水宮うみ 2018年1月9日17時53分から2018年5月29日20時12分まで ---------------------------- [自由詩]夏の話/水宮うみ[2018年1月9日17時53分] 君と話すのはいつだって楽しい。 図書室のなかで、校庭のすみで、僕らはたくさん話をした。 君は僕の疑問へ無理に答えを与えたりはしない。 君は、分からないということを風に揺れる風鈴のように愛している。 そんな君と話しているうちに、僕もだんだん悩みがどうでもよくなってきた。 君がいれば答えはいらない。 それが僕の答えになった。 長い長い梅雨が終わる。 「もうすぐ夏だね」 君は光のなかでそう言って、くしゃっと笑う。 ---------------------------- [自由詩]君みたいな夕焼け/水宮うみ[2018年1月12日19時27分] あの日、初めて握った君の手は、 夕焼けのように温かかった。 僕らはなにも話せずに、ただ歩いた。 夕焼けが、やけに綺麗な空だった。 君の頬が夕焼け色していた。 夕焼けを見るたび、君のことを思い出す。 君は夕焼けみたいに綺麗だった。 君は夕焼けみたいに美しかった。 ---------------------------- [自由詩]物語/水宮うみ[2018年1月17日7時54分] 今まで出会った物語が、僕の心に残っている。 たとえ頭が忘れてしまっても、心のなかには残るのだ。 物語は荷物にならない。 だから僕は、君たちと一緒にどこまでも行ける。 たくさんの物語と一緒に、僕は僕の物語を歩いていく。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]解釈/水宮うみ[2018年2月8日17時03分] 言葉ひとつに対しても、無数の解釈が生まれる。 だけど、人が解釈を生むのではなく、 無数の解釈すべてが、言葉に元々秘められている。そんな風に思うのだ。 だから僕たちはきっと、ひとつの言葉の意味すらも、完全に理解することはできない。 一人の人間を、完全には理解できないように。 それでも理解したいから、今日も解釈する。 ---------------------------- [自由詩]いつかゼロになるとしても/水宮うみ[2018年2月8日21時36分] いつかゼロになるとしても、一歩ずつ進んでいこう。 いつかゼロになるとしても、1を足せば、すぐにゼロじゃなくなる。 それに、いつかゼロになるとしても、決して無になるわけじゃない。 ゼロという数が、そこにある。 何もかも失うことなんて、できない。 目には見えないけれど、僕らの身体にはきっと、無数のゼロが足し合わされていて、 無数のゼロは僕らを守ってくれている。 だから今日こうやって、一つの詩を安心して書くことができた。 たとえいつかゼロになるとしても、目の前の君が笑ってくれたら僕は十分だ。 ---------------------------- [自由詩]帰っておいで/水宮うみ[2018年2月14日21時32分] 君は弱音を吐かない努力家だから、 みんな多くの期待を君に寄せてしまう。 君は、ひとりの人間に過ぎないのにね。 たくさんの荷物を持たされて、君は自由に動けやしない。 周りの期待なんか無視していいよ。 荷物を全て捨て去ってもいい、うちに帰っておいで。 土産なんかなくとも大丈夫。 君がただ帰ってくるということが、僕にとってはプレゼントだから。 ---------------------------- [自由詩]きみの季節/水宮うみ[2018年2月19日20時32分] きみは春の日差しみたいにあたたかい。 きみは夏の空のように澄み渡っている。 きみは秋の夜風みたいに優しい。 きみは冬の雪原のように美しい。 どの季節にもきみの匂いがする。 きみを想えば、ぼくの心に季節がひろがる。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]永遠/水宮うみ[2018年2月28日19時29分] 彼女の瞳は星空だ。 彼女の大きな目に、誰もが吸い寄せられる。 人は死後、彼女の瞳のなかの世界へ行くらしい。 星になった人々が、彼女の目のなかできらきらと輝いている。 僕も死んだら、彼女の瞳の星のひとつになるのだろう。 いつか彼女が死んでも、きっと彼女の瞳は永遠に残る。 空を見上げれば、彼女の眼差しがそこにある。 彼女の瞳のなかの一番星として、死後も彼女は輝き続ける。 ---------------------------- [川柳]季語/水宮うみ[2018年2月28日19時31分] 俳句じゃない季語がないから川柳だ 季語という季語を食べ尽くした夜中 はらはらと季語が降り注ぐ朝の部屋 季語なんていらないくらいの季節感 ---------------------------- [川柳]沈黙/水宮うみ[2018年3月5日7時58分] 呑み込んだ言葉の代わりに手を振った ---------------------------- [自由詩]カメと一緒に帰る/水宮うみ[2018年3月13日7時44分] カメと一緒に帰る。 歩いて帰る。ゆっくりゆっくり、鼻唄うたいながら帰る。 我が家に帰る。 ---------------------------- [自由詩]螺旋階段/水宮うみ[2018年3月21日1時29分] 朝が来て昼が来て夜が来て、次に来る朝は、昨日とは必ず少しだけ違う。今年の春が、去年と少し違うように。 僕らはぐるぐる同じところを廻っているようで、ちょっとずつ変わっていってるのだ。 日々は遺伝子のように螺旋を描きながら、少しずつ前に進んでいく。 ---------------------------- [自由詩]おやすみ/水宮うみ[2018年3月21日12時41分] 僕は眠ってる間、羊になって遊ぶ。 夢の中でも人で居続けるのは疲れるから。 世界は夜には闇になる。 光であり続けるのは、世界だって疲れるから。 羊の僕が眠るまで、 夜が崩れて光になるまで、 おやすみ世界。 ---------------------------- [自由詩]海/水宮うみ[2018年3月23日20時45分] 愛も自尊心も信仰心もいらない。 ただ海をみつめていたい。 ---------------------------- [自由詩]奇跡/水宮うみ[2018年3月23日21時11分] 今回の奇跡はここまでです。お疲れ様でした。 あなたとあの人との出会いが奇跡でなかったという訳ではありません。 あなたが生まれたことが奇跡でないという訳ではありません。 残念ながら、奇跡にも終わりがあるというだけです。 けれど、奇跡って案外いっぱい起こるのです。 あなたはこれから、たくさんの奇跡に出会えます。 心を持って暮らしてさえいれば。 わたしの名前はときめき。 奇跡のなかにいる間に人が感じる感情そのものです。 運が良ければ、奇跡が起こればまた会いましょう。 では、次の奇跡で。 ---------------------------- [自由詩]恋/水宮うみ[2018年3月24日14時26分] 私たちは離散的だけど、連続的だと思える瞬間が、あって、そういう瞬間を恋と呼びたい。 数学の世界を整数から有理数に、有理数から実数に拡張した人たちは、きっとその時、向こう側の誰かに恋をしていた。 ---------------------------- [川柳]春の人/水宮うみ[2018年3月27日19時55分] 満開の桜のように笑う人 春なのに花見に行けない春なのに 八重桜これでもかって咲いている ---------------------------- [自由詩]夜がいてくれる/水宮うみ[2018年4月1日21時36分] 楽しかった日も悲しかった日も、夜は毎日やってきてくれる。 夜が僕にひとりの時間をくれる。夜は僕の、どこまでも広いノート、まっさらな宇宙だ。 僕は毎夜、こっそり成長する。 今夜はなにをしよう。 ---------------------------- [自由詩]君が好き/水宮うみ[2018年4月4日19時48分] 君が世界のすべてではないけれど、それでも君が好きです。 きっと世界にとってはとびきり特別ではないこの恋を、とびきり特別に思わせてくれる君が好きです。 ---------------------------- [自由詩]かぜになりたい/水宮うみ[2018年4月7日15時40分] かぜになりたい。 かぜになって、身も心も自由になって、 家で一日中ゲームをしたい。 風邪になりたい。 ---------------------------- [自由詩]風/水宮うみ[2018年4月7日15時41分] 「正しさとは何かなんて一旦置いといて、風を掴まえに行こうぜ」 ---------------------------- [自由詩]この世界の歌/水宮うみ[2018年4月12日19時31分] 指先の音階、生活の音色。 季節が肌を撫でる。 人の音や風の音が混ざり合って、 青空がピアノを弾いているみたいだ。 ひかりが水面に反射し虹をつくる。 身体のなかで海が呼吸する。 カレーの匂いがする町で、僕らは愛に包まれている。 この世界について書きたいことがたくさんある。 だけど、書くためにはたくさん経験がいるから、 まずはギターを練習しようと思う。 もっとこの世界を知るために。 もっとこの世界を楽しむために。 ---------------------------- [川柳]生活/水宮うみ[2018年4月19日17時16分] 世界一うつくしく転ぶ 君のにやついた顔が好きです 泥んこになってありんこになって お電話かわりました詩人です 春が来て君は花粉症になった 今日は風が騒がしいので休みます ドアを開けると部屋だった ---------------------------- [川柳]季節は四つもあるから凄い/水宮うみ[2018年5月5日11時12分] 春の風を浴びてしましまと笑う 軽やかなきみと夏のまんなかに立つ 空は水彩 きみの髪から秋の匂い 冬が好き だって雪が降るから ---------------------------- [自由詩]ハッピーサンデー/水宮うみ[2018年5月6日18時48分] 今日はピアノを弾きたい気分。 音楽を聴くんじゃなくて奏でたい気分。 今日はあなたに会いたい気分。 自分のほうから会いに行きたい気分。 ---------------------------- [自由詩]わたしたち/水宮うみ[2018年5月8日7時05分] 踊り場が泣いている夜、わたしは旅に出た。 この夜空に浮かぶ星々を、 わたしたちと呼ぶことにしよう。 プラネタリウムみたいに綺麗な世界が、わたしに酸素を送ってくれる。 ---------------------------- [自由詩]夜の光/水宮うみ[2018年5月12日21時13分] この胸に孤独があって良かった。 もしなかったら、人の寂しさに共感することができないだろう。 誰かのために戦うことができないだろう。 この心に孤独があって良かった。 もしなかったら、僕はいつまでも借り物の言葉ばかりを吐き続けていただろう。 詩を書くようになんかならなかっただろう。 孤独は目には見えない光を放つ。 その光たちが、僕たちの夜を彩ってくれているような、そんな気がするのだ。 ---------------------------- [自由詩]最高の人生/水宮うみ[2018年5月12日23時26分] 何者にもなれなくたっていいのだ。 僕のジョークに、君がたまに笑ってくれるときがあるから。 何者でもなくたっていいのだ。 君とこうして出会えただけで最高の人生だ。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]元気/水宮うみ[2018年5月26日19時56分] たとえ、評価されなくても、たくさんの人に読まれなくてもいい。 僕はただ、誰かの心に残る言葉を書きたい。 僕のなかに言葉を残していった彼らは、僕にとってとても大切な人達で、心のなかでずっと輝き続けている人達で、 彼らのような存在に僕はなりたいのだ。 誰かを少しでも、元気づけられる言葉が書きたい。 だからこうして今日も、元気に言葉を綴っています。 ---------------------------- [自由詩]解く/水宮うみ[2018年5月29日20時12分] それはとても楽しい謎解きだった。 文学になった彼を、彼女は読み解く。 ---------------------------- (ファイルの終わり)