渡辺八畳@祝儀敷 2017年6月13日17時11分から2018年8月25日17時29分まで ---------------------------- [自由詩]夕陽に顔面/渡辺八畳@祝儀敷[2017年6月13日17時11分] 長い黒髪 風にゆらめかせ 女子高生 夕陽を望む 滑らかな曲線を描くシルエットが 逆光によって赤い校庭に写し出される 女子高生は ゆっくりと こちらを向いて その顔面が落ちる ストンストンと真っさかさま一直線に落ちる 何枚も落ちる止まることなく地面に落ちる 落ちて入れ替わって落ちてこちらを見つめてくる顔面は無い 落ちる落ちる落ちる奇術のマスクのように落ちる 落ちる落ちる落ちる滝のように目まぐるしく落ちる 静止した胴体と反して次々変わる顔面の状態 周りの風景もいつの間にか激しく変わりだす 空は絶え間なく256色に移り変わり 早送りのよう雲は飛び月陽星々は回り続ける ついに女子高生のハイソックスの縁から虹色の水が溢れだし 爪はどんどん伸びていって蛇のようとぐろを巻いていく すべてが落ちて変わって飛んで回って動いて暴れて暴れて暴れて 百面相の顔面は険しい山を盛り積み造りあげているが ただひとつ女子高生の胴体だけは 静止して 動かない それ以外の全世界は恐ろしい速度で変化し続ける ---------------------------- [自由詩]余裕は無い/渡辺八畳@祝儀敷[2017年6月15日14時06分] スクランブル交差点のあちらこちらで 余裕無い人達が両手をぶるぶる すれ違い行き交う人の流れの中で 置き石のよう立ち留まり焦っている 黄信号 腕の残像 照り返る熱気 鳴り重なる足音 靴底の硬い音 四方に主要道 各斜めに細長いビルが乱立 摩天楼は濃密に空を埋めていく それらの行間を人々の群れ塊は 石の裏にひっついているような 湿った虫のようわらわら進む だけど余裕無い人達だけは足が固まったのか 前に進めずぶるぶるぶるぶる クラクション 排気ガス 赤信号 日射に溶けるアスファルトはゆっくり垂れる 横断歩道は縞模様 各斜めに辿り着き 人々はざわつく午後一時 ゆらり人の流れに乗って 平穏にやり過ごせばいいものを 余裕無い少数の人達 彼らはその場にすくんでしまって 巨大なスクランブル交差点に点々と点在 紅潮した顔面に汗だけは絶えず噴き出ていて 無用の運動 ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる 男も女も老いも若きもいる カロリーが消費されていく 眼球は小動物のよう泳ぎ狂っている 一体全体の大渋滞に騒音ばかりが増していくが ただただ物も言えず移動もできず手を振るだけ 手のひらを下向きに手首を軸にして往復するだけ 轢かれない轢かれない 余裕無い人達 目立つ目立つ 道路に立って焦るだけ 轢かれない轢かれない 車は進めない 余裕無い人達が要石のよう そこに立ち止まっているから そこから動けないでいるから ---------------------------- [自由詩]ある夜の思い出/渡辺八畳@祝儀敷[2017年6月18日0時51分] 子供たちと浜辺を歩いた 漁港の電球は強くて 横に並んだ僕らの影を 黒い波にくっきりと映していた 夜の散歩に子供たちははしゃいでいた 僕は海側の一番端にいたので きゃっきゃ舞う子供たちは 逆光で真っ黒に見えた 眠くて少しとろんだ目をしながら 僕は飛びまわる影たちを眺めた 子供たちは冷たい海の水に その手を入れてはつめたぁいと喜んでいた 濡れるからあんまり深く入んなよと僕は言った 波は幽かに重い音を立てていた ---------------------------- [自由詩]解体/渡辺八畳@祝儀敷[2017年6月20日19時23分] 無数にドライバーを突き刺され 美しきあなたの肉体よ 鋼鉄の逞しき肉体よ それが端から崩されていく 何百人もの工員があなたの上を這って いやらしく群がっては蠢いて そしてみずみずしい肉体を剥ぎ取っていく 指や足の肉片が 横たえるあなたよりも高く積み上がり 赤き血と粘性の重油が混じりあっては垂れる ああ、美しきあなたよ 長いまつげをぴんと張らせて 最後の時まで凛としている 肉体のいたるところに穴が開けられて 秘めたるモーターにもメスが入れられる 艶めかしく汁したたる動力よ それさえも今では取り外され がらんどうになったあなた ああ、あなた、あなた ついに頭部だけとなった 日に照らされ 鈍く反射する首の断面には 残されたボルトが傾いている ああ、あなた、あなた 崩されてもなお美しく 切り離された鉄板一枚一枚までもが艶やかで あなた、あなた 巨大な鉄球が勢いよく振り下ろされ 途方もないエネルギーがあなたに直撃する あなたの肉体は破裂するが如く一瞬で砕け散り あなたの破片は四方八方に飛散し あなたは一瞬にして消え去った もう何も語らない ああ、あなた それでも美しい ---------------------------- [自由詩]脳の中で/渡辺八畳@祝儀敷[2017年6月25日13時41分] 美少女を 殴って 頬骨を折る 脳の中で。 美少女を 蹴って 腰骨を割る 脳の中で。 半透明な両手で きめ細やかな肌のかよわい首を絞める どす黒い痣が残るほど強く強く絞め上げる 塞ぎ止められた血流が押し返してきて 瞳は飛び出すほどに大きく開かれるが 力はゆるめられること無く更に更に 指が深く喰いこむほど強く絞め上げて 美少女は断末魔もあげず口元を震わせている 堅い首の骨が砕けた感触が鈍く伝わってきた 脳の中で。 真っ白な部屋。窓も扉も無い。 その隅に体育座りのかたちをしている。 着替えたことのないパジャマはあかで汚れていて、 ほほをつたってよだれが垂れている。 ひざに頭蓋がうずまっていて、 灰色のパジャマによだれをつけて、 いまがいつだかもわからない。 美少女の腕の真ん中を踏みつけて 透けている爪を喰い込ませながら 美しい手の平を乱暴に持ち上げ てこの原理で一気に骨や筋ごと折る 馬乗りになって腹を潰しながら 赤く腫れ上がるまで顔面を殴り続け 眉間へも垂直に拳を跳ばし 確かな感触に自分の性器が激しく反応する 脳の中で。 ぷっくりとした尻の肉をナイフが往復するよう斬りつけて 血や体液が傷口から滲みだしズタズタになった後に 渾身の力を込めて平手打ちを響かせる 脳の中で。 つつましい乳房に太い針を何回も抜き刺しして 穴だらけになったところで皮膚をつかみ剥ぎ 中の脂肪を思いっきり握って引き千切る 脳の中で。 膣に裸電球を無理矢理突っ込んで この時点で既に膣壁裂傷を起こしているが 構わず半透明な足でかかと落としを喰らわせる 中でパリンとはじけ割れた音がした 脳の中で。 