yaka 2005年8月12日3時56分から2006年11月21日1時35分まで ---------------------------- [自由詩]千 春/yaka[2005年8月12日3時56分]    千の春をおまえに    父と母の願いどおり    千の春をもって生まれてきたのか    よわむしのあなたに ひとつ    じぶんかってなあなたに ひとつ    おこりんぼうのあなたに ひとつ    くじけそうなあなたに ひとつ    わからずやのあなたに ひとつ    かなしいあなたに ひとつ    花を撒いて    撒きつづけて    それはいくらもあるわけじゃなく    それはちはるの涙で咲く    いつかきっと    あなたが水をやってくれませんか    ちはるが枯れてしまう前に                 2005.08.12 〜千春に〜   ---------------------------- [自由詩]れんげ/yaka[2005年8月18日1時44分]    きっとずっと昔から変わらないんだよね    れんげ畑に座っていたあの頃から    茜色の空は繰り返し    私を迎えてくれていたんよね    いつの間にか見なくなった    忘れたまま過ぎて行った    疲れ果てた気になって    独りになった気になって    変わりつづける自分にため息してたら    走り去る窓ごしに    とろけそうな夕日が広がった    ああ、これ    懐かしい、れんげ畑の夕暮れ            2001.07                  ---------------------------- [自由詩]歯ブラシ/yaka[2005年8月26日7時11分]   行ってらっしゃい、気をつけて   静かな朝の洗面所   ちっぽけなスペースに   無造作な歯ブラシ5本の安堵感   本日も良好、我が家は元気               2002.07.11 ---------------------------- [自由詩]ユメノハナ/yaka[2005年9月3日23時11分]    ユメに住めば 眠り浅く    ユメを食べて 満たされず    咲いたところで ユメのなか    カリソメの陽を浴びて    水面に映る蒼白い ヌケガラ ---------------------------- [自由詩]とりとめもなく/yaka[2005年9月23日2時30分] とりとめもなく 自分で仕掛けた目覚ましに えらそうに起こされる朝を用意する 午前8時11分 牛詰め30分の車両を 愛してもいないのに飛び乗る とりとめもなく 朝昼晩ごはんのように 机に積まれた書類をいただく 満腹感は無い 朝昼晩ごはんのように あなたにメールを送る 満腹感は無い とりとめもなく 与えられるだけ 生きさせてもらおうと 今さらながら再決定する 許されるだけ あなたを好きでいようと 今さらながら再度観念する ---------------------------- [自由詩]よく晴れた秋のグラウンドに/yaka[2005年9月28日23時05分] よく晴れた秋のグラウンド 100メートルのトラック 120パーセントのきみ 初めて見たような 険しい眼 逞しい足元 私は どこを向いていた 抱えきれない悩み 仕舞い損ねた願い 握りつぶした拳 きみは いつの間にか大きくなったわけじゃない よく晴れた秋のグラウンド 駆け抜けたあとに 私の知らない きみを見た ---------------------------- [自由詩]A課長との無言の会話/yaka[2005年11月9日22時48分]  吹かした煙といっしょに、行っちゃうかと思いました     薄くなりましたね、背中  このビルが潤うたびに、課長さんは枯れてゆきますね  決して幸せを期待できない結末に、突き進むのはなぜですか  薄い背中はむしろ愉しげに  郊外マンションのローンが終わる頃、ぼくはどこにいるだろうね  きみの言う結末の先の、もう削る必要のない場所で  のんびり煙草を吹かしているよ  そう言ったように見えたのは  もちろん気のせいでしょうけれど ---------------------------- [未詩・独白]詩は/yaka[2005年11月12日2時53分] 詩は 怒り震えるくらいなら 哀しみ狂うくらいなら 夢も希望も 神も仏も 明日も笑顔も 砕け散るくらいなら 詩は 絵空事をほざいていたい ---------------------------- [自由詩]ヨルノオトナ/yaka[2005年11月27日19時10分] スイッチひとつ 切れない 切らない? 眠れない 孤独のひとつ 抱けない 抱かない? 