松岡宮 2019年6月28日22時33分から2021年9月25日23時29分まで ---------------------------- [自由詩]なめくじフェスティバル/松岡宮[2019年6月28日22時33分] 天気予報は雨でした なめられっぱなしのなめくじが繁華街へ向かう あなたの名前は何ですか えっ 名前 何だろう 名前のない なめくじ かたつむりのように背負うものもない なめくじ ガード下で のたうちまわる なめくじの群れを 子どもは 見ては いけないよ 身軽なその身体をカーブさせて 空を見上げる なめくじ ためいきの なめくじ 忸怩たる思いの なめくじ じめじめした場所を好む なめくじ (きらきら きらきら) 綺麗なお花が大好きで お花のそばに近づいては花びらを食べてしまい お花に嫌われる なめくじ 駆除の対象となる なめくじ だけど 泣いてはいけないよ 涙には塩分が含まれているからね そんな なめくじだけど 楽しみがある 今夜は役所で「なめくじフェスティバル」があるんだ 野外でビールが飲み放題なんだ ただ酒飲むぞと地下通路を這いずる数百のなめくじ 酔っぱらって傷をなめあうなめくじ 身体のほかには何も持っていないから 共食いするしかない なめくじ 天気予報は雨でした なぜか塩分の混ざった雨が降ってきた (ざあざあ ざあざあ) はい こちら警備室です フェス会場のなめくじですが 全滅です 本部 どうぞ ママ この地下通路はどうしてきらきら光っているの それはね 貧しくても心の綺麗な人たちがたくさん歩いた道だからよ その方たちを祭るために  こんど 花壇を作るのよ 一度でいいから キスがしたかったでした https://youtu.be/yrofggle9cM ---------------------------- [自由詩]郡山ヨーク開成山公園/松岡宮[2021年8月9日9時18分] ステイホームの重い雲を見上げながら 仕事のついでに郡山に出向いた 賛否両論で割れる早春の空 聖火リレーの案内がくくりつけられていた大通りを ひとり 歩き続けると スタジアムのある大きな公園に出会う ヨーク開成山公園というらしい 池のほとりに犬の散歩の人々 走り回るこどもたちの歓声 枯れた薔薇園はこれから咲く準備をしている 樹齢120年を超えるソメイヨシノは その長い枝で空をかき抱くように 公園の堤の上で軽くしなだれている ぽたり 肩に雨粒 何かがバトンを渡そうと している ---------------------------- [自由詩] 攻撃性/松岡宮[2021年9月25日23時29分] 熊笹の獣道を誰かが歩く うっかりと穴を踏み抜く ガサ 滝つぼに落ちたあと爆発音がして 誰かの身体はもう粉々 自分のなかにはそんな穴があって 胸に手をあてたとき 大きくもないその手はすでに殺戮を繰り返した手だ ガサ ガサ 雪解けの斜面を這いずる水音 攻撃性の蛇が躍りやまない 神さま 非力をありがとう 誰かを殺めることが不可能な そんな 非力をありがとう ---------------------------- (ファイルの終わり)