ぐったりした美少女のつややかな長い黒髪をむしり取っては 醜く禿げた額のその下にある喉に奥まで手を突っ込み 荒く抜いた髪の束を押し詰めて窒息させる 脳の中で。 事果てた美少女は 傷だらけとなった体から解かれて 空高く昇天していく しかし、 脳の中。 天は頭蓋の内側であって その縁を沿ってまるで輪廻転生のように 美少女はまた現れて そして殺される 脳の中で。 いっさいの抵抗もしない美少女を 半透明な四肢でいつまでも繰り返し虐殺して 表情だけは完全に透明なのだが それは興奮が抑えられず笑いが溢れかえってしまっている 脳の中で。 ---------------------------- [自由詩]kissはチョコの味/渡辺八畳@祝儀敷[2017年6月30日4時49分] 模型のようなチョコレート工場が頭の上に浮いている 私の身体は検体かのよう堅いベッドに固定されている 七色の熱電球が工場を派手にデコレーションして 轟々鳴る機械音は蛮人の儀式のよう響き渡っている 外を通過するトラックのライトが部屋の壁を刺す おもちゃサイズのチョコレート工場はまるで 亡霊 工場に眼球などあるはずもないのに 私が微細な動きさえもしないよう 無機質のそれは冷徹に見張ってくる チョコレート工場だというのに陽気さはひとかけらもない 壁面の鉄板には呪詛が刻まれているよう錯覚してくる 血液が消えていく 身体は動かない かわいらしい大きさとは裏腹の暴力的な機械音は 生物を命あるまま砕いているかのようで 変わらず鮮やかに光っている電球は 工場から漏れ出た屍の怨念ではないだろうか 首を回して目を逸らすこともできない 私は生きていないかのよう 暗闇に薄く見える自室のカーテンや天井たちは 昼間と全く変わらない様相で静かに眠っているが 対して機械音は容赦なく増していくばかり 存在感は異空の穴のよう重く その一点だけが歪んで見える 血のようなチョコの臭いはいたずらに鼻腔を刺激し 体躯を真っ直ぐに伸ばしている私は蝕まれるよう犯される心地だ 筋肉が収縮する 心臓だけが興奮している こわい 浮遊している工場は 化物のような金属音を急停止させたかと思うと 鉄門を開放し中から尾を引いて 白肌の魔女が出てきた 発光しているかのようなブロンド髪と青い瞳が 動けない私の顔を捕食するかのよう撫でる 魔女の口にはできたての小さなチョコがくわえられていて そのまま私の上に飛び乗り 甘いキスをした 視界さえも消えた ---------------------------- [自由詩]手はつないで/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月8日12時11分] 宇宙の裏側にいこう この世にいると君はあざだらけだから 僕も泣いてしまうから 狭いけれど一緒にそこへ行こう そこで背中を合わせて座ろう 手はつないで だけど顔は合わせずに 空からの夕焼けに照らされて 二人に陰影が差す 電車の通る音が静かにこだまする 銀河は二人を残して廻り続け 超新星爆発が空間を打ち震わせる 何にも邪魔されず 二人 背中合わせに座ろう 手はつないで だけど顔は合わせずに…… ---------------------------- [自由詩]豊胸マリア様/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月10日1時33分] Silent night 聖夜の修道院 Sing hymn 子供達が讃美歌を歌う ああ この一時…… 僕の耳からは讃美歌がただ漏れ 全神経を眼球に集中させている! ああ 豊胸なシスターさん 目をつむって讃美歌を聞く君に釘付け 「無礼者?」って怒鳴られそうな僕の目には 君はマリア様に見える Finish singing 歌は終わって Musical 劇が始まる ああ この一時…… キリスト誕生なんてんなもんどうでもいい! 僕はイエス様よりマリア様がいい! ああ 豊胸なシスターさん 君が拍手するとそのおムネが上下に揺れる 胸元の十字架が他のシスター達より おっぱいで前につき出ている 神に仕えるシスターが 僕に仕えるようになり その豊かなおっぱいを 僕だけのものにしてくれたら いいのになぁ…… 窓の外では雪が降る その白さから母乳を連想してしまう そしてその黒い修道服の下には ピンクの乳首があるのだろう ゼウスもけっこういいことすんね あんなnice body にしちゃうんだから 神様仏様こんな邪な気持ちで 修道院に来てゴメン だけど本当にボイン ---------------------------- [自由詩]神秘よさようなら/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月11日20時14分] 魑魅魍魎不可思議は もはや 幻想の中でさえも朧げで 血も吐けない 死に体 蓬莱よ 月の光 コロニーのダイオードで滅された 神秘よさようなら 貴方達を残して 人間は進みます ごめんなさい さようなら 愛していました だけどさようなら もう会えないでしょう だけど、どうか怨まないでください 兎は屠殺 少女は焼殺 月の都はブルドーザーで均され崩され 岩だらけ 風も吹かないその地には 鮮やかな星条旗が凛と突き刺さっている ---------------------------- [自由詩]雪/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月13日20時56分] 雪は音を吸い 空間は静寂する 踏まれた雪は含んでいた音を漏らし ぐもっ ぐもっ ぐもっ と音をたてる 雪は彩度を吸い 空は鈍色になる 彩度を吸った雪は重くなり 空から落ち 地を白く染める 音は無く 空は濁る 山の斎場からは煙が一本 すーっとまっすぐに昇っていた ---------------------------- [自由詩]神秘よさようなら/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月16日23時29分] 魑魅魍魎不可思議は もはや 幻想の中でさえも朧げで 血も吐けない 死に体 蓬莱よ 月の光 コロニーのダイオードで滅された 神秘よさようなら 貴方達を残して 人間は進みます ごめんなさい さようなら 愛していました だけどさようなら もう会えないでしょう だけど、どうか怨まないでください 兎は屠殺 少女は焼殺 月の都はブルドーザーで均され崩され 岩だらけ 風も吹かないその地には 鮮やかな星条旗が凛と突き刺さっている ---------------------------- [自由詩]布踊る北のかなたのこの塊には  〜あほいすぃ「械躰神書」から〜/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月18日21時59分] 