Amazon.co.jp アソシエイト
 
一行物語集 世界は蜜でみたされる

飯田茂実 水声社

価格:¥1,785(税込)

レビュー:haraguchi
 飯田茂実処女小説。一行物語とは、全体で「。」が一度だけ現れて、そこで終わる物語の形式です。例:[世界のすべての人びとを愛するために、彼女は電話帳を開き、ひとりひとりの名前を精魂こめて覚えはじめた。] もういっこ:[夜勤の警備員をしながら、彼はいくつもの古典悲劇を暗唱したが、この何十年かのあいだ、口に出す言葉といえば、「こんばんは」「お疲れさまでした」など、いくつかの挨拶だけだった。](いずれも同書より)こんな短い物語が333篇収録されています。  日々の生活や仕事が忙しい方は、ふつうの小説を読む際一度では読みきれず一旦離れてからまたつづきを読む、そんな読書スタイルが当たり前だと思いますが、「あれ、前回読んだところまではどういう筋だったんだっけ……」というようなちょっとわずらわしい感覚がつきものですよね。けれど、この一行物語集は例でも示したとおり一篇はほんとうに短くすぐに読み終わるものですから、電車で一駅移動するあいだにさえ気楽に本を開くことができます。  寓意あふれるものばかりですから、寓話集としても楽しめます。知り合いの小説書きに読ませたら「ふつう面白いネタがこれだけの量あったら一本ずつ短篇化するだろうに、もったいない」と言っていました。  余談ですが著者の飯田茂実は大野一雄に舞踏を師事したダンサーでもあり、作曲家でもあり、演出家でもあります。本書は、なんか、六ヶ国語に翻訳中だそうです。これからも末広がりになりそうな氏の活動の端っこを、つかんでみませんか。

この情報は、価格を含めて編集当時のものです。現在の価格、在庫、内容はリンク先でご確認ください。