水宮うみ 2018年6月7日17時18分から2018年9月19日23時03分まで ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]迷路/水宮うみ[2018年6月7日17時18分] 迷路の出口には、新たな迷路が設置されている。 僕らの世界は果てのない迷路。 どこまで続くかわからない。どこまでも続くかもしれない。 最近、それが救いのように思えてきた。 例えば、数学という迷路について。 数学には、多分終わりがない。ひとつの予想が証明されたら、新たな疑問が生まれ、それが予想になる。まぁこれは僕の予想にすぎなくて、本当は終わりがあるのかもしれないけれど。 終わりがなかったらいいなぁと思うのだ。 僕は迷っていたいのだ。迷うことは、楽しいから。 すべての問いに答えられる人がいたとしよう。その人は、決断に全く時間がかからないだろう。 すべてが自明で、正解を出し続ける人生を、僕は味気なく感じるのだ。そりゃあ僕だって、もうちょっと賢くなって、今より正解を選べるようになりたいけど。 答えが分からない問いがたくさんある世界に生まれてきた僕はラッキーだ。 今思うと、僕が数学の(真か分からない)予想をどんどん作り続けているのも、もしかしたらこれから生まれる人たちを迷わせたいという気持ちがあるからかもしれない。 僕は迷路をどんどん大きくしていきたい。 迷路を解くのも楽しいけれど、作るのも案外楽しいのだ。 世界という巨大な迷路を、一生楽しみ続けるのが僕の目標だ。 ---------------------------- [自由詩]扉/水宮うみ[2018年6月14日15時55分] 朝、目を開ける。 夢を現実にするために。 今日も、目を開く。 新しい気持ちに出会うために。 目の前のあなたと、目を合わせる。 言葉にできないことを、分かり合うために。 ---------------------------- [川柳]ドリンクバーの天使/水宮うみ[2018年6月18日21時00分] 鐘の音が鳴り止んだらすぐ鐘叩く 美しいおばけとともに徹夜する 音楽もいつかは空に還ってく 猫の背が語る一日の過ごし方 初夏の風 海の匂いと鼻ピアス ひとりきり遅刻早退を繰り返す 階段を駆け上っていく逆恨み しりとりをしよう世界が終わるまで 本棚が光となって朝になる 僕の屁に天使の君も苦笑する するめいか一言でいい返事して 曖昧を許してくれない自動ドア 時系列順に並べられた宇宙 覚えてるあなたの蝉のものまねを ここでないどこかを目指すドリンクバー ---------------------------- [川柳]いま/水宮うみ[2018年6月18日21時03分] 好きだから君の四月のような声 ビー玉が転がっていく青い空 僕たちのとても遠くにある理想 優しげな月に出会った帰り道 後悔をしたくないから追いかける ---------------------------- [川柳]ありがとう自動ドア/水宮うみ[2018年6月19日18時47分] 右腕が休憩させろと訴える 靴底に違和感があり立ち止まる 腰掛ける話の腰を折りながら 水筒の中には水が詰まってる 包丁で切っても豆腐は驚かない 走り出せそして疲れたら寝転がれ ---------------------------- [川柳]架空の現実/水宮うみ[2018年6月19日21時04分] 現実が架空の国からやってくる 喜びにあふれた街で夜を待つ 手遅れになる五秒前踊り出す 音もなく忍び寄ってくる四分音符 夕焼けのように素敵な恋をした 青い空鞄に入れて持ち歩く 息継ぎの仕方も知らず泳いでる 簡潔に歴史を語る未来人 明らかな嘘だと分かる立て看板 約束をしようどこかの誰かさん 君はまだこの戦線にいるだろうか 眠れない夜を模写する印刷機 ---------------------------- [川柳]人間でいこう/水宮うみ[2018年6月22日21時18分] 悪党と昼寝をしている夏休み 帰り道小さな思想ぶつけ合う 悲しみに終わりはないから手を繋ぐ 覚えてるあなたの優しい木漏れ日を なにげないさりげない日々愛してる ---------------------------- [自由詩]星の数/水宮うみ[2018年7月6日18時25分] 寂しい夜も、悲しい夜も、眠れない夜もあるけれど、夜がなくなればいいなんて思わない。 