流れゆくあなたのすべてを抱きしめていたい たとえそれが崩れゆくとしても 明星光る夜の夜 怪しげに光る塵と砂 あなたの目だけは無限の宇宙の底面をのぞくように 地球の真ん中のごった煮の体 艶(つや)やかに過ぎていく時間には二人はふくまれているのだろうか ねぇ いつからこんなになっていたのだろう まるで麻薬のように 二人溶け合ってしまいたい ダイオードの光の縁のカラにつつまれて 少しばかりの血のお慰み 無限のチューブ あなたのもの 狂っているのは周りの空気 あなたの意識に「人」という名の概念はあるのかしら なかったとしても愛は押し流れ あなたの頭脳の虫達にやすらぎをあたえていく ねぇ いつまでもこうしていたいのよ たとえあなたの体が 二人腐っていったって 無限のあなたの瞳に体焦がされて ねっとりとした感情のおもてなし 流れゆくあなたのすべてを抱きしめていたい たとえそれが崩れゆくとしても 流れゆくあなたのすべてを抱きしめていたい たとえそれが崩れゆくとしても ---------------------------- [自由詩]こけし/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月20日23時09分] 上品に澄ました顔のこけし こけし ほほえみながら くるくる 軸を中心にしてこけし くるくる 和洋折衷な旅館のロビーで 置物達の中に並んでこけし くるくる くるくる かわいいこけし くるくる 小さな男の子がこけしを見る 回る台座にも乗っていないのにこけし くるくる じっと見つめている 古時計がぼーん ぼーんと鳴った ロビーに窓はひとつも無く 換気扇も動いていない ロビー全体をほこりが薄く覆っていて 棒状の蛍光灯がじじじと照るだけ 両端に続く廊下は先が無いかのよう黒くて その中で非常口の人型だけが浮かんでいる 緑の彼は黙して見張っているかのようで 真っ赤なロビーでこけし くるくる 男の子は他に誰もいないこの中で 回るこけしに目を奪われている 胴体の線模様がゆらりゆれて 細めた瞳とときどき目が合う それは男の子を誘惑しているかのようで くるくる くるくる ひとりでに回るこけし 動力などもちろんない くるくる こけし かわいいこけし くるくる くるくる 棚とこけしの底がすれて僅かに音が くるくる かわいらしく ほほえみながら 男の子の前で 回転し続けるこけし 木彫りの熊や市松人形 他の置物達は無機質然として動かないのに こけしだけはちらちらと男の子を見て 男の子を見入らせて くるくる くるくる 空気は乾燥している 自販機のビールは無視を決めこんでいる 合皮のソファは憐れんでいる 靴箱はもはや目を塞いでいる こけしはくるくる 誰もいないロビーの中で 男の子の前だけで 踊るように 誘うように 降ってもいないのに雨音が聞こえてくる くるくる くるくる かわいいこけし そして男の子 真っ赤なロビー くるくる くるくる くるくる くるくる くるくる くるくる お母さんが男の子の名前を呼んだ 我に返って、はーい、と返事をしたときには こけしはもう回っていなかった ほほえみだけは男の子に向け続けて 男の子は自分の家族が泊まる部屋へと帰っていった ---------------------------- [自由詩]桜散る/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月23日14時49分] まるで出血かのように 両耳から桜が吹き出して 耳の軟骨との摩擦音をたてながら 桃色の花びらは足元に散る 無理にでも平静を保とうと 目の前の私へ必死に笑いかける彼女 しかしその表情は崩れてしまっていて 留めようとしていた涙は 決壊した涙腺から溢れ出して 顔に貼りついた数枚の花びらを流した ---------------------------- [自由詩]現代詩「恒心」/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月25日12時33分] 300万もの脛毛の荒野 300万もの脛毛の荒野 300万もの脛毛の荒野 酸っぱい空気充ち満ちていた箱たちが 汗だくの肉溜まり又は骨皮を閉じ込めていた箱たちが その重い戸をついに封しきれなくなってしまった Spam! Spam! Spam! 尿詰めのペットボトルと大量の画像たちが 全壊した戸からブリュリュリュリュリュと漏れ出すと共に 最低な男たちが荒野に満杯となる くんかくんかでもしたら鼻が壊死してしまうほど 汚物の如き野郎共が垢を荒野に塗りたくる キター! キター! キター! 禿ちらかした頭皮を松戸市の民家にこすりつけろ! カラフルな鼻糞を虎ノ門の賃貸マンションに貼りつけろ! 路線は蜘蛛の糸のよう2783方向に延ばされていき! 複写された肖像画の大群が西や東をも汚染していく! 産まれた3Dモデルをまっ裸にひん剥いては! 素直な気持ちを曝け出してぐねぐねお人形遊びだ! 茶色な酋長が谷川の両端で跋扈し続け! 大気の辛さは高い疲労を誘発する! ダチョウの死体は墓の中でも炭酸飲料をかけられて! 陰では飴がばらまかれ人気なのはもみあげ味! 存在しない施設が地上のあらゆるを占めていき! 存在しない爆弾がはた迷惑に爆裂する! 現代詩よりシュールな事実は追求され続け! どこにでもしゃしゃり出てくる聖書にまとめられる! うおおおおおおおおおおおおおおおおお! 空色何色うんこ色! オウフWWWフォカヌポイWWWコポォ この醜く愉快な祭典の中で パカパカお馬のロゴマーク入りふんどしで踊り回っては 良識をスキージャンプで超えていく男たち 荒野は不可逆なほどさらにボロボロだ 世界中へコミカル下品な嫌がらせを拡散せんと暴れ続ける この卑猥で低俗な男たちを止める者は誰一人としていない だって 俺は嫌な思いしてないから 俺は嫌な思いしてないから 俺は嫌な思いしてないから ---------------------------- [自由詩]水底から空を/渡辺八畳@祝儀敷[2017年7月27日20時27分] つめたい水が流れ ゆられる水草たち 淡色 葉は白く薄く 沈んだ石は絶えず 千年晒され続け 削れる なめらかにすべるように 潤う瞳には 空 遥か天の先は遠すぎて 持たない腕を水の上 伸ばしてしまう 水面みなも澄んでコバルト色 透かす空はあまりに深い 陽の陰を見る ゆれる世界 心たちが踊るのを感じた 静かすぎる水の底 光散るその中 いつまでも仰いでいた 流れは留まること無いまま 万年ずっと命を侵し続けて 全てが抵抗などできない それが定めと言わんとするかのよう 無常の連続 湿った体では 空 めがけ泳ぐには重すぎるが 唯一つ持つ 魂を滾らすのさ 水底みなそこから湧いた泡が 水面向かい浮き上がるよう 求めるならば暗闇から 満ちる光目指し進むがいい 近づく熱感じながら最後の水を蹴り 今、空へ跳ね上がる ---------------------------- [自由詩]つぶれたカラオケボックス/渡辺八畳@祝儀敷[2017年8月28日18時42分] 県道沿いに転がる店の死骸 人影のなごりも蠢かず 静寂が壁を黒ずませている MIDIの安音源で 存在しない人の歌を歌おう 忘れられた空間に テレビ画面だけが浮かんでいる 僕は息を潜め 壊れたマイクを暗闇で握りしめた 手汗がじわっと滲む 外でトラックの通る音がした ---------------------------- [自由詩]卒塔婆を背負いて山をゆく/渡辺八畳@祝儀敷[2017年10月18日20時31分] 県道沿いの山は粘土質だ。 