼんやりとした理想で 足元にツーカートンのラッキーストライク 映画みたいに雪は降らないけれど ---------------------------- [自由詩]蝶が見る夢/アオゾラ誤爆[2008年12月3日23時14分] 哲学者は手首を折った 色という概念を忘れようとして 僕は我慢する 排他的なその花瓶の輪郭は 多大なる想像を用いてぼくに砕かれる 涙せよ 涙せよ、と繰り返す脳内の信号は 僕の思うすべてを理解させようとしてくれない うるせえ うるせえうるせえうるせえうるせえ うるせえうるせえうるせえうるせえうるせえうるせえうるせえ 新聞を破り捨てたら 空から何が降ってくるだろう 雨よりも痛い何かを僕は知っているはずだった いつからだろう 少年は靴を捨てた 裸足で踏む匂いの無い地面から どうやって逃げ出すかそんなことばかり 考えていたので ---------------------------- [自由詩]破瓜は絞首に似ている/アオゾラ誤爆[2009年1月4日2時31分] きみはひどく咳き込み すぐに踞った 今日は風がつよいね 手をつないで 髪を なでた すきだよ あまく 湿った声は遠く いつも おびえているみたいだった 名前を呼ぶのも 思いを確かめ合うのにも いつも同じかたさで 胸をひっかかれて いるんだ そしてわたしは凍る 鉄棒のように つめたくなって 転んでしまいそうになる だからもっと ちゃんと 手をひいて そばに あ、 そこにいる なにかべつの いきものが わたしと、 ここにいて とけて しまいそうで うずく あ、 ふれて ふれあって いるね ねえきみ、 出来るだけ 丁寧なしぐさがいい ぼんやりとしたイメージよりも 痛いくらいの現実を見せて この視線を合わすなら やさしいでしょう ここにある 唯一は なんだろう 限りなくしずかにある 地平線の円みを 体感するふたつの核 くすぐったくて 泣きたくなるけど 笑顔をつくって 息をもらした すきだよ って 言えないから こぼれそうになってしまうね いますぐにでも 心臓から背骨から なにか わたしのようなものが―― 洗われていくような 細やかな質感が 表面でゆれている あふれそうになって そのたび 胸の奥をつんと刺す ほら いまも感じているよ だっておそろしいくらいに いつだってまぶしいんだ きみは 濁りのない 水のようなすべらかな温もり そっと指先で叩くと きみの顔がぼろぼろと崩れた 小さくふるえ 波立って ゆっくりと浅くなる ここの均衡を保つのに わたしはまた泣かなくては いけないだろうか 底が、 もっと深くなる 育つに連れて 届かなくなる その 切っ先で頬を撫でたら 駆け出してしまいたくなるよ こんなに近くに 重ねているから 引力みたいなんだっだ こんなにも生々しく ひびいていて すこし切ない 滲み出る血のにおいに 鳥肌が立つけれど あふれさせてしまわないで どうか 世界でいちばんあたたかな 動物になって眠れ 冬は寒いから そっと寄せ合う呼吸がいとしい 何よりも 接しているという感覚が たしかで すき だいすきだいすきだいすき すきなんだ あらゆる苦みや、痛みを 飲み込む覚悟をきちんと済ませて それから融け合うのがいいね なんて冗談で笑ったそれは 嘘なんかじゃなかったけど だまっている 上昇と停滞を くりかえして もういっぱいだ いっぱいになってしまうんだ わたしは かすかに ふれるだけの合図を どれほど感じているのだろうか やさしく、 傷口に 飽和するのを待っているよ それはとても透明な希望 やわらかで ――水の音がしている まぶしい 春の庭に ころがっているような 微弱な反応を見せる きみ 想像もしていなくて 短距離走が苦手だった頃に 戻ったような思いがして 胃や胸が熱くなるのを 感じている 窒息 のような刺激で きつく、しめられ、ほどかれて 白熱灯の熱さでもって きみを食べて しまう わたしが がまんして 痛いのを 