花咲風太郎 2014年11月21日9時24分から2017年11月9日20時32分まで ---------------------------- [自由詩]個人的な事情/花咲風太郎[2014年11月21日9時24分] それは個人的なこと ごく私的な部類 青い空が 僕の瞳に映る ひんやりした風が 僕の頬を撫でる かじかんだ手が いっこうに温まらない そう それは 個人的な話 ありふれた話 一般的な経験 だとしても だからといって 僕の手は いっこうに温まらない それは個人的な事情 ごく私的な部類 僕の手を あなたが包む そう 僕のことなら それだけでいい 話してるのは僕だけのこと それは個人的な事情 ごく私的な部類 ---------------------------- [自由詩]穴掘り/花咲風太郎[2014年11月26日8時58分] いつの日も いつの日も 空しい穴を掘っています 雨ざむざむと降り続き 穴に雨水溜まります 泥も崩れて流れ込み 空しい穴は埋まります 僕のからだも埋もれます どうしようもなく退屈で 僕は穴を掘っています いつの日か いつの日か そこにはなんにも無いでしょう ---------------------------- [自由詩]穴ぼこ/花咲風太郎[2014年11月27日7時19分] 見上げると丸い空 穴ぼこに落っこちたのは さていつのことだったか ちいさな空に太陽が昇り ちいさな空に雲が流れ ちいさな空に日が沈む ちいさな空に月が昇り ちいさな空に星瞬く ちいさな世界に暮らし 時だけが過ぎてゆく 気まぐれに雨が 僕のひたいを濡らす 気まぐれに僕も 涙を流してみる どれだけの涙ふらせたら この退屈を埋め尽くせるの ---------------------------- [自由詩]地球に朝がやってくる/花咲風太郎[2014年11月28日7時14分] 夜みたいな朝を 自転車で駆け抜けて 太陽みたいな君に 真っ直ぐ会いに行こう 僕みたいな君が にっこり笑ったら 地球上のみんなに 朝陽が降り注ぐんだ やあ、やあ、おはよう! ---------------------------- [自由詩]秋の終わり/花咲風太郎[2014年12月2日11時30分] つのる想い  枯れ葉落ちて 積もる舗道  落ち葉踏みて 音は乾き  騒ぐ心 音に紛れ  心隠す つのる想い  今日も明日も 幾度掃けど  積もる落ち葉 秋の終わり  あなた想う 季節変わり  あなた想う 僕の想い  舗道に満ちた ---------------------------- [自由詩]かくれんぼ/花咲風太郎[2014年12月22日8時29分] 立ち入り禁止 柵を立て 立ち入り禁止 張り紙し 立ち入り禁止 うずくまる ひとりっきりのかくれんぼ もういいかい まあだだよ だれかくるのを拒んでる もういいかい まあだだよ だれかの訪れ待っている やさしいオニがこないかな 心の中で繰り返す もういいよ が言えなくて ---------------------------- [自由詩]朝になれば/花咲風太郎[2014年12月29日10時28分] 朝の陽が 淋しい小道を照らすころ 役目を終えた街灯は 静かに眠りにつくだろう 迷っていたきみを 泣き顔のきみを 朝の陽が やさしく包んでくれる きみはだいじょうぶ きっとだいじょうぶ 迷うことはない 泣くこともない 朝の陽が きみを ---------------------------- [自由詩]冬空/花咲風太郎[2015年1月7日8時55分] 心の寒さを まるめて吐いた 白い吐息 屋根の上 冬空浮かぶ 溜め息の群れ 街をゆき交う 俯く人影 北風吹き荒れ 立ち止まる やがて粉雪舞い落ちる 手のひらに降る 粉雪が降る 白い結晶ひとつ残らず かじかむ指に くちびる寄せた 人恋しくて くちびる寄せた ---------------------------- [自由詩]瘡蓋/花咲風太郎[2015年1月19日9時45分] うずうずする 瘡蓋(かさぶた)を引っ掻いたら 僕の中から 僕の中身が滲み出た あぶないあぶない こんなどす黒いものは 絆創膏で塞ぐに限る 乾いてくれば痒くなり ついなんどでも剥がしてしまう 掻き毟るのが気持ちよく 僕の密かな瘡蓋(かさぶた)は 火山のように層を成す 瘡蓋(かさぶた)は袖に隠れ 絆創膏の陰に隠れ 僕の快楽は誰も知らない 僕は瘡蓋(かさぶた)の陰に隠れ 絆創膏の陰に隠れ つるんとした肌を見せ 何食わぬ顔をしている 僕の快楽を誰も知らない ---------------------------- [自由詩]下弦の月/花咲風太郎[2015年1月26日10時44分] ああ、今宵は 下弦の月の舟に乗り 黒い夜空に漕ぎ出そう 眼下に見えるは 玩具(おもちゃ)のよう 昼の日中(ひなか)の よしなしごとは ちっぽけな屋根の下に まるめて 仕舞って 鍵かけて ああ、今宵は 下弦の月のゆりかごで 大きな夜空に甘えよう ---------------------------- [自由詩]ひとかけら/花咲風太郎[2015年2月20日12時38分] もしかしたら 