藤沢 2014年12月17日14時08分から2016年10月19日23時37分まで ---------------------------- [自由詩]宇宙を盗撮/藤沢[2014年12月17日14時08分] 薄い雲が空を覆う秋。 少女のそれが頭を覆う秋。 イヤホンの内側から耳を攻めてくる。 猫よりも愛らしい声が聞こえたからつい詰め寄る。 風に背中を押され勇気をもらい対価を渡す。 山は染まり透明な空気をさらに透明に魅せる。 耐えきれない今日に耐えて自暴自棄。 振り回すのは斧みたいな飴粒、砂糖菓子の弾丸。 失うものも無い夜。 失ってばかりの流れ星。 冷めることのない、から冷めて数年。 うなされる悪夢。 思い出される遠き日に位置付けた思い。 そっと閉じるアルバム、目蓋。 他人の断片で作り上げた一人分の身体を持った自分。 他人の受け売り。 他人の受け売りを売って生活を舵取り。 一人で過ごす流星群の夜。 頭上で死んでいく姿。 ミサイル。 他人と他人の干渉に干渉。 微笑み返す時、八重歯が光って流星群。 宇宙を盗撮する。 それもすごい角度から。 素早く、そしてさらに誰にも気付かれないように。 社会から目を閉ざされたとしても今ならばきっと。 宇宙を見たかった。 下から、あるいは。 ---------------------------- [自由詩]夏歌を聴く/藤沢[2014年12月23日23時53分] 音楽雑誌の裏表紙で好きな音を探した。 新しい知識と歌詞で心は満たされた。 ヒットチャートにヒップホップ。 数十年の時を超えて帰ってくるらしい流行。 自分自身を水中に沈めるラジオごっこ。 アンテナで探る手探りの数字。 数十年の時を超えて愛されたいから分割で断片を残す。 口で言えばいいのに、を遠回しに伝える。 黙って駅のホームで背中を押してあげる。 笑って白線の内側から追い出してあげる。 突っ込んで突っ込んで突っ込んで。 懐かしの紙芝居めくるように音楽早送り。 飛ばしたり繰り返したり慌ただしい指の動きが鬱陶しい。 海が青いですね、今日は星が降るのです、を変換。 そんな機能付の自分じゃない。 心臓は血液だけを吐き出してそこに本物の心臓はない。 脳は無駄なことを考えてその引き出しには鍵がかかる。 神経の通らない爪や髪は当てにしない。 君が好きな季節の歌を聴く。 君が好きな歩道の脇道を行く。 ---------------------------- [自由詩]言葉/藤沢[2015年3月7日4時12分] 今まで積み上げた下書きを削除して虚無に浸っては液晶と対話する日々。 言葉の神様が彼の頭上に水滴を落としたのだ。 時間は輪っかじゃない。 だから自分は先頭に立てない。 地球は丸いが平等に重力をかけるわけじゃない。 だからフラフラとまた浮いた頭でスキップするんだ。 街路灯の無い夜道に溶かされる感覚に似ている。 あの時自分を変えた言葉はもう既に存在し消えた。 言葉は発せられた時その人のものとなり、 他人の受け売りで溢れタバコの煙よりも軽い。 トキメキと仲良くしたい大人の玩具箱の中で眠ろう。 中学生の夏は長く短い。 電車を乗り継いで数十分の旅の先の映画館。 そこで見た映画の名前も思い出せない店員が放った言葉が此の期に及んで座右の銘になるとは。 思いもよらない衝撃波が今もたまに通り鳥肌が立つ。 気がつくと身体は大きくなった。 街路灯の無い夜道は狭すぎる。 ---------------------------- [自由詩]10月8日と/藤沢[2016年10月8日22時33分] 夏が終わるのは 予感や第六感なんて大それたものじゃなくて ただカレンダーを見て感じでいた。 そして空を見て知っていた。 行けたら行く って言ってた君は来ない。 何度も何度も グラスの中のクリームソーダを掻き回して たまに口をつけて ただひたすら 待っていた。 衝動買いでまたやっちゃった。 あーやだ 自慰行為よりも切ない。 後悔と虚無は 本日のオススメ ミルフィーユ よりも 重なり甘く 重く かったるくて きっと きっと 上手くいかない。 捨てたい捨てたい バーゲンセール のように 不条理に手を出したあれもこれも。 とりあえず興味ないならミュートして 口パクで広がる夢 愛してるって言われたって勘違いしたい。 日々に点数をつけて ゆっくりと消費し続ける生活は きっと長くは続かないのだろう。 ---------------------------- [自由詩]花火と恋と生と死を/藤沢[2016年10月19日23時37分] 花火と恋と生と死を 一つのものとして例えるあいつのこと忘れたわけじゃないよ。 ただ、もう、そこにはいないし いや、もともとあいつはここに相応しくなかった。 古びた喫茶店で 生と死について語るあいつは いったい何度屋上から飛び降りたのだろう。 自慰行為の話はしてくれたじゃん。 恥ずかしげもなかったじゃん。 自傷行為が気持ちいいって もしあの時教えてくれてたら 私はあなたをもう少し愛せたのか。 かすり傷一つじゃ死なないからって 猫に引っ掻かれた腕にゆっくりと触れた。 光って 落ちて 消えて 天や地に還って 魂は誰かの心の中で研ぎ澄まされてる。 初恋のあいつが私に浴びせた罵倒と 中学生の時に見た映画のフレーズを 座右の銘にして生きていく。 量産型のアイデンティティを胸に 今日も名札を着けて 大勢の中の一人として生きていく。 ---------------------------- (ファイルの終わり)