水宮うみ 2017年7月30日8時34分から2018年1月12日19時27分まで ---------------------------- [自由詩]話/水宮うみ[2017年7月30日8時34分] 君に会えたら、どんな話をしよう 自然体で話せるような つまらない笑い話がいいな ---------------------------- [短歌]短花/水宮うみ[2017年7月30日13時26分] 真っ白なノートの世界に降り立って黒鉛の羽根をばら撒き進む いつの日かあなたに褒めてもらうため僕はこうして詩を書いている 短歌書く女の子から溢れだす音と言葉と愛と眼差し 花のように笑うあなたのもういないこの世界にもまた花が咲く ---------------------------- [短歌]君は天使/水宮うみ[2017年8月24日19時27分] 何故だろう君と一緒に居るだけで曇っているのに街が輝く 遊園地テンション上がりすぎた君地球にはない言葉を叫ぶ 「教科書を食べれば賢くなれる」と言う君はバカだなほんとに好きだ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]天使かな?/水宮うみ[2017年8月24日19時28分] 夏休み明けの初日、登校すると椎名の背中から虹が生えていた。 「天使かな?」 「たっくんいきなり何!照れるじゃんー」 「いや、可愛いということの比喩的表現じゃなくて、超常的な存在かな、の天使かな、だ。何があったんだよ」 「空から虹を?ぎ取ったんだ!」 「バチ当たりそうだな」 「塩一掴み食べたから大丈夫」 「色々間違ってるぞ。なんでそんなことしたんだよ。ていうかできたんだよ」 「私空飛べることだけが取り柄なの言ってなかったっけ」 「初耳だな。お前ほんとに天使じゃん」 「天使なんている訳ないじゃん!」 「……」 「まぁそれで、空飛べるのに翼がないのが変だから、虹取ってきたの」 「そうか、よく分からんが分かった」 「次はオーロラ取って頭の上に乗せようかな。たっくん言ってるみたいに天使っぽくなるし」 「まぁ、羽目外しすぎるなよ」 「うん。まぁ、羽は生えてるんだけどね」 そう言って椎名は天使みたいに笑った。 ---------------------------- [自由詩]平仮名/水宮うみ[2017年9月1日7時27分] 僕は、シンプルになりたかった。ひらがなになりたかった。 ひらがなになれたら、悩むことはないだろう。苦しむこともないだろう。 悩みはなやみに、苦しみはくるしみになって、隣の文字たちと混ざり合って悩みも苦しみもきっと薄れる。 僕はぼくになりたかった。だけど、僕はいつまでも僕のままで、 いつまでも書き順の間違った漢字を書き続けている。 ---------------------------- [川柳]あるところにて/水宮うみ[2017年9月1日19時02分] 桃太郎読み聞かせつつ桃食す 月食をひとり眺めるかぐや姫 約束の通りに開けない玉手箱 シンデレラ灰のなかから蘇る ---------------------------- [自由詩]僕らはひとつの星座/水宮うみ[2017年9月3日12時57分] かつて仲の良かった人たちとは、夜空の星たちのようにちりぢりに離れた場所で暮らしている。 一緒にいた頃のことを懐かしんでいると、寂しくもなるけれど、別にそれでいいのだ。 きっとみんなどこかで光ってる。 ---------------------------- [自由詩]窓/水宮うみ[2017年9月3日15時42分] 夜、あなたは夢と現実を行き来する 目を瞑っても、光が見えるのは何故だろう あなたの瞳のなかを星々が流れ 夜空は瞼を閉じた ---------------------------- [自由詩]月夜/水宮うみ[2017年9月4日17時33分] 月の見えない夜に川岸にいる 水面にはさかさまの空が微かに映っていて まるで鏡の世界にいるみたい 水の音に耳をすませば 鏡の向こうから声が聞こえた気がした 月は、地上から見えなくたって雲の向こうで浮かんでいる わたしは無限に広がる夜へと足を踏み出す このまま月まで行くつもり ---------------------------- [自由詩]きみ/水宮うみ[2017年10月3日15時58分] 空に落ちて行きながら君の夢を見ている。 