寂しくて パジャマのボタン かけちがえたまま ヨルの浅瀬で 上手に溺れて ---------------------------- [自由詩]ねぇ、サザえさん/yaka[2005年12月1日0時46分] ねぇ、サザえさん あなたの住む町の 空はいつも青空で 夜空には必ず星が瞬いて ご近所さんは誰も親切で 悪人なんて大して悪人じゃなくて ねぇ、サザえさん 人目を憚るようなわたしの秘密を どろどろした女の心を そっと打ち明けたら あなたはまるで宇宙人を見るように わたしを見るでしょうか ねぇ、サザえさん わたしはきっとあなたの町には住めない 平凡というかけがえのない幸せが ブロックのように組み合わさったあなたの町で わたしはすぐに退屈になり 飛び出してしまうでしょう だけどサザえさん 疲れきったこの街に住むわたしには あなたの茶の間の30分間が ぼんやりと必要なのです                2005.11.30 ---------------------------- [自由詩]愛する者へ/yaka[2006年1月2日11時59分] 覚えておいて もしもあなたが渇いた手で 誰かの明日を奪うなら 私はあなたをこの身に打ち付け 奈落の底へ逝くのだから 忘れないで もしも誰かが狂った手で あなたの明日を奪うなら 私は容易く鬼畜と化し それを地獄の底へ引きずり堕とすから 愛する者よ あなたがどうあろうと 私はあなたを生みました 2006.1.2 ---------------------------- [自由詩]淡 々/yaka[2006年1月8日16時03分] くり返す日々の中で 薄れてゆくものがある 流れゆく時間(とき)の中で 根を張るものがある 切なさが泣くことを止め 愛しさの泉になるように 狂気が走るのを止め 懐かしい空を取り戻すように 燃え尽くす今日より 灯しつづける明日を 教えてくれるのは 飽き飽きするほどくり返す 日々なのだと ---------------------------- [自由詩]おとうさん、という詩/yaka[2006年1月15日1時46分] おかあさん、という詩は書いた おかあさんがすっかり板に付いた頃、書いた おとうさん、という詩は まだまだ書けそうにない 聳え立つ壁を見上げながら 私はそう、思う とても近く、とても遠い 未だに、肩の力が抜けない けれど おとうさんという詩、を考えたとき その人の前で止めどなく泣く私を ただ黙って抱きしめてくれた 一度きりのぬくもりが 全てになる おとうさんなんて詩、書かないよ いつか真っ白な頭で私は その人と同じ、真っ白な頭で私は この壁を眩しく見上げながら やっぱりそう、呟いている ---------------------- 理来さん、落合さん、大分校正しました。 ちがうな〜と感じましたらポイント消してくださいね。^^; ---------------------------- [自由詩]その話し/yaka[2006年2月5日13時07分] その話し つい先日聞いたばかりの 昨今3度目のその話しに 実は相当狼狽えながら 初めての顔で聞いています いつもと同じ その点を残して このテーブルも それぞれの席も あなたの絶妙な、お茶の味も しゃんと伸ばした背中が ようやく見せる僅かな綻びは 遠いはずだったその日を 馬鹿な娘の目の前に 一気に連れて来たようです わたしの子もいつか 初めての顔をして わたしの話をくり返し くり返し、聞いているのでしょうね おかあさん。 ---------------------------- [未詩・独白]人/yaka[2006年3月26日11時22分] 母である前に 人です 女である前に 人です 陽子である前に 人です 母という 人です 女という 人です 恵子という 人です 母としての 幸福 女としての 幸福 直美としての 夢 人としての 真実 わたしは 男に愛され 女になり わたしは 子を宿し 母になり わたしは 意地をはり ナツコになり しかし最後は  人 へ戻ろうとします 男は去り 子は巣立ち がらくたばかり かき集めて 人はやはり ひとりだと 思うのです それは悲しいことではないと わたしは そう思います ---------------------------- [未詩・独白]けっこん/yaka[2006年3月29日0時27分] あなたと結婚しました やさしいあなたと結婚しました スーツの似合わないあなたと 缶コーヒーが似合うあなたと いっしょにハンバーガーをパクつける あなたと結婚しました あなたを産み育てた故郷と結婚しました あなたが捨てきれずにいる夢と あなたの背負ってきたしがらみと あなたの歩いてきた道のりと結婚しました やさしいあなたと結婚しました 哀しみ故にやさしいあなたと 弱さ故にやさしいあなたと やがて空気のようになるあなたと やがて錆びついていくあなたと やがて あなたの床擦れを煩わしく思いながら いい加減楽になりたいわと愚痴りながら 最後には あなたの亡骸にしがみついたまま なぜ先に逝くのかと 怒っているわたしがいるでしょうか ---------------------------- [自由詩]クラスメイト/yaka[2006年5月22日3時00分] 隣の席だった ろくに話したこともない あんたがある日、いっちまった いっちまった とオレは思った バイク事故だと聞いた いっちまうことなかった せいぜい、骨折の数本でよかっただろ ろくに話したこともなかった ただのクラスメイトだった すべて過去形になっちまった クラスメイト それだけで十分だった オレらのこころに、ポッカリ穴が空くには すごく大事な、忘れ物をした気分になるには それだけで十分だった ---------------------------- [自由詩]アイナンテ/yaka[2006年6月18日20時27分] 愛なんて見返りのない商売さ アタシはそういう母やってんのさ バカヤロウって抱きしめて ナミダなんかもみ消して 雨の日も嵐の日も弁当だけは欠かさないで 反抗期ってのと格闘しつづけ オマエが勝つ日が来たら 何処へでも飛ばしてやんのさ 愛なんて見返りのない商売さ アタシはそういう女やってんのさ アイしてるって百万回言って どうしてよって百万回泣いて シアワセよって笑いながら 束の間アンタの癒しになって 時間が来たら、帰るべき場所へ 帰してやるのさ 愛なんて見返りがないなんて たぶん嘘さ アタシはそれで生きてんだから ---------------------------- [自由詩]途中下車/yaka[2006年6月24日23時27分] 傾いたトタン屋根  乗り捨てた自転車  伸び茂った雑草  線路端  フェンスの向こう  風に揺れてる 「扉が閉まります」  目を伏せる  それはすぐに  忘れることができる  今日の業務に切り替わる  そこはまだ  降りる駅じゃない  フェンスの向こう  遠く揺れてる ---------------------------- [自由詩]ポイッ/yaka[2006年7月8日8時50分] プシュッ ごく その駅に着くまでに ちびちび 公私ともにお疲れ気味 庶務課A子さんには ほろほろ苦さと ほどよい甘さ ホームに降りたら 左手は腰 気持ち仁王立ち 缶々の底 一滴残らずゴックン ホームの上は曇り空 空っぽの缶々 分別ゴミの丸い穴蔵に ポイッ 曇り空と 庶務課A子も ついでにポイッ さてゆきましょか、ここからは ただのA子で。 ---------------------------- [自由詩]向日葵/yaka[2006年7月19日1時15分] 家中の窓が閉ざされても あなたの庭を暖めている 秋も冬も陽差しをあつめて あなたの庭を暖めている 大きなお世話と言われようが ずっとずっと わたしはあなたの向日葵でいる bunさんとのコラボです。 http://www.geocities.jp/nhny_123/c-himawari.htm ---------------------------- [自由詩]人の会話/yaka[2006年7月30日2時25分] 【その1】  基本は10として  8 でよい場合  5 で足りる場合  いやいや  0.1に砕く必要もあったりするが  0.001だともはや諦めたがよさそう  さらに  方程式を解くようなことも  角Aイコール角Dを証明せねばならないようなこともあるが  そんなこんなやっているうちに  縁側にちょこんと座る  まるい背中を見れば  美味しいお茶をそっと  ただそうっと差し出すような  そんな会話もできるように  なることもある 【その2】  「このバカ息子があ!」   は  「かあちゃんはお前のことが心配で心配で、夜も眠れないのよ…。」   の訳である  「もう、あなたなんか大っキライっ」   は  「もう、ほんとに鈍いわねぇ、さっさとプロポーズしなさいよっ」   の訳である  「どうぞまた、おこしやす。」   は  「もちろん社交辞令でっせ。そこんとこよろしゅう。」   の訳であり  「てめぇ、おぼえてろよぉ、このお返しはきっとさせてもらうからなぁ…」   は  「お返しするものなんて何ひとつ在るわけがございません。   もう二度と現れませんので、ボクのことなんかどうかどうか忘れてください。」   の訳である   いとあはれ ---------------------------- [自由詩]片想い/yaka[2006年7月30日3時02分]   あなたはやさしい   ずぶ濡れの私を拾い上げ   暖かく抱き締めてくれた   私はあなたの拾い猫   ポツリ落ちる溜息を掬うため   一瞬の寂しさを紛らすため   あなたの部屋の片隅に居る   愛しさの代わり   時折、か細く鳴きながら   いつの日か   この部屋の真ん中に   暮らす人が現れるまで                          2002.09.10 ---------------------------- [自由詩]ミルク/yaka[2006年7月31日4時28分] 無性に ミルク飲みたいよね あほらしいほど 真っ白な 照れちまうほど 優しい それを 大人やってると 無性に飲みたくなる よね 飲んだところで あたしのなかの灰色は やっぱり灰色なんだけどね ミルク 気休めでいいんだ ところどころ破れかけた あたしの中を 流れてよ            2006.03.22 ---------------------------- [自由詩]ワタシ/yaka[2006年8月22日1時37分] 