いつも湿っていて、 一歩ごとに靴底へべったりと張り付く。 私は墨染みた卒塔婆を背負っては、 暗き夜に忍び歩く。 夜露は私の身体をぬらす。 ぬれながら、泥で汚れながら、なおも忍び歩く。 木の葉の隙間をかいくぐって、 向こうの街から熱電球の明りが刺してくる。 トラックが轟音をうならせて県道を通過する。 鉄塊のようなその音がアスファルトに反響している。 卒塔婆は盗んできたものだ。 あまりにも古くて、朽ちつつある。 私に書かれている文字は読めなく、 まるで卒塔婆を這う無数の小さな蛇にしか見えない。 その卒塔婆を背負って私は山をゆく。 半分腐った草の感触が足を侵す。 湿った卒塔婆は私の背に吸いつく。 墨染の蛇たちは私を冷たく見下ろす。 街からの鮮やかな喧噪は葉で遮られている。 ねっとりとじめじめした山肌を踏みしめ、 闇に溶け込むが如く忍び歩く。 そして誰も見ない山奥に着いたら、 私はそこに深々と腰を下ろす。 草葉からの湿気でひどく息苦しい。 背中の卒塔婆を両手でがっちり掴み、 高々と上げた。 板目は月の光に鈍く答える。 私は卒塔婆を、墓に刺さっていたほうから、 文字の書かれている先のほうへと、 ゆっくり順々に舐めていく。 黒い蛇たちは私の唾液にぬれてつややく。 卒塔婆に付いた泥が口の中に入っていく。 泥は粘膜を汚していく。 ---------------------------- [自由詩]ありがとう/渡辺八畳@祝儀敷[2017年10月23日23時13分]  ありがとう  美少女がささやく  愛しています  ありがとう        僕は拳で殴りつける        美少女の身体は跳ね        顔面が赤く腫れる      よろり立ちあがり      みだれた髪     見つめる瞳は慈悲にあふれ     潤う唇は朱く美しく  ありがとう  愛しています  ありがとう  ありがとう  ありがとう  ありがとう  !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!  !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!   !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!       !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!          !!!!!!!!!!!!!!!!!               !!!!!!!!!!                   !!!!!!!!!!!!                           !!!!!!!                               !!!!                                  !                                  ・                                  ・                                  ・                                 口紅      肉塊はほほんでいる        うしろから聞こえてきた  ありがとう ---------------------------- [自由詩]氷の女王/渡辺八畳@祝儀敷[2017年10月27日19時26分] 時の流れなど感じていないかのような 安古いこのモーテルは中も狭い 下着もつけないままで 君はテレビを黙って見ている やる気のない企画物が垂れ流れている 俺はベッドに座り煙草をくゆらせる 君を間に挟みながら 煙がテレビの光で浮かび上がる 男優のにやけた顔も 女優の作り笑顔も すべてが画面の中で収まっている しかしその半分は 君に遮られてしまっている 映画館のようだ 俺は観客で 画面の中の世界には一切干渉できない 君は演者でもなく 観客でもなく 喘ぐ女優とそれを見て興奮もしない俺の その間に鎮座する影として存在する エアコンの風で君の長い髪がゆれるが その一本一本までもが スクリーンから飛び出る光を遮る 淫らな映画は歪な形に切り取られる 君は依然として動かずに すらりとした背骨を伸ばしたまま テレビのほうを向き続けている その姿には さっきまであれほど熱く伝わってきた体温は 幻だったかのように今は感じられない まるで氷のように 燃え上がるセックスをした後の君は居る 夜はまだ続く ---------------------------- [自由詩]埋めたてて/渡辺八畳@祝儀敷[2017年11月5日16時50分] 暗く淀む沼があって、 底のない沼があって、 死体でそれを埋めたてて、 若者達の死体で埋めたてて、 死体はどれも血まみれで、 瞳は濁って光が無くて、 なかには首が折れているのもあって、 そんな無残な姿をした死体達で、 それを一体一体ひとりひとり沈めていって、 暗い沼に沈めていって、 死体で沼を埋め尽くして、 その上に家を建てて、 家は小さくてかわいくて、 そこに若い夫婦が住んで、 笑顔があふれる夫婦が住んで、 家の床板を外すと骨があって、 埋めた死体の骨があって、 長い年月で真っ白い骨になって、 血まみれの肉は腐り落ちていて、 だけど骨だけは残り続けていて、 その上に夫婦は住み続けて、 いつまでも仲良く住み続けて、 ---------------------------- [自由詩]寂しくて辛い/渡辺八畳@祝儀敷[2017年11月10日16時16分] 濁流に心を投げ入れる日々の反芻で いつしか下流には心が貯まっていき 知らずのうちに大きな中州を作ってくれる 途切れることなく供給される心心心 振りかぶって乱暴に 半ば自暴自棄に 橋の真ん中 