

記号説/う・む〜高橋悠治による北園克衛と足立智美による新國誠一
高橋悠治/足立智美
価格:¥2,100(税込)
レビュー:午睡機械
高橋悠治はMax/MSPという音楽プログラミングソフトを用いて、北園克衛『記号説』『熱いモノクル』『送行』『消えていくpoesie』といった詩の朗読を、高橋自身によるサティ作品の演奏とMixしています。近年の、ATAKレーベルから高橋が発表していたコンピュータ音楽はかなり先鋭化した音づくりがなされていて、聞きなれていないひとにとってはやや難解な印象を与えることもあったかと思いますが、こちらはかなり聴きやすいうえに、北園克衛作品の音楽化されたもののなかではぼくはもっとも気に入っています。高橋自身の声も、老いて削ぎ落とされ、耳にやわらかく響きます。
足立智美は新國誠一の視覚詩や音響詩を「音読する」というたいへん無茶なことをやっています。しかし新國誠一自身が「作品を読むばあいには、音読すること」と記していたこともあったのを省みるまでもなく、視覚詩が詩である以上はその朗読も成り立つでしょう。書かれたものとの音声化されたものとのあいだに独特な緊張感をもたせます。
9/23に渋谷UPLINK FACTORYで行われた二人のライヴでは、CDには収録されていない別バージョンや他の作品も聴くことができました。ラップトップ・マシンその他を操りながら声の空間を繰り広げていった二人の作曲家は、詩のあたらしい形態と可能性をわたしたちに提示してくれました。