yaka 2005年6月2日23時40分から2005年8月7日16時26分まで ---------------------------- [自由詩]マギーさんの手紙/yaka[2005年6月2日23時40分]   国語は嫌いでした。   算数は嫌いでした。   さりとて体育は苦手でした。   モテナイ君でした。   9人兄弟の末っ子で、中卒でした。   情けなくてある日つい白状してしまいました。   ぼくはだめなやつです。   実は手品は下手な方です。   笑われました。   笑われましたが、楽しそうに笑う人もいました   ぼくはだめな人でやってきました。   だめなぼくを白状しながらやってきました。   しかし白状したのをいいことに、   ひとに投げたりはしませんでした   正しく白状すると肩が軽くなりました。   肩が軽くなると歩く力が沸きました。   今だから思うけど、   ぼくはだめだけど、   だめなぼくをほっぽらかしませんでした。   ぼくの手はぼくが握っていました。   そうして今、好きな手品で生きています。   下手だけど好きな手品で笑わせます。   笑って楽になってください。   肩の荷物を下ろしてください。   ホントの強さを持つために。                 2004.12.26 ---------------------------- [自由詩]きみが生まれてから/yaka[2005年6月7日23時55分]  それをさせてくれるのは友人でも恋人でもなく  きみが生まれてから  したことのない努力をし  したことのない我慢を覚え  優しさについて 事あるごと考え  煩わしい毎日をどうにか越えている  それを与えてくれるのは友人でも恋人でもなく  きみを抱きしめる時  命の愛おしさと  命の底力が  薄っぺらな胸の中で  力強く育っていく  きみがいつか  やさしい笑顔の大人に成るとき  わたしはやっといっちょうまえ  みたいな顔になっている                   2004.05.21 ---------------------------- [自由詩]静かな雨/yaka[2005年6月11日23時12分] 静かな雨が かさついた街を 音も無く濡らしていて それを見つめる かさついた瞳も濡れていって 静かな雨の 音の無い雨音を 傘の花が 走り去る車輪が 拾って行って それが鼓膜から 身体中へ沁み込んできて 潤っていく もう一度 花開く             2002.09.16 ---------------------------- [自由詩]狂 愛/yaka[2005年6月12日15時47分] 自分しか愛せないその人は 満足そうに笑いながら いつも眉間に皺があった 固く閉ざした プライドの扉の中の 鋭利な孤独で 冷え切った掌で きっとワタシは 壊されていたかもしれない きっとあのまま 壊れてしまいたかったのかもしれない 今 惜しげもない愛の中で                  2005.05.22 ---------------------------- [自由詩]狂 花/yaka[2005年6月15日2時11分]  可憐な花の狂い咲き  醜いですか?  愛しいでしょう  あの恋慕の試練から  身を守る術を  無垢な胸は、知る由もなく  狂った瞳は  もう彼の人しか映さず  狂った唇は  思う存分、愛を詠い  しだれ柳のつれない悪戯は  それはそれは不運だけれど  花冠に姿を変えて  狂花はきっと  最も正気な瞬間に  最も幸せな恋道を  沈んでいったのだと思います。          〜オフィーリア発狂〜              2002.09.24 ---------------------------- [自由詩]シービスケット/yaka[2005年6月17日20時45分]   失望を蹴散らし   土煙をあげ   何度でも駆け抜けろ   轟かせ、蹄の音   打ち鳴らせ、その道   燃え立たせ、灯し火   巻き起こせ、疾風(はやて)   なびかせ、タテガミ   呼び戻せ、誇りを   褐色の背に   復活の道を   灯し続けて、走れ              2004.02.03 ---------------------------- [自由詩]カフェ/yaka[2005年6月18日17時00分]   日常の扉から ちょっと寄り道して     いらっしゃいませ   荷物をお預かりしましょうか   溜息をお預かりしましょうか   洗い晒しのジーンズを着るように       あなたの速度でおくつろぎください                   2002.06.29          〜The earth caffe Hさんへ〜 ---------------------------- [自由詩]おぼろ月さん/yaka[2005年6月19日0時55分]  しみったれたあんたの背中  パンと叩いて  さよならしてあげる  なんてらしくもない小気味良さで  バイバイ  ヘッドライト後にして  なんとか見上げた空の横っちょ  さっきから見てたでしょ  おぼろ月さん  精一杯隠したもの  ぜんぶお見通しでしょ  ならばついでに  このナミダ  預かってもらいましょ           2005.06.18 ---------------------------- [自由詩]花/yaka[2005年6月19日14時15分]  誰も気付かない  雑草に埋もれながら  濁った太陽を浴び  くたびれた大地に根を張り  凛と  揺れる花びら  意地っ張りな道の端  譲れない生き様  誰も振り向かない  雑踏に埋もれながら  枯らさない  この胸の花           2005.06.19 ---------------------------- [自由詩]究極の選択/yaka[2005年6月24日2時44分] 仕事とわたし どちらが大事 って迫ったら 迷わず 仕事 って答えないでね せめて3杯目のコーヒーまで がんばって悩んでね さんざん悩んだあげく さも苦しげに 仕事 って答えてね まちがっても おまえ って言わないでね カッコイイのは 仕事のことを生き生きとグチるあなたなんだから もしもわたしがいなくなったとき なにもないあなたなんかカッコわるいだけだから だからどうか けれどどうか 3杯目のコーヒーまで 悩んでね               2005.06.22 ---------------------------- [自由詩]夜行列車/yaka[2005年6月24日2時45分]   誰彼の   人生の一幕を引き受けながら   幾度の夜をくぐり   幾度の朝に停まり   巨大な車体は   物悲しくも   満足げにも   重々しい溜息を吐いている            2002.10.05 ---------------------------- [自由詩]再 