両岸から最も離れた所から投げ入れる 流れは激しく荒々しい 水は泥色で川底なんて見えない よかったね君の心 どんぶらこっこ流れていくよ よかったね君の心 どんぶらこっこ去っていくよ それが何個も何個も何個も何個も まるで大きな桃みたい 明るいピンクのまるまる ピッチリとしていてきれい だけど心が割れることはない 中から新しい子が飛び出てくることはない いったい心は固く閉じていて その形のまますこしも欠けずに下流で貯まる 君には見えない遥か先の下流でね 中州には渡り鳥が休みにくるかもしれない トンボが卵を産みにくるかもしれない きっとそうだよ 鳥も虫も動物も 君の心でできた中州にくるよ 橋には自動車が通過するだけ 君は心を投げ入れ続ける 終わりが見えないスローイング だけど君の見えない遥か先で 心はひとつひとつ貯まっているのさ 濁流に心を投げ入れる日々の反芻で いつしか下流には心が貯まっていき 知らずのうちに大きな中州を作ってくれる 途切れることなく供給される心心心 振りかぶって乱暴に 半ば自暴自棄に 橋の真ん中 両岸から最も離れた所から投げ入れる 流れは激しく荒々しい 水は泥色で川底なんて見えない よかったね君の心 どんぶらこっこ流れていくよ よかったね君の心 どんぶらこっこ去っていくよ それが何個も何個も何個も何個も まるで大きな桃みたい 明るいピンクのまるまる ピッチリとしていてきれい だけど心が割れることはない 中から新しい子が飛び出てくることはない いったい心は固く閉じていて その形のまますこしも欠けずに下流で貯まる 君には見えない遥か先の下流でね 中州には渡り鳥が休みにくるかもしれない トンボが卵を産みにくるかもしれない きっとそうだよ 鳥も虫も動物も 君の心でできた中州にくるよ 橋には自動車が通過するだけ 君は心を投げ入れ続ける 終わりが見えないスローイング だけど君の見えない遥か先で 心はひとつひとつ貯まっているのさ ---------------------------- [自由詩]少女ヌード写真集から見る昭和性風俗 ―雑誌『(検閲済)』を中心に―/渡辺八畳@祝儀敷[2018年1月23日2時05分] ※当該作品はその詳密な内容から筆者が児童ポルノ禁止法に違反する物品を所持している疑いがあるため また児童ポルノを詳細に扱った情報が公開されることはさらなる犯罪を誘発すると判断されたため 運営により非公開処置がとられました ---------------------------- [自由詩] ワタシのきもち (エルサポエム)/渡辺八畳@祝儀敷[2018年1月31日2時40分] いつまでもいっしょにいたいって わがままかもしれないけれど でも心の底からそうおもってるの 運命の人に出会えたシアワセ それをずっと抱きしめていたい キミをすきになればなるほど キミをおもうワタシのきもちは増えていって 「あいしているよ」って キミがいってくれるだけで ワタシのしあわせが積もっていく キミとLINEしてると キミをすぐ近くに感じて 返信を待つもどかしさや 手術台の上で潰される無花果まで とっても愛おしく思えてくる キミと手をつなぐとき ミシンの剛腕は盲目と果てた犬を覆し こころがあったっかくなる 裏切り者の天秤は日光の咎を捏造した この時間が永遠につづいてほしいなって サヨナラしてすぐにキミと逢いたくなる 液晶は恥じらうこと無く媚態を晒し コウモリ傘は石綿へと変貌する 電子の予知までもが屠られてしまった 恋ってこういうことなんだね 無線機が粗暴な計画を公表する度に 連峰が乾いた怒号を放つが 白い土壁に絡まった蜘蛛の死骸が 忘れられた瀧だとは誰も気づかない ずっとずっとダイスキだよ! 腐乱した聖書がそこらじゅうに落ちている 四肢の生えた拡声器はまったく憚らない 老婆は稀薄になりながら彷徨うばかりだ 注意すべき大気なぞもはや存在しない 病原菌は固化した葉脈を駆け巡っていく ---------------------------- [自由詩]猫/渡辺八畳@祝儀敷[2018年3月3日7時57分] 猫と戯れ 猫と遊び 猫引きちぎり 猫死ぬ。 思えば 元から猫を嬲っていただけで 元から猫は死ぬ未来だったわけで。 猫死んだ。 かわいい猫死んだ。 ---------------------------- [自由詩]ラブ・ラプソディ/渡辺八畳@祝儀敷[2018年6月25日0時46分] 彼女は私を自動的強制的に愛するシステムだということを私は知ってしまった! 彼女からの愛は総てプログラムによって事前に定められたものであった! 彼女の笑みは必ず口角を30度上げ唇を潤わせて行われるのであった! 彼女の肌のつやも髪の長さも総て私のために常時調節されているのであった! 彼女の行動総てが私のために設定されたものなのであった! 彼女は私のための彼女であれと彼女以外の者によってプログラミングされていたのであった! 彼女と指を重ねたあの日も永遠に輝き続けるとも思えたあの日も総てが予定調和であった! 彼女を愛する私の気持ちもシステムによって仕向けられた代物なのであった! 彼女は私のための彼女はシステムの彼女のプログラミングの私の彼女の彼女のあああああああ嗚呼ああああああ あああああああああ嗚呼あああああああああ嗚呼ああああああっあああああ嗚呼ああっああっああああ嗚呼ああ ああっっああああ嗚呼ああっああっあああっっっ嗚呼あああああああっっっああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっぁあああ ああぁあああぁあああっっっあああああああああああっっっっっ嗚呼あああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーああああああああああ ああっああっあああっっっああああああああああああああああっっああああああああああああああああああああ ああああああっっああああーーーーああっああっあああああああああっあああーーああああーーーーーああああ ああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーああぁあーーーーーーーーーーーああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ああ……ああ……ああ…… あっ…ああっ………ああ………… ああ…… …………………………………………………………………………・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・  ・ 海に来ていた。 月明かりだけでは何物も輪郭しか見えない。 私の顔も黒く塗り潰される。 感情を表してしまう顔面などいっそ無くなってしまえばいい。 