頭を下げるワタシ カッコわるいワタシ けど本当のワタシは そんなとこにいない 本当のワタシを わたしはちゃっかり たとえば満月の夜に置いてある たとえば公園のブランコに たとえば詩織といっしょに ハードボイルドに挟んであるから 頭を下げるワタシを ワタシだと思い込んでいる課長を 化かしているみたいで ちょっと良い気分だけれど そういう課長もおそらく 本当のワタシを 日曜日の釣り堀に 置いてきていると思う ---------------------------- [自由詩]すれちがう/yaka[2006年9月16日8時45分] 駅までの途中 紺のひだスカート 髪はキュッと右上でくくり 鞄はぺしゃんこ ローファーに「ズルズル」言わせて 学校、なんてかったるい場所(とこ)へ しょうがないけど行ってあげる途中 そんなあなたとすれ違う むかしむかしのわたしと 夕暮れの途中 手押し車に連れられて わずかな買い物今日の糧 曲がった腰と 彩りの無い服 足音の無い足取り 庶民の味方のスーパーから ありがたいありがたい帰り道 そんなあなたとすれ違う いつか出逢うわたしと ああそれからそこのあなた、あなた、 世界も変えそうなビジネスバッグ プライドで仕立てたブランドのスーツ 世界で一番多忙そうに歩く男 あなたはもう 思い出にした人 ヒールのかかとひっかけた、ご機嫌斜め つまんないくらい完璧なリップライン 怖いものなんて有りやしない つんとすまして歩く女 脱ぎ捨ててきたわたし みなさんどうも、こんにちはさようなら またいつか どこかで・・・ ---------------------------- [自由詩]してやれることはなにもないので/yaka[2006年10月30日0時28分]  たとえばおまえがいっちょまえに  人生の壁などにぶち当たったとき  母親なんて無力なもので  ああでもないこうでもないと気をもみながら  弁当のおかずを一品増やしてやれるのが関の山  それはまるで、泳げもしないのに海に潜り  四苦八苦しながらなんとか  小魚を一匹捕ってくるのに似ている  おまえは陸(おか)で闘っているというのに  詰まるところわたしには  あげられるものはなにもないので  あるだけの時間をつかい  あるだけのココロをつかう  捨てることなら出来るけれど  捨てきれないでいた、おんなのゆめなどは  してやれることはなにもないくせに  心配しながら皺ばかり増やしている  叱りながら白髪ばかり増やしている  どれも空回りなのは知っている  無力な母親がすることといえば  ただいつまでも見守るだけ  今日、この道の曲がり角まで  明日、扉の向こう側で  そしていつか、遠い空の下で  見守りつづけるだけ                 2006.10.29 ---------------------------- [自由詩]話しをしよう/yaka[2006年11月5日15時43分] 話しをしようか なんだっていいんだ 最近ハマってるゲームのこと 社会の先生のこまったジョークのこと 実は英語が赤点だったこと リレーでこけたのはなんでか? ちょっとがまんしてる姉の横暴 好きなおかず 嫌いなタレント ほんとはゴメンって言いたかったこと できれば なあ 話しを聞いてくれる? 小学校の時 いっつも居残り組だったこと 中学の時 バレー部所属は1ヶ月だったこと 高校の時 化学で5点はさすがに言えなかったこと それから 選んできた生き方のこと ちょっとむずかしいけど 聞いておいてな おまえたちを抱きながら 選んできた生き方のこと 話しをしようよ いっぱい話してよ たわいもないこと だからどうした?ってこと なんだっていいんだ ココロはこんなにおしゃべりだから おまはこんなに笑うから わたしのココロを感じるか? おまえのココロを感じたいな そうだといいなあ いつだって いつまでだって 話しをしよう ---------------------------- [自由詩]よこがお/yaka[2006年11月18日17時15分] よこがお 見つめてる 暮れてゆく西の空 降りしきる窓の外 白熱電灯 照らし出す いつか よこがお 聴いてる 並木揺らす風 遠ざかる終電 カーステレオ 流れる あの日 よこがお さみしげに見えるのは わたしの勝手 となりでしあわせなのも わたしの勝手 そっと 手をつないで ---------------------------- [自由詩]ほんとうのもの/yaka[2006年11月21日1時35分] 不器用な指先の 気の利かない言葉の 温もりを 零してばかりいた あの日ホームで あなたは両手をポケットにつっこんだまま 素っ気ないさよならを言った 私の瞳が迷わぬように くり返す日々の 目立たない時間の 強さを 知らないままでいた あなたは静かに これまでもこれからも ただ黙々と歩きつづける だれの瞳も濡らさぬように 華やかな時の流れに 立ち尽くしたまま 今あなたの 不器用な背中がとても 欲しいと思う ---------------------------- (ファイルの終わり)