言葉は音になって 空気中を漂い あなたの耳から侵入する かもしれない もしかしたら 言葉は文字になって どこかに刻まれ あなたの目から侵入する かもしれない 僕は知りたい あなたに侵入した言葉が いまどこにいるのか あなたの形のよいくちびるから漏れる 心地よい囁き そのひとかけら あなたのうつくしい指先から この世界に放たれるその一文字 やさしい筆致 そのひとかけら 僕だけが知っている そのひとかけら そのひとかけらに たしかに僕がいること 僕のひとかけら そのひとかけらに いつのまにかあなたがいること そんな 掌にのるようなちっぽけなこと それが 僕が生きていること ---------------------------- [自由詩]青い空、白い雲/花咲風太郎[2015年3月2日7時03分] 突き抜けるような 青い空に 純白の雲 雲の向こう側に なにが蠢いているのか 誰も知らない 青い空 白い雲 果てしない孤独 ---------------------------- [自由詩]きみだけの世界で/花咲風太郎[2015年4月16日0時05分] 見えるものがすべて そこにある世界 それが世界 どうせなら 楽しい世界 苦しみを超えたら きみだけに見える やさしい世界 きみだけに 見えるから きみだけの世界を 僕も信じるから 見たままを 信じてごらん きみだけの世界で 笑ってごらん 幼いこどもみたいに ---------------------------- [自由詩]風鈴/花咲風太郎[2015年4月21日6時49分] 軒先のんきな風鈴が 遠くの空を眺めてる 空だか海だかわからない 水平線を眺めてる 子どもたちが遊んでる 白い浜がお気に入り いったりきたりする波を にやにやしながら眺めてる ばかにきれいな夕日がしずみ ばかにきれいな陽がのぼる ゆれてはかえす風鈴は いたずら風にくすぐられ 今日もからから笑ってる ---------------------------- [自由詩]祝福の朝/花咲風太郎[2015年4月27日7時14分] 木漏れ日みどり映え そそぐひかりの束 だれが僕を 貴方をあたためる この世に 春をつれて いずれつれ去る 僕を 貴方を 塵ひとつ残さず 忘れる人さえ いなくなっても 祝福の朝は 今日も明日も だれかをあたためるだろう ---------------------------- [自由詩]そんなこと/花咲風太郎[2015年5月12日7時05分] 蝋燭の灯りが消えてゆくように 真っ暗闇になるのだと そんなふうに 誰に教わったわけでもないが そんなふうに 思い込んでいたもので 真っ暗闇に包まれて 何も見えなくなることは なんとなく 知っているつもりで そんなときの 怖がりかたは承知とばかり おかしな余裕を持っていたもので いやそうではない ほんとうのその時は 眩しい光りに包まれて 何も見えなくなるのだと そんなふうに 唐突に思いついたものだから すっかり落ち着きを失くしてしまい さていったいどういう心持ちなのだろうと やや狼狽しながら ゆめにうつつに そんなことを考えている いよいよ近ごろは そんなことばかり考えている ---------------------------- [自由詩] 故郷/花咲風太郎[2015年5月15日9時36分] 神社のない 町に生まれた 墓もない 新しい町に育って 隣り町の友達は 高層マンションから 空き地だらけの町を眺めた 僕らは 歴史のない町に育った 僕らの故郷には 神社がない 僕らの故郷には 墓もない ご先祖様のいない町 僕らはどこに眠ろうか 故郷に帰っても いまは空き地もないけれど 僕らの故郷に 墓はない 誰も眠らない町に 僕らは育った いつか 疲れて横になる 僕らはどこに眠ろうか ---------------------------- [自由詩]祈りの家/花咲風太郎[2015年5月19日6時49分] 風吹き抜ける丘のうえ 祈りを捧げる家が建つ 人の無力の絶望に 抗う祈りのうたう声 潮風のつぶに紛れつつ 砂の浜辺に隠れては いつか亀の背に乗って 海の彼方のその彼方 祈りはどこに届くかな ひとつぶくらい届くかな ---------------------------- [自由詩]フリードリヒの十字架/花咲風太郎[2015年5月19日18時10分] フリードリヒが見ていた あの十字架 雲海に聳える 孤独な十字架 廃墟で傾く あの十字架 運命はいつも フリードリヒの絵の中に 同じ十字架を見つめて 同じ背中を見つめて 断崖の先に 歩いてゆこう フリードリヒの絵のように 振り返りはしないで ---------------------------- [自由詩]神さまの手紙/花咲風太郎[2015年5月22日17時40分] きみには もう届かない 神さまの手紙を 僕は今日も読んでいる きみが知る由もない 今日という日の美しさを 僕が手紙に書きましょう こちらは四月に雪が降りました そちらはどうですか? 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