そんなことを思おうともさざれ波の音は鎮まり続けている。 まったく静かなこの景色を粗い紙でさすっているかのようだ。 浜の砂をすくう。 とても小さな巻き貝が混じっている。 指紋の線ひとつひとつで表面の滑らかさを味わう。 私の意識はただ右手の親指と人差し指だけに注がれる。 僅かな光さえも目に入らなくなっていく。 砂のつぶが腕についたまま取れない。 ?も?  ?ど?   ?れ?    ?も?     ?ど?      ?れ?       ?列?        ?車?         ?に?          ?乗?           ?っ?            ?て?             ?現?              ?実?               ?へ?                ?も?                 ?ど?                  ?れ?                   ?生?                    ?活?                     ?へ?                      ?も?                       ?ど?                        ?れ?                         ?真?                          ?実?                           ?へ?                            ?も?                             ?ど?                              ?れ?                               ?恐?                                ?ろ?                                 ?し?                                  ?い?                                   ?日?                                    ?常?                                     ?へ?                                      ?も?                                       ?ど?                                        ?れ?                                         ?車?                                          ?輪?                                           ?と?                                            ?共?                                             ?に?                                              ?も?                                               ?ど?                                                ?れ?                              団地の三階、玄関灯が必ずつけられているとこ                              ろが私の家だ扉を開けたらアイドル並みにすご                              いスタイルをしている彼女がはだかエプロンで                              出迎えてくれた。これもいつも同じだ。彼女は                              まことに献身的態度で私の帰りを待っている。 「あっ、あなたおかえりなさいね?んもー遅いよ、ぷんぷん!  ……んへへっ、ずーっと待ってたんだからねっ?遅かった代  わりに後でいっぱいいっぱいぎゅーーー??ってしてよね?       お前のその態度もプログラムだろ  約束だよっ?どうする、最初にごはんにする? あなたの好  きなハンバーグ?にしたよ??しかも今日のは特別なんだよ!  だってね?普通のハンバーグじゃないんだよ??なんと! チーズ       お前の愛は作られたものだ  ハンバーグ?なんでーす!!! ??どう、うれしい? あなたの  ことを思って?一生懸命に作ったんだからねっ????残しちゃダメだよ  っっ??愛情たっぷりなんだから???ぜぇーんぶ食べてね??どうする          俺を愛するな  もうごはんにする? お風呂??も沸いてるわよ?湯加減もバッチリ???だよ  入るんだったら背中洗って??あげるね??あなたの体ぴっかぴか??にしてあ  げるからね???でもあなたの体大きい?から洗うの大変かも????でも頑張っちゃ   俺を愛するな!  うからね????ごはんの前にお風呂?入っちゃう???? さっぱりしてから食べた  ほうが美味しい????かもね。それとも???、わ???、た????、し??????  やめろ!!!  ?????????????????????????????????????????????           ????????????????????????????                   ??????????????????????? ちかよるな!!!            ??????????????????????????      ???????????????????????????????????????????              ?????????????????????????????離せ!!???            ?????????????????????お前は俺を愛してなどいない!!???         ?????????????????????俺もお前を愛してなどいないのだ!!!???     ??????????????????????????????????????????????   ????????????????????????????????????????????????  ????????????????????????目を覚ませ!??????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????