「あなたもちゃんと笑って生きるのよ」 君はそう言ってかなしく笑った。 さようならが嫌いな少年は無言で下を見る。 どんな本でも大切にする君が好きだった。 君の口笛が風に乗って世界中に届く。 花火に火をつけたら夏がよみがえった。 チャイムが鳴って誰かとおもえば思想で「なんだ思想かよ」っておもう。 君が万物に命を吹き込んだせいで世界がうるさい。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ビー玉/水宮うみ[2017年10月11日12時32分] ビー玉とは不思議なものである。人工的なもののはずなのに、オーロラのような、雪のような、星のような、魂のような、そんな雰囲気を漂わせている。 ビー玉は、ロマンチックで、霊的で、生きていくうえで無くてはならない、お金で買えないなにかの象徴のように僕には思える。ビー玉は目に見える命の単位なのかもしれない。 君の身体は、きっとビー玉のような素敵ななにかでできている。君が笑うと、君のなかの無数のビー玉も一緒に、きらきら笑う。 ---------------------------- [自由詩]熱/水宮うみ[2017年10月24日19時26分] 僕は、変われないと思っていた。 変われないことが、悲しかった。 僕は、変わった。変われた。変わってしまった。 それでもたまに、悲しいこともある。 変われないと思っていた僕の手を、今でも僕は握りしめている。 風邪をひいているみたいに、恋をしているみたいに熱を持っているその手を、僕は決して離したりしない。 ---------------------------- [短歌]君にもあげる/水宮うみ[2017年10月28日12時53分] 「僕だけのものだ」って言葉思う度虚しくなるので君にもあげる 僕たちは言葉の種を温めてこの寒い季節乗り越えていく 絵に描いたみたいな空を飛んでいく飛行機に乗る人が見る空 手をつなぎ貴女と道を歩いてく耳では聞けない会話をしてる ---------------------------- [自由詩]詩を書きたい/水宮うみ[2017年11月5日17時15分] 詩を書きたい。 はじまりを告げる詩を書きたい。 安心を与える詩を書きたい。 温もりのある詩を書きたい。 おわりを惜しむ詩を書きたい。 誰かの心に少しでも住めるような、そんな詩を書きたい。 詩を書いてみようと、人に思わせるような詩が書きたい。 詩を書かなくなった人に、再び筆をにぎらせるような詩が書きたい。 肯定する詩が書きたい。何も否定することのない、優しい詩が書きたい。 鳥が鳴くように、 こどもがなにかに疑問を感じるように、 水面に波紋が広がるように、 僕は詩を書きたい。 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[自由詩]今日/水宮うみ[2017年12月12日19時19分] 今日は詩を書きたい気分なのです。 今日はとても良い詩が書けそうな、 書いているうちに、なにか新しいことを思いつきそうな、 そんな気がするのです。 そんな気がするけど結局書けませんでした。 ---------------------------- [自由詩]たましいは風に乗って/水宮うみ[2017年12月13日6時23分] 音に揺れる木々。言葉も知らずに、歌を歌っている。 わたしもまた、歌を歌っている。歌うことで歌の意味が分かるような、そんな歌を。 生きる意味もまた、生きることでしか見つからないのだろう。 そんな風に思うことで、わたしの思いは風に乗る。 ---------------------------- [自由詩]明るい夜/水宮うみ[2017年12月17日9時20分] 君と一緒に夜空を見上げる まだまだ青い地球を照らす、白い宝石のような光たち 証明する必要もないくらい、世界は美しい 誰もがきっとその笑い方を知っている 今日、君に会うことができて、 明るい夜もあることを知ったよ 今夜は一人ぼっちじゃないから、 敢えて言葉を綴る必要はない 言葉を綴る代わりに、手を繋ごう ---------------------------- [自由詩]書かない。