完備 2017年7月9日18時37分から2017年7月19日8時22分まで ---------------------------- [自由詩]names/完備[2017年7月9日18時37分] それだけが見える ということが、あるのか かつて、私であった人の 私へ曳かれる眼差しと 交わる、畸形の花 びらに似た、包装紙 いちぶ尖ったアルミ缶 ゴミやゴミが裏返り、 「眠るように」という 直喩のうちに、「眠る」私へ 伸ばされる かれの身体が裏返り、 まぼろしを 告ぐるはやさしい同型射。 畸形の花々のうちに ふつうの、雑草のにおいを覚え 私はここで息絶えていい かつて、それだけが見える という、「それ」を、 呼ぶためにあった名前よ いまここで、お前が 意味するまぼろしを見せてくれ ---------------------------- [自由詩]coarser/完備[2017年7月17日19時56分] かれからの手紙のなか 砂埃のむこうを 夥しい自動車が過ぎて行った 何番目に僕がいたでしょうか と、かれが問う 直前の ぐちゃぐちゃと潰された誤字を 読むことはできなかったが わたしたち、と言えば 規定される範囲が まだ、あるなら わたしたちの心象風景は 細部を失っていく かれもわたしも、きみを、きみと呼ぶ きみは、ローソンが 固有名詞だと言い張った この町の大体はローソンの窓に映る とも、言った かれからの手紙のなか 砂埃のむこうを過ぎて行く 夥しい自動車、それらが 本当に自動車か わたしはときどき、判別できない ---------------------------- [自由詩]irrational/完備[2017年7月19日8時22分] きみは√5を演じた。 えいえんの数列をとほく見つめて 限りあるいのちを限りなく近付けていく。 冬生まれのかさぶた、と 言ったの? きみの生まれた日が 《最初のさんけた》 という『言葉』で伝えられたとき 演じる私に演じよと差し出されたてにをはを ひとつひとつ拾ってくれて、本当にありがとう。 怒りをしらないきみの右目が 『数字』を知っていく日々に 左目だけは数を見つめていた。 いつか私はきみに無理数を教えたけれど きみは「かなしい」と思い、右目で恋をした。 《さいしょの三桁》 は、幾度反復するのだろうか などと問うこともせず 《さいしょのさんけた》 を、愛したまま、 きみの左目はえいえんの数列が 銀河の果よりも続く姿を受け入れている。 ---------------------------- (ファイルの終わり)