ああっ!????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ????????????????????????????離してくれ!!!?????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????ああっ……ああっっ………ああああっ!!!!???????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????? ---------------------------- [自由詩]ラブ・ラプソディ(文学極道Version)/渡辺八畳@祝儀敷[2018年7月1日0時08分] 彼女は私を自動的強制的に愛するシステムだということを私は知ってしまった! 彼女からの愛は総てプログラムによって事前に定められたものであった! 彼女の肌のつやも髪の長さも総て私のために常時調節されているのであった! 彼女の行動総てが私のために設定されたものなのであった! 彼女は私のための彼女であれと彼女以外の者によってプログラミングされていたのであった! 彼女と指を重ねたあの日も永遠に輝き続けるとも思えたあの日も総てが予定調和であった! 彼女を愛する私の気持ちもシステムによって仕向けられた代物なのであった! 彼女は私のための彼女はシステムの彼女のプログラミングの私の彼女の彼女のあああああああ嗚呼ああああああ あああああああああ嗚呼あああああああああ嗚呼ああああああっあああああ嗚呼ああっああっああああ嗚呼ああ ああっっああああ嗚呼ああっああっあああっっっ嗚呼あああああああっっっああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっぁあああ ああぁあああぁあああっっっあああああああああああっっっっっ嗚呼あああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーああああああああああ ああっああっあああっっっああああああああああああああああっっああああああああああああああああああああ ああああああっっああああーーーーああっああっあああああああああっあああーーああああーーーーーああああ ああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーああぁあーーーーーーーーーーーああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ああ……ああ……ああ…… あっ…ああっ………ああ………… ああ…… …………………………………………………………………………・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・  ・ 海に来ていた。 月明かりだけでは何物も輪郭しか見えない。 私の顔も黒く塗り潰される。 感情を表してしまう顔面などいっそ無くなってしまえばいい。 そんなことを思おうともさざれ波の音は鎮まり続けている。 まったく静かなこの景色を粗い紙でさすっているかのようだ。 浜の砂をすくう。 とても小さな巻き貝が混じっている。 指紋の線ひとつひとつで表面の滑らかさを味わう。 私の意識はただ右手の親指と人差し指だけに注がれる。 僅かな光さえも目に入らなくなっていく。 砂のつぶが腕についたまま取れない。 ヽもヽ  ヽどヽ   ヽれヽ    ヽもヽ     ヽどヽ      ヽれヽ       ヽ列ヽ        ヽ車ヽ         ヽにヽ          ヽ乗ヽ           ヽっヽ            ヽてヽ             ヽ現ヽ              ヽ実ヽ               ヽへヽ                ヽもヽ                 ヽどヽ                  ヽれヽ                   ヽ生ヽ                    ヽ活ヽ                     ヽへヽ                      ヽもヽ                       ヽどヽ                        ヽれヽ                         ヽ真ヽ                          ヽ実ヽ                           ヽへヽ                            ヽもヽ                             ヽどヽ                              ヽれヽ                               ヽ恐ヽ                                ヽろヽ                                 ヽしヽ                                  ヽいヽ                                   ヽ日ヽ                                    ヽ常ヽ                                     ヽへヽ                                      ヽもヽ                                       ヽどヽ                                        ヽれヽ                                         ヽ車ヽ                                          ヽ輪ヽ                                           ヽとヽ                                            ヽ共ヽ                                             ヽにヽ                                              ヽもヽ                                               ヽどヽ                                                ヽれヽ                              団地の三階、玄関灯が必ずつけられているとこ                              ろが私の家だ扉を開けたらアイドル並みにすご                              いスタイルをしている彼女がはだかエプロンで                              出迎えてくれた。