だって夜がなかったら、空でたくさんの星が瞬いていることに、気付けなかっただろうから。 遠くにも光があることを、世界は本当に広いということを、知らないままだっただろうから。 窓を開ければ、数えきれないほどの小さな光たちが、僕の心に飛び込んでくる。 無限に広がる暗闇を越えて、君たちは僕のもとへとやってきてくれた。 ---------------------------- [自由詩]夜の絵/水宮うみ[2018年7月13日21時57分] 僕は、夜の絵を描きたい。 あなたが安心して眠れるような、温かい、あるいは、涼しい夜を描きたい。 もし描けたら、僕もその絵のなかに入って、 きみと一緒に夢を見たい。 ---------------------------- [自由詩]可愛い/水宮うみ[2018年7月13日22時56分] 君と一緒に花火をしたら、 夏が可愛くなった。夜が可愛くなった。 君ももっと可愛くなった。 ---------------------------- [短歌]いつの日かこの短歌たちを読み返す僕が笑ってくれますように/水宮うみ[2018年7月22日10時36分] もういいよ善とか悪とか正義とか公園のベンチでビスケットを食べよう 味気ない今だとしても生きてれば星の綺麗な夜にも会えるさ 入力の速い彼女はいつだってタンタカタンと短歌をつくる 気分屋で言葉を解さぬ飼い猫とじゃれてるときだけ本当の僕 ことばってナイフになる日もあるけれどときには優しい毛布にもなる ひとりでもへっちゃらさってひとりごとつぶやくくらいにひとりはつらい 君たちもいつかカエルになるんだよ五線譜に並ぶ四分音符たち あの歌が僕の両耳を心ない言葉たちから守ってくれた 足掻いてた日々を心のまんなかに詩集みたいに大事にしまう 暗闇を生き抜いてきた僕たちは夜を彩る星になるのさ 「数学は分かんない」って言う君が何故か答えを持ってる気がする 僕の手を優しく包む君の手は四月のようにひかりを纏う 平日の朝も憂鬱じゃなくなった 学校に行けばあなたに会える 空き時間埋めろと人は言うけれどぼんやりするのが幸せなのです 田舎道ふと見上げれば星空が都会みたいにきらきら光る 少年は青空と君が好きだった 君の口笛で夏が始まる 昼寝する君が茹で上がらないよう団扇でそっと扇いでる夏 宿題が終わっていないこんな日も世界がキラキラしていて憎い 大好きなバンドが解散しちゃっても生活は続く僕達は生きる 寝転がり読書をするという幸福栞を挟むの忘れて眠る 君のことなにがあっても絶対に…! ここで一旦コマーシャルです もう君のほんとの笑顔見れないなプリクラだけしか残ってないから 「別れたくない」って言えなかったから僕は優しい人間止まり わたしたちあたたかい光いつだって浴びているんだ愛されている これから先なにがあっても大丈夫君は笑顔の才能がある 行く末に無関心ではいられない死についていつも話したがる祖母 数学が嫌いな彼女は数学に殴りかかっていっつも負ける 最悪な世界の終わりみたいな日もいつか思い出に変わっていくのだ 好きすぎて頭がどうにかなっちゃいそうアイスを食べて恋熱冷ます ネッシーを一緒に目撃するとかで君と特別な仲になりたい はにかんでピアノと遊ぶ君という天使がいるから天国はここ ---------------------------- [自由詩]遠いところに光/水宮うみ[2018年7月26日22時30分] 「夏休み」 夏休みになったら火星に行きたいね。 そんなことを言いながら、僕らは地球で空を見上げる。 「手紙」 手の届かない場所へ手紙を送るよ。 誰かが、そこにいてくれたらいいな。 「手を繋ぐ」 ひとりぼっちのままでも手を繋げる僕らは少し悲しい。 それでも、繋いだ君の手があたたかくて、泣きそうになる。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]現代詩フォーラム/水宮うみ[2018年7月31日19時37分] 現代詩フォーラムを見つけてはじめの一年ほどは、見ているだけだった。投稿しなかった。 投稿などできるはずもない。詩を書いたこと自体なかったのだ。 たくさんの素晴らしい詩を読ませてもらった。優しい詩、可愛い詩、格好いい詩、美しい詩、色んな詩に出会えた。 こんな素敵な詩を書いているのが、プロでないなんて信じられなかった。 