水宮うみ 2014年1月21日10時15分から2015年6月3日16時53分まで ---------------------------- [自由詩]私は倒れていった人々のことを忘れない/水宮うみ[2014年1月21日10時15分] 起立礼着席起立礼着席起立礼着席。眠りが燃える、朽ちない光が永遠と。堤防で打ち上げ、喧噪に染まる眩暈が静謐に嘯く。肉体の水面、泥を着て。何かがすべてになろうとしている。 ---------------------------- [自由詩]頭を掻く/水宮うみ[2014年1月21日14時20分] 反復する夏に導かれる。飛び交う右手。コップ一杯の水で夜を迎えた。味の蘇ったパン。悲しみが地表を舞っている。浴槽のこどもをやりすごして歩く。有限の中を燦々と降りてゆく。中絶の声がこびりついて離れない。記憶の中に光は見えない ---------------------------- [自由詩]ひきこもりちゃん/水宮うみ[2014年1月22日8時11分] 起きたら忘れる夢を見た。起きたらなんの夢を見ていたのか忘れた。夕方に雪が降るらしい。今、雪は降っていない。洗濯機がゴトゴトと音を立てている。僕はそれを見ている。 ---------------------------- [自由詩]なんだこの天井は/水宮うみ[2014年1月22日12時42分] 時間が目まぐるしく回転している。空想ではないゆえに理想的な弧を描く。天からこころを探すための装置が覗いている。場所のカケラの発露。手すりに掴まっている子どもが見える。 ---------------------------- [自由詩]聞こえる/水宮うみ[2014年1月23日16時23分] 光は部屋から生まれる。小人のように。自失の唸り。鯰が泣いている。幽霊が同時に消える。トンネルに咲き誇る無数のテープ。幼い声が聞こえる ---------------------------- [自由詩]僕らの日常/水宮うみ[2014年3月18日7時55分] 火の玉を内に秘めて生きる。孤立する遺伝子。音楽家は静かに暮らす。艶めかしいふくらはぎを蟻が通る。対立する二つのものが存在して初めて完成する世界。いつも通りに夢を見る。覚えていることは覚えていること。黒髪の老人がドーナツを食べている ---------------------------- [自由詩]歌う/水宮うみ[2014年3月19日9時20分] 産まれることのなかった子供へ向けて歌う。意味なんてどこにもなかった。ただ歌う ---------------------------- [自由詩]飛ぶ/水宮うみ[2014年3月22日12時13分] 日傘が回転しながら宙に浮かぶ。ビー玉みたいな空。つばさのない鳥が空を飛ぶ ---------------------------- [自由詩]横顔/水宮うみ[2014年3月22日12時31分] ネクタイ。診療所。カバン。犬。小説。風。神様。色。スプーン。キーボード。靴下。アイロン。紐。栞。雷。ボールペン。地面。明日。電柱。太陽。サンダル。自動車。横顔。 ---------------------------- [自由詩]日曜日/水宮うみ[2014年4月1日20時13分] ある女の子がいる。その女の子はすべてを超越してスキップしながら楽しそうに笑っている。その女の子のいる場所にいつか行けたらいいなと思う。そんな日曜日。 ---------------------------- [自由詩]いっそすべてが偽物だったらよかったのに/水宮うみ[2014年4月2日6時59分] この悲しみもこの痛みも本物だけど。あの優しい眼差しも温かい手のひらも本物。 だから生きてゆける。 ---------------------------- [自由詩]またあした/水宮うみ[2014年6月22日11時41分] 二足歩行型の人間は歩く。買い物帰りの失い続ける自転車とすれ違いながら。放心する鳥たち。世界には大きなひとつの命しか存在していない。あの電車のなかから見た外の風景のなかに僕はいる。 ---------------------------- [自由詩]桜たち/水宮うみ[2014年12月20日16時01分] 思い出すのはあの川沿いの桜たちの笑顔です。 ノイズ混じりの優しい歌。 いつかこの温もりを言葉にすることができたらなと思う。 ---------------------------- [自由詩]二足歩行/水宮うみ[2015年2月20日19時32分] 二酸化炭素のような白い夕焼け この暗闇のなかで、確かに僕は安心していたんだ 世界が世界を破壊しながら二足歩行している ---------------------------- [自由詩]年中無休梅雨/水宮うみ[2015年6月3日16時53分] あなたが生きている間に空が晴れるといい 人々は曇り空に気球を打ち上げた 言葉を傘にせずとも歩いていけるように ---------------------------- (ファイルの終わり)