これもいつも同じだ。彼女は                              まことに献身的態度で私の帰りを待っている。 「あっ、あなたおかえりなさいね☆んもー遅いよ、ぷんぷん!  ……んへへっ、ずーっと待ってたんだからねっ☆遅かった代  わりに後でいっぱいいっぱいぎゅーーー☆☆ってしてよね☆       お前のその態度もプログラムだろ  約束だよっ☆どうする、最初にごはんにする? あなたの好  きなハンバーグ☆にしたよ☆☆しかも今日のは特別なんだよ!  だってね☆普通のハンバーグじゃないんだよ☆☆なんと! チーズ       お前の愛は作られたものだ  ハンバーグ☆なんでーす!!! ☆☆どう、うれしい? あなたの  ことを思って☆一生懸命に作ったんだからねっ☆☆☆☆残しちゃダメだよ  っっ☆☆愛情たっぷりなんだから☆☆☆ぜぇーんぶ食べてね☆☆どうする          俺を愛するな  もうごはんにする? お風呂☆☆も沸いてるわよ☆湯加減もバッチリ☆☆☆だよ  入るんだったら背中洗って☆☆あげるね☆☆あなたの体ぴっかぴか☆☆にしてあ  げるからね☆☆☆でもあなたの体大きい☆から洗うの大変かも☆☆☆☆でも頑張っちゃ   俺を愛するな!  うからね☆☆☆☆ごはんの前にお風呂☆入っちゃう☆☆☆? さっぱりしてから食べた  ほうが美味しい☆☆☆☆かもね。それとも☆☆☆、わ☆☆☆、た☆☆☆☆、し?☆☆☆☆☆  やめろ!!!  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆           ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆                   ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ちかよるな!!!            ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆      ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆              ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆離せ!!☆☆☆            ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆お前は俺を愛してなどいない!!☆☆☆         ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆俺もお前を愛してなどいないのだ!!!☆☆☆     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆目を覚ませ!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ああっ!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆離してくれ!!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ああっ……ああっっ………ああああっ!!!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ---------------------------- [自由詩]サバンナの光と液/渡辺八畳@祝儀敷[2018年7月2日19時18分] 半粘性の液がとくとくと垂れ流れている 青緑の、今は白反射な広野に透き緑な液が注がれている 心地よく伸びる地平線に赤若い太陽は沈もうとしていて 斜度の低い残光が針としてサバンナを走り抜ける その針が地を漂白してまぶしい、太陽も地もその日の終わりに輝いている 美しい、上へ下へ広がっていく空間もまったく美しくて 美しくて、美しくて、気持ちがいい 流れる液体は動物たちであった ゾウもキリンも、今日はもう終わりなので自ら溶けてしまったのだ それぞれの背丈から湧き出る瑞々しいとろりとしたうるわしい緑の液体 見るだけでもひんやりとしてくるそれが大地を潤していく 太陽がてっぺんのうちはライオンもカバもめいめいに動き回っていたけれど 日が終わるころにはどの動物もその場に立ち止まって サバンナの荒い木のよう体を溶かし液体に変わって流れていく とくとくとリズムよくすがすがしい液体翡翠 傾いた太陽からの光がそれを通過して刺さるのも気持ちがいい 目の前にアカシアの木はなく 滑るように心地よく地平線が伸びていてもはや快感そのものだ 上から流れ落ちる液体の中で私は潤っている たぶんこれはハイエナだった液だ、なめらかに私の縁を流れていき 私が立つ、少し粘りのある緑色な液体が垂れていくこの大地も潤っている 今日はもう白く焼けきった、カラカラな草も潤ってきれい 透きとおる液体に包まれて私もやわらかくなっていく この中から見る沈みかけた太陽は宝石のようですごくきれい 美しい、美しい、なにもかもが美しくてきれい 太陽が昇れば動物は動き出して 一日がまた始まるのだ ---------------------------- [自由詩]空き地/渡辺八畳@祝儀敷[2018年7月6日19時04分] 家一軒だけが消えた場所は 真四角く切り取られたかのようで 三方は静かな住居に囲まれている そしてさらに、後ろは山脈 この沈黙は三方どの面も硬直しているからだ 街灯は影を作れども この場所にだけは屈折して入ろうとしない 残された一方で面した道路さえも 飛び越えていくかのように側を通過するだけだ ひと気は忽然と消えて 地面が露わになったその場所は 掘れば化石が出てくるけれど やはり蟻さえも入ってこない 月明かりの無い夜に サンダル履きで忍び込んでみた 場所の中央から少し外れた一帯だけ 土が黒く湿っていて 脈打ち蠢いている 手ですくってみるが ただの土 ---------------------------- [自由詩]啓蟄/渡辺八畳@祝儀敷[2018年8月25日17時29分]                                    ○ ---------------------------- (ファイルの終わり)