北村 守通 2004年1月19日2時02分から2005年1月20日2時45分まで ---------------------------- [自由詩]善処/北村 守通[2004年1月19日2時02分] 産んでしまってごめんなさい とは 結局誰も 言えなんだ 気付いていなけりゃ 放っておいてあげなさい 幸せと云うものは 決して 与えて得られるものではないのです 下手に カタカナ二文字付きの 誠実さをさらけ出してしまっては 責任をとらされるのが オチなのです ---------------------------- [自由詩]コロッケ追慕/北村 守通[2004年1月23日23時49分] コロッケだ コロッケだ 今日の夕食は コロッケだ 肉屋が揚げた 目の前で 包み紙の いちまいは 香ばしい油で 透き通って 透き通って 赤銅色に きらきらとして 三十円だったけな 泳ぎ疲れた胃袋に ジャガイモが転がる 塩素で麻痺した 白いベロ 熱い衣が ちと痛し 二枚ばかり買いこんで 駆けた自転車 星の下 今日は夕焼けの下             みごと      つぶれていました      とうのむかしに ---------------------------- [自由詩]ウスバハゴロモ/北村 守通[2004年1月28日2時27分] 稲の茎じゃないからな くれぐれも 言っておくよ 間違って その鋭い口を突っ立てないでおくれ どこぞの 枝でもないからな いいかげん 言っておくよ くつろぐのは結構だけれど そろそろ 家に帰っておくれ   こいつは     僕の腕なんだ ####################################### 注:「ウスバハゴロモ」昆虫の名前。もっぱら稲科の植物の害虫として取り扱われる   ことが多い。もっとも害虫としては近似種である「ツマグロヨコバイ」の方が   有名。 ---------------------------- [自由詩]呼び込み稼業/北村 守通[2004年2月2日1時03分] なぁに そんなに恥じ入ることでもございません おおよそ 世の中の森羅万象と云うものには 全て 価格がつけられているんです   ただ そういった輩のものは 貨幣に換算しようとすると えらく手間のかかるものなんで その労力を考えたら 足がでちまいますんで 皆 商売の種にしないだけなんです   でも   御安心なさい 私らのほうでは 代々受け継がれております算盤張がございますんで こうして簡単に商いが成り立つんです   だから皆さん私らを僻むんですがね 思い出してもごらんなさい あなたの商売とちっとも変わったところなんぞ ありゃしないじゃぁないですか 旦那の方では 上司 あるいは同僚 あるいは部下の方々が お客様なのであって そうして 身体を オツムの中身を 種にして商売なさっているんじゃぁありませんか 飯の仕度やら身の回りの世話をしてくれるから 奥様を雇って差し上げているのでしょう 私らも それと同じことなんで   ただ   全て貨幣に換算して   それ以外一切いただかないだけなんです いかがですかねぇ 今晩の記憶や 想い出といった 何より手に入り辛いものは その日にしか手に入らないんです 明日は とんと違った顔になっているんです 丁度 ビー玉の色合いが 決して同じ物が作れないようにね   だんなは     それを集めて       宝箱にしまっておきゃぁいいんですよ ---------------------------- [自由詩]今そこにある喜劇/北村 守通[2004年2月15日23時29分] 阿呆は夢見る 阿呆は 阿呆たる故を忘れて 飽きることなく 後悔の下ごしらえを整える 阿呆 見るべき夢を 忘れる 阿呆 己を 飽きることなく 忘れ 相応しくない場の中に その足を踏み入れ 怒涛のブーイングの その訳を 毎度 再度 考える 阿呆 放つべき台詞は はるか彼方にあって バグった言葉は 空を切る 相応しくない言葉は 阿呆の口を 拒絶する   踊れや     踊れ       阿呆の口   観客は   もはや君を観ない ---------------------------- [自由詩]主張する肥満爺/北村 守通[2004年2月16日19時33分] 地球にやさしくと言うのなら   食うな お前が食うということは 即ち地球を貪るということだ 気付や どあほう 安全な食生活がお望みならば   食うな この世の中で 安全なものなどどこにもありはしない 全ては循環の中で 毒もまた 例外ではない いい加減に 気付や どあほう 痩せたければ   食うな 間違っても 腹の袋の中でゲル化するとやらうたっている 極めていい加減な実験を元にした 物質なんかを 腹の袋の中に   流し込むな それ すなはち ゲロを吐くに同じこと ならば ゲロを吐け どあほう   お前   なんの為に食う? ---------------------------- [自由詩]ウィルスは既に通り過ぎて笑う/北村 守通[2004年2月17日23時59分] ヘルシー! と 輝く瞳 食い過ぎれば とっても ハーミィ! せいぜい バカの一つ覚え繰り返し 流行の映画観に行けば 流行の台詞 超感動! 感想を 考えるにはビット数が少な過ぎる オツムのシステムに 必要なのは 超伝導 その 百円電卓並みの メインCPUの容量は 案の定の 許容量 地球を大事にする為に 資源は有効に利用するために 服は頻繁に換えても メインCPUは壊さぬように ショートしたら大変だから パンクする要因は 最初から排除だ 排除 メリケン牛肉と おんなじだ 排除だ 排除だ 中にいれなきゃ 安心だ こちらには 絶対に 非はないんだ こちらは 絶対に 間違いではないんだ さぁ 夢を信じて歩きましょう 何も疑ってはいけません 疑ったら 事実に気が付いて ショートさせるだけです さぁ 愛の喜びに満足して行きましょう なんでもいいから 他人を通して 楽しいことや 嬉しいことや うきうきすることは 愛と呼んでしまえばいいのです 誰もそんなこと 気にしませんから ---------------------------- [自由詩]掴みかけた友情/北村 守通[2005年1月18日1時51分] 夜は 張り詰め 足音だけが 近付きつつ 離れ 近付きつつ 離れ 夜は 張り詰め 六つの足音が 決して 共振することはなく 美しい 調べとなることはなく 白い息が 二つ 連なって走る 白い息が 二つ 立ち止まって 流れる   礼儀として   視線には   視線を返すことにすると   案の定   そいつと目が合った     子犬というには     大き過ぎるが     大人というには     幼過ぎる     首輪つきの     黒いワンワン 口笛ひとつ吹いてやると 喜び勇んで   まずは     足にじゃれ   次に     買い物袋を嗅ぎ   そして   もう一度   頭上の視点を確認し   後ろ足を   蹴り上げる やわらかい毛だ まんまるい眼だ 掴みやすい首輪だ 軽い身体だ こ こいつを そのままぶん投げたら ど どこまで飛んでゆくんだろう そ れとも キラキラ輝く アスファルトに叩きつけたら どん なやわらかい音が 聞こえるのだろ う 静かに渦を巻く 粘度の高い欲情に 指先が震えかけたとき   やっぱり   そいつと目が合った その眼は 丸い この世で一番 まんまるい   そいつが キラキラ輝いて アスファルトの如く 輝いて 上へ下へと 動きまわる 指先の震えはすっかり止まり まずは めざしを差し出すが 食わず 次に イモ天をちぎるが やっぱり食わず ビアソーだけは しっかりと 持ち主の分まで食って 更におねだりしようとした   そのリクエストには   応えられなかったが   確かに我々は友達となり   友達となったので   バイバイをした ---------------------------- [自由詩]冬眠/北村 守通[2005年1月20日2時45分] 温かい筈の布団を 俺が 温める   顔が痛い   ああ   顔が痛い 風が 窓ガラスを叩く 重さを増した空気が それでも 顔にのしかかる   顔が痛い   顔が痛い ---------------------------- (ファイルの終わり)