僕にとって現代詩フォーラムの投稿者はみんな、テレビのスターのように、向こう側の、光り輝く人たちだった。 僕は今、それなりに現代詩フォーラムに投稿させてもらっている。 だけどスターからは程遠い。昔と変わらず普通の人だ。 だけど、どこかの誰かが、あのときの僕が感じていたように、僕のことを思ってくれてたらいいな。 なんて、虫のいいことを思ったりしている。 ---------------------------- [自由詩]数が降る/水宮うみ[2018年8月10日21時45分] 君の頭のなかに幾千もの数が降り続けている。 暇さえあれば君は、暇さえなくとも君は、一心にノートに数式を書き続ける。 あまりにも君が夢中だからみんな不思議がるけど、なんのことはない、数が降ってきているだけなんだよね。 目には見えないものを数え続けているだけなんだよね。 今の君の世界にはきっと、数しかない。 君の書く数式は、美しくて、 まるで世界とはなにも関係がないみたいだ。 いつか君の世界に、数以外のものが降ってきたとき、 君がどんな式をつかむのか、楽しみだから、 僕はずっと君のそばにいるんだと思う。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]緑と青/水宮うみ[2018年8月19日17時54分] どうにも詩が書けないので散歩に行くことにした。 外は、晴れ晴れとしていて、言葉を忘れるくらいに平穏だ。 雑草の生き生きとした緑。空のまっさらな青。そういったものに見惚れる。 風景は言葉のいらない詩集だった。 ふと気づけば、びっしょり汗をかいていた。お盆を過ぎたとは言えまだ八月なので、やはり暑い。 汗をふきながら、僕は社会に暮らす人間である前に、動物なのだと実感する。 言葉を覚える前の動物のように詩を書きたいと思う。 体から汗が出るように、嬉しいと笑みがこぼれるように、言葉を自然に綴りたいのだ。 そして、読んだ人に思い出させたいのだ。こどもの頃を。動物の頃を。 緑や青のきらめきが、僕に度々思い出させてくれるように。 家に帰って、僕は僕に戻る。 また、書ける気がする。 ---------------------------- [川柳]君だった/水宮うみ[2018年8月24日22時25分] 泣けば良いそれがあなたの雨になる 神様が一緒にいると仮定して 僕の目をまっすぐ見たのが君だった ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]家族や友達/水宮うみ[2018年8月30日19時33分] わざわざ詩にするようなもんでもないことを詩にできたらいいなと思う。 新発売のジュースが美味しかったこととか、野良猫をみかけたこととか、 そういうことを、家族や友達に報告するように詩にしたい。 当然僕だって、あっと言わせる言葉や、はっとする文章に憧れている。 だけど、なんだか最近は、 ふーんと言われる詩を書きたい。 他愛もないことを愛おしく思う。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]静かな電話/水宮うみ[2018年9月6日21時37分] 彼は世界一静かに電話をかける。 彼が電話をかけるとき、何故かコール音も小さくなるので、ほとんどの人は、彼から電話がかかってきても気付かないだろうと思う。 だけど、わたしは電話に気付いた。ずっと耳を塞いできたわたしの心は、何故だか彼の声には耳を傾けた。 彼はわたしの心に世界一静かに電話をかける。 悲しみのなかで、夢のなかで、わたしと彼は話をした。 他愛もない、愛らしい話ばかりをした。例えば、無音より優しい音楽について。なぜ大切なのか分からない、大切な思い出について。なんだか眠れない夜の、楽しい過ごし方について。 騒々しい世界で生きていくことへの絶望が、彼と話すと和らぐようだった。彼の静かな声を聴くだけで、わたしの心は穏やかになれた。 少しずつ自分なりの過ごし方ができるようになり、自分で静けさを手に入れられるようになってきたある日、彼からの電話はピタリと止んだ。 だけど、わたしはもっと彼と話したいし、話す気満々だ。 なのでわたしのほうから毎日電話をかけている。 電話番号も知らないけれど。わたしの電話は、世界一静かとは言えないだろうけれど。 きっといつかは、つながるはずだ。 ---------------------------- [自由詩]あなたに/水宮うみ[2018年9月8日22時19分] あなたが落ち込んでいると、わたしも悲しくなるよ。 あなたは今、いろんな事に絶望してしまっているんだよね。 つらい思いを、たくさんしてきたんだよね。 「大丈夫だよ。」っていうわたしの言葉も、あなたを傷つけてしまうのかな。 なにをすれば、あなたの気持ちを楽にできるのか、分からないけど、 わたしがあなたを大事に思っていること、 あなたの気持ちが、あなたにとってなによりも大事だってこと、 あなたは、あなたを幸せにできるし、幸せにしていいんだってこと、 あなたに、伝えようと思うよ。 ---------------------------- [自由詩]君が住んでいる/水宮うみ[2018年9月10日19時41分] 君がいなくなってしまって、とても悲しい。 君に怒りたいこと、謝りたいこと、伝えたいこと、たくさんあるけど、 「君がひと時でも、いてくれてよかった」とだけ言うよ。 君がいなくなってからも、僕の生活のなかには君がいる。 ---------------------------- [川柳]うとうとする弟/水宮うみ[2018年9月11日21時13分] 私たわしをわしゃわしゃするの とりあえず鳥預けとけ しゅうまい旨い参った やけくそに約束する焼け野原で ---------------------------- [川柳]問題ない問題集/水宮うみ[2018年9月11日23時59分] 汚れなき怪我をした崖で なんであんな銀杏噛んだん ダサいサンダル下さい 安全な温泉で観戦 淡々と歌歌ったった ---------------------------- [川柳]科学光り輝く/水宮うみ[2018年9月12日16時20分] のうのうと罵るの 雑草颯爽と立つ あるアヒルビール浴びる 運命の梅埋める まぁわらわらと集まるわな 愛ゆえのあいうえお なんとなくにゃんと鳴く ---------------------------- [川柳]日々が常に日常/水宮うみ[2018年9月12日23時21分] 豚丼どんどんと届く 担任は単純にダンサー うちのチワワちくわ食うわ 文庫本半分こ 断固だんご拒否 ---------------------------- [川柳]青空のうたた寝/水宮うみ[2018年9月13日21時08分] 今日も静かに笛をふく ノートにあなたの横顔を書く 白昼夢飛び立ったことば 雨が降るメールのなかで 夜は素敵さ星がみえる 君の声で君の恋を聞く ---------------------------- [川柳]ちょっとだけ人間が好き/水宮うみ[2018年9月14日20時52分] 歌うだけ歌って眠る 恋人を連続再生する ときどき人間を忘れる 君を街ごと抱きしめる 夜だ思いっきり泣こう ---------------------------- [川柳]エンドロールの静けさ/水宮うみ[2018年9月14日22時20分] 夜の風孤独を洗う もっと優しい嘘をちょうだい つらいから星がみたい 少しずつ真珠になる 公園で自分を拾う 子守唄こころに寄り添う てのひらから流星群 ---------------------------- [川柳]にぎやかな暮らし/水宮うみ[2018年9月15日1時04分] たんたかたんたんと君の足音 世界救っちゃってテレビに出演 めっちゃ楽しいねってめっちゃ笑う 君のせいで毎日が動物だらけ ---------------------------- [川柳]月夜ソング/水宮うみ[2018年9月15日20時56分] お月さま踊り場に降臨 満月にわっとおどろく 月と一緒に夜の音を聴く 月語も話せるメイドさん あの日の風船が月まで届く 月夜は君のなかにある ---------------------------- [自由詩]おと。/水宮うみ[2018年9月19日23時03分] ひらかれたことばたち。 いみからすこし、とおくでひかる。 ひとのあたまのうえを、ひらひらとまう。 かんじをすてて、かくことで、 かんじのないぶんを、よむことで、 かんじられるなにかが、ある? ひらがなは、なにもはなさない。 ひらがなは、うたうだけ。 おんがくのように、うたうだけ。 ---------------------------- (ファイルの終わり)