息を止めてくちびるを かんで 爪を、 立ててもいいよ すきだから ねえ すきだよ 平らになった湖面を 破く寸前でふるえている きみはためらいがちに 息を吐いた 静かに目を伏せるけど わたしはすべてを知っている みたいだ 壊していいのだろうか ---------------------------- [自由詩]逢瀬/アオゾラ誤爆[2009年1月17日0時18分] 非常階段で待ち合わせ そんな滑稽さでもって 世界から逃げている きみとわたし 日中の駐車場で 眩しいくらいに飛ばされた 二人の立体感が 遠い ふれている間だけ 呼吸するのを諦めている 細胞ひとつ手にとって きみは笑って こわしてくれるね ---------------------------- [自由詩]蛍光ペンで白地図に線を引く/アオゾラ誤爆[2009年2月19日21時22分] 日比谷線のホームに きみと立つのは初めて 一人で会いにきたよって言って 褒めて欲しかったんだよ 大好きだから名前を呼ばない そんないじわるだって流して欲しかったんだよ 流線型の街が私ときみを置いてく いつのまにか風船みたいに膨れ上がった かなしいかたちのきみが私の前で 笑っているような気がした なんて怖いんだろう この世界で私の視力は まるであてにならないので 手をとりあって くすぐりあって きみを縛って動けなくして でもやることは一緒 これからもずっと きっと あっという間にぬるくなる 一緒に浸かっているこの舟には 懐かしい感覚すらあるから きみが生まれる前にいた場所に 案内されたみたいだ それは冗談 きみは永遠にその顔のまま それは可愛いけど だけど もう春かもしれないと 微笑みあった視線の前に 整理されたビル 青い空を背景にきみは彫刻になる まるでにせものみたいな表情で 私の心臓を奪っていく なんて無益な会話を繰り返しただろう 弁当箱ひっくり返したみたいな思想 そういうのを抱きしめている 新幹線に乗るのはいつも夏か冬 いけすかないきみの仕草を 思い出しては泣いているよ ねえ 今日の 帰り道はいつもより早く 夜になっていく気がしたけれど 一生秘密にしとくね ---------------------------- [自由詩]掃除機/アオゾラ誤爆[2009年2月25日19時34分] 真昼になると 饒舌になる空の色 僕は嫌いだ 昔から夜のほうがすき もっと細やかに 動いている光の粒子を 眺めたい 窓越しにでも ほら 手足がしびれても 誰が呼んでもふりむかない そういう認識で合ってる 憧れはいつまでも遠い この胸の底 強い意志の他に 持ち合わせているものは 大気の波を知る弱さ 優柔不断は前世から そう言わないとやってられない 寒そうな頬 君は他人に壊された心が 虫のようだと 小さく笑う ――君もその足で走ってゆけば遠くへゆけるのに!―― 平らな視界 双方向へ伸びる銅線が まるで線路みたいです 先生 この青いのが スイッチだということは判ります 僕にも押すことが出来ました だけど オンにしたのかオフにしたのか 判らないんです 先生 冷たい窓には誰かの手形 息を吹きかけては 興味深い絵を描くように 泣いている 金網で囲われた世界 100mも見渡せる カレンダーの中みたいな 隔離された町だった 赤や青の点々は 誰かの思想の破片 たまに発光するけど 使い道はないから すなわちゴミと解釈して まちがいない まちがいないです ---------------------------- [自由詩]降下もしくは落下する/アオゾラ誤爆[2009年4月19日21時52分] ぽんぽん 前に歩いている人が花を落とす 私はそれを拾うのは癪なので踏み潰して進む ああ夏が来てしまうんですね となりにいる人にそう言うと その人は この世の終わりという顔をして 爆発して 死んでしまった 私は坂道が好き だけど足が痛いのをがまんするのは嫌い 黄色か赤の自転車がほしい すこしでも遠くにいけるように 