/水宮うみ[2017年12月22日20時30分] 私は、書かない。一文字たりとも書かない。何があろうとも、絶対に、絶対に書かない。 あの春の出会いについて書かない。 あの夏の思い出について書かない。 あの秋の大喧嘩について書かない。 あの冬の約束について書かない。 私とあなたにまつわるすべてを、私は書かない。 私は、書かない。 ---------------------------- [自由詩]リンダ/水宮うみ[2017年12月30日10時26分] 君が歌だったら、いつまでも君を聴いていられる。 君が絵だったら、いつまでも部屋で眺めていられる。 だけど、君が人間でよかった。 僕の想像を越えていく、 歌にも絵にも留まれない君でよかった。 ---------------------------- [自由詩]すごく良い言葉を思いついたのに忘れてしまった/水宮うみ[2018年1月1日19時31分] 忘れっぽいので損をしている気がする。 すごく良い言葉を思いついたのに忘れてしまった。 その忘れてしまった言葉で良い詩が書けたはずなのにと悲しくなる。 だけど、忘れてしまうからこそ思い出すことができる。 何かを思い出したとき、僕は古い友達に幸運にも再会できたような気持ちになる。 離れ離れになることがあるから、また出会うことができるのだ。 忘れてしまったあの言葉を、あの君を、もう一度思い出すために。 あの言葉に、あの君に、もう一度出会うために。 僕は生きていく。 ---------------------------- [自由詩]やめた/水宮うみ[2018年1月4日20時25分] 格好つけるのはやめた。 小難しい詩を書くのはやめた。 都合の良い言葉で本心を隠したり、思想で自分を強くみせたりするのもやめた。 仮面としての言葉を捨てて、心から君と話したい。 武器としての思想を捨てて、一緒に君と笑いたい。 虚像としての僕を捨てて、君とちゃんと出会いたい。 そしてもっと、優しくなりたい。 ---------------------------- [自由詩]夢/水宮うみ[2018年1月6日11時44分] 僕は人間的でありたいなんて思わない。 人類の一員という言葉が、あまり好きではないから。 僕は僕らしくありたいなんて思わない。 僕らしさが、僕を窮屈にしてしまう気がするから。 僕は風でありたい。 掴むことも名付けることもできない、 ひとつの風でありたい。 ---------------------------- [自由詩]不思議/水宮うみ[2018年1月8日21時03分] 君の瞳が不思議。 君の声が不思議。 君の笑顔が不思議。 君の強さが不思議。 君の美しさが不思議。 君の優しさが不思議。 野良猫みたいに不思議。 夕焼けみたいに不思議。 現代詩みたいに不思議。 ふしぎと不思議が止まらない。 ---------------------------- [自由詩]夏の話/水宮うみ[2018年1月9日17時53分] 君と話すのはいつだって楽しい。 図書室のなかで、校庭のすみで、僕らはたくさん話をした。 君は僕の疑問へ無理に答えを与えたりはしない。 君は、分からないということを風に揺れる風鈴のように愛している。 そんな君と話しているうちに、僕もだんだん悩みがどうでもよくなってきた。 君がいれば答えはいらない。 それが僕の答えになった。 長い長い梅雨が終わる。 「もうすぐ夏だね」 君は光のなかでそう言って、くしゃっと笑う。 ---------------------------- [自由詩]君みたいな夕焼け/水宮うみ[2018年1月12日19時27分] あの日、初めて握った君の手は、 夕焼けのように温かかった。 僕らはなにも話せずに、ただ歩いた。 夕焼けが、やけに綺麗な空だった。 君の頬が夕焼け色していた。 夕焼けを見るたび、君のことを思い出す。 君は夕焼けみたいに綺麗だった。 君は夕焼けみたいに美しかった。 ---------------------------- (ファイルの終わり)