会/yaka[2005年6月25日4時56分]   そして何事も無かったように   日常は流れて行き   そこに何事も無かったように   あなたは立っていて   拍子抜けのふたりの間に   静寂だけが そっと   微笑んでいた       2004.01.15/2005.06.25推敲          ---------------------------- [自由詩]街/yaka[2005年6月29日23時53分]  立ち止まる午後  見上げる空  見下ろす街  切り取った直線のシルエット  時は規則正しく歩き  赤で止り  青で進む  直線の上  歪んで転がるもの  わき目に時は行く  ビルに映る空は、遠い             2004.12.18 ---------------------------- [自由詩]罪 海/yaka[2005年7月2日1時20分]   無限大じゃないこと   見ないふりして   止められなかった   蛇口をひねり続けた   温かいものが注ぎ続けた   わたしが眠るとき   ひとり壊れていた   ぽたりぽたりと鳴いていた   残るのはやさしい海   絞り取ったわたしの罪 ---------------------------- [自由詩]見つめている/yaka[2005年7月9日2時12分]  すべての扉を閉ざしても  あなたの底から  見つめている  あの日確かに  善と悪の種を抱き  母なる海から  夢も絶望も  朝も夜も  混沌と在る空の下へ  あの日確かに  人の声を上げ  産まれ落ちた  あなたという  人が  目を背けても  フタをしても  痩せても枯れても  壊れても狂っても  あなたという  人が  あなたを  見つめつづけている         2005.07.09 ---------------------------- [自由詩]自画像の女/yaka[2005年7月11日0時18分] 砕けた背骨など 切り裂けた肉体など コルセットで締め上げて 美しく着飾れば 微笑むのは容易い 私は、強い女 人々の喝采も 百万本の薔薇も 救えぬ魂 あなただけに愛されたい あなただけに愛されない 私は、独りの女 ドレスの下で コルセットの奥で 狂いそうな血潮を キャンバスに乗せ 綱渡りで呼吸する 私は、自画像の女     〜フリーダ・カーロ〜           2003.01.11 2003.07.25 2005.07.11    ---------------------------- [自由詩]しあわせ/yaka[2005年7月18日7時54分]  しあわせは  すりぬける風  ひとときのやすらぎ  明日のことは  わからない    しあわせは  すくいあげた水  たやすくこぼれるけれど  歩けるぶんだけ  あればいい    しあわせは  ほこらしげな砂山  風にふかれきえるけれど  そこに確かに  ありました           2005.07.17 ---------------------------- [自由詩]そうじ婦/yaka[2005年7月18日10時14分]  ゴシゴシと  ゴシゴシゴシッとこするのは  やんちゃ亭主のつみなき笑顔  よっこらしょ  どっこらしょっと空仰ぎ  にらみつけるは家出息子  ルンルンと  ルンルルルンと鼻歌は  こずかいにこにこ孫の笑顔  ぎゅうぎゅうと  ぎゅうぎゅうぎゅうっと搾ったら  出て行かないかな母の床擦れ  黙々と  ただ黙々と腰まげた  薄幸そうな背中ごし  へそくりにんまりこれナイショ               2005.07.18 ---------------------------- [自由詩]たびびと/yaka[2005年7月20日1時11分]  あの分かれ道  右へ流されてみることが  あの分かれ道  左へ巻かれてみることが  できずに  心のまま  選び進むほど  安息を諦めた者が  またひとり  雑踏に消えてゆく            2005.07.20 ---------------------------- [自由詩]リングの外/yaka[2005年7月23日6時10分]   ++栄 光++     栄光が終わった日     あなたはそれを     さっさとアルバムに貼り付け     グラス片手にひと晩眺めて     あとは戸棚に置いたっきり     今日はもう     今日の風に吹かれている   ++プライド++     ひとのコトバに打たれながら     ひと目に晒されながら     這いつくばっても     真ん中は退(ど)かない     プライドは     あなたの中に生えている   ++すきということ++     どんな場所でも     どんなカタチでも     共に在りさえすれば     無邪気に笑ってるあなたは     バカみたいで、カッコヨイ            2005.7.24       ---------------------------- [自由詩]旅 路/yaka[2005年7月30日22時22分]  燃え上がれば  燃え尽きるということ  永遠は  波が攫ってゆく  旅立ちは  だれもひとりで  雨に濡れる肩は  やはりひとりで   あの日のふたりが  波間に揺れて  いつまでだって  揺れていて    わたしまだ、旅の途中        2005.07.27      ---------------------------- [自由詩]凛 々/yaka[2005年8月1日0時05分]  容赦ない夏の  どこかの軒下で  わずかな風を拾い集め  リンと鳴ったところで  気休めなのだろうけれど  気休めに救われる  瞬間もある  声にならない声が  遠くから鳴り続けている  それはたとえば故郷から  古い段ボール箱で届けられる  何が変わるではないけれど  それはわたしが独りの夜も  りんりんと鳴り続けている 2005.07.30             ---------------------------- [自由詩]浮 船/yaka[2005年8月7日5時09分]  許される時知らず  流れ着く場所知らず  其の手の瓦礫  其の血の痛み  乗せたまま  時を越え  流れつづける浮船の  哀しみ ---------------------------- [自由詩]武田さんの歩き方/yaka[2005年8月7日16時26分]  金八先生の股下が  あと3センチ長かったら  どことなく銀八先生  101回のプロポーズが  あと3ミリ男前だったら  がんばって91回のプロポーズ  かっこうよさの  遥か遠く彼方より  やってきた男の股下  今吹き抜ける龍馬風  とは気のせいでしょか  あゝ 武田さんの歩き方                2005.08.07   ---------------------------- (ファイルの終わり)