長く眠っていられるように こんこん 壁もドアもないのに音が聞こえたら 後頭部にすこしの刺激を感じる 私の後ろを歩いていた人は 土足ではどこにもあがりこめませんねと 私の心に砂をかけながら 清清しく 笑った 昨日散った花がなぜかまた咲いている さっきまでとなりにいた人の名前を 思い出せなくなった私は 仕方ないので 立ち止まって 泣いた ---------------------------- [自由詩]ディスタンス・インヴィジブル/アオゾラ誤爆[2009年5月1日20時59分] 世界地図を定規で測ると あなたとわたしを遠ざける この距離は五センチにも満たない この地球には海があって 広い広いそのどこかに 憧れているあなたの町が 浮かんでいる 上空に照らす太陽は今日も熱く あなたの手はきっと冷たく ふれる水はぬるく 初夏の風に なびく黒髪は甘く 香る 目を閉じると あなたがそばにいる気がした ---------------------------- [自由詩]sixteen/アオゾラ誤爆[2009年5月10日20時34分] となりの人が一歩踏み出す。 チュッパチャップスを舐めながら自転車並列で猥談するジャージ姿の男子中学生は信号を見ないし当然のように歩道に転がる真っ赤な苺にも気付かない。 明日が月曜日であることを憂えても憂えても飽きない十六歳と二ヶ月の女の子はすっぱくて甘くておいしそうなものが大好きなので買ったばかりのローファーが果汁にまみれることも厭わずに内臓みたいな苺を踏む、つぶす。 昨日観た映画のラストシーンを思い出すことが出来ない私は、今日が終わりになるのをただ感じる。葛藤だけが平等ですと旗をかかげて笑っているのは誰だったか。町が暗転する。電線がいやに目障りで、目を閉じ 一、二、三 と唱えた。 じりじり――かわいた熱が、肌や草木やアスファルトを焦がす。 バイト帰りの青年はカメラのファインダーを覗くと、さっきまで立ち止まっていた少女がしゃがみこみ、指で内臓を弄るのをとらえた。丁度ひざ上で静止している風、制服に映える白いふともも。 信号が赤になった。 母親に手を引かれ、少年は見る。 鳩の群れのように一目散に飛ばされていく人々の波。 私は見る。 じゅくじゅくと熟れた傷口のような、あるいは思春期のような果物の裸体。 少女はそれを、踏む、つぶす。 ---------------------------- [自由詩]少女たちの天体観測/アオゾラ誤爆[2009年5月27日22時01分] 群青がおりてくると 土は冷たくなる それにふれると からだじゅうが嘘のように固くなった すると、ひとりの子が 私はおんなのこです と言って すこし笑った 私にはよくわからなかったけど 先生も笑った だから私も笑った ★ 生まれたての星と 煙草のにおいのする 先生の鞄 真夜中の校庭に望遠鏡はよく似合う このへんは並木 このへんはビル街で このへんが天の川 図鑑は誰も持っていないけど 一人だけカメラを持っている ---------------------------- [自由詩]傾覆の地平/アオゾラ誤爆[2009年6月23日23時27分] タイプライターを壊した 夢見がちな小説家が 歩道に絵を描く 野良犬を蹴り殺した 隣の家の長男は 私に硬いキスをする 地球を手に入れたことのある 世界で一番不幸なひとが 尊く笑う かつて神と呼ばれていた 声のない民衆たちは きれいな白い布を着ている ---------------------------- [自由詩]白昼にきみが見ない夢/アオゾラ誤爆[2009年7月7日22時24分] 成年したてのきみは、 やっぱり煙草をすわなかった、 そのおおきなての、 骨のめだつ指のフォルムに、 白煙 似合うとおもうんだけれどな、 で と、 よくみえない顔 言うと、 だれの、だったか きみは顔をしかめる、 もっと近づいて ビールをすこし口に含んで、 きみは苦いとわらった、 コーヒーをすする、 白昼の四畳半 この距離感で、 なにもみえないくらいのまぶしさ また落ちてもいい、 あ、だめ ---------------------------- [自由詩]パーティーは終わらない/アオゾラ誤爆[2009年7月23日19時45分] パーティーは終わらない、軋んだ花で飾られた戦車に、飛び乗るなら、凍るような白い朝にしよう、クラッカーを買ってこよう、庭を壊そう、一緒に歌ってみようよ、晴れ渡った北半球の芝生に、横たわろう、星型のグラスで見るすべては、高架線をくぐりぬけていく、車窓に映る物語の結末を、しらなくても大丈夫だから、一緒にギターを聞こう、目を閉じて、骨の髄までとけるような、戦慄をおぼえよう、そして一緒にわすれよう、バスタブを真っ青にして、ネクタイをしめたままで恋をしよう、空を飛ぶような絵空事を、悪びれずにのぞんで、きっと笑っていようよ、まだ平気だと嘯いて、笑い転げてみよう、だから、一緒に音楽を聞こう、昨日世界が終わっても、パーティーが終わらない ---------------------------- [自由詩]たとえば呼吸をするように/アオゾラ誤爆[2009年8月8日18時43分] 動かして もっといたくしてもいいから すきと言ってくれたら 雪が降る 真夏の歩道に きみの影がないことが わたしの世界のすべてでも 祈っている 晴れた海は遠い空をうつして 言葉にならないように黙る 眠りを待つことに飽きて ひとつ手折る 枯れてしまうことはしっていました とか いいわけじみた反芻をして もう一度 ふれあうひとの温もりはしらない ただ熱すぎるその血が ほしいよ 巻き戻す 白昼の惨事には目をふさいで インクのにじむ あの日のふるさとに 帰る夢だけを見続けて 穴をあける そしてえぐる 傷つけたいよ だいすきなきみを ---------------------------- [自由詩]九月の獣/アオゾラ誤爆[2009年9月20日12時57分] 街灯は白んで路地を見下ろす 檻の中で眠るよりも コンクリートに背を預けて 何度指を切ったか忘れた さみしくない かなしくない 別に嬉しくもないが 手を叩く 子供みたいに 空白はいつも透明じゃなくて 機械的な動きで 私の餌が出来上がるのを ただ見つめるだけの日もあったね 赦しあおうよ 肉の味をつくるのに 必要な経験を あなたは持っていないから 私の鎖骨のあたりに触れて ぬるい唾液 意識を断った 笑おうと思えばできたよ いいわけみたいに生きているから 強弱のない信号が あなたに下手な嘘を吐かせる 手に取った微熱が 十分なほど浸みこんだら 朝焼けもふやけて 水になった ---------------------------- [自由詩]今夜はもう眠ろう/アオゾラ誤爆[2009年10月14日20時30分] 季節は私に従属する 冬になれば言葉をわすれ ぬくみをさがす動物になる あなたが安全な場所で ただろうそくを見守っている間に 私の四肢はもげ落ちて まるく にぶくなるんだろう あなたは季節に懺悔する 約束はいつまでも多岐に渡っている 涙が産んだ温度で あなたへの贈り物をつくろう そんなふうにやりすごしたい 日常だって背中の向こうだ ねえ絡めて 今すぐに 雪がとけたら何になろう あなたは知らん顔で言ったが 重大にふくれあがった 選択肢がまぶたを刺した 私は季節に従属する だからお願いします ぶあつい皮をいくつめくれば 流線型になれるか 教えて ---------------------------- [自由詩]二人芝居/アオゾラ誤爆[2009年11月8日21時58分] 呼吸を実感したくて 息を止めると きみはどうしたのと笑った どうもしてないよ ただ 死んでみたくなっただけ そう言って僕も笑った 昨日僕が鍵を閉めた 空調の整った部屋 まるい天井があまりに遠くて うつむいた こっそり泣いても バレないんだろうけどね 好きなだけ奪って 理想のフォルムになるまで 探し続けることもできるよ きっと二人なら だけどもう要らなかった 日記は綴じて燃やして捨てた 灰になる思い出を数えては 上昇する忘却の線 たどる僕らの脚はちぎれた 声なんて 置いてきたんだ 僕らは どこにも行かなかった 誰かの書いた脚本を 夢中で読んで眠る毎日 飽きるまでがこわかった 待つだけならば 壊したかった 傷だらけの両腕で やっと掴んだ世界の終わり きみは頬を染めて なにか言いたげに僕を見た 白紙の地図に針を立てても ふれていいのは心だけ 寒くて寒くて 凍えてしまうよ ---------------------------- [自由詩]意識の底/アオゾラ誤爆[2009年11月14日0時56分] 点滅を 毛嫌いするあなたに 会いたくない日曜日には 煙が遠くなびいて消える うそです、 と笑っても ほころばないこの摂理を なぞるのが下手だったね 記号じゃなくて疎通がほしい わがままな置手紙でも やぶらないで咀嚼をして わたしの腕や足が凍ると あなたの毛並みはいっそう燃えた 燃えて燃えて 燃え尽きて 灰すら生まなかったんだ まぶしいと感じたときに すべての国は朝になり 群青の雲に群がる ひかりの線が重なって 目蓋の中まで入りたがる こんなに育ってしまってもまだ 逃げ出すなんて思いつかない あんな真っ白な地平線 涙が出そうになったって 駆けだしたりしないよ 呼びなれた名前に もたれるたびに外れる螺子 弱くなったさみしいひと あとづけの意味すら思い出せなくなり すべってゆく冷気をなつかしんだ あ と、黙るのは 終わりの熱にうなされているから ひとりの時間をわたしは結ぶ 鳴らない電話も 優しい凶器だ 緞帳が おろされるように わたしはあなたの温かさを わすれたい気がしていて 幸福である事態を 極端におそれていて 安心なんていらなかった 横たわる膜の下 目をとじても知ってしまう ---------------------------- [自由詩]わたしの海は盲目/アオゾラ誤爆[2010年1月10日0時35分] 寝返りをうつたびに冷やされていく わたしには チョコレートの甘美さも ふとんのかび臭さもおんなじ 上手におよがしてください 貧しい味覚でもって あなたがたいへん口に合うのです はりあう誇りもないけれど突きやぶる腕なら すこしだけ持て余している ほくろをひとつ かき足して オリオンだねと 笑ってください あなたがすきな冬の温度も だいじにします 射止めてください ---------------------------- [自由詩]花畑までの景色/アオゾラ誤爆[2010年1月31日20時53分] とうめいさを いつまでも盾にしていられないので やぶり取られることに怯えている 肉の壁をおしつぶして いたみと寄り添い 静寂の根本までおちてゆけたらいい くずれかけた砂の橋も ほこりのかぶったケースの向こうだ ってこと 教わろうよ 川べりを糸くずみたいな細い光が照らして 色のうすい花ばかり集めたくなった ぼくたちに似合うかんむりが あればいいのにって 思ったから まっすぐに あるいてきたつもりでも ゆるやかに 逸れていて きっと目蓋をひらいたら もう月も傾くころ ---------------------------- [自由詩]It was a girl that can meet a brilliant world anyt.../アオゾラ誤爆[2010年4月17日21時30分] 神さまがいたらなんて考えない だってあたしは昔から 先生に嫌われていたから そういうことなんだろうね 笑いたいわけじゃなくて 泣きたくないんだって 気づいたとき あなたのことを好きなんじゃなくて ほかのひとを嫌いなだけなんだって 気づいた 星を探すために空を 見上げることなんてしない そこらじゅうが 見違えるようにきれいになったら 私はもっと汚くなる ---------------------------- (ファイルの終わり)