

国境なきアーティスト
エクトル・シエラ 著
価格:¥882(税込)
レビュー:原口昇平
パラジャーノフ最後の映画の助監督を務めた著者による、紛争地域の子どものこころを解き放つためのNGO活動。はじめはパラジャーノフについての話を期待して読み始めたのだけど、そこからひろがるひろがるひろがりまくり。生まれのコロンビアから映画を学びに旧ソ連へ留学、パラジャーノフとの出会い、さらに日本への経路、そして紛争地域へ。
たとえば日本にいればあまり目を向けないグルジア、アルメニア、アゼルバイジャンなどの、旧ソ連からの独立国家周辺の紛争について、光があてられる。また旧ユーゴや東ティモールなどの、日本からでもよく注目された地域についても。
後半は紛争地域でのNGO活動を平易な文体でレポートしつつ、その地域の問題も描き、そしてまた現地でひらいたワークショップで子どもたちが描いた絵を紹介している。その幼い絵が、実に生々しい喚起力を持っている。声のない叫び。すこしでも触れたひとびとは、必ず何かを考えるだろう。そしてそのうちの幾人かは、行動を始